神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第7章 弟子と神器回収

修行道中

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「準備はいいか?これから行くのは雪山だからな」

修行が一段落した2人は、いよいよ依頼の為にコーチンを旅立つ。
この旅は一月はかかる可能性のある依頼だ。修行で既に2週間拘束された陸は更に一月ギルドを離れることになる。流石にギルドマスターの香織も許容できなかったようで色々と文句を言ってきたが、〈妖精の羽〉ギルドマスターのフィリスからの指名依頼であり、陸も同伴する事を許可されていると知ると渋々引き下がった。

「何度か依頼で雪山に行った事があるから大丈夫だ。コーチンの気候は暖かいが周りは雪山が多いからな。流石にシュレイ山はねぇけどな」
「そういやシュレイ山ってどんな所なんだ?目的地である事しか知らねえわ」
「おいおい咲良、依頼はしっかり確認しとけよ。シュレイ山は年中雪が降り積もる山だ。フェンリルがシュレイ山に住み着いてから銀狼シルバーウルフ鉑狼プラチナウルフの数が増えて準立入禁止区域に指定された」

銀狼シルバーウルフはB級下位、鉑狼プラチナウルフはA級の上位に位置しており、単体でも脅威になるが群れで行動するため冒険者に恐れられている魔物だ。

「準立入禁止区域?完全に禁止しないのか?」

各地の強い魔物が出たり環境な厳しい所は立入禁止区域に指定される事がある。準立入禁止区域は許可が下りたものは入る事ができる。世界的にも有名な立入禁止区域は咲良のいた世界樹の森だ。

「フェンリルはシュレイ山の奥地にいるらしいからな。そこまで踏み入らなければ大丈夫なんだよ」
「ならフェンリルを討伐する必要なくないか?」

咲良は魔物を殺すことに抵抗はないが、全く害の無い魔物を態々殺そうとは思わない。

「はぁ…ほんとに依頼内容に目を通さなかったな。フェンリルの元に銀狼シルバーウルフ鉑狼プラチナウルフがどんどん集まって周りの地域に被害を出してる。つまりフェンリルを討伐しなければ更に数が増えてしまうし生態系も変わってしまう」
「なるほどね…それなら仕方ないのかもな。なら道中かなりの数の魔物と鉢合わせる事になるだろうな」
「咲良、俺も頑張るが頼んだぞ」

2人はコーチンを後にし、シュレイ山に向けて歩き出す。
シュレイ山までは最低でも片道1週間はかかる。比較的暖かい気候の時期なら3日ほどで着くが、冬はシュレイ山に近づくほど降雪量が増えるので必然的に進むスピードは遅くなってしまうのだ。
しかし、咲良たちにとっては好都合だった。なぜなら増えた時間を陸の修行に当てることができるからだ。魔力操作などは歩きながらでも出来る。むしろ歩きながら操作できないようでは話にならない。




「陸!あと一匹だ!援護してやるから任せるぞ!」
「おう!」

今咲良と陸はシュレイ山の麓にまでたどり着いていた。
そして前には鈍く輝く毛を持った狼、銀狼シルバーウルフがおり、周りには既に屍となった個体が数十体転がってた。

「頼むぜゲイボルグ!」

陸はゲイボルグに魔力を込め、周りに3本分裂させる。

「いけ!」

手元にあるゲイボルグを振るうと3本の槍は銀狼シルバーウルフに向かって一直線に飛んで行く。

先日の鍛錬でわかったことだが、分裂数は5本が限界の陸だが3本の方が圧倒的に操作がしやすかった。また、5本分の魔力量を込めて3本だけ分裂させる事も出来るようになった。この場合1本の強度がかなり高くなる。



ドスッ!ドスッ!

