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1章 村編
第3話 森の聖地に行ってみた
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この世界には魔法が存在する。
ただ、あまり広く普及はしていないみたいだ。
お母さん曰く、魔法は魔法学校で学ぶほか、下級国民ひいては庶民が身に着ける方法はないらしい。しかし魔法学校の学費は高いし、何より毎年入学できる人数に限りはある。だから基本的に貴族の時期頭首だったり、上級国民でその入学する生徒が埋まり、庶民は魔法の初歩すら手に入れることはできないらしい。
また、この魔法学校を卒業した場合、貴族なら後継ぎを、上級貴族ならば魔導士として魔導士団に入るのが普通らしい。この魔導士団と、もう一つ騎士団は国が所有する二大戦力みたいだ。
そして法律の話をすると、二十歳未満に魔法を教えることは許されていない。
これは人間という種の一つの武器として魔法が存在する。それを安易に子供に教えることは危険を生む。だからこそ、自ら考えて行動する大人にしか許されていないみたいだ。
でもたまに。
私みたいに、学ぶことなく魔法が使える子供はごく僅かであるが存在するらしい。
そういった子供は天才児として魔導士団に半強制的に入れられることがあるらしい。特にこんな小さな村の子供ともなれば、抗う術はないらしい。
以上、今回の出来事で分かったこと。
正直に話すと。
へぇという感想以外思い浮かばない。
というか今更だけども相当軽率なことをした。
危なかった。
実に危ないことをした。
私が使った力は魔法ではない。
だからこの世界の魔法と比べると全然違う。もしも魔導士の前で使えば、それがばれてしまうかもしれない。魔法以外の何かを使う子供なんて、危険視するはずだ。
そう考えると、なるべく使わない方が良いね。
幸いにも村の中に魔法が使える大人はもちろん詳しい人もいなかったから、私の使った力を魔法と勘違いしている。
もしも魔法をこの目で見ることができたら、それを真似て使いたいと思う。
それに。
「今回は村の中で秘密にしてくれると思う。そうしてくれないと、国にあなたを連れて行かれるから。だから、今後一切、その力を見せてはいけないわ。分かった?」
「分かった。お母さん」
私はお母さんからそう忠告された。
流石にお母さんに迷惑や心配はかけれない。
なんて思っているとお母さんは驚いたように。
「前々から思っていたのだけれども、セレネは本当に賢い子ね」
「…………?」
まあ、中はお母さんの何百倍近く生きている女神ですし。
お母さんからするとものすごく不思議なことなのだろうけども、改めて言われると。
ちょっと恥ずかしいような嬉しいような。
「時折見せる無邪気な笑顔は年相応なのだけれども。受け答えがしっかりしているから。隣の奥さんの子。セレネと同い年だけども、小さな嘘ばっかり言うわ、言うこと聞かないわで苦労しているみたい。毎晩のようにオネショもするみたい」
まあ六歳ならそんなもんなのかな。
「もしかしたらセレネの両親は英才教育を子供のセレネにしていたのかしら。そんな家系なら血筋も相当なものでしょうし、魔法が使えたのかも」
「そうなのかな」
「きっとそうでしょう」
「例えそうだとしても、私にとってのお母さんはお母さんだけだし」
なんて言うとお母さんは嬉しそうに。
「良かった。嬉しいわ。出会いに恵まれなかったから、独身だったけども。こんな子供がずっと欲しかったの」
そう言って私を抱きしめて来る。
恥ずかしい!
