農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾

文字の大きさ
29 / 60

第29話 外に出しておこう

しおりを挟む
 元々レタスには、眠りを促す成分が入っていると言われている。
 ルイスはそれに独自の品種改良を施し、非常に強力な睡眠効果を持つレタスを作り上げたのだった。

「少なくとも朝までは起きないはずだ。邪魔だし、外に出しておこう」

 ルイスは巨漢を軽々と持ち上げると、酒場の外の路上にぽいっと捨ててきた。

「ボーマンの身体を、あんなに簡単に……」
「間違いなく百五十キロ以上あるぞ……?」
「あいつ、なんて腕力だよ……」

 客たちが息を呑む中、ルイスはまだ動けない様子のビビアンのところへ。

「大丈夫か?」
「あ、ああ、なんとかね……」

 そんな返事がかえってくるが、立ち上がることができないようだ。

 ボーマンに投げられたとき、かなり身体を強く打ったのだろう。
 骨が折れていてもおかしくない。

 戦士の腕力は一般人を遥かに凌ぐ。
 しかもただでさえ体格のいいボーマンが、怒りに任せて投げ飛ばしたのだから、打ち所が悪かったら死んでいたかもしれない。

「これを食べるといい」
「……? ブドウ……?」
「ああ。騙されたと思って食べてみてくれ」

 周囲からは「こんなときに果物?」「それより早くヒーラーに見せないと」という声が聞こえてくるが、ビビアンは言われた通りそのブドウの粒を口に入れた。

「うまああああああああああああああああああああっ!? 何なんだい、このブドウは!? こんなに美味しいの、今まで食べたことないよ!?」

 思わず絶叫するビビアン。
 身体は大丈夫なのかと誰もが心配する中、気づけば彼女は立ち上がっていた。

「しかも、身体が痛くなくなった!」
「そのブドウには怪我を治癒する効果があるんだ。名付けてヒールブドウ」
「「「ヒールブドウ」」」

 聞き慣れない言葉に誰もが首を傾げる。

「あいつ、本当に何者なんだ……? 謎のカボチャやレタスに、今のブドウ……」
「あの怪力、戦士以外にはあり得ないが……」
「戦士だとしても、何の天職なのかまったく分からん……」

 すっかり回復したビビアンが、パンパンと手を叩いて、

「悪いけど、今日はもう店じまいだよ! アンタたち、とっとと帰りな!」

 客の退店を促す。
 仕方ないか、という顔で客はそれに応じ、残った料理や酒を慌てて胃に流し込んでから店を出ていった。

 ルイスもまた彼らと一緒に店を出ようとしたところで、なぜか後ろから服を引っ張られる。
 振り返ると、ビビアンがルイスの服を掴んでいた。

「……アンタはいいよ、帰らなくて」
「?」
「助けてくれたお礼もしたいしね。ほら、座りな!」

 ビビアンに促され、他の客がいなくなった店内でカウンター席に腰を下ろすルイス。
 そして頼んでもいないのに新しいエールが出てくる。

「さっきのお礼! 今日は飲み放題サービスだよ! 好きなだけ飲んでって! もちろん、料理も全部サービスだ!」
「いいのか?」
「いいんだよ! アタシにはこんなことくらいしかできないからね!」

 せっかくなので、ルイスはお言葉に甘えることにした。
 ビビアンは料理の腕もいいようで、酒に合うような美味い料理がどんどん出てくる。

 普段はあまり酒を飲まないルイスなのだが、お陰でかなりお酒が進んだ。
 何よりビビアン自身も酒を飲みながら、煽ってくるのだ。

「ははっ、まだまだそんなもんじゃないだろう? アタシはもっといけるよ! さあさあ、遠慮なくじゃんじゃん飲んでおくれ!(この強さ、間違いなく騎士からの鞍替え組の冒険者だよ! 最近増えてるからね、とりわけ優秀な騎士が、自由を求めて冒険者になるってケースがさ! 将来超有望な上に、女と遊びまくってる冒険者連中と違って明らかに真面目そうときた! こんな男、逃すわけにはいかないよ! ここで飲ませまくって酔い潰したら、うちにお持ち帰りして……ふふふっ)」

 そんな相手の他意には気づかず、ルイスは促されるままに酒を飲みまくった。
 やがて、

「うっぷ……も、もう飲めない……酒豪で知られたこのアタシが……飲み負けるなんて……アンタ、強過ぎるだろ……」

 先に酔い潰れたのはビビアンの方だった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...