3本中2本の槍が命中したが銀狼シルバーウルフはゲイボルグが刺さったまま跳躍し陸に襲い掛かる。
その予想外の行動に驚き、陸の身体は硬直してしまい避ける事ができない。しかし、いつの間にか銀狼シルバーウルフと同じ高さまでジャンプしていた咲良は刺さったままのゲイボルグを握り、そのまま雪が降り積もった地面へと投げつけた。

「油断するな!」
「すまん!」
「奴はまだ死んじゃいない!今度はしっかり頼むぞ!」

咲良の声と同時に銀狼シルバーウルフがムクッと起き上がる。
ゲイボルグが刺さったダメージより咲良に叩きつけられたダメージの方が大きいようで動きが少し鈍い。

「はぁ!」

陸はゲイボルグ本体を投擲する。

ザクッ!

銀狼シルバーウルフは紙一重で避け、得物を失った陸に隙ありと飛び掛かる。

ドスッ!

しかし、飛び掛かった銀狼シルバーウルフの身体にゲイボルグが深々と突き刺さり、陸の足元に力なく倒れた。
その身体に刺さっているのは先程避けられた本体のゲイボルグ。分裂させた槍と違い、本体の硬さは流桜作なので一級品。また手元に戻る速さも他より2倍速い。
陸はわざと避けられるように投擲し、手元に戻るよう操作して後ろから突き刺したのだ。

「ふぅ…なんとか勝てた…」

陸は死体からゲイボルグを抜きながら安堵の表情を浮かべる。

「良い機転だったがゲイボルグに頼りすぎだな」
「分かってるさ、俺は殆ど動いてねーからな」
「次はゲイボルグの能力無しでやってみろ。援護はしてやるから」
「いや俺C級だぞ。無理だろ」
「陸は既にC級の域を超えてるよ。それに忘れてないか?魔力操作で身体の内側に魔力を満たせば身体能力はあがるんだぞ?」
「あっ!そうか!やってみる」

その後、咲良の指示で常に魔力で身体能力を上げながらシュレイ山を登った。
魔力は使えば使うほど増えるし操作もしやすくなる。だが常に身体能力を上げていたので陸の魔力はすぐに底をつく。

「やべっ!もう魔力が…」
「心配ない」

咲良は陸の背中に手を当てると陸の魔力がすごい速さで回復した。

「魔力が……なにをしたんだ?」
「魔力変換ってとこだな」
「なんだそりゃ?」
「魔力は人それぞれ波長が違うようでな。俺は自分の魔力の波長を陸の波長に合わせたんだ。そうすれば魔力を譲渡できる」
「そんなこと出来るのか!?」

もしそんな事が可能ならば、魔法を使う者にとっては目から鱗である。

「最近出来るようになった」
「は?」

初めからできると思っていた陸は咲良の回答に少し驚く。

「陸に魔蔵の位置を教えるために俺が魔力を送ったろ?その時に魔力は人それぞれ波長が違うことに気付いた」
「よくわからん」
「陸がかなりの痛みを感じたのは波長が違う魔力が体内に大量に入れば毒でしかないからだ。なら波長を変えればどうなるかってことでやってみた」
「咲良の考えがもし間違いだったら俺はまたあの時の痛みを味わってたのか…」
「魔力が回復したんだから良かったじゃないか」
「ま、そうだな。それにしてもその魔力変換ってすごいな。その技を他の冒険者にも教えれば」
「無理だな」

咲良は陸の考えをキッパリと否定する。

「なんでだ?」

「魔力の波長を変えるのは簡単じゃない」
「でもさっき咲良簡単にやってたろ?」
「もう忘れたのか?魔力を体外で操作できる奴は殆どいないんだぞ?陸も苦労してる最中だろ。それに、もしできる奴がいるとすれば俺と同じ魔氣を極めし者の称号を持った奴だけだな」
「そうだったな。ま、俺からすれば魔力切れの心配なく修行できるからありがたいけどな」

それからシュレイ山の中腹に着くまで陸は魔力での身体強化を咲良の魔力をもらってやり続けた。
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