「お母さん、離れて。恥ずかしい」
「あらあら」
お母さんはそんな羞恥心を見せる私に微笑みを浮かべた。
そんな出来事から気づけば四か月が経ち、私はこの世界にきて半年近く経ったことになる。
冬の影響でか野犬はさらに南下し、野犬騒動は気づいたらなくなっていた。そして冬を超え少しずつ暖かくなりだした。冬を超えたら野犬は再び北上するみたいだけども、今回はそのルートを外れたらしい。
何だろう。
野犬は渡り鳥か何かなのだろうか。
この世界の生態系など知っているはずもないからそんなことしか思い浮かばない。
ただまあ、遊び場である森が解放されたのは私にとって何よりもうれしいことだった。
そしてそれ以上のことも。
ふっふっふ。
ついに私に下部ができたのだ。
私自身、役に立たない無能だということは理解している。
だから私には下部が必要なのだ。
そうアヤメみたいな、まあアヤメは全然下部らしくなかったけども。分かりましたのみを言う下位の天使と全然違ったけども。
まあ私は下部を求めていた。
そんな中現れた下部の逸材。
ノア君六歳。
毎晩のようにオネショをする隣の奥さんの子。年相応な可愛い子である。
「ノア。次はあっちに行くよ」
「待ってよ~」
私の言うことを聞いてくれるノア君を引き連れて、私は遊びに出かける。
見た目は年相応、実際は年不相応。
でも楽しいのだから仕方がない。
というよりも、アヤメ以上に構ってくれるノア君が何よりうれしかった。
そして、家事の手伝いがなくなれば、子供の仕事はあとは遊ぶことなのだから。
「セレネ、今日はどこまで行くの?」
「今日はもう少し森の奥まで行こうかな、と」
「分かった」
私の提案にノア君が頷く。
すると名前の知らない顔見知りおばあちゃんがそんな私たちの会話を聞いていたのか。
「森の奥、聖地まで行くのはだめじゃよ。危険じゃからな。人食いモンスターに食べられてしまうぞ」
「はーい。行こ、ノア」
そんな忠告は頭の隅に追いやり。
私はノアの手を引っ張り森の中へと入った。
村に近い森は人の手が加わっているが、それよりも奥になると自然のままである。そんな自然のまま、少しぐらいなら行くことはお母さんから許されている。
一つのルールのもと。
そう森には入ってはいけない場所がある。
それが俗にいる聖地にあたる。
看板と縄で囲まれた広範囲の聖地は、大人でもむやみに入らないらしい。
何故村の大人たちがその場所を聖地と呼ぶかは分からないけども、言葉からして相当大切な場所なのだろう。
そして仮にも聖地なら、危険な場所なんてあるはずがない。
危険とか人食いモンスターがいるとか言っているけども、子供が興味本位に近づかないようにするために違いない。
子供は騙せても私は騙せないぞ。
「というわけで、ノア。聖地に行ってみよう」
「ええ!」
そんな提案をする私の言葉にノア君は大声を荒げる。
「ダメだよ。危険だよ。人食いのモンスターがいるらしいよ」
「大丈夫。嘘に違いないから」
「どうしてそう言い切れるの?」
「本当にそんなのがいるなら、聖地なんて言葉使わないもの」
「…………?」
ノア君は私の言いたいことを理解してくれない。というよりも聖地という言葉がいまいち理解していないのだろう。
年の差をここで感じてしまう。
もう少しノア君が賢ければ良いのだけれども。
まあ、そうなったら、アヤメみたいに私の言うことなんて聞かないだろうけどね。
今ノア君が下部にできているのは、ノア君がまだ子供だからなのだけどね。
「でも、ダメだよ」
「良いから。良いから。いざというときは私が守ってあげるから。ほら行くよ」
私はノア君の手を再び掴み、引っ張る。
一時間歩いた先、聖地の領域を現す看板を超えた先にたどり着いた私はがっかりした。
あるのは祠だけ。
まあ、私が知る祠なのかは知らない。何かの神を奉っているのかも知らない。そう言った話はお母さんから聞いていないから。でも私の知る祠に似たそれを私は祠と言いたいと思う。
祠は小さな小屋みたいな形をしている。村の建物と違い石造り。装飾などはなく、正面に入口があるだけの質素な作りである。
予想は出来ていたけども、聖地と呼ばれるならもっと神秘的な場所を想像していた。
「しょうもなかったね」
私は私の背丈ぐらいの小さな祠に触れながら、呟く。
祠なのだから、中に何かを保管しているのだろうか。
私は最初にそんなことを思いつく。
なんだろう。そこらの石に神様の意思が詰まっているとか言って置いているとか、これは神様の腕だとか言って変な動物の腕を置いているのかもしれない。
もしくは定期的に神様に捧げる物を入れていたりするのかもしれない。
「ねぇ、早く帰ろう」
「どうして?」
「なんだか、ここ怖い」
「そう?」
祠があるだけで、他は森の何時もの遊び場と何ら変わらない。
ノア君は何を感じ取ったのだろうか。
人間が持つ直感というものなのだろうか。
私には分からない。
「ねぇ、ノア」
「なあに?」
「この祠の中って何があるのかな」
その質問にノア君は首を傾げる。
ノア君は怖いといったけども、私からするとこの先が気になりだした。
流石に祠の中まで見るのは罰当たりな気もしなくもないが、私は女神だ。
女神だったら良いと思うんだ。
ダメかな?
