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第7章 弟子と神器回収
巨狼相対
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「いいか?ここから先は殆ど陸の出番はないだろう」
「分かってる。大人しく引っ込んでるよ」
今2人はシュレイ山の山頂付近まで来ている。
陸はまだ気づいていないが咲良は既にフェンリルの気配を捉えていた。
「いや、今の陸の実力だと出番はないって意味だ」
陸は咲良の意図が分からず説明を求める。
「簡単に伝授して良いものじゃないからまだ話していなかったが…暁流には奥義がある」
「奥義?」
「あぁ…魔装と言ってな。身体の内外を圧縮した魔力と氣で満たす事で身体能力と治癒力の大幅な強化が可能になる」
「魔力による身体強化とは違うのか?」
魔力でも身体能力は上がる為、魔装がどう違うのかがいまいち理解できない。
「似てはいるがその性能は天と地ほどの差がある」
「そうなのか…でも俺使えないぞ?氣だって習得してないしよ」
「俺が陸に魔力を送って魔装をかける。まぁ氣は魔力と違って他者には送れないから擬似的な魔装になるがな」
「魔力だけか…」
「そうだ。陸はまだ魔装に不可欠な魔力の圧縮が出来ないだろ…だから俺がやるんだ」
咲良は簡単そうに言ってのけるが実際は途方もない技術が要求される。自身の魔力の波長を変えながら圧縮する工程は魔氣を極めし者の称号を持った者でも難しい。
「出来るのか?」
「もちろんだ。ここまで来て陸に何もさせないのはあり得ない。連れてきた意味がないからな」
「なら頼む」
咲良は陸の魔臓がある胸の中心辺りに手を添える。すると陸の身体の中にとてつもない量の魔力が入ってくるのが分かった。だが痛みはなく、それどころか自身の魔力量が一気に増えると共に力がどんどん湧いてくる。
「おお!おぉぉぉぉ!」
想像していた以上の力を与えてくれる魔装に陸はテンションが上がる。
試しにステータスプレートを覗いてみるとすべてのステータスが2倍以上、魔力に至っては3倍以上になっていた。
この魔装でも未完成ということは氣も使った完全な魔装はいったいどれほどの力をもたらすのだろうか。
「この魔装は一時的だ。激しく動いたり攻撃を受ければ魔力が減っていくから戦闘中ちょくちょく魔力を補充しないといけない」
「分かった!」
「よし、なら行くぞ。フェンリルはもう俺たちに気付いてる」
「まじか…」
「流石SSS級なだけあって感知能力も高いらしい。ならば先手必勝、小細工はいらない」
2人は山頂に向かって走り出す。
その速度はもはや常人には目視出来ないだろう。
しばらく走ると…
グルルルルルゥゥゥ…
周辺から身の毛もよだつ唸り声が響いてくる。
まるでこれ以上近づくなと言っているようで、その唸り声に心臓を鷲掴みにされた気分だ。
「うぅ…」
陸は気圧されて足が石造のようになってしまい動けなくなる。
幾ら擬似魔装をしているとはいえ精神までは強化されない。陸がSSS級の魔物と相対するのは初めてなので仕方ないことである。
「止まるな!臆するな!意地を見せろ!」
先に進む咲良が前を向いたまま叫ぶと、陸はハッと正気を取り戻す。
そして深く深呼吸して息を整えると咲良の後を追いかける。
陸が追いついた時には既に咲良はフェンリルと睨み合っていた。
「あれがフェンリル…」
その姿は神々しい程に白く輝いた毛をした巨大な狼だ。
その爪は人など楽に切り裂き、牙は一瞬で肉を食いちぎるだろう。またその体毛の下には強靭な肉体が宿っており、どんなに離れていても距離は無いに等しいだろう。
「お、おい、咲良…」
陸は不安そうな表情を浮かべ、これからどう動くべきなのかを問いかける。
「奴から目を逸らすな。そして自分の持っている技術をすべて出し切れ」
