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第27話 生理的に受け付けないんだよ
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冒険者ギルドの目と鼻の先に、その酒場はあった。
店名は『竜殺し亭』。
なかなか物騒な名前だが、ドラゴン殺しは多くの戦士たちにとっての夢だ。
それゆえその名にあやかろうとする冒険者たちに、大人気の酒場だった。
日暮れ時。
冒険帰りの冒険者たちが賑わう中、ルイスはこの酒場を訪れていた。
「フィネに教えてもらって来てみたが……客のほとんどが冒険者だな」
今日は晴れて冒険者となり、戦士としての人生を歩み始めた記念すべき日だ。
ささやかながらその祝杯をしようと、おススメの酒場を聞いたところ、教わったのがここだったのである。
もちろん連れなどいない。
この街に知り合いなどいないため、たった一人の寂しい祝杯である。
運よく開いていたカウンター席の一番端っこの椅子に腰を下ろした。
「アンタ、見たことない顔だねぇ?」
カウンターの向こうから話しかけてきたのは、こうした酒場の店員にしては随分と若そうな女性だった。
しかもかなりの美人で、その細身のスタイルのせいか、化粧っ気があまりないというのに随分と色っぽい。
「うちは初めてかい?」
「ああ」
「そうかい、まぁ見ての通り騒がしい店だけど、ゆっくりしてきな。おっと、申し遅れたね。アタシは店主のビビアンさ」
どうやらこの女性が店主らしい。
ルイスは知らなかったが、彼女の存在もまた、この店が冒険者たちに人気がある理由の一つだった。
「店主? その若さで珍しいな」
「よく言われるね。元はアタシの親父が経営してたんだけれどね、病で死んじまって、それで一人娘だったアタシが継ぐことになったのさ」
「そうだったのか」
頷きつつ、ルイスはエールを頼んだ。
あいよ、と威勢よく返事して、ビビアンがあっという間に酒がなみなみに注がれたジョッキを渡してくる。
「めちゃくちゃ冷えてる?」
「ああ。うちのエールはキンキンに冷やすのが特徴なのさ」
ルイスはエールを一気に煽った。
ごくごくごく、と勢いよく飲んでいく。
「ぷは~~~~っ! 確かに、冷えている方が圧倒的に美味いな」
「だろう? にしてもアンタ、良い飲みっぷりだねぇ。そういう男、好きだよ、アタシは。ほら、もう一杯どうだい?」
「もらおう」
二杯目のエールを出してきたところで、ビビアンが訊いてくる。
「ところでアンタ、大工か何かだろう?」
「いや、俺は冒険者だぞ」
「冒険者? その格好でかい……?」
ルイスの作業着を見て、眉を寄せるビビアン。
「そんな姿の冒険者、今まで色んな冒険者を見てきたけど、初めてだよ。今までどこの街で活動してたんだい?」
「実はついさっき、冒険者になったばかりなんだ」
「……どういうこと?」
と、そのときだった。
「おい、ビビアン! そんな雑魚とばっかり喋ってねぇで、こっち来いよ!」
カウンターの逆側に座っていた巨漢が、ビビアンを大声で怒鳴りつけた。
「うるさいねぇ。この店でそういうサービスはやってないんだよ。女の子にちやほやされたいなら、他に店に行けってんだよ。……悪いねぇ」
「いや、大変だな。酔っ払いの相手は」
苦笑するルイスから離れ、ビビアンはその巨漢のところへ。
「そんなに声を荒らげなくったって聞こえるよ。それで、何の用だい?」
「おう、そろそろこの間の返事を寄越しやがれ。オレは首を長くして待ってるんだぞ?」
「……アンタの女になれって話かい? 悪いけれど、お断りさせてもらうよ」
「ああっ? て、てめぇっ……こ、このオレをフるってのかよ……っ!?」
どうやら巨漢はビビアンにプロポーズ(?)をしていたようだが、断られるとは思っていなかったらしい。
「そういうことだね」
「オレの女になりゃ、一生安泰だぞっ? こんな店で毎晩遅くまで働く必要もねぇ!」
「こんな店、だって?」
彼女の逆鱗に触れてしまったのか、ビビアンの顔つきが変わった。
「ここは親父から受け継いだ、アタシにとっては家族のような店だよっ! それを馬鹿にするんじゃない! それとこの際、はっきり言っておいてやるけどねぇ! そもそもアタシはアンタみたいなブッッッ細工なクソ男、そもそも生理的に受け付けないんだよぉ!」
「ななな、なんだとっ!? て、てめぇっ……下手に出てりゃ、つけやがりやがって……っ!」
真っ赤な顔をさらに赤くし、激昂する巨漢。
その野太い腕を伸ばしたかと思うと、ビビアンの胸倉を掴み上げた。
「~~っ!?」
そのまま彼女の華奢な身体をカウンターから引き摺り出すと、近くのテーブルに放り投げる。
ガシャアアアンッ、と乗っていた料理や皿がひっくり返った。
「ぶち殺してやるっ!」
「……っ」
もはや我を忘れた巨漢が、倒れて動けないビビアンに近づいていく。
「おいっ、まずいぞ!?」
「ビビアンさんが殺されちまう! 誰か止めろ!」
「どうやって!? 相手はあのボーマンだぞ!?」
巨漢は名の知れた冒険者なのか、店内にいた客は慌てふためくだけだ。