「ダメだよ」
ノア君が必死な表情でダメだと言い張る。
残念だったね、ノア君。私は聞き分けのない悪い子なのだよ。お母さんの前以外では。
「というわけでオープン」
私は祠の小さな扉を開けた。
それが一つの過ちになるとは知らずに。
ただ、あまり広く普及はしていないみたいだ。
お母さん曰く、魔法は魔法学校で学ぶほか、下級国民ひいては庶民が身に着ける方法はないらしい。しかし魔法学校の学費は高いし、何より毎年入学できる人数に限りはある。だから基本的に貴族の時期頭首だったり、上級国民でその入学する生徒が埋まり、庶民は魔法の初歩すら手に入れることはできないらしい。
また、この魔法学校を卒業した場合、貴族なら後継ぎを、上級貴族ならば魔導士として魔導士団に入るのが普通らしい。この魔導士団と、もう一つ騎士団は国が所有する二大戦力みたいだ。
そして法律の話をすると、二十歳未満に魔法を教えることは許されていない。
これは人間という種の一つの武器として魔法が存在する。それを安易に子供に教えることは危険を生む。だからこそ、自ら考えて行動する大人にしか許されていないみたいだ。
でもたまに。
私みたいに、学ぶことなく魔法が使える子供はごく僅かであるが存在するらしい。
そういった子供は天才児として魔導士団に半強制的に入れられることがあるらしい。特にこんな小さな村の子供ともなれば、抗う術はないらしい。
以上、今回の出来事で分かったこと。
正直に話すと。
へぇという感想以外思い浮かばない。
というか今更だけども相当軽率なことをした。
危なかった。
実に危ないことをした。
私が使った力は魔法ではない。
だからこの世界の魔法と比べると全然違う。もしも魔導士の前で使えば、それがばれてしまうかもしれない。魔法以外の何かを使う子供なんて、危険視するはずだ。
そう考えると、なるべく使わない方が良いね。
幸いにも村の中に魔法が使える大人はもちろん詳しい人もいなかったから、私の使った力を魔法と勘違いしている。
もしも魔法をこの目で見ることができたら、それを真似て使いたいと思う。
それに。
「今回は村の中で秘密にしてくれると思う。そうしてくれないと、国にあなたを連れて行かれるから。だから、今後一切、その力を見せてはいけないわ。分かった?」
「分かった。お母さん」
私はお母さんからそう忠告された。
流石にお母さんに迷惑や心配はかけれない。
なんて思っているとお母さんは驚いたように。
「前々から思っていたのだけれども、セレネは本当に賢い子ね」
「…………?」
まあ、中はお母さんの何百倍近く生きている女神ですし。
お母さんからするとものすごく不思議なことなのだろうけども、改めて言われると。
ちょっと恥ずかしいような嬉しいような。
「時折見せる無邪気な笑顔は年相応なのだけれども。受け答えがしっかりしているから。隣の奥さんの子。セレネと同い年だけども、小さな嘘ばっかり言うわ、言うこと聞かないわで苦労しているみたい。毎晩のようにオネショもするみたい」
まあ六歳ならそんなもんなのかな。
「もしかしたらセレネの両親は英才教育を子供のセレネにしていたのかしら。そんな家系なら血筋も相当なものでしょうし、魔法が使えたのかも」
「そうなのかな」
「きっとそうでしょう」
「例えそうだとしても、私にとってのお母さんはお母さんだけだし」
なんて言うとお母さんは嬉しそうに。
「良かった。嬉しいわ。出会いに恵まれなかったから、独身だったけども。こんな子供がずっと欲しかったの」
そう言って私を抱きしめて来る。
恥ずかしい!
