神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

修行日和

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「まさか師匠に勝つとは思ってもいませんでした」

琴音を屋敷の一室に運び、門下生達が看病していると椿が咲良に声を掛ける。

「だがお前の師匠の強さは本物だ。今まで出会った人の中で2番目に強かったからな」
「2番目?…では一番は誰です?」
「俺の師匠だ。今でもまだ勝てるとは思わない」
「それは凄い方ですね。是非会ってみたいものです」
「無理だと思うぞ。俺だってもう会えんからな」
「それは…亡くなったという事ですか?」
「いや…まぁ色々ややこしいんだよ」
「そうですか」
「あの!師匠が目を覚ましました!」

2人が会話していると門下生の1人が琴音の容体を報告する。

「お二人を呼んでいますので来てください」

門下生に連れられて2人が琴音のいる部屋に入ると、中には既にソフィとクロが居座っていた。肝心の琴音は意識を取り戻しており、床に敷かれた布団に横たわっていた。
今まで咲良が泊まった宿屋は木製のベッドが基本だったので布団はとても珍しく、和を感じた咲良は少しだけ懐かしい気分になった。

「来たか。まぁ座れ」

琴音は布団の上で上半身を起こしながら2人を手招きする。どうやら大事には至っていないようで思いの外ピンピンしている。流石序列第3位の特級冒険者という所だろうか。

「負けるとはなぁ…お前強いな」
「そりゃどうも」
「だが次やった時は俺が勝つぜ。本気だったとはいえ全力じゃなかったからな」
「ふっ…それなら俺も全力とは程遠いぞ」
「なにをっ!俺が愛刀を使えばお前なんか瞬殺できるぜ!」
「俺も魔法と愛刀の能力を使えばお前如き敵じゃない」
「あァ!!やんのかコラァ!」
「負け犬の遠吠えか?」
「カッチーン!!表出なクソガキ!叩きのめしてやる!」

2人は仲が良いのか悪いのかヒートアップしていく。

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!」

ソフィが2人の仲裁に入ると、琴音が興ざめだと言わんばかりの表情を浮かべながらドサッと布団に寝転がった。

「所でよ…お前本当に暁流なんだな?」

琴音が急に真剣な口調に変えて咲良に問いかける。

「あぁ。俺は64代目の暁流継承者だ。咲良の名も先代から受け継いだ名だ」
「そうかよ。ならその強さも納得だ」
「暁流は古流剣術。扱う者は俺しかいないだろう。なぜ知っているんだ?」
「お前はもう分かっているだろうが…暁月流は暁流を習得出来なかった者が生み出した流派だ」
「な!そうだったんですか!?」

琴音の言葉に椿は驚愕を隠せないでいる。確かに自分の流派が真似事だと聞かされれば誰だって驚くだろう。

「俺は40代目の暁月流継承者でな。代々継承者にはとある刀が受け継がれているんだが、それと同時にいつか暁流を越えろという言葉も受け継がれているんだよ。それが初代の願望だったんじゃねぇかと俺は思う……まぁ越えられなかったわけだが」
「そんな過去があったなんて…」
「椿が知らねぇのは当然だ。今の話は継承者となった者にだけ伝える決まりだからな」
「え?でら聞いてはいけなかったのでは?」
「かまわねぇよ、ただの仕来りだからな。それに…お前が継げば問題ないだろう」
「み…認めてくださるのですか!!」
「今はまだ駄目だ。少なくとも俺より強くならないとな」
「頑張ります!」

椿がグッと拳を握りしめて気合を入れる。

「良いこと思いついた!咲良、お前椿を鍛えてやれ」
「…俺が?」

突然の琴音の提案に咲良は面倒臭そうに答える。

「良いですね!暁月流の元祖である暁流の咲良さんに鍛えられれば私はもっと強くなれます!」
「それに流派同士の交流はメリットもあるだろ?」
「だがな…」

咲良はソフィをちらりと見る。急ぎの旅で無いとはいえ咲良はソフィを足止めし過ぎている。

「大丈夫です!私もここで修行して強くなりたいから!」
「キュイキュイ!」

クロもソフィに同調するように鳴く。クロ自身も強くなりたいのだろう。

「そうか。なら構わないが…」
「よし決まりだ!咲良、ソフィ、今日からお前らは俺の弟子だ!」
「バカか。椿を鍛えるだけだろうが。それに…自分より弱い師匠はいらん」
「なんだと!ぶっ飛ばされたいのか!」
「さっきぶっ飛ばされたばかりの奴が偉そうに」
「また始まった…」

椿とソフィはもう勝手にしてくれとその場を静かに離れていった。
クロはもっとやれと煽る様に2人の周りをパタパタと羽ばたく。


こうして咲良は椿を一時的に鍛える事になった。初めは面倒だと思っていた咲良だったが、他流派の技術を盗める良い機会である事に変わりはないのでメリットは多かった。
それに、同じ刀を使う者と巡り合えたのは咲良にとっても喜ばしい事だ。アスガルドに来てから刀を見る機会は少なからずあったが流派を目にするのは始めてだ。それも暁流の模擬流派なのだから運が良いとしか言いようがない。

その日から咲良は椿と一対一で鍛えだした。
ソフィは見えざる者を更に昇華させようと奮闘しているようだ。
クロはどう鍛えたらいいのか分からないようだが、何かを掴んだのかジーっと咲良の動きを目で追うようになった。
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