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第7章 弟子と神器回収
邪神魔狼
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「強くなったみたいだが作戦はそのままで行く。いいな?」
「無理って言っても無駄なんだろう?…ならやるさ」
咲良は少し口角をあげると黒いフェンリルへと向かう。その後ろには陸が付いてくる。
少し様子を見ようとも考えたが初見の相手なので情報が少なすぎる。チンタラしていては得られるものは少ないと考え、咲良は思い切って殴りにかかる。
しかし、フェンリルに当たる寸前で拳を止めて距離をとる。
「どうした?」
追いついた陸が不思議そうに尋ねる。
「あの黒い毛…触らない方がよさそうだ」
「なんでだ?」
「勘だ。だが俺の勘はよく当たる」
「なるほど。ならどうする?」
「魔力を纏えば良いだけだ。陸は魔装があるから大丈夫だろう」
咲良は直接毛に触れないようにこの戦闘で初めて魔装を発動した。
「よし、仕切り直しだ」
さっきからフェンリルはピクリとも動かない。変身した副作用なのだろうか…
「ふっ!」
咲良は拳を強く握りしめて全力で殴りにかかる。
ドコッ!
フェンリルは今までで一番遠く吹き飛ばされた。
殴った拳を見るが違和感はない。魔力で覆えば問題がない事を確信すると、飛んで行ったフェンリルの元に高速でたどり着くと陸の方へ蹴り飛ばす。もちろん魔装で強化された一撃なので威力は折り紙付きだ。
「行ったぞ!」
「おう!」
陸はゲイボルグを構えて飛んでくるフェンリルに向かって駆けだすと同時に魔力を後ろに噴射させて速度を上げる。
「ほぉ…どんどん魔力の扱いが上手くなっていくな。やはり鍛えるには命を懸けた実戦が一番だな」
戦闘技術をスポンジの様にどんどん吸収していく様子に、もしかすると陸はいつか咲良と近い実力を身に着けるのではないかと思わずにはいられない。
猛スピードで突進する陸がフェンリルとぶつかる瞬間、今まで沈黙していたフェンリルが急に消えた。高速で移動したわけでは無く、その場から一瞬で姿を消したのだ。
「…え?」
突きが空振りに終わった陸は何が起こったのか理解できないでいると、今までで一番険しい表情を浮かべた咲良が目に入った。
「流石に予想外だ……陸!作戦変更だ!こいつは俺1人でやる!」
「ど、どうしたんだよ!」
「こいつは災害級だ!」
「ほ、ほんとかよ!フェンリルはSSS級だろ?」
「こいつをフェンリルとは捉えない方が良い。兎に角早く離れろ!」
「え、あ、あぁ、分かった!」
咲良の声からしてかなり深刻な問題が発生したと読み取った陸は急いでその場を離れる。
「まさか…こんな偶然があるとは」
フェンリルが消えた瞬間をしっかりと捉えていた咲良はなぜ消えたのかが分かっていた。
咲良はその場で村正を構えると魔力感知で気配を探るがフェンリルの気配は感じ取れない。だが生存本能の第六感はしっかりと捉えていた。
すると咲良の目の前に急にフェンリルが現れ、牙で噛みつこうとしてくるが咲良は難なく躱すと村正で鼻先を切りつけ距離を取る。
「弐ノ型 飛翔!」
続けざまにフェンリルに斬撃を飛ばすが、またも一瞬で消えて避けられてしまった。
それからの攻防は傍から見ると異様であった。フェンリルは攻撃されるたびに消え、次の瞬間には咲良の近くにいきなり現れて攻撃を仕掛けてくる。しかし咲良も消えたフェンリルが現れる場所を分かっているのかギリギリで対処する。
「なにが起こってんだよ…」
離れた場所から見ている陸には何が何だかさっぱり分からなかった。