咲良はそう言い残しフェンリルへと駆けていく。
ウオォォォーーーン
フェンリルも遠吠えをあげて臨戦態勢に入った。
そしてドンッと力強く地を蹴る音がする。
「陸!避けろ!」
咲良が叫ぶが陸にその意味を理解する時間はなかった。
「がっ………」
陸の目の前にいきなりフェンリルが現れ、その鋭い爪に切り裂かれて数十m程吹き飛ぶ。
フェンリルは陸に追い打ちをかける為に距離を詰めようとするが咲良がすかさず間に割り込む。
「陸!立て!」
「うぅ…くそ……あれ、傷が…」
陸は立ち上がり、自身の身体を確かめると驚いた。
あれほどの衝撃を受けたにも関わ掠り傷程度で済んでいた。更にその掠り傷も徐々に塞がりつつあった。
「これのおかげか…すげぇな…」
自身を包む魔装を見ながら呟く。陸が思っていた以上に耐久力があったようだ。
「大丈夫そうだな。なら挟み撃ちで行くぞ」
「よし、やってやる!」
陸はフェンリルに吹き飛ばされた事で吹っ切れたのかやる気満々だ。
「その意気だ!…はっ!」
咲良はフェンリルに向かって弐ノ型 飛翔を放つ。
フェンリルは身体を横に移動させて避けるが、その隙に2人は素早く動き挟み込む。
フェンリルの前に居た咲良は自身の気配を最大限に大きくした。それによってフェンリルは咲良に気を取られて陸を視界から外してしまう。
これをチャンスと見た陸はゲイボルグを5本分裂させ、空中で全てを回転させる。
「参ノ型 嵐戒!」
5本の嵐戒が襲い掛かるがフェンリルは気付かない。咲良の気配の大きさに警戒しすぎた所為だ。
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
フェンリルは嵐戒に気付いたが避ける暇はなく全てが命中した。しかし致命傷とまではいかなかったようだ。
フェンリルは攻撃してきた陸に襲い掛かろうと向きを変えるが、すかさず咲良がフェンリルに近づき刺さったままのゲイボルグを持って力づくで押し込んだ。
ギャン!!
これには流石のフェンリルも効いたらしく、悲鳴の様な声を出してフラつく。
咲良は好機と見て他の4本も押し込むと距離を取る。
フェンリルはその場でドサッと横に倒れるが咲良が叫ぶ。
「陸!何してる!さっさと来い!」
「え?でも…」
咲良の攻撃でフェンリルは虫の息だろうと陸は考えていたのだが…
「これくらいじゃ死なん。それに深くは刺さっていない」
咲良の言っている意味がイマイチわからず困惑しているとフェンリルがムクッと立ち上がるとその脚力を使って一瞬で咲良から距離を取る。
「な、どうして…」
「よく考えろ。刺したのは陸が分裂させたゲイボルグだぞ」
「俺の…あ、そうか…」
ここで陸は気付いた。分裂させたゲイボルグの硬度は込めた魔力で変わる。深く刺さっている様に見えるが刃先はフェンリルの防御力に耐え切れず潰れてしまっているため致命傷にはなっていない。
フェンリルが一度その場で倒れたのはゲイボルグが刺さった所為ではなく、咲良が力づくでねじ込んだ事による衝撃が耐え切れなかったからである。
ここで咲良はある事に引っかかる。
(これがSSS級なのか?予想していたよりずっと弱いな。まだ俺は魔装すら発動していないのに勝てそうだ。実力的には世界樹の森で倒したSS級のサーヴァントと同等かそれ以下だな……こいつは本当にフェンリルなのか?)
ステータスプレートで調べようかとも思ったが、倒せばわかる事なので態々戦闘中にする必要はない。
咲良は気持ちを切り替えるとフェンリルの懐に入り、腹を殴りにかかる。
フェンリルはその場で跳躍する事で回避するが、すでに咲良はフェンリルよりも高く飛んでおり、背中に踵落としを叩き込む。
ドゴッ
鈍い音が聞こえ、フェンリルは地に叩きつけられた。
追い討ちをかけるために落ちながら足の裏から魔力を噴射させて速度を上げて突っ込む。
ドゴォーン!
