55 / 60
第55話 何の役にも立ってねぇ
しおりを挟む
危険度C以上の魔物に対して、天職を持たない人間たちはまったく戦力にならない。
ゆえに戦士だけで、千体もの凶悪な魔物と対峙しなければならないことになる。
「そんなの、どう考えても無理だろ……お、俺は戦わずに逃げるぞ……」
一人の冒険者の小さな呟きを、ミレアは聞き逃さなかった。
「残念ですが、それはできません。今ここに集まった皆さんには、冒険者として戦う義務があります。もし逃亡されるようなことがあれば、二度と冒険者として活動することはできないでしょう」
「マジか……」
ミレアの説明に、言葉を失う冒険者たち。
「ただ、先ほどの話はあくまで単純にぶつかれば、の話です。実際にはこの街には強固な城壁があります。それを利用し、上手く戦うという形になるでしょう。詳しい作戦は騎士団と調節する必要があるかと思いますので、まだお話できませんが、決して無謀な戦いではないはずです」
いったん壇上に端に追いやられていたバルクが、そこで再び口を開く。
「というわけだ! 分かったな!」
「「「(サブマス、何の役にも立ってねぇ……)」」」
遠くに濛々と舞い上がる砂煙が見えてきたのは、ちょうど太陽が真上にくる時刻だった。
「この距離からすでに砂煙が見えるとか、どれだけの規模っすか……」
城壁の上からその様子を見ていた【赤魔導師】のリオは、頬を引き攣らせながら呻いた。
「しかも、樹海ってここからかなり離れてるっすよね? 少なくとも領都から見えないくらいには……。そんなところからここまで押し寄せてくるものなんすね……?」
そんな彼の疑問に答えたのは、【パラディン】のジークだ。
「スタンピードの原因は様々だけれど、共通しているのは、一度発生してしまうとそう簡単には収まらないことなんだ。人間でも群集心理と言って、周りがある一定の行動をしていると、なかなか別の行動を取るのは難しくなるよね? 魔物だってそう。他の魔物が走り続けているなら、自分も走り続けないといけない気になるんだと思う。たぶん、そうやって周囲と同じ行動を取ることが自分の生存確率を高めることになるって、本能的に感じるのだろう」
「相変わらず、よくそんな難しいことを知ってるっすね……。けど、もしこの城壁を前にしたら、避けて通り過ぎていくんじゃないっすか?」
「そうだね。ただ、そうなると今度はこの都市の先にある街や村が危険だ」
「言われてみれば」
「だからこそ、ここで可能な限り魔物を討伐しなくちゃならないんだ」
彼らは以前、正規冒険者になるための試験を、ルイスと共に受けた二人だった。
あの後、そろって再試験に合格し、現在はEランク冒険者になっていた。
彼らもまた強制招集で、この戦いに挑むことになったのである。
ただしまだ駆け出しなので、非戦士の者たちと同様、この城壁の上からの参戦だ。
万一、この城壁を越えていこうとする魔物が現れたときに、それを撃退するのが彼らの主な役目である。
……なお、もう一人の【聖女】コルットは不合格となったため、ここにはいない。
一応、冒険者見習いではあるので、城壁内で怪我人の治療にあたる予定だ。
「どどど、どうしよう!? 魔物の大群が、もうすぐそこまできちゃってるよ!?」
「慌てても仕方ないわ。こうなったらもう、やるしかないんだから」
「ジタバタしても意味なし」
同じく城壁の上には、ルイスがゴブリンの巣穴から助けた三人娘、リゼ、マーナ、ロロの姿もあった。
先ほどから不安でずっと一人であわあわしているリゼを、マーナとロロが落ち着かせようとしている。
また、Cランク以上であっても、魔法使い系の戦士たちも城壁組だ。
「あたくしたち魔法部隊は、魔物がこの城壁に近づいてきたら一斉に魔法で攻撃しますわ。それでどれだけ数を減らしたり、魔物を混乱せられるかで、勝負が決まると言っても過言ではありませんの」
そう後輩たちに言い聞かせているのは、【青魔導師】であるエリザ。
実は最近Bランク冒険者に昇格したこともあって、この場のリーダーを任されている。
「(あのときみたいに、ルイスがいてくだされば心強いのに……こんなときに依頼で街にいらっしゃらないなんて……)」
