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第54話 二つに増えてた
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すっかり水位が少なくなった池は、代わりにサハギンの死体で埋め尽くされていた。
「ふう。依頼完了、と。……えっと、サハギンロードの背びれを持って、依頼主に報告しないといけないんだったっけ」
討伐を証明するために、特定の部位が必要なのだ。
ちなみにサハギンの素材はまったく価値がないので、持ち帰っても意味がない。
冒険者ギルドに依頼を出したのは周辺の村々だ。
ルイスは、その代表者だというとある村の村長の家を訪ねた。
「おおっ、依頼を達成してくれたのか! 確かに、これはサハギンロードの背びれに間違いない! サハギンどもはそれほど地上には上がっては来ぬのだが、それでも畑を荒らされるので、困っておったのだ!」
村長は大いに喜んでくれた。
今回のように依頼主に直接報告にいくパターンは初めてだったのだが、これはこれで悪くないなと思うルイスだった。
依頼完了を証明するサインをもらって、領都に帰ろうとすると、
「今からだと日が暮れてしまうだろう? 今日は村に泊っていくがよい。歓迎するぞ!」
「(せいぜい十分程度しかかからないのだが……まぁでも、せっかくの厚意だし、断るのも悪いな)」
そう考えて、この日は村に泊めてもらうことにしたのだった。
なお、念のため池の様子を見に行った村人が、慌てた様子で戻ってきたのは、翌日の朝のことだった。
「い、池がっ……池がっ……二つに増えてたあああああああああああああああっ!!」
ルイスがサハギンを掃討している頃。
領都は大混乱に陥っていた。
領都の北方に広がる魔境から、スタンピードを起こした魔物の大群が押し寄せてきているとの噂が、領都中を駆け巡ったのである。
それはただの噂ではなく、真実ではあったのだが、お陰で領都から逃げ出そうとする人々が城門に殺到するなど、大きなパニックになってしまったのだ。
「安心しろ! この街は強固な城壁に護られている! たとえここまで魔物が押し寄せてこようとも、街の中は安全だ!」
役人らしき男が城門の近くで呼びかけているが、一度こうした状況になってしまうと、もはや効果は薄い。
そして冒険者ギルドでも、冒険者たちに緊急招集が出されていた。
これは強制力のあるもので、基本的に拒否することはできない。
ギルド内で最も広い部屋に冒険者たちが集められ、サブギルドマスターのバルクが状況を説明していた。
「お前たちもすでに知っているとは思うが、この街が大ピンチだ! 樹海の魔物がスタンピードを起こしたらしく、大群がこの街に押し寄せてきている! その数はええと……とにかくたくさんだ! 領都に来るのは……たぶん、二、三時間後ぐらいだ!」
「「「いや情報が曖昧過ぎだろ」」」
専属秘書のミレアが、バルクを強引に押し退ける。
「私が代わりに説明させていただきますね。すでに我が冒険者ギルドでも確認済みで、魔物のスタンピードは間違いありません。また、この領都に向かってきていることも確かです。その数、推定でおよそ千体。今から90分後には先頭集団が辿り着くでしょう」
「「「千体っ!?」」」
冒険者たちが思わず叫んだ。
「はい。しかも魔境に棲息している魔物です。最低でも危険度C以上と考えた方がよいでしょう。もちろんより凶悪な魔物も交っているはずです」
危険度Cの魔物を安全に倒すには、Cランク冒険者四人が必要とされている。
すなわち千体の魔物がすべて危険度Cだとしても、四千人のCランク冒険者が必要になる計算だ。
「現在この冒険者ギルドを拠点に活動している冒険者は、おおよそ二百人といったところでしょうか。そのうちAランクが三人、Bランクが約三十人、Cランクが約百人、それ以下が約七十人です。仮にこの全員で千体の魔物を迎え撃ったとしても、戦力的にまったく足りません」
一方で、騎士団は精鋭ばかりのおよそ百人。ただし全員が領都の守護についているわけではないが。
冒険者基準で、最低でもCランクの上位からBランクの強さを持つと言われていて、人数こそ少ないものの、冒険者ギルドを上回る戦力を有している。
