神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

暁月流派

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「すまなかったなソフィ。お陰で助かった」
「いえ、気にしないでください」

ハワード邸を後にした咲良はソフィ、クロと合流するために宿に戻っていた。咲良はこれで漸くソフィの為に動くことが出来るようになった。

「それで情報はどこまで集まったんだ?」
「有力な情報はすぐに得られました。料理大会で優勝しただけあって多くの者が知っていましたから」
「それは良かったな」
「はい!何でも優勝賞品としてお店を出せる事になったらしくトーレリアスという町に行ったそうです」
「なるほど、そこまで分かっていたか。なら次の目的地はトーレリアスだな」
「よろしくお願いします!」

次の目的地が決まったので3人は支度を始めた。特にアルカナでやり残した事は無いので明日にでも発つ予定だ。


次の日、予定通りトーレリアスに向かうためにアルカナを出ようとした一行を引き留める者がいた。特級冒険者の椿だ。

「少しよろしいですか?」
「俺に何の用だ?」

どうやら椿は咲良に用があるらしい。

「咲良さんに是非暁月流の道場に来て欲しいのです」
「俺に?何故だ?」
「あなたの技は私の流派とよく似ている。ですから道場に来て色々とお聞きしたいのです」
「確かに魅力的な話だが今は無理だ。俺たちには急ぐ目的があるからな」
「咲良さん?私は良いですよ。居場所は分かっているのでもう急ぐ必要はありませんから」
「…早く会いたくないのか?」
「今は行き当たりばったりの旅を楽しみたいです」
「…そうか。椿、道場に行こう」
「それは良かった!ではご案内します。道場はアルカナより少し離れた森林の中にありまして、流派の者が同行しなければ辿り着けませんので」

3人は椿に連れられてアルカナ近くの森の中をひたすら歩く。クロはどんどん成長しているようで1人で森の中にいる魔物を数体仕留めていた。

「クロ、仕留めるのは良いが無闇に殺してはダメだ。覚えておけよ」
「キュイ!」

クロは少し反省したのか若干落ち込みながらもしっかりと返事を返した。

「その竜はとても頭が良いんですね。私も竜に会ったことはありますがここまで懐くとは知りませんでした」
「俺は親だからな。意思疎通出来て当然だ」
「竜の従魔なんて聞いた事ありませんよ。まだ幼いとはいえ戦闘力は十分ありそうですね」
「かもな。とはいえ幼い事に変わりはない。戦闘力があってもそれだけではダメだからな」
「そうですね。竜は強力な魔物ですが咲良さんが親なら何も問題なさそうですね。おっと…話している内に着きましたよ。あちらが我が暁月流の道場になります」

椿が示した先には木々の中に佇む立派な木造家屋があった。中からは大勢の気配を感じるので恐らく暁月流の門下生だろう。そしてその中で1人だけ別次元の気配を放っている。その者は巧妙に実力を隠しているようだが生存本能の勘によって咲良には筒抜けだ。しかし唯者でない事は間違いない。

「まずは師匠を紹介しますので着いて来てください」

4人が道場に入ると中にいた道着を来た門下生が一斉にこちらを見ると椿に向かって頭を下げた。

「椿、お前えらい尊敬されてるな」
「これでも一応師範代ですからね」
「まだ免許皆伝と言う訳ではないんだな」
「師匠は厳しい方ですからね。それに私もまだまだ未熟者です。それを先日嫌という程味わいました」

椿は意味深な視線を咲良に向けるが当の本人は完全にスルーしていた。

「師匠!椿です!只今戻りました!」
「おう!遅かったじゃねぇの!」

椿が奥の方へと声を掛けると椿と同じように羽織を羽織った男勝りな話し方の女性が出てきた。

「依頼で少しイレギュラーが起こりましてね」
「そうかよ!で、そいつらは誰だ?」
「こちらは依頼の際に助けてくれた方々です」

咲良とソフィは自己紹介をするとチラリとクロの事を見たのでやはり相当な実力者と見るべきだ。

「さくら…か、まさかな……それにしてもお前、かなり出来るな!強者の気配をビンビン感じるぜ!」
「確かに咲良は私より強いですよ。少し刀を交えただけですが実力は本物です。それより師匠…自己紹介ぐらいしたらどうです?」
「む、してなかったか?すまんすまん。俺は琴音だ、よろしく!」
「ちょっと師匠!それだけじゃ分からないですよ!…全くこの人は…」

椿はいつもこの琴音と言う師匠に振り回されているのかもしれない。

「師匠は序列第3位の特級冒険者なのですよ。因みに私は序列第10位でしたが今回のペナルティとして12位に下がってしまいました…」

レオの言っていた罰則とはこの事のようだ。確かに特級冒険者として序列が下がるのは不名誉な事なので罰則としては十分だろう。

「ちなみに師匠はこう見えて50歳を過ぎていますよ」

突然椿の爆弾発言が飛び込んできた。

「…は?」
「…え?」
「キュ…」

それには流石の咲良もかなり驚いた。ちらりとソフィとクロを見ると2人とも目が点になっていた。

「椿てめぇ…余計なこと言ってんじゃねーよ!女の年齢はタブーだろうがよ!」

琴音は眉間に皺を寄せながら椿に怒鳴る。見た目は20代後半に見えるが実年齢は50歳以上。琴音がエルフなら納得出来たが彼女は人間だ。これは新手の詐欺だなと咲良は思った。

「まぁいい…それよりお前!俺と模擬戦しないか?」

琴音は先程とは打って変わって満面の笑みを浮かべて咲良を見つめる。あまり良い予感はしないので少し考えていると椿が助け舟、基お節介を焼いてきた。

「それは良い案ですね。実は咲良は暁流という暁月流とよく似た流派の使い手でしてね。それがここに連れてきた理由でもあります」
「なんだと!!それは本当か!?」

椿が暁流と口にした瞬間、琴音は目を見開き驚愕している。

「あり得ない!暁流だと!勝手にその流派を名乗っていい訳ないだろうが!」

琴音は咲良が暁流を名乗っている事にかなり激怒しているようで、最終的に咲良の首元に刀を突き付けてくる。

「この愚か者が…その名前も偽名だな?暁流も咲良という名もお前に名乗る資格などない!どこで知ったのかは知らないが俺が叩き潰してやる!表に出ろ!」

椿達は咲良が詐称しているとは思っていないが琴音のあまりの怒気に何も言えなかった。

(何となく嫌な予感はしていたが…こうなるとはな。ま、経緯はどうあれ強者と戦えるのは面白そうだ)

咲良は外に連れ出され、多くの門下生や椿達が見守る中で悠長に考え事をしていた。
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