しばらく呆然と戦闘を見ていると急に頭の中に声が響く。
『奴は影を操る能力がある。だから消えたように見えるのは影に潜っているからだ』
その声の主は絶賛戦闘中の咲良であった。
どうやら魔装によって聴覚まで鋭くなったために、陸がボソッと呟いた声が聞こえたので戦いながら念話で解説してくれるらしい。
「影を操る?」
『そうだ。あの威圧感に影の操作。災害級であるのは間違いない』
陸はまだ念話を教えてもらっていないが、この距離でも普通に会話は成立するようだ。
「まじかよ…大丈夫なのか?」
『なんとかな。今は奴がどの程度影を操れるのか見定めてる』
「はやくトドメを刺さないのか?」
『そうしたい所だが…影の攻撃は耐久に関係なくダメージを負う。奴がどんな攻撃を仕掛けてくるかまだ分からない状態では迂闊に攻められない』
「耐久に関係なく?なんで分かるんだ?」
『村正の能力も似たものだからだ……ちっ!…悪いが念話をする余裕が無くなってきた』
陸が咲良とフェンリルを見ると、黒い蛇のような物体が咲良を襲っていた。恐らくあれが影による攻撃なのだろう。
「おい!咲良!」
『くそっ!…念話切るぞ!陸はそのままそこを動くな!』
それを最後に咲良からの念話は途絶えた。
あの咲良が苦戦するとは災害級とはそれほどまでに強い事を陸はようやく理解した。
「頑張れ咲良!」
陸は聞こえるかどうか分からないが大声で応援すると、咲良が親指を立ててサムズアップしたのが見えた。
「やはり影が厄介だな…ここは村正を神器開放させるべきか…おっと!しつけぇな!」
黒い蛇のような無数の影が咲良を襲う。
「どんどん操る影が増えてくる。モタモタしてらんねぇな…だが先ずはステータスプレートで情報を得たいな」
フェンリルが変化してからは攻撃方法が別物となり厄介さが倍増した。変化する前にステータスプレートで確認する必要はないと高を括ったのが悔やまれる。
「さて…行くか…」
咲良は魔装による身体強化、そして縮地を活用して高速で移動し続ける事でステータスプレートをかざす事に成功する。
邪神魔狼(災害級)
太古の昔、邪神によって生み出された生物兵器。怒りで体毛が黒く変色し影を操ることが出来る。フェンリルに邪気が宿った姿と言われている。
「…また邪神か……ということは古代の遺物というわけか。一体どうなってる…邪神は滅んだはずだ」
フェンリルだと思われていた個体は、マラ荒野で遭遇した邪神魔像と同じく邪神によって作られた魔物であった。
邪神はクロノスがかつて滅ぼした存在だ。封印されていたわけではなく消滅させたはずなので存在しているわけがない。
しかし、いくら考えてもしっくり来る答えは出てこない。それに今は戦闘中だ。咲良は一先ず邪神については置いておき邪神魔狼に向き直る。
「無理って言っても無駄なんだろう?…ならやるさ」
咲良は少し口角をあげると黒いフェンリルへと向かう。その後ろには陸が付いてくる。
少し様子を見ようとも考えたが初見の相手なので情報が少なすぎる。チンタラしていては得られるものは少ないと考え、咲良は思い切って殴りにかかる。
しかし、フェンリルに当たる寸前で拳を止めて距離をとる。
「どうした?」
追いついた陸が不思議そうに尋ねる。
「あの黒い毛…触らない方がよさそうだ」
「なんでだ?」
「勘だ。だが俺の勘はよく当たる」
「なるほど。ならどうする?」
「魔力を纏えば良いだけだ。陸は魔装があるから大丈夫だろう」
咲良は直接毛に触れないようにこの戦闘で初めて魔装を発動した。
「よし、仕切り直しだ」
さっきからフェンリルはピクリとも動かない。変身した副作用なのだろうか…
「ふっ!」
咲良は拳を強く握りしめて全力で殴りにかかる。
ドコッ!
フェンリルは今までで一番遠く吹き飛ばされた。
殴った拳を見るが違和感はない。魔力で覆えば問題がない事を確信すると、飛んで行ったフェンリルの元に高速でたどり着くと陸の方へ蹴り飛ばす。もちろん魔装で強化された一撃なので威力は折り紙付きだ。
「行ったぞ!」
「おう!」
陸はゲイボルグを構えて飛んでくるフェンリルに向かって駆けだすと同時に魔力を後ろに噴射させて速度を上げる。
「ほぉ…どんどん魔力の扱いが上手くなっていくな。やはり鍛えるには命を懸けた実戦が一番だな」
戦闘技術をスポンジの様にどんどん吸収していく様子に、もしかすると陸はいつか咲良と近い実力を身に着けるのではないかと思わずにはいられない。
猛スピードで突進する陸がフェンリルとぶつかる瞬間、今まで沈黙していたフェンリルが急に消えた。高速で移動したわけでは無く、その場から一瞬で姿を消したのだ。
「…え?」
突きが空振りに終わった陸は何が起こったのか理解できないでいると、今までで一番険しい表情を浮かべた咲良が目に入った。
「流石に予想外だ……陸!作戦変更だ!こいつは俺1人でやる!」
「ど、どうしたんだよ!」
「こいつは災害級だ!」
「ほ、ほんとかよ!フェンリルはSSS級だろ?」
「こいつをフェンリルとは捉えない方が良い。兎に角早く離れろ!」
「え、あ、あぁ、分かった!」
咲良の声からしてかなり深刻な問題が発生したと読み取った陸は急いでその場を離れる。
「まさか…こんな偶然があるとは」
フェンリルが消えた瞬間をしっかりと捉えていた咲良はなぜ消えたのかが分かっていた。
咲良はその場で村正を構えると魔力感知で気配を探るがフェンリルの気配は感じ取れない。だが生存本能の第六感はしっかりと捉えていた。
すると咲良の目の前に急にフェンリルが現れ、牙で噛みつこうとしてくるが咲良は難なく躱すと村正で鼻先を切りつけ距離を取る。
「弐ノ型 飛翔!」
続けざまにフェンリルに斬撃を飛ばすが、またも一瞬で消えて避けられてしまった。
それからの攻防は傍から見ると異様であった。フェンリルは攻撃されるたびに消え、次の瞬間には咲良の近くにいきなり現れて攻撃を仕掛けてくる。しかし咲良も消えたフェンリルが現れる場所を分かっているのかギリギリで対処する。
「なにが起こってんだよ…」
離れた場所から見ている陸には何が何だかさっぱり分からなかった。
しばらく呆然と戦闘を見ていると急に頭の中に声が響く。
『奴は影を操る能力がある。だから消えたように見えるのは影に潜っているからだ』
その声の主は絶賛戦闘中の咲良であった。
どうやら魔装によって聴覚まで鋭くなったために、陸がボソッと呟いた声が聞こえたので戦いながら念話で解説してくれるらしい。
「影を操る?」
『そうだ。あの威圧感に影の操作。災害級であるのは間違いない』
陸はまだ念話を教えてもらっていないが、この距離でも普通に会話は成立するようだ。
「まじかよ…大丈夫なのか?」
『なんとかな。今は奴がどの程度影を操れるのか見定めてる』
「はやくトドメを刺さないのか?」
『そうしたい所だが…影の攻撃は耐久に関係なくダメージを負う。奴がどんな攻撃を仕掛けてくるかまだ分からない状態では迂闊に攻められない』
「耐久に関係なく?なんで分かるんだ?」
『村正の能力も似たものだからだ……ちっ!…悪いが念話をする余裕が無くなってきた』
陸が咲良とフェンリルを見ると、黒い蛇のような物体が咲良を襲っていた。恐らくあれが影による攻撃なのだろう。
「おい!咲良!」
『くそっ!…念話切るぞ!陸はそのままそこを動くな!』
それを最後に咲良からの念話は途絶えた。
あの咲良が苦戦するとは災害級とはそれほどまでに強い事を陸はようやく理解した。
「頑張れ咲良!」
陸は聞こえるかどうか分からないが大声で応援すると、咲良が親指を立ててサムズアップしたのが見えた。
「やはり影が厄介だな…ここは村正を神器開放させるべきか…おっと!しつけぇな!」
黒い蛇のような無数の影が咲良を襲う。
「どんどん操る影が増えてくる。モタモタしてらんねぇな…だが先ずはステータスプレートで情報を得たいな」
フェンリルが変化してからは攻撃方法が別物となり厄介さが倍増した。変化する前にステータスプレートで確認する必要はないと高を括ったのが悔やまれる。
「さて…行くか…」
咲良は魔装による身体強化、そして縮地を活用して高速で移動し続ける事でステータスプレートをかざす事に成功する。
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「…また邪神か……ということは古代の遺物というわけか。一体どうなってる…邪神は滅んだはずだ」
フェンリルだと思われていた個体は、マラ荒野で遭遇した邪神魔像と同じく邪神によって作られた魔物であった。
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