「お母さん、離れて。恥ずかしい」
「あらあら」
お母さんはそんな羞恥心を見せる私に微笑みを浮かべた。
そんな出来事から気づけば四か月が経ち、私はこの世界にきて半年近く経ったことになる。
冬の影響でか野犬はさらに南下し、野犬騒動は気づいたらなくなっていた。そして冬を超え少しずつ暖かくなりだした。冬を超えたら野犬は再び北上するみたいだけども、今回はそのルートを外れたらしい。
何だろう。
野犬は渡り鳥か何かなのだろうか。
この世界の生態系など知っているはずもないからそんなことしか思い浮かばない。
ただまあ、遊び場である森が解放されたのは私にとって何よりもうれしいことだった。
そしてそれ以上のことも。
ふっふっふ。
ついに私に下部ができたのだ。
私自身、役に立たない無能だということは理解している。
だから私には下部が必要なのだ。
そうアヤメみたいな、まあアヤメは全然下部らしくなかったけども。分かりましたのみを言う下位の天使と全然違ったけども。
まあ私は下部を求めていた。
そんな中現れた下部の逸材。
ノア君六歳。
毎晩のようにオネショをする隣の奥さんの子。年相応な可愛い子である。
「ノア。次はあっちに行くよ」
「待ってよ~」
私の言うことを聞いてくれるノア君を引き連れて、私は遊びに出かける。
見た目は年相応、実際は年不相応。
でも楽しいのだから仕方がない。
というよりも、アヤメ以上に構ってくれるノア君が何よりうれしかった。
そして、家事の手伝いがなくなれば、子供の仕事はあとは遊ぶことなのだから。
「セレネ、今日はどこまで行くの?」
「今日はもう少し森の奥まで行こうかな、と」
「分かった」
私の提案にノア君が頷く。
すると名前の知らない顔見知りおばあちゃんがそんな私たちの会話を聞いていたのか。
「森の奥、聖地まで行くのはだめじゃよ。危険じゃからな。人食いモンスターに食べられてしまうぞ」
「はーい。行こ、ノア」
そんな忠告は頭の隅に追いやり。
私はノアの手を引っ張り森の中へと入った。
村に近い森は人の手が加わっているが、それよりも奥になると自然のままである。そんな自然のまま、少しぐらいなら行くことはお母さんから許されている。
一つのルールのもと。
そう森には入ってはいけない場所がある。
それが俗にいる聖地にあたる。
看板と縄で囲まれた広範囲の聖地は、大人でもむやみに入らないらしい。
何故村の大人たちがその場所を聖地と呼ぶかは分からないけども、言葉からして相当大切な場所なのだろう。
そして仮にも聖地なら、危険な場所なんてあるはずがない。
危険とか人食いモンスターがいるとか言っているけども、子供が興味本位に近づかないようにするために違いない。
子供は騙せても私は騙せないぞ。
「というわけで、ノア。聖地に行ってみよう」
「ええ!」
そんな提案をする私の言葉にノア君は大声を荒げる。
「ダメだよ。危険だよ。人食いのモンスターがいるらしいよ」
「大丈夫。嘘に違いないから」
「どうしてそう言い切れるの?」
「本当にそんなのがいるなら、聖地なんて言葉使わないもの」
「…………?」
ノア君は私の言いたいことを理解してくれない。というよりも聖地という言葉がいまいち理解していないのだろう。
年の差をここで感じてしまう。
もう少しノア君が賢ければ良いのだけれども。
まあ、そうなったら、アヤメみたいに私の言うことなんて聞かないだろうけどね。
今ノア君が下部にできているのは、ノア君がまだ子供だからなのだけどね。
「でも、ダメだよ」
「良いから。良いから。いざというときは私が守ってあげるから。ほら行くよ」
私はノア君の手を再び掴み、引っ張る。
一時間歩いた先、聖地の領域を現す看板を超えた先にたどり着いた私はがっかりした。
あるのは祠だけ。
まあ、私が知る祠なのかは知らない。何かの神を奉っているのかも知らない。そう言った話はお母さんから聞いていないから。でも私の知る祠に似たそれを私は祠と言いたいと思う。
祠は小さな小屋みたいな形をしている。村の建物と違い石造り。装飾などはなく、正面に入口があるだけの質素な作りである。
予想は出来ていたけども、聖地と呼ばれるならもっと神秘的な場所を想像していた。
「しょうもなかったね」
私は私の背丈ぐらいの小さな祠に触れながら、呟く。
祠なのだから、中に何かを保管しているのだろうか。
私は最初にそんなことを思いつく。
なんだろう。そこらの石に神様の意思が詰まっているとか言って置いているとか、これは神様の腕だとか言って変な動物の腕を置いているのかもしれない。
もしくは定期的に神様に捧げる物を入れていたりするのかもしれない。
「ねぇ、早く帰ろう」
「どうして?」
「なんだか、ここ怖い」
「そう?」
祠があるだけで、他は森の何時もの遊び場と何ら変わらない。
ノア君は何を感じ取ったのだろうか。
人間が持つ直感というものなのだろうか。
私には分からない。
「ねぇ、ノア」
「なあに?」
「この祠の中って何があるのかな」
その質問にノア君は首を傾げる。
ノア君は怖いといったけども、私からするとこの先が気になりだした。
流石に祠の中まで見るのは罰当たりな気もしなくもないが、私は女神だ。
女神だったら良いと思うんだ。
ダメかな?
「ダメだよ」
ノア君が必死な表情でダメだと言い張る。
残念だったね、ノア君。私は聞き分けのない悪い子なのだよ。お母さんの前以外では。
「というわけでオープン」
私は祠の小さな扉を開けた。
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