そんな中、巨漢の前に立ちはだかる男がいた。
「やめておけよ」
ルイスである。
店名は『竜殺し亭』。
なかなか物騒な名前だが、ドラゴン殺しは多くの戦士たちにとっての夢だ。
それゆえその名にあやかろうとする冒険者たちに、大人気の酒場だった。
日暮れ時。
冒険帰りの冒険者たちが賑わう中、ルイスはこの酒場を訪れていた。
「フィネに教えてもらって来てみたが……客のほとんどが冒険者だな」
今日は晴れて冒険者となり、戦士としての人生を歩み始めた記念すべき日だ。
ささやかながらその祝杯をしようと、おススメの酒場を聞いたところ、教わったのがここだったのである。
もちろん連れなどいない。
この街に知り合いなどいないため、たった一人の寂しい祝杯である。
運よく開いていたカウンター席の一番端っこの椅子に腰を下ろした。
「アンタ、見たことない顔だねぇ?」
カウンターの向こうから話しかけてきたのは、こうした酒場の店員にしては随分と若そうな女性だった。
しかもかなりの美人で、その細身のスタイルのせいか、化粧っ気があまりないというのに随分と色っぽい。
「うちは初めてかい?」
「ああ」
「そうかい、まぁ見ての通り騒がしい店だけど、ゆっくりしてきな。おっと、申し遅れたね。アタシは店主のビビアンさ」
どうやらこの女性が店主らしい。
ルイスは知らなかったが、彼女の存在もまた、この店が冒険者たちに人気がある理由の一つだった。
「店主? その若さで珍しいな」
「よく言われるね。元はアタシの親父が経営してたんだけれどね、病で死んじまって、それで一人娘だったアタシが継ぐことになったのさ」
「そうだったのか」
頷きつつ、ルイスはエールを頼んだ。
あいよ、と威勢よく返事して、ビビアンがあっという間に酒がなみなみに注がれたジョッキを渡してくる。
「めちゃくちゃ冷えてる?」
「ああ。うちのエールはキンキンに冷やすのが特徴なのさ」
ルイスはエールを一気に煽った。
ごくごくごく、と勢いよく飲んでいく。
「ぷは~~~~っ! 確かに、冷えている方が圧倒的に美味いな」
「だろう? にしてもアンタ、良い飲みっぷりだねぇ。そういう男、好きだよ、アタシは。ほら、もう一杯どうだい?」
「もらおう」
二杯目のエールを出してきたところで、ビビアンが訊いてくる。
「ところでアンタ、大工か何かだろう?」
「いや、俺は冒険者だぞ」
「冒険者? その格好でかい……?」
ルイスの作業着を見て、眉を寄せるビビアン。
「そんな姿の冒険者、今まで色んな冒険者を見てきたけど、初めてだよ。今までどこの街で活動してたんだい?」
「実はついさっき、冒険者になったばかりなんだ」
「……どういうこと?」
と、そのときだった。
「おい、ビビアン! そんな雑魚とばっかり喋ってねぇで、こっち来いよ!」
カウンターの逆側に座っていた巨漢が、ビビアンを大声で怒鳴りつけた。
「うるさいねぇ。この店でそういうサービスはやってないんだよ。女の子にちやほやされたいなら、他に店に行けってんだよ。……悪いねぇ」
「いや、大変だな。酔っ払いの相手は」
苦笑するルイスから離れ、ビビアンはその巨漢のところへ。
「そんなに声を荒らげなくったって聞こえるよ。それで、何の用だい?」
「おう、そろそろこの間の返事を寄越しやがれ。オレは首を長くして待ってるんだぞ?」
「……アンタの女になれって話かい? 悪いけれど、お断りさせてもらうよ」
「ああっ? て、てめぇっ……こ、このオレをフるってのかよ……っ!?」
どうやら巨漢はビビアンにプロポーズ(?)をしていたようだが、断られるとは思っていなかったらしい。
「そういうことだね」
「オレの女になりゃ、一生安泰だぞっ? こんな店で毎晩遅くまで働く必要もねぇ!」
「こんな店、だって?」
彼女の逆鱗に触れてしまったのか、ビビアンの顔つきが変わった。
「ここは親父から受け継いだ、アタシにとっては家族のような店だよっ! それを馬鹿にするんじゃない! それとこの際、はっきり言っておいてやるけどねぇ! そもそもアタシはアンタみたいなブッッッ細工なクソ男、そもそも生理的に受け付けないんだよぉ!」
「ななな、なんだとっ!? て、てめぇっ……下手に出てりゃ、つけやがりやがって……っ!」
真っ赤な顔をさらに赤くし、激昂する巨漢。
その野太い腕を伸ばしたかと思うと、ビビアンの胸倉を掴み上げた。
「~~っ!?」
そのまま彼女の華奢な身体をカウンターから引き摺り出すと、近くのテーブルに放り投げる。
ガシャアアアンッ、と乗っていた料理や皿がひっくり返った。
「ぶち殺してやるっ!」
「……っ」
もはや我を忘れた巨漢が、倒れて動けないビビアンに近づいていく。
「おいっ、まずいぞ!?」
「ビビアンさんが殺されちまう! 誰か止めろ!」
「どうやって!? 相手はあのボーマンだぞ!?」
巨漢は名の知れた冒険者なのか、店内にいた客は慌てふためくだけだ。
そんな中、巨漢の前に立ちはだかる男がいた。
「やめておけよ」
ルイスである。
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