小さなクレーターが出来るほどの威力であったがフェンリルはなんとか避けていた。
さらに攻撃をするために距離を詰めようとした時、ボコボコッと周りの降り積もった雪が盛り上がったかと思うと無数の鉑狼が姿をあらわす。
「今出てきたか。感知で分かっていたが…鬱陶しい事に変わりはない」
鉑狼が地面から出てくると同時に陸が隣に来た。
「魔力を限界まで込めてみた」
ゲイボルグを見ると魔力がオーラの様にゲイボルグを包んでいる。
「ほぅ…それならあいつにも効くかもな。1人でやれるか?」
「げっ!?そりゃ厳しすぎだろ!」
1人でSSS級を相手にしろという咲良の無謀な策に抗議の声を上げる。
「勝てと言ってるわけじゃない。それに魔装があるだろ」
「うーん」
「いいから早く行け。雑魚どもは俺が受け持つ」
「ええい、なんとでもなれ!」
陸はヤケクソになったのかフェンリルに突っ込んで行く。
「おいおい、冷静になって戦え」
咲良が陸に追いつき頭を殴る。
「いって!なにすんだ!」
「雑に戦っても進歩はないぞ」
その一言で頭を冷やした陸は表情をキリッとさせて再びフェンリルへと向かう。
「全く…」
少し呆れながら鉑狼の元へ向かう。
数分後、全ての鉑狼を倒し終えた咲良は陸の援護に入る。
鉑狼を倒しながらも横目で陸の戦いを見ていたが、やはり荷が重かった様でフェンリルの攻撃を受け過ぎて魔装が消えかかっていた。
しかし成果もあった。魔力を最大限込めたゲイボルグの一撃はどうやら少なからず効いているようだ。
咲良はフェンリルの目の前に縮地で移動し、そのまま回し蹴りで蹴り飛ばすと陸の横に着地する。
「ボロボロだな」
「はぁはぁ…当たり前だ!……まじで死ぬかと思った」
「まずは魔装をやりなおす」
咲良は陸の方に手を置き、魔力を送って魔装を万全の状態に戻す。
「これからは俺と共闘だ」
「わかった。俺が援護だな」
「いや、適材適所で前衛も後衛もない。お互いの動きに合わせる」
「どっちもメインってわけか」
「そうだ……ん?」
咲良は何かを感じたのか蹴り飛ばしたフェンリルの方を見る。
陸もつられて見ると…
「な、なんだありゃ!?」
フェンリルの毛が全て逆立ち、徐々に黒く変色していく。
「あれが真の姿ってわけか…」
「知ってたのか?」
「いや、SSS級にしては弱いからな。何かあるんじゃないかとは思っていたんだが……これは…」
体毛が完全に黒くなったフェンリルはステータスもかなり上がったようだ。これでSSS級、しかも上位に位置する実力になっただろう。
しかしフェンリルにこんな変化があるとは咲良も知らなかった。変異種なのかもしれないとは思ったが、技能の生存本能はまだ何かあると訴えかけているように感じる。
「分かってる。大人しく引っ込んでるよ」
今2人はシュレイ山の山頂付近まで来ている。
陸はまだ気づいていないが咲良は既にフェンリルの気配を捉えていた。
「いや、今の陸の実力だと出番はないって意味だ」
陸は咲良の意図が分からず説明を求める。
「簡単に伝授して良いものじゃないからまだ話していなかったが…暁流には奥義がある」
「奥義?」
「あぁ…魔装と言ってな。身体の内外を圧縮した魔力と氣で満たす事で身体能力と治癒力の大幅な強化が可能になる」
「魔力による身体強化とは違うのか?」
魔力でも身体能力は上がる為、魔装がどう違うのかがいまいち理解できない。
「似てはいるがその性能は天と地ほどの差がある」
「そうなのか…でも俺使えないぞ?氣だって習得してないしよ」
「俺が陸に魔力を送って魔装をかける。まぁ氣は魔力と違って他者には送れないから擬似的な魔装になるがな」
「魔力だけか…」
「そうだ。陸はまだ魔装に不可欠な魔力の圧縮が出来ないだろ…だから俺がやるんだ」
咲良は簡単そうに言ってのけるが実際は途方もない技術が要求される。自身の魔力の波長を変えながら圧縮する工程は魔氣を極めし者の称号を持った者でも難しい。
「出来るのか?」
「もちろんだ。ここまで来て陸に何もさせないのはあり得ない。連れてきた意味がないからな」
「なら頼む」
咲良は陸の魔臓がある胸の中心辺りに手を添える。すると陸の身体の中にとてつもない量の魔力が入ってくるのが分かった。だが痛みはなく、それどころか自身の魔力量が一気に増えると共に力がどんどん湧いてくる。
「おお!おぉぉぉぉ!」
想像していた以上の力を与えてくれる魔装に陸はテンションが上がる。
試しにステータスプレートを覗いてみるとすべてのステータスが2倍以上、魔力に至っては3倍以上になっていた。
この魔装でも未完成ということは氣も使った完全な魔装はいったいどれほどの力をもたらすのだろうか。
「この魔装は一時的だ。激しく動いたり攻撃を受ければ魔力が減っていくから戦闘中ちょくちょく魔力を補充しないといけない」
「分かった!」
「よし、なら行くぞ。フェンリルはもう俺たちに気付いてる」
「まじか…」
「流石SSS級なだけあって感知能力も高いらしい。ならば先手必勝、小細工はいらない」
2人は山頂に向かって走り出す。
その速度はもはや常人には目視出来ないだろう。
しばらく走ると…
グルルルルルゥゥゥ…
周辺から身の毛もよだつ唸り声が響いてくる。
まるでこれ以上近づくなと言っているようで、その唸り声に心臓を鷲掴みにされた気分だ。
「うぅ…」
陸は気圧されて足が石造のようになってしまい動けなくなる。
幾ら擬似魔装をしているとはいえ精神までは強化されない。陸がSSS級の魔物と相対するのは初めてなので仕方ないことである。
「止まるな!臆するな!意地を見せろ!」
先に進む咲良が前を向いたまま叫ぶと、陸はハッと正気を取り戻す。
そして深く深呼吸して息を整えると咲良の後を追いかける。
陸が追いついた時には既に咲良はフェンリルと睨み合っていた。
「あれがフェンリル…」
その姿は神々しい程に白く輝いた毛をした巨大な狼だ。
その爪は人など楽に切り裂き、牙は一瞬で肉を食いちぎるだろう。またその体毛の下には強靭な肉体が宿っており、どんなに離れていても距離は無いに等しいだろう。
「お、おい、咲良…」
陸は不安そうな表情を浮かべ、これからどう動くべきなのかを問いかける。
「奴から目を逸らすな。そして自分の持っている技術をすべて出し切れ」
咲良はそう言い残しフェンリルへと駆けていく。
ウオォォォーーーン
フェンリルも遠吠えをあげて臨戦態勢に入った。
そしてドンッと力強く地を蹴る音がする。
「陸!避けろ!」
咲良が叫ぶが陸にその意味を理解する時間はなかった。
「がっ………」
陸の目の前にいきなりフェンリルが現れ、その鋭い爪に切り裂かれて数十m程吹き飛ぶ。
フェンリルは陸に追い打ちをかける為に距離を詰めようとするが咲良がすかさず間に割り込む。
「陸!立て!」
「うぅ…くそ……あれ、傷が…」
陸は立ち上がり、自身の身体を確かめると驚いた。
あれほどの衝撃を受けたにも関わ掠り傷程度で済んでいた。更にその掠り傷も徐々に塞がりつつあった。
「これのおかげか…すげぇな…」
自身を包む魔装を見ながら呟く。陸が思っていた以上に耐久力があったようだ。
「大丈夫そうだな。なら挟み撃ちで行くぞ」
「よし、やってやる!」
陸はフェンリルに吹き飛ばされた事で吹っ切れたのかやる気満々だ。
「その意気だ!…はっ!」
咲良はフェンリルに向かって弐ノ型 飛翔を放つ。
フェンリルは身体を横に移動させて避けるが、その隙に2人は素早く動き挟み込む。
フェンリルの前に居た咲良は自身の気配を最大限に大きくした。それによってフェンリルは咲良に気を取られて陸を視界から外してしまう。
これをチャンスと見た陸はゲイボルグを5本分裂させ、空中で全てを回転させる。
「参ノ型 嵐戒!」
5本の嵐戒が襲い掛かるがフェンリルは気付かない。咲良の気配の大きさに警戒しすぎた所為だ。
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
フェンリルは嵐戒に気付いたが避ける暇はなく全てが命中した。しかし致命傷とまではいかなかったようだ。
フェンリルは攻撃してきた陸に襲い掛かろうと向きを変えるが、すかさず咲良がフェンリルに近づき刺さったままのゲイボルグを持って力づくで押し込んだ。
ギャン!!
