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第八話 スキルアップ

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 目指せ、最高難度のダンジョン!

 という目標を掲げた(他のダンジョンと比べることなんてできないだろなんていう突っ込みは却下)俺がまず取り組んだのは、徹底的なスキルの使用だった。
 スキルは使えば使うほど、+値が上がる。
 俺はそう予想したのだ。

 これまでももちろん、スキルは何度も使っていた。
 他にすることないもんな!
 だが使うと疲れるため、ちょっと制限していたのは事実。
 というか、かなり楽をしていた。
 せっかく前世の過労から逃れることができたのだからと、あんまり疲れることはしたくなかったのだ。

 だが俺は決意した以上、やる男だ。
 ダンジョンに性別なんてないけど。
 前世の仕事はやりたくてやってたわけじゃなかった。
 やりたくもないのにサービス残業とか意味不明だろ。
 だが今は違う。
 ダンジョンを成長させていく作業は、やっていてかなり楽しいのだ。
 モチベーションって大事だよね。

 というわけで、今覚えている〈迷宮拡張+2〉〈魔物生成+2〉〈武器生成+1〉〈食糧生成〉というスキルを俺は使いまくった。
 ただ〈魔物生成〉のスキルは、使用量に限界がある。
 魔物を生成すると、その維持にも魔力が必要だからだ。
 なので質を重視することにした。
 一匹一匹を、より強力な魔物が生まれるようにと強く念じながら生み出すのだ。
 すると驚くべきことに、ホブゴブリンほどではないが、明らかに以前よりも身体の大きな個体が生まれるようになったのだ。
 まぁそれでもゴブリンだけど。
 そんなことできるのかという想いもあったが、何事も試してみるものだ。
 それに強力な個体でも、維持するのに魔力の使用量がほとんど変わらないのも大きい。


『〈迷宮拡張+2〉が〈迷宮拡張+3〉になりました』

『〈魔物生成+2〉が〈魔物生成+3〉になりました』

『〈武器生成+1〉が〈武器生成+2〉になりました』

『〈食糧生成〉が〈食糧生成+1〉になりました』


 そんな日々を送っていると、予想通りスキルの段階が順調に上がっていった。
 よし、この調子でどんどん使っていこう。


 既存のスキルの強化と並行して、俺は新たなスキルの獲得に挑戦した。
 どうしたらスキルを覚えるのか?
 今まではレベルアップの際に勝手に与えられてきた。
 だがもし自分の意志で手に入れることができるとしたら?

 俺は様々なスキルを頭に思い浮かべては、それを試す努力をしてみることにした。
 スキル使用の基本はイメージである。
 完璧にイメージ通りに行くことはほとんどないのだが、それでも結果がイメージに左右されるのは間違いない。
〈食糧生成〉も、俺が林檎を思い浮かべたからこそ林檎のようなものが生成されたのだ。
 ならば新たなスキルも、イメージすることで獲得できるようになるのではないか?
 そう予測を立てたのである。
 ていうか、考えてみたら〈武器生成〉は武器のようなものがあればと願ったときに獲得したもんな。



『スキル〈罠作成〉を獲得しました』

 来た!
 ダンジョンと言えば、罠。
〈迷宮拡張〉を利用しての落とし穴は失敗したが、〈罠作成〉のスキルなら上手くいくだろう。
 早速、俺は最初の罠として落とし穴を作ってみることにした。
 まだ覚えたてのせいかちょっと苦労したが、なかなかの自信作ができあがった。
 ダンジョンを構成する土で穴の上を薄く覆い、穴があると分からなくしたのだ。
 これなら人間でも引っ掛かるかもしれない。
 そんな期待をしていたら、またゴブリンが落ちてしまった。
 お前……。
 作り直しである。



『スキル〈宝箱作成〉を獲得しました』

 いろいろ試していると、今度は〈宝箱作成〉のスキルを獲得できた。
 ダンジョンと言えば宝箱である。
 完全にあっちの世界でのゲーム知識だが、こっちでもそういう概念ってあるんだろうか?
 そもそもダンジョン側からしてみたら、完全に敵に塩を送る行為だよね、これって。
 それとも食虫植物みたいに、餌で獲物を釣るようなもんかな。
 それはそうと、中に入れるものなんてないぞ?
 とりあえずゴブリンでも入れておくか(適当)。



『スキル〈鑑定〉を獲得しました』

 さらに新しいスキルを手に入れる。
 俺の予想が正しければ、これで魔物のステータスを見られるようになるはず。
 まずは最初からいたゴブリンを見てみる。
 何となく、意識を集中させてみれば成功しそうな気がした。
 その通りだった。


ステータス
 種族:ゴブリン
 レベル:2
 腕力:8 体力:9 器用:10 敏捷:12 魔力:3 運:3


 おおっ、見えたぞ。
 俺のステータスと同じように、頭に文字が浮かんできたのだ。
 てか、やっぱりゴブリンで合ってたんだな。
 ちなみに他の個体も試してみたら、大半がレベル2で、たまに3が交じっていた。
 数値もちょっとずつ違う。やっぱり個体差があるようだ。
 ホブゴブリンにも試してみることに。


ステータス
 種族:アークゴブリン
 レベル:5
 腕力:16 体力:18 器用:12 敏捷:14 魔力:5 運:6


 俺は勝手にホブゴブリンと呼んでいたが、アークゴブリンと言うらしい。
 てか、あっさり手に入れてしまったが、この〈鑑定〉というスキル、かなり便利だ。
 ダンジョンに足を踏み入れた魔物や、人間の冒険者のステータスだって見ることができるはず。
 もっと早くに獲得しておけばよかった。



『スキル〈念話〉を獲得しました』

 さらにさらに、俺は新スキルを手に入れた。
 今までゴブリンたちには指示を出せなかったのだが、その問題がこれで解消された。
 おいこら喧嘩するな! 食糧は仲良く分け与えろ! という念を送ると、ゴブリンたちはハッとした顔で俺の命令に従ってくれるのである。
 まぁ、スキルのレベルが低いせいか、奴らの知能が低いせいか、まだ細かい意図は伝わらないようだが。
 それでも戦略的に魔物たちを動かせるようになったのは大きい。



 そんなこんなで、俺が試行錯誤を続けていたある日のことだった。
 突然、巨大な生き物がダンジョンの中に入って来た。

 トカゲのようなフォルムをしているが、大きさは比べ物にもならない。
 高さ三メートル、幅五メートルはあるダンジョンの穴がほとんど塞がってしまうほど。
 全身は硬質な鱗に覆われ、背中には翼が生えている。
 口腔に生え揃う牙は、もはや剣だ。

 そいつは紛うことなく、ドラゴンだった。


【後書き】
ステータス
 名前:ヤマモトタケル
 種族:ダンジョン
 レベル:3
 腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:15 運:10
 スキル:〈迷宮拡張+3〉〈魔物生成+3〉〈武器生成+2〉〈食糧生成+1〉〈罠作成〉〈宝箱作成〉〈鑑定〉〈念話〉

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