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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

8 仕入れで爆買い 誰とはいいませんが…

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「おはようございます」
「ん…」
「おはよう」
「詠斗さん達は朝食を食べて孤児院の方へ行ってますよ。率さんが向こうで待っていますから」
「ん…」
「今日の朝飯は胃に良さそうだな」
「今日はバルタルさんが用意してくれました。野菜たっぷりミルクスープと果物たっぷりのサラダと腸詰と芋の煮物です」
「美味いな。色どりも良い」
起きて車から出た大河とチグリスが朝食にありつく、スープの野菜は柔らかく煮物も美味しいサラダはマヨネーズに果物を摺り下ろしバルタルがアレンジした物だった。
「カタンとベルンさんも行ってますから」
「大丈夫か?」
「父様や長様達から絶対離れないようにという条件で行ってます…カタンにも困ったものです。ベルンさんと一緒がいいと大泣きして…」
「どこかの誰かと同じ…」
「チグリス?今何か?」
「おかわり…」
殻になった木の椀をナイルに渡す、ミルクスープを注ぎチグリスに渡し、大河はこういう時は何も言わない方が良いと腸詰を噛み飲み込んだ。
「美味かった」
「ん…」
「今日は卵を調べた後はドーナツを作りますから取りに来てくださいね」
「いつも助かるナイル」
「はい、いってらっしゃい」

「では、行きましょう!チグリスさん!」
「ん…」
孤児院でチグリスと合流し転移魔法で《クイナト》の商業ギルドっを訪れた率とチグリス、早速ユナイドに迎えられ案内された倉庫でツンドーラの買い取りを行う。
「状態もいいですね、葉も綺麗です。1本100,000ログ。20本で2,000,000ログで如何ですか?」
「はい!ありがとうございます!」
「是非、《トタラナ》にもお売り下さい。ツンドーラは中々入手が面倒な物ですので」
「分かりました、これ僕からです。チーズとモギのミルクと果物と…後は…ラージュさんにもよければ…」
「これはこれは…承知しました。必ず陛下にも届けましょう…《コウトル》の件は後ほど情報を大河さんのラインに送っておきますので」
「お願いします!」
2,000,000ログ半分を口座に一部をショルダーバッグに、残りは収納に入れてユナイドと別れ、《クイナト》の市場を散策と買い物に回っていく。
「率…肉」
「あ、美味しそう!すみません10本…20本下さい!」
「はいよ!おじょ…兄さんかい1本オマケな!商人かい?がんばりな」
「ありがとうございます」
1本ずつ食べ、肉の煮込みの屋台も見つけ食べ、パン屋も見つけ買い込み、香辛料屋で全種類を瓶で買い、お茶屋ではおススメのオリジナルブレンドの茶葉を大量に買い込み、小麦粉や砂糖の露店も見つけ買い込み…全てオマケを付けて貰ってまだまだ率の買い込みは続くが…。
布屋街で掛け布と敷き布を様々な露店で買い占めない程度に買い込み、服なども子供用の物も複数買い込んでいった。
「チグリスさん、チーズ買いにいきません?」
「…行く」
とういうわけで、《ヤナシャ》に向かう事にした…すでに本日《クイナト》の買い物で1,000,000ログ超えております…。

「土地は用意した、家丸ごと皆を運ぶことも出来る。仕事も用意出来る。どうだろうか?」
「先生!大河さん達は信頼出来る方達です!仕事を失った俺に良くしてくれました!先生、俺は皆を…」
「カイネ…分かりました。このご恩はいつ返せるかわかりませんが…お世話に…ですがこの孤児院は《コウトル》の領主様から補助を受けて運営しています…」
「僅かな…だろう?」
「はい…」
「そこは気にしなくて構わない。今日中には移動したい、そのつもりでいてほしい」
「あ、あの、こんなお願い本当はする立場ではないのですが…」
「何でも言って下さい、力になります」
院長の老いた手に綴が手を乗せる、涙が自然と零れ肩が震えた。
「実は最近、親が亡くなり2人で暮らしていた兄弟の行方が分からなくなっているんです…ここはもうこれ以上子供も受け入れられず、食事などの支援はしていたのですが…姿を見かけず…連れて行けるならば…こんな厚かましいお願いですが…どうか」
か細い身体…熱もまだ引いてはいない状態で他者を思いやる気持ちに、周囲は胸を締め付けられた。
「うむ、必ずその兄弟もご婦人の元へ連れてこよう!まずは休む事だ」
「そうですね、まず先生がしっかり元気にならなければ、子供達も不安でしょう」
「は、はい」
「その子供達の名前と特徴は?」
「は、はい、兄はトラス弟はトテスと言います。兄弟は暗めの茶色の髪と緑の瞳、弟のトテスは生まれつき足が少し悪く速く走れません」
子供達の相手をしていたアルケールやナイデルが力強く院長を励ます、大河は即座に千眼にラインを行う、嫌な予感がしるがおそらく当たってしまうだろう…。

「このチーズを下さい、後あちらのも…。お酒もいいですね!買います」
引き続き《ヤナシャ》で買い物中の綴、店を周りチーズの味比べや雑貨の購入を行い、ベルンが家を借りてい大家の家の付近までいくと何やら揉めているようだった。
「おい、なんだこのミルクは不味いぞ!」
「いつものミルクはどうした?」
「しかも値上げだなんて!」
「ち、ちが…」
「こんなミルクじゃもうアンタの所から買わん!」
「ま、待ってくれ!」
率はその光景を見てベルンに土地家屋を貸していた大家さんもモギのミルクを売っていたのかーモギはデリケートな生き物で、少しのストレスでも味が劣化するといわれているから大変だなー位にしか思わず、まだまだチーズを買い漁っていった。

「こんな筈では…」
大家は頭を抱えた、ベルンから安くモギのミルクを買い飲食店や加工して売る店に高い値段で売り付けていたのだ。
あたかも自分のモギのミルクかのように、それで尚まだ子供であるベルンから家賃までむしり取ろうとしたのだ、ベルンが出ていき誰も住んでいない土地を持て余し、顧客かはそっぽを向かれた大家のミルク…それも、これもベルンがいなくなったからだと呪詛を吐く。
その後大家が心を入れ換え真っ当に商売をするのか、それとも呪詛を撒き散らし続けるのかは誰も分からない…。
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