ゆえに戦士だけで、千体もの凶悪な魔物と対峙しなければならないことになる。
「そんなの、どう考えても無理だろ……お、俺は戦わずに逃げるぞ……」
一人の冒険者の小さな呟きを、ミレアは聞き逃さなかった。
「残念ですが、それはできません。今ここに集まった皆さんには、冒険者として戦う義務があります。もし逃亡されるようなことがあれば、二度と冒険者として活動することはできないでしょう」
「マジか……」
ミレアの説明に、言葉を失う冒険者たち。
「ただ、先ほどの話はあくまで単純にぶつかれば、の話です。実際にはこの街には強固な城壁があります。それを利用し、上手く戦うという形になるでしょう。詳しい作戦は騎士団と調節する必要があるかと思いますので、まだお話できませんが、決して無謀な戦いではないはずです」
いったん壇上に端に追いやられていたバルクが、そこで再び口を開く。
「というわけだ! 分かったな!」
「「「(サブマス、何の役にも立ってねぇ……)」」」
遠くに濛々と舞い上がる砂煙が見えてきたのは、ちょうど太陽が真上にくる時刻だった。
「この距離からすでに砂煙が見えるとか、どれだけの規模っすか……」
城壁の上からその様子を見ていた【赤魔導師】のリオは、頬を引き攣らせながら呻いた。
「しかも、樹海ってここからかなり離れてるっすよね? 少なくとも領都から見えないくらいには……。そんなところからここまで押し寄せてくるものなんすね……?」
そんな彼の疑問に答えたのは、【パラディン】のジークだ。
「スタンピードの原因は様々だけれど、共通しているのは、一度発生してしまうとそう簡単には収まらないことなんだ。人間でも群集心理と言って、周りがある一定の行動をしていると、なかなか別の行動を取るのは難しくなるよね? 魔物だってそう。他の魔物が走り続けているなら、自分も走り続けないといけない気になるんだと思う。たぶん、そうやって周囲と同じ行動を取ることが自分の生存確率を高めることになるって、本能的に感じるのだろう」
「相変わらず、よくそんな難しいことを知ってるっすね……。けど、もしこの城壁を前にしたら、避けて通り過ぎていくんじゃないっすか?」
「そうだね。ただ、そうなると今度はこの都市の先にある街や村が危険だ」
「言われてみれば」
「だからこそ、ここで可能な限り魔物を討伐しなくちゃならないんだ」
彼らは以前、正規冒険者になるための試験を、ルイスと共に受けた二人だった。
あの後、そろって再試験に合格し、現在はEランク冒険者になっていた。
彼らもまた強制招集で、この戦いに挑むことになったのである。
ただしまだ駆け出しなので、非戦士の者たちと同様、この城壁の上からの参戦だ。
万一、この城壁を越えていこうとする魔物が現れたときに、それを撃退するのが彼らの主な役目である。
……なお、もう一人の【聖女】コルットは不合格となったため、ここにはいない。
一応、冒険者見習いではあるので、城壁内で怪我人の治療にあたる予定だ。
「どどど、どうしよう!? 魔物の大群が、もうすぐそこまできちゃってるよ!?」
「慌てても仕方ないわ。こうなったらもう、やるしかないんだから」
「ジタバタしても意味なし」
同じく城壁の上には、ルイスがゴブリンの巣穴から助けた三人娘、リゼ、マーナ、ロロの姿もあった。
先ほどから不安でずっと一人であわあわしているリゼを、マーナとロロが落ち着かせようとしている。
また、Cランク以上であっても、魔法使い系の戦士たちも城壁組だ。
「あたくしたち魔法部隊は、魔物がこの城壁に近づいてきたら一斉に魔法で攻撃しますわ。それでどれだけ数を減らしたり、魔物を混乱せられるかで、勝負が決まると言っても過言ではありませんの」
そう後輩たちに言い聞かせているのは、【青魔導師】であるエリザ。
実は最近Bランク冒険者に昇格したこともあって、この場のリーダーを任されている。
「(あのときみたいに、ルイスがいてくだされば心強いのに……こんなときに依頼で街にいらっしゃらないなんて……)」
2
あなたにおすすめの小説
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる