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第7章 弟子と神器回収
堅実成長
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鉑狼を全て討伐し終えるが、やはり準立入禁止区域なだけあってそう簡単に休ませてはくれないらしい。
「ん?…おっと、またお客さんか……陸!気を抜くな!戦闘が終わっても感知はやめるな!!」
咲良は接近してくる魔物を感知し、大声をあげて陸に注意を施す。
「わかった!…………これは!!」
陸は魔力で感知をすると後方に数十体もの魔物がいるのがわかった。近づいて来ているのは銀狼と目が血走った兎のような魔物、C級のフロストデビルだ。
咲良は瞬時に魔物の集団の前に躍り出ると、銀狼とフロストデビルを2体ずつ陸の方に仕向け、残りの魔物数十体を威圧して抑え込む。
「こっちきたぞ!」
まさか自分の方に魔物を仕向けてくるとは思ってはおらず、焦りながらもゲイボルグを握る拳に力を込める。
「お前なら1人でも勝てる!!」
「いやいや!4体もか!」
「それでも勝てる!」
「まじか……しゃあ!!やってやる!!」
陸は気合を入れ直してゲイボルグを構えると同時に、銀狼フロストデビルが陸を囲む。
「おらっ!」
陸は先手必勝とばかりにゲイボルグを投擲する。
ギャン!
1体のフロストデビルの左肩に命中すると同時に陸が走り出すと、他の魔物も陸を追ってくる。
槍が刺さった個体の元に行くと能力を発動して刺さったゲイボルグを手元に戻し、走る勢いのまま一閃する。
ドスッ!
ゲイボルグが傷を負ったフロストデビルの脳天に深々と突き刺さり息の根を止める。陸は死体が刺さったままのゲイボルグを大きく振り上げ、向かってくるもう1体のフロストデビルに投げつける。
死体とぶつかったフロストデビルは体勢を崩すが、1体の銀狼が陸に襲いかかる。
ガキンッ
陸は瞬時にゲイボルグを一本分裂させて攻撃を防ぐ。
すると体勢を崩していたフロストデビルが口から雪の塊のようなものを吐き出し陸の腹に直撃する。
「ぐあっ!」
あまりの痛みに声を荒げるがなんとか耐える。
「ぐっ…くそ!あんな攻撃出来たのかよ」
陸はまだ痛む腹をさすりながら一旦距離を取り、分裂させて防御に使ったゲイボルグを手元に戻す。
「ふぅ、ふぅ…落ち着け…俺なら勝てる」
陸はそう自分に言い聞かせて奴らを睨む。
その目にはしっかりとした意思が宿っていた。そこにいたのは咲良に勝てると言われたから挑むのではなく、自分の力を信じて前に進む陸の姿だった。
「ほぉ…いい目になったな」
数十体もいた魔物を残り5体まで減らした咲良は、陸の様子をしっかりと見ていた。
残りの5体は咲良の強さを理解したようで、逃げはしないが周りをぐるぐると回りながら威嚇している。
「…よし、まずは1体だ」
咲良に見られてるとも知らない陸は1体の銀狼に狙いを定める。
そして分裂させたゲイボルグをドリルの様に高速回転させる。槍はどんどん早く回転していき、キィーン、と耳鳴りの様な音を出す。
「いくぞっ!暁流参ノ型 嵐戒!」
超高速で回転したゲイボルグは小さな竜巻となって投擲される。
ドゴォーン!
嵐戒の衝撃によって雪煙が上がり、陸はその中に突っ込んで行く。
銀狼とフロストデビルも後を追うが、雪煙のせいで視界が悪く陸を見失う。
陸自身も前は見えていないが魔力感知で気配は捉えていたので嵐戒によって傷つき動きが鈍くなった銀狼を…
「ここだぁ!」
陸は前が見えない中でゲイボルグを前に突き出す。
ドスッ!
ゲイボルグを通して手にズブリと刺した感覚が手に伝わる。
舞っていた雪が地に落ち景色が鮮明になると、そこにはしっかりと心臓を一突きにした陸がいた。
だが、歓喜には浸らない。
陸は辺りを見渡し残りの2体を探す。
「ん?……いない?…」
周りは雪のみで姿はない。
陸は魔力感知の範囲を狭くして精度を上げると…
「下かっ!」
下に気配を感じると同時にその場から飛び退く。
ボフッ!
フロストデビルは地に潜り奇襲をかけてきた。
あと少し気付くのが遅ければ、そして感知の範囲を狭くしていなければおそらく陸はやられていただろう。
「ほぉ…範囲を狭くして精度を上げたか。俺は教えてないんだがな」
その姿を見ていた咲良の顔には笑みがこぼれる。
確かに魔力感知は範囲を狭くすることで精度は上がる。陸はそれを戦闘の中で咄嗟にやってのけた。これはもはや戦いにおけるセンスの領域だ。
咲良は陸の伸び代がかなり高いという事と成長の速さに笑みを浮かべたのだ。
もちろんその成長の速さは、咲良が付きっ切りで教えているからなのだが…
その肝心の陸はというとかなり焦っていた。
先程足元から出てきた瞬間を狙って攻撃を試みたが出てきたのはフロストデビルではなく雪の塊。恐らく地面の中からフロストデビルが陸に向かって吐き出したのだろう。しかし感知の精度を上げても今の陸では雪の塊までは感知できなかった。
そこで陸は一箇所にとどまらない様に移動しながら、なぜ自分の位置が的確に分かるのか考える。
(足跡を聞いているのか…それとも地面の重さか…いや、初めて地面から攻撃してきた時は俺は動いていない。となると…)
陸は1つの仮説を立て行動に移す。
まずは分裂させて浮いているゲイボルグに飛び乗り、高く上げるよう操作する。
もしここに地球人がいたらこう言っただろう。「まるで空飛ぶ箒のようだ」と。実際は空飛ぶ槍なのだが…
陸は空中でバランスをとりながら集中し、自身の魔力を極限まで抑えて小さくした。
陸の考えはフロストデビルは精度は低いが魔力を感知できるはずだ。なので陸は魔力を抑え、より感知されにくいように上空に待機する。
ちらりと向こうに咲良が見えたが、陸は今更気付いた。
咲良には気配がない。否、そう思えるほど気配を消すのに長けている。改めてすごいと思うが、戦闘中なのを思い出し気を引き締める。
しばらくすると陸の居場所が分からないのか、ボコっとフロストデビルと銀狼が地面から這い出て辺りをキョロキョロとする。
(銀狼も潜ってたのか!…くそ、フロストデビルに気を取られて感知しきれなかったか)
自分の失態に少し落ち込むがすぐに気を取り直し、タイミングを見計らってゲイボルグを分裂させて暁流参ノ型 嵐戒を下方のフロストデビルに向かって放つ。
ドゴォーン
上空からの不意打ちにフロストデビルは呆気なく串刺しになり息絶えた。
残りは銀狼だが、陸の嵐戒では完全にトドメを刺せるか分からない。
陸は少し考察してから本体のゲイボルグを握り締めて飛び降りる。
ゴォーーー
かなりの高さだったので必然的に落下速度は上がるが流石にこの速さで激突すれば銀狼だけでなく陸も無事では済まない。
そこで、上手くいく保証はないが激突する寸前に魔力を出せるだけ出して身体を包む。
ギロッと陸の存在に気付いた銀狼が上を向いて陸を捉えるがもう遅い。
ドガァーン!
銀狼が避ける前に陸が空から激突し、あまりの威力に銀狼の身体はバラバラに散らばった。
「う、うーん…」
陸は意識が朦朧として動けない。
ズボッ
咲良が雪に埋まり手だけが出ている陸を引っ張り上げた。
「大丈夫か?…ったく無茶しやがって」
「へ、へへ…何とか…勝て…た…」
「とりあえず休め」
2人は休息を取るために場所を移動する。
「もう大丈夫そうだな」
場所を変え、咲良は陸を回復しながら呟く。
「だが特攻の手段を取ったのは不味かったな」
「だよな…甘かったか」
陸は初めは勝てたことに喜んでいたがやはり勝ったとしても動けなくなっていては本当の意味で勝ちとは言えないので肩を落とす。
「ま、要所要所は良かったぞ。感知や適応力は合格点だ。特に最後の特攻の時、魔力で身体を包んだろ?」
「全部お見通しか」
「まぁな。特攻はダメだがあの魔力の使い方は咄嗟にしては良かった。もっと慣れれば殆どの衝撃はあれで防げる」
「そうか…」
言葉は少ないが咲良に褒められ、そして着実に力を上げていると実感出来た陸は内心踊り出したいほど嬉しかった。
「ん?…おっと、またお客さんか……陸!気を抜くな!戦闘が終わっても感知はやめるな!!」
咲良は接近してくる魔物を感知し、大声をあげて陸に注意を施す。
「わかった!…………これは!!」
陸は魔力で感知をすると後方に数十体もの魔物がいるのがわかった。近づいて来ているのは銀狼と目が血走った兎のような魔物、C級のフロストデビルだ。
咲良は瞬時に魔物の集団の前に躍り出ると、銀狼とフロストデビルを2体ずつ陸の方に仕向け、残りの魔物数十体を威圧して抑え込む。
「こっちきたぞ!」
まさか自分の方に魔物を仕向けてくるとは思ってはおらず、焦りながらもゲイボルグを握る拳に力を込める。
「お前なら1人でも勝てる!!」
「いやいや!4体もか!」
「それでも勝てる!」
「まじか……しゃあ!!やってやる!!」
陸は気合を入れ直してゲイボルグを構えると同時に、銀狼フロストデビルが陸を囲む。
「おらっ!」
陸は先手必勝とばかりにゲイボルグを投擲する。
ギャン!
1体のフロストデビルの左肩に命中すると同時に陸が走り出すと、他の魔物も陸を追ってくる。
槍が刺さった個体の元に行くと能力を発動して刺さったゲイボルグを手元に戻し、走る勢いのまま一閃する。
ドスッ!
ゲイボルグが傷を負ったフロストデビルの脳天に深々と突き刺さり息の根を止める。陸は死体が刺さったままのゲイボルグを大きく振り上げ、向かってくるもう1体のフロストデビルに投げつける。
死体とぶつかったフロストデビルは体勢を崩すが、1体の銀狼が陸に襲いかかる。
ガキンッ
陸は瞬時にゲイボルグを一本分裂させて攻撃を防ぐ。
すると体勢を崩していたフロストデビルが口から雪の塊のようなものを吐き出し陸の腹に直撃する。
「ぐあっ!」
あまりの痛みに声を荒げるがなんとか耐える。
「ぐっ…くそ!あんな攻撃出来たのかよ」
陸はまだ痛む腹をさすりながら一旦距離を取り、分裂させて防御に使ったゲイボルグを手元に戻す。
「ふぅ、ふぅ…落ち着け…俺なら勝てる」
陸はそう自分に言い聞かせて奴らを睨む。
その目にはしっかりとした意思が宿っていた。そこにいたのは咲良に勝てると言われたから挑むのではなく、自分の力を信じて前に進む陸の姿だった。
「ほぉ…いい目になったな」
数十体もいた魔物を残り5体まで減らした咲良は、陸の様子をしっかりと見ていた。
残りの5体は咲良の強さを理解したようで、逃げはしないが周りをぐるぐると回りながら威嚇している。
「…よし、まずは1体だ」
咲良に見られてるとも知らない陸は1体の銀狼に狙いを定める。
そして分裂させたゲイボルグをドリルの様に高速回転させる。槍はどんどん早く回転していき、キィーン、と耳鳴りの様な音を出す。
「いくぞっ!暁流参ノ型 嵐戒!」
超高速で回転したゲイボルグは小さな竜巻となって投擲される。
ドゴォーン!
嵐戒の衝撃によって雪煙が上がり、陸はその中に突っ込んで行く。
銀狼とフロストデビルも後を追うが、雪煙のせいで視界が悪く陸を見失う。
陸自身も前は見えていないが魔力感知で気配は捉えていたので嵐戒によって傷つき動きが鈍くなった銀狼を…
「ここだぁ!」
陸は前が見えない中でゲイボルグを前に突き出す。
ドスッ!
ゲイボルグを通して手にズブリと刺した感覚が手に伝わる。
舞っていた雪が地に落ち景色が鮮明になると、そこにはしっかりと心臓を一突きにした陸がいた。
だが、歓喜には浸らない。
陸は辺りを見渡し残りの2体を探す。
「ん?……いない?…」
周りは雪のみで姿はない。
陸は魔力感知の範囲を狭くして精度を上げると…
「下かっ!」
下に気配を感じると同時にその場から飛び退く。
ボフッ!
フロストデビルは地に潜り奇襲をかけてきた。
あと少し気付くのが遅ければ、そして感知の範囲を狭くしていなければおそらく陸はやられていただろう。
「ほぉ…範囲を狭くして精度を上げたか。俺は教えてないんだがな」
その姿を見ていた咲良の顔には笑みがこぼれる。
確かに魔力感知は範囲を狭くすることで精度は上がる。陸はそれを戦闘の中で咄嗟にやってのけた。これはもはや戦いにおけるセンスの領域だ。
咲良は陸の伸び代がかなり高いという事と成長の速さに笑みを浮かべたのだ。
もちろんその成長の速さは、咲良が付きっ切りで教えているからなのだが…
その肝心の陸はというとかなり焦っていた。
先程足元から出てきた瞬間を狙って攻撃を試みたが出てきたのはフロストデビルではなく雪の塊。恐らく地面の中からフロストデビルが陸に向かって吐き出したのだろう。しかし感知の精度を上げても今の陸では雪の塊までは感知できなかった。
そこで陸は一箇所にとどまらない様に移動しながら、なぜ自分の位置が的確に分かるのか考える。
(足跡を聞いているのか…それとも地面の重さか…いや、初めて地面から攻撃してきた時は俺は動いていない。となると…)
陸は1つの仮説を立て行動に移す。
まずは分裂させて浮いているゲイボルグに飛び乗り、高く上げるよう操作する。
もしここに地球人がいたらこう言っただろう。「まるで空飛ぶ箒のようだ」と。実際は空飛ぶ槍なのだが…
陸は空中でバランスをとりながら集中し、自身の魔力を極限まで抑えて小さくした。
陸の考えはフロストデビルは精度は低いが魔力を感知できるはずだ。なので陸は魔力を抑え、より感知されにくいように上空に待機する。
ちらりと向こうに咲良が見えたが、陸は今更気付いた。
咲良には気配がない。否、そう思えるほど気配を消すのに長けている。改めてすごいと思うが、戦闘中なのを思い出し気を引き締める。
しばらくすると陸の居場所が分からないのか、ボコっとフロストデビルと銀狼が地面から這い出て辺りをキョロキョロとする。
(銀狼も潜ってたのか!…くそ、フロストデビルに気を取られて感知しきれなかったか)
自分の失態に少し落ち込むがすぐに気を取り直し、タイミングを見計らってゲイボルグを分裂させて暁流参ノ型 嵐戒を下方のフロストデビルに向かって放つ。
ドゴォーン
上空からの不意打ちにフロストデビルは呆気なく串刺しになり息絶えた。
残りは銀狼だが、陸の嵐戒では完全にトドメを刺せるか分からない。
陸は少し考察してから本体のゲイボルグを握り締めて飛び降りる。
ゴォーーー
かなりの高さだったので必然的に落下速度は上がるが流石にこの速さで激突すれば銀狼だけでなく陸も無事では済まない。
そこで、上手くいく保証はないが激突する寸前に魔力を出せるだけ出して身体を包む。
ギロッと陸の存在に気付いた銀狼が上を向いて陸を捉えるがもう遅い。
ドガァーン!
銀狼が避ける前に陸が空から激突し、あまりの威力に銀狼の身体はバラバラに散らばった。
「う、うーん…」
陸は意識が朦朧として動けない。
ズボッ
咲良が雪に埋まり手だけが出ている陸を引っ張り上げた。
「大丈夫か?…ったく無茶しやがって」
「へ、へへ…何とか…勝て…た…」
「とりあえず休め」
2人は休息を取るために場所を移動する。
「もう大丈夫そうだな」
場所を変え、咲良は陸を回復しながら呟く。
「だが特攻の手段を取ったのは不味かったな」
「だよな…甘かったか」
陸は初めは勝てたことに喜んでいたがやはり勝ったとしても動けなくなっていては本当の意味で勝ちとは言えないので肩を落とす。
「ま、要所要所は良かったぞ。感知や適応力は合格点だ。特に最後の特攻の時、魔力で身体を包んだろ?」
「全部お見通しか」
「まぁな。特攻はダメだがあの魔力の使い方は咄嗟にしては良かった。もっと慣れれば殆どの衝撃はあれで防げる」
「そうか…」
言葉は少ないが咲良に褒められ、そして着実に力を上げていると実感出来た陸は内心踊り出したいほど嬉しかった。
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