他に戦力としては商会の護衛団などもあるが、自分たちの安全を優先させる商人たちが、彼らを戦場に投入するとは思えない。
「いや、完全に詰んでるじゃん……」
「ふう。依頼完了、と。……えっと、サハギンロードの背びれを持って、依頼主に報告しないといけないんだったっけ」
討伐を証明するために、特定の部位が必要なのだ。
ちなみにサハギンの素材はまったく価値がないので、持ち帰っても意味がない。
冒険者ギルドに依頼を出したのは周辺の村々だ。
ルイスは、その代表者だというとある村の村長の家を訪ねた。
「おおっ、依頼を達成してくれたのか! 確かに、これはサハギンロードの背びれに間違いない! サハギンどもはそれほど地上には上がっては来ぬのだが、それでも畑を荒らされるので、困っておったのだ!」
村長は大いに喜んでくれた。
今回のように依頼主に直接報告にいくパターンは初めてだったのだが、これはこれで悪くないなと思うルイスだった。
依頼完了を証明するサインをもらって、領都に帰ろうとすると、
「今からだと日が暮れてしまうだろう? 今日は村に泊っていくがよい。歓迎するぞ!」
「(せいぜい十分程度しかかからないのだが……まぁでも、せっかくの厚意だし、断るのも悪いな)」
そう考えて、この日は村に泊めてもらうことにしたのだった。
なお、念のため池の様子を見に行った村人が、慌てた様子で戻ってきたのは、翌日の朝のことだった。
「い、池がっ……池がっ……二つに増えてたあああああああああああああああっ!!」
ルイスがサハギンを掃討している頃。
領都は大混乱に陥っていた。
領都の北方に広がる魔境から、スタンピードを起こした魔物の大群が押し寄せてきているとの噂が、領都中を駆け巡ったのである。
それはただの噂ではなく、真実ではあったのだが、お陰で領都から逃げ出そうとする人々が城門に殺到するなど、大きなパニックになってしまったのだ。
「安心しろ! この街は強固な城壁に護られている! たとえここまで魔物が押し寄せてこようとも、街の中は安全だ!」
役人らしき男が城門の近くで呼びかけているが、一度こうした状況になってしまうと、もはや効果は薄い。
そして冒険者ギルドでも、冒険者たちに緊急招集が出されていた。
これは強制力のあるもので、基本的に拒否することはできない。
ギルド内で最も広い部屋に冒険者たちが集められ、サブギルドマスターのバルクが状況を説明していた。
「お前たちもすでに知っているとは思うが、この街が大ピンチだ! 樹海の魔物がスタンピードを起こしたらしく、大群がこの街に押し寄せてきている! その数はええと……とにかくたくさんだ! 領都に来るのは……たぶん、二、三時間後ぐらいだ!」
「「「いや情報が曖昧過ぎだろ」」」
専属秘書のミレアが、バルクを強引に押し退ける。
「私が代わりに説明させていただきますね。すでに我が冒険者ギルドでも確認済みで、魔物のスタンピードは間違いありません。また、この領都に向かってきていることも確かです。その数、推定でおよそ千体。今から90分後には先頭集団が辿り着くでしょう」
「「「千体っ!?」」」
冒険者たちが思わず叫んだ。
「はい。しかも魔境に棲息している魔物です。最低でも危険度C以上と考えた方がよいでしょう。もちろんより凶悪な魔物も交っているはずです」
危険度Cの魔物を安全に倒すには、Cランク冒険者四人が必要とされている。
すなわち千体の魔物がすべて危険度Cだとしても、四千人のCランク冒険者が必要になる計算だ。
「現在この冒険者ギルドを拠点に活動している冒険者は、おおよそ二百人といったところでしょうか。そのうちAランクが三人、Bランクが約三十人、Cランクが約百人、それ以下が約七十人です。仮にこの全員で千体の魔物を迎え撃ったとしても、戦力的にまったく足りません」
一方で、騎士団は精鋭ばかりのおよそ百人。ただし全員が領都の守護についているわけではないが。
冒険者基準で、最低でもCランクの上位からBランクの強さを持つと言われていて、人数こそ少ないものの、冒険者ギルドを上回る戦力を有している。
他に戦力としては商会の護衛団などもあるが、自分たちの安全を優先させる商人たちが、彼らを戦場に投入するとは思えない。
「いや、完全に詰んでるじゃん……」
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