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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

Stage.6-4 夜

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Stage.6-4 夜
「間も無く夜が来る」
「なら、イシュター何処かで降りてくれ。飯にしよう」
『私の背で食べていろ、時間はない』
「ダーメ、ほら休憩だ」
「そーそージラちゃんがこのパーティーのリーダーだからねーリーダーの言うことは絶対」
「いつの間に…」
「そういう事だ《黄昏の瞳・紫眼》というパーティーだと千歳が決めていたな」
「いつの間に…抜け目ないなあ。そこの丘に降りてくれ」
『分った…』
ジラが指差しイシュターがゆっくりと下降して行く、陽がゆっくりと暮れて行く…。

「すごい早いな!」
「崇幸さんこんな物迄…」
「ヘリ?早いわ、じゃ晩飯」
「今夜はステーキ丼!サラダとスープ沢山食って」
「おいしそう…」
「うまそ!」
『いただきまーす』
銀色に輝くヘリが高速で羽を旋回させながらも静かに夜空を進む、その景色を眺めながら夕食の支度をして外観よりも広い空間でテーブルの上に夕食を並べ食べていく。
「ゆき…食べるといい…」
『崇幸さま、運転はこちらで行います』
【明日の夜明け前には着きますから休んで下さい】
「そうだな、じゃ頼むな。風早、ナビ」
運転席にいた崇幸が運転を風早達に任せ食卓に加わる、外観だけはヘリコプターだが中は広い家のような物だ、魔法は便利だよなと思う。
「肉柔らかいなー本当懐記が料理美味いよな、俺も外神に教えて貰ってやるようになったけど大雑把だもんな」
「やってれば出来るようになんだわ、作るのは好きだし」
「懐記達…料理上手…父さんも」
「グリっちも上手くなったわ」
ステーキ丼をお代わりしなからギーギスが懐記の料理を褒め、イザラが少しグローリーの料理を恋しがる。
「早く晴海迎えに行って転移出来るようにして、帰ろう」
「そうか…転移か…こっちも中継地点が必要だな」
『皆さん、中継地点の候補地を此方で幾つかピックアップしました。《ガーデン王国》から《ガルディア》まで3カ所が妥当かと」
「ありがとうございます風早、晴海君達と合流出来たら中継地点を絞りましょう」
「そうだな」
「まあ、合流は千歳っち達との合流は大分先かも」
「少し寂しいけど、全員揃ったら大きなパーティしよう!」
《ガーデン王国》を商業エリアに招くのならば中継地点が必要となる、外神、晴海と空と合流した後で中継地点を用意しなければならないし、戦争もまだ不透明過ぎる、そんな中明日を迎える事になるが…不安は薄い、仲間がいるからだ…。

「うまい」
「ああ…産まれて始めてこんないいもの食った」
「さとう…塩…香辛料も…」
「肉も…パンだって柔らかい…」
バスのテントの中傭兵達が外神と晴海、ホスィソ達と子供達が用意した食事を食べて中には涙ぐむ者もいた。
「沢山ありますから…」
「ああ、すまんな」
「こんな柔らかいパン…」
「本当に美味い…」
出されたのは肉のソテー、野菜と芋のスープ、パン、果物…いつも外神や晴海が食べている物より質素だが彼らにはご馳走だ、まだ起き上がる事が出来ない者達にはパン粥と果物を食べさせた。
「んーやっぱり明日の朝か夜明け前だな」
チェカがテントの中に入り食事をしながら速度を上げて、予定が数時間早まった。
この後《芥の風》は城に着き次第バスの中で子供達と待機して貰い、ホスィソ達は装備の手入れを行い到着次第城内へ向かう事になっている、何が起きてもバスの中が最も安全だと外神の考えだ。
「それでも早い、感謝する」
「戦が始まれば《ガーデン王国》は守りに入る他ないから」
「民を城へ避難させて…」
「落ち着かないと思うがこういう時こそ体を休めとけ、守るだけなら魔法具もあるからな」
「何から何まで…返せる物は無いが…」
『ぴぎゃ』
「大丈夫です、強力な助っ人が来ます。何が起きても《ガーデン王国》は落ちません」
「心強い限りだな」
ホスィソ達が頷く、本当に外神と合流する仲間達ならば国を守れるかもしれないと、だが早く駆け付けたいという気持ちもあるが焦りは良くない結果を招くとホスィソも分かっていた。

「………」
「フォンー機嫌なおせよー」
「今日はお好み焼きだったんだよ」
「あーそれは食いたいなー」
「それはまたの楽しみして、皆がくれた物を食べるとしよう」
夜の丘でシートを敷きランプを点け舵達から貰った食事を並べるが、フォンがぶすとしているので兄のフェシェスタが宥めれば、今夜はお好み焼きパーティだったと拗ねている、ジラがそれは食べたいなと同情しマユラが笑って飲み物を注いだ。
「舵ちゃんがいれてくれた物……フォン…さすがは舵ちゃんだ。ほら」
「……ん」
フェシェスタが葉に包まれた物を開ければ温かいお好み焼きが出て来る、先に作って入れてくれたのだろう全員分のお好み焼きがあった。
「流石だなー舵は」
「始めてみるな」
「うちじゃ大人数だからよくやる、たこ焼きとか…マヨネーズは?」
「お、あるある」
「ん…」
フォンがマヨネーズを受け取り早速箸で食べ始める、舵はたこ焼きやお好み焼きを焼くのが上手だ、崇幸仕込みらしいベルン達も好きでよくやる、イシュターも首を傾げるがジラにマヨネーズを掛けて貰い食べ始める。
「美味い…」
「これは初めて食べるが美味いな」
「これは是非作り方を知りたい」
イシュター、マユラ、シュリが頷き他にもおにぎりや玉子焼き、ハンバーグや肉串、魚のフライ、肉巻き野菜等があり夕食を楽しんだ。
「ジラ殿は相当な手練れかと、今度是非手合わせを…フォン殿も」
「ジラで良いけど、手合わせねー」
「まあ俺はいいけど、フォンでいい」
「シュリちゃん強いよーフォン負けちゃうんじゃない」
「クソ兄貴が」
「強いのはそっちの美人な鬼人のおにーさんじゃない?」
「私は剣鬼を降りたからな…手合わせ程度ならするが、酒の方が楽しいな」
「それは言えてる、落ち着いたら酒呑もう」
「ああ」
手短に食事を済ませ茶を飲み軽く会話を交わす、シュリがジラとフォンに手合わせをと言えばフェシェスタがからかうよい、フォンが毒づいた。
ジラが魚を楽しむマユラに言えば酒が良いと微笑む、違いないなと今度酒の席をと誘った。
「明日の朝には到着する…」
「魔人の傭兵か…」
「強者の予感がしますね」
「やり合わずに済めば良いんだけどー」
「おいおい、傭兵王ジラともあろう戦喰らいが随分腰が引けてんじゃん」
「んー晴海が待っているしな、崇幸や綴だって嫌だろう。回避できるなら回避しときたい所だな」
「よく言う、戦場じゃ敗けなしの英雄」
「最後まで立っていた者の勝ちだろ、それだけ」
ジラとフォンの掛け合い、ジラとフォンは笑いイシュターが立ち上がる。
「戦が始まる前に向かおう、魔人は本来危うげな生物…お前たちの周りにいる魔人が温厚なだけなのが明日分かるだろう」
「確かにそれはあるな、ギーギスやストフス達を見ていればな」
「シヴァやジラド達もそう言ってましたね」
片づけを行いイシュターが再びドラゴンの型に戻り、皆乗り込み夜空を再び飛行した…。

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