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第26話 なかったことにするんだ
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ルイスは渾身の力で拳を人形に叩きつける。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
凄まじい音と共に、人形が吹き飛んでいった。
「……はい?」
唖然としてそんな声を発したのは、ステータス測定を担当している新人職員のフィネだ。
大きく口を開け、しばらくポカンとしてしまう。
それもそのはず。
この攻撃力測定用の人形は、軽く三百キロを超える重量があるのだ。
それを一撃で十メートル以上も吹き飛ばすなど、本来あり得ないはずだった。
『ピピピッ……測定中、測定中、測定中……測定不能』
「測定不能」の結果を人形が吐き出す。
実はこの人形、受けたダメージを自動で計測してくれる、便利な魔導具なのである。
「う、嘘ですよね……? 測定不能なんて……え? え? え?」
わなわなと唇を震わせ、ようやくそんな言葉を口にするフィネ。
こんな状況、新人研修で学んだマニュアルにもなかったので、対処の仕方も分からずパニックになった彼女は、
「ど、どうやらちょっと、人形が不調のようですね!?」
そんな結論を出した。
……どう考えても人形の問題ではない。
「仕方がないので、防御力の測定に進みますね!」
「そうか。不調なら仕方ないな」
そしてそれに納得してしまうルイスである。
次の防御力の測定では、受けたダメージ量を可視化できる魔道具を使用するようだ。
「まずはこの腕輪を装着してください! その状態で、こっちの箱の前に立ちます!」
箱には砲のようなものが付いていた。
どうやらそこから衝撃波が出てくるようで、それを受けたときのダメージ量を測定するらしい。
「ええと、この衝撃波、かなりの威力があるので、しっかり身構えておいてくださいね! 新人さんの場合、吹き飛ばされて気絶しちゃったりするので! 本当は威力を調節できたらいいんですけど……。あっ、さすがに死ぬことはないと思いますので、そこはご安心ください! では、準備はいいですか?」
「ああ、いつでもいいぞ」
「歯を食いしばってくださいね! せーのっ!」
ドオオオンッ!!
「……?」
ルイスは首を傾げた。
衝撃波がくると言っていたのに、ちょっとした風が吹きつけてきただけだったからだ。
「まだか?」
「え? いえ、もう発射しましたけど……」
あまりにも拍子抜けだったので本当にただ風が吹いただけかと思って確認するも、どうやらフィネは間違いなくスイッチを押したらしい。
「衝撃波っていうか、風だったぞ」
「そ、そんなことはないですよ!? だって、オークのタックルに匹敵すると言われているほどなんですから!?」
『ピピピッ……測定中、測定中、測定中……測定不能』
そこでルイスが装着した腕輪が測定結果を算出してくれたが、またしても「測定不能」という結果だった。
「お、おかしいですね……? じゃあやっぱり、ちゃんと衝撃波が出ていなかった……? もしかしてこれも故障しちゃってるのかも……ううう、どうすれば……っ?」
二回連続で想定外のことが起こって頭を抱えるフィネ。
しばらく「うーんうーん」と唸った後、
「はい、なかったことにして次の測定にいっちゃいましょう!」
「(なかったことにするんだ……)」
だが次の敏捷力でも、体力でも、「測定不能」と判定されてしまう。
ルイスのステータスが、魔道具の作成者が想定範囲を超えた異常値だったせいである。
「これもなかったことにしますね! はい、こっちも!」
もはやヤケクソ気味に叫ぶ新人職員の唯一の救いは、最後の魔力の測定だった。
『魔力5』
ルイスは魔力を使わないジョブである【農民】だったため、逆に数値がちゃんと出たのである。
「というわけで、ルイスさんのステータスは、攻撃力測定不能、防御力測定不能、敏捷力測定不能、体力測定不能、魔力F判定となりました! ……って、こんなの上司にどうやって報告したらいいんですかあああああっ!?」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
凄まじい音と共に、人形が吹き飛んでいった。
「……はい?」
唖然としてそんな声を発したのは、ステータス測定を担当している新人職員のフィネだ。
大きく口を開け、しばらくポカンとしてしまう。
それもそのはず。
この攻撃力測定用の人形は、軽く三百キロを超える重量があるのだ。
それを一撃で十メートル以上も吹き飛ばすなど、本来あり得ないはずだった。
『ピピピッ……測定中、測定中、測定中……測定不能』
「測定不能」の結果を人形が吐き出す。
実はこの人形、受けたダメージを自動で計測してくれる、便利な魔導具なのである。
「う、嘘ですよね……? 測定不能なんて……え? え? え?」
わなわなと唇を震わせ、ようやくそんな言葉を口にするフィネ。
こんな状況、新人研修で学んだマニュアルにもなかったので、対処の仕方も分からずパニックになった彼女は、
「ど、どうやらちょっと、人形が不調のようですね!?」
そんな結論を出した。
……どう考えても人形の問題ではない。
「仕方がないので、防御力の測定に進みますね!」
「そうか。不調なら仕方ないな」
そしてそれに納得してしまうルイスである。
次の防御力の測定では、受けたダメージ量を可視化できる魔道具を使用するようだ。
「まずはこの腕輪を装着してください! その状態で、こっちの箱の前に立ちます!」
箱には砲のようなものが付いていた。
どうやらそこから衝撃波が出てくるようで、それを受けたときのダメージ量を測定するらしい。
「ええと、この衝撃波、かなりの威力があるので、しっかり身構えておいてくださいね! 新人さんの場合、吹き飛ばされて気絶しちゃったりするので! 本当は威力を調節できたらいいんですけど……。あっ、さすがに死ぬことはないと思いますので、そこはご安心ください! では、準備はいいですか?」
「ああ、いつでもいいぞ」
「歯を食いしばってくださいね! せーのっ!」
ドオオオンッ!!
「……?」
ルイスは首を傾げた。
衝撃波がくると言っていたのに、ちょっとした風が吹きつけてきただけだったからだ。
「まだか?」
「え? いえ、もう発射しましたけど……」
あまりにも拍子抜けだったので本当にただ風が吹いただけかと思って確認するも、どうやらフィネは間違いなくスイッチを押したらしい。
「衝撃波っていうか、風だったぞ」
「そ、そんなことはないですよ!? だって、オークのタックルに匹敵すると言われているほどなんですから!?」
『ピピピッ……測定中、測定中、測定中……測定不能』
そこでルイスが装着した腕輪が測定結果を算出してくれたが、またしても「測定不能」という結果だった。
「お、おかしいですね……? じゃあやっぱり、ちゃんと衝撃波が出ていなかった……? もしかしてこれも故障しちゃってるのかも……ううう、どうすれば……っ?」
二回連続で想定外のことが起こって頭を抱えるフィネ。
しばらく「うーんうーん」と唸った後、
「はい、なかったことにして次の測定にいっちゃいましょう!」
「(なかったことにするんだ……)」
だが次の敏捷力でも、体力でも、「測定不能」と判定されてしまう。
ルイスのステータスが、魔道具の作成者が想定範囲を超えた異常値だったせいである。
「これもなかったことにしますね! はい、こっちも!」
もはやヤケクソ気味に叫ぶ新人職員の唯一の救いは、最後の魔力の測定だった。
『魔力5』
ルイスは魔力を使わないジョブである【農民】だったため、逆に数値がちゃんと出たのである。
「というわけで、ルイスさんのステータスは、攻撃力測定不能、防御力測定不能、敏捷力測定不能、体力測定不能、魔力F判定となりました! ……って、こんなの上司にどうやって報告したらいいんですかあああああっ!?」
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