これには流石のフェンリルも効いたらしく、悲鳴の様な声を出してフラつく。
咲良は好機と見て他の4本も押し込むと距離を取る。
フェンリルはその場でドサッと横に倒れるが咲良が叫ぶ。
「陸!何してる!さっさと来い!」
「え?でも…」
咲良の攻撃でフェンリルは虫の息だろうと陸は考えていたのだが…
「これくらいじゃ死なん。それに深くは刺さっていない」
咲良の言っている意味がイマイチわからず困惑しているとフェンリルがムクッと立ち上がるとその脚力を使って一瞬で咲良から距離を取る。
「な、どうして…」
「よく考えろ。刺したのは陸が分裂させたゲイボルグだぞ」
「俺の…あ、そうか…」
ここで陸は気付いた。分裂させたゲイボルグの硬度は込めた魔力で変わる。深く刺さっている様に見えるが刃先はフェンリルの防御力に耐え切れず潰れてしまっているため致命傷にはなっていない。
フェンリルが一度その場で倒れたのはゲイボルグが刺さった所為ではなく、咲良が力づくでねじ込んだ事による衝撃が耐え切れなかったからである。
ここで咲良はある事に引っかかる。
(これがSSS級なのか?予想していたよりずっと弱いな。まだ俺は魔装すら発動していないのに勝てそうだ。実力的には世界樹の森で倒したSS級のサーヴァントと同等かそれ以下だな……こいつは本当にフェンリルなのか?)
ステータスプレートで調べようかとも思ったが、倒せばわかる事なので態々戦闘中にする必要はない。
咲良は気持ちを切り替えるとフェンリルの懐に入り、腹を殴りにかかる。
フェンリルはその場で跳躍する事で回避するが、すでに咲良はフェンリルよりも高く飛んでおり、背中に踵落としを叩き込む。
ドゴッ
鈍い音が聞こえ、フェンリルは地に叩きつけられた。
追い討ちをかけるために落ちながら足の裏から魔力を噴射させて速度を上げて突っ込む。
ドゴォーン!
小さなクレーターが出来るほどの威力であったがフェンリルはなんとか避けていた。
さらに攻撃をするために距離を詰めようとした時、ボコボコッと周りの降り積もった雪が盛り上がったかと思うと無数の鉑狼が姿をあらわす。
「今出てきたか。感知で分かっていたが…鬱陶しい事に変わりはない」
鉑狼が地面から出てくると同時に陸が隣に来た。
「魔力を限界まで込めてみた」
ゲイボルグを見ると魔力がオーラの様にゲイボルグを包んでいる。
「ほぅ…それならあいつにも効くかもな。1人でやれるか?」
「げっ!?そりゃ厳しすぎだろ!」
1人でSSS級を相手にしろという咲良の無謀な策に抗議の声を上げる。
「勝てと言ってるわけじゃない。それに魔装があるだろ」
「うーん」
「いいから早く行け。雑魚どもは俺が受け持つ」
「ええい、なんとでもなれ!」
陸はヤケクソになったのかフェンリルに突っ込んで行く。
「おいおい、冷静になって戦え」
咲良が陸に追いつき頭を殴る。
「いって!なにすんだ!」
「雑に戦っても進歩はないぞ」
その一言で頭を冷やした陸は表情をキリッとさせて再びフェンリルへと向かう。
「全く…」
少し呆れながら鉑狼の元へ向かう。
数分後、全ての鉑狼を倒し終えた咲良は陸の援護に入る。
鉑狼を倒しながらも横目で陸の戦いを見ていたが、やはり荷が重かった様でフェンリルの攻撃を受け過ぎて魔装が消えかかっていた。
しかし成果もあった。魔力を最大限込めたゲイボルグの一撃はどうやら少なからず効いているようだ。
咲良はフェンリルの目の前に縮地で移動し、そのまま回し蹴りで蹴り飛ばすと陸の横に着地する。
「ボロボロだな」
「はぁはぁ…当たり前だ!……まじで死ぬかと思った」
「まずは魔装をやりなおす」
咲良は陸の方に手を置き、魔力を送って魔装を万全の状態に戻す。
「これからは俺と共闘だ」
「わかった。俺が援護だな」
「いや、適材適所で前衛も後衛もない。お互いの動きに合わせる」
「どっちもメインってわけか」
「そうだ……ん?」
咲良は何かを感じたのか蹴り飛ばしたフェンリルの方を見る。
陸もつられて見ると…
「な、なんだありゃ!?」
フェンリルの毛が全て逆立ち、徐々に黒く変色していく。
「あれが真の姿ってわけか…」
「知ってたのか?」
「いや、SSS級にしては弱いからな。何かあるんじゃないかとは思っていたんだが……これは…」
体毛が完全に黒くなったフェンリルはステータスもかなり上がったようだ。これでSSS級、しかも上位に位置する実力になっただろう。
しかしフェンリルにこんな変化があるとは咲良も知らなかった。変異種なのかもしれないとは思ったが、技能の生存本能はまだ何かあると訴えかけているように感じる。
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