117 / 163
第9章 派生流派と天乱四柱
修行日和
しおりを挟む
「まさか師匠に勝つとは思ってもいませんでした」
琴音を屋敷の一室に運び、門下生達が看病していると椿が咲良に声を掛ける。
「だがお前の師匠の強さは本物だ。今まで出会った人の中で2番目に強かったからな」
「2番目?…では一番は誰です?」
「俺の師匠だ。今でもまだ勝てるとは思わない」
「それは凄い方ですね。是非会ってみたいものです」
「無理だと思うぞ。俺だってもう会えんからな」
「それは…亡くなったという事ですか?」
「いや…まぁ色々ややこしいんだよ」
「そうですか」
「あの!師匠が目を覚ましました!」
2人が会話していると門下生の1人が琴音の容体を報告する。
「お二人を呼んでいますので来てください」
門下生に連れられて2人が琴音のいる部屋に入ると、中には既にソフィとクロが居座っていた。肝心の琴音は意識を取り戻しており、床に敷かれた布団に横たわっていた。
今まで咲良が泊まった宿屋は木製のベッドが基本だったので布団はとても珍しく、和を感じた咲良は少しだけ懐かしい気分になった。
「来たか。まぁ座れ」
琴音は布団の上で上半身を起こしながら2人を手招きする。どうやら大事には至っていないようで思いの外ピンピンしている。流石序列第3位の特級冒険者という所だろうか。
「負けるとはなぁ…お前強いな」
「そりゃどうも」
「だが次やった時は俺が勝つぜ。本気だったとはいえ全力じゃなかったからな」
「ふっ…それなら俺も全力とは程遠いぞ」
「なにをっ!俺が愛刀を使えばお前なんか瞬殺できるぜ!」
「俺も魔法と愛刀の能力を使えばお前如き敵じゃない」
「あァ!!やんのかコラァ!」
「負け犬の遠吠えか?」
「カッチーン!!表出なクソガキ!叩きのめしてやる!」
2人は仲が良いのか悪いのかヒートアップしていく。
「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!」
ソフィが2人の仲裁に入ると、琴音が興ざめだと言わんばかりの表情を浮かべながらドサッと布団に寝転がった。
「所でよ…お前本当に暁流なんだな?」
琴音が急に真剣な口調に変えて咲良に問いかける。
「あぁ。俺は64代目の暁流継承者だ。咲良の名も先代から受け継いだ名だ」
「そうかよ。ならその強さも納得だ」
「暁流は古流剣術。扱う者は俺しかいないだろう。なぜ知っているんだ?」
「お前はもう分かっているだろうが…暁月流は暁流を習得出来なかった者が生み出した流派だ」
「な!そうだったんですか!?」
琴音の言葉に椿は驚愕を隠せないでいる。確かに自分の流派が真似事だと聞かされれば誰だって驚くだろう。
「俺は40代目の暁月流継承者でな。代々継承者にはとある刀が受け継がれているんだが、それと同時にいつか暁流を越えろという言葉も受け継がれているんだよ。それが初代の願望だったんじゃねぇかと俺は思う……まぁ越えられなかったわけだが」
「そんな過去があったなんて…」
「椿が知らねぇのは当然だ。今の話は継承者となった者にだけ伝える決まりだからな」
「え?でら聞いてはいけなかったのでは?」
「かまわねぇよ、ただの仕来りだからな。それに…お前が継げば問題ないだろう」
「み…認めてくださるのですか!!」
「今はまだ駄目だ。少なくとも俺より強くならないとな」
「頑張ります!」
椿がグッと拳を握りしめて気合を入れる。
「良いこと思いついた!咲良、お前椿を鍛えてやれ」
「…俺が?」
突然の琴音の提案に咲良は面倒臭そうに答える。
「良いですね!暁月流の元祖である暁流の咲良さんに鍛えられれば私はもっと強くなれます!」
「それに流派同士の交流はメリットもあるだろ?」
「だがな…」
咲良はソフィをちらりと見る。急ぎの旅で無いとはいえ咲良はソフィを足止めし過ぎている。
「大丈夫です!私もここで修行して強くなりたいから!」
「キュイキュイ!」
クロもソフィに同調するように鳴く。クロ自身も強くなりたいのだろう。
「そうか。なら構わないが…」
「よし決まりだ!咲良、ソフィ、今日からお前らは俺の弟子だ!」
「バカか。椿を鍛えるだけだろうが。それに…自分より弱い師匠はいらん」
「なんだと!ぶっ飛ばされたいのか!」
「さっきぶっ飛ばされたばかりの奴が偉そうに」
「また始まった…」
椿とソフィはもう勝手にしてくれとその場を静かに離れていった。
クロはもっとやれと煽る様に2人の周りをパタパタと羽ばたく。
こうして咲良は椿を一時的に鍛える事になった。初めは面倒だと思っていた咲良だったが、他流派の技術を盗める良い機会である事に変わりはないのでメリットは多かった。
それに、同じ刀を使う者と巡り合えたのは咲良にとっても喜ばしい事だ。アスガルドに来てから刀を見る機会は少なからずあったが流派を目にするのは始めてだ。それも暁流の模擬流派なのだから運が良いとしか言いようがない。
その日から咲良は椿と一対一で鍛えだした。
ソフィは見えざる者を更に昇華させようと奮闘しているようだ。
クロはどう鍛えたらいいのか分からないようだが、何かを掴んだのかジーっと咲良の動きを目で追うようになった。
琴音を屋敷の一室に運び、門下生達が看病していると椿が咲良に声を掛ける。
「だがお前の師匠の強さは本物だ。今まで出会った人の中で2番目に強かったからな」
「2番目?…では一番は誰です?」
「俺の師匠だ。今でもまだ勝てるとは思わない」
「それは凄い方ですね。是非会ってみたいものです」
「無理だと思うぞ。俺だってもう会えんからな」
「それは…亡くなったという事ですか?」
「いや…まぁ色々ややこしいんだよ」
「そうですか」
「あの!師匠が目を覚ましました!」
2人が会話していると門下生の1人が琴音の容体を報告する。
「お二人を呼んでいますので来てください」
門下生に連れられて2人が琴音のいる部屋に入ると、中には既にソフィとクロが居座っていた。肝心の琴音は意識を取り戻しており、床に敷かれた布団に横たわっていた。
今まで咲良が泊まった宿屋は木製のベッドが基本だったので布団はとても珍しく、和を感じた咲良は少しだけ懐かしい気分になった。
「来たか。まぁ座れ」
琴音は布団の上で上半身を起こしながら2人を手招きする。どうやら大事には至っていないようで思いの外ピンピンしている。流石序列第3位の特級冒険者という所だろうか。
「負けるとはなぁ…お前強いな」
「そりゃどうも」
「だが次やった時は俺が勝つぜ。本気だったとはいえ全力じゃなかったからな」
「ふっ…それなら俺も全力とは程遠いぞ」
「なにをっ!俺が愛刀を使えばお前なんか瞬殺できるぜ!」
「俺も魔法と愛刀の能力を使えばお前如き敵じゃない」
「あァ!!やんのかコラァ!」
「負け犬の遠吠えか?」
「カッチーン!!表出なクソガキ!叩きのめしてやる!」
2人は仲が良いのか悪いのかヒートアップしていく。
「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!」
ソフィが2人の仲裁に入ると、琴音が興ざめだと言わんばかりの表情を浮かべながらドサッと布団に寝転がった。
「所でよ…お前本当に暁流なんだな?」
琴音が急に真剣な口調に変えて咲良に問いかける。
「あぁ。俺は64代目の暁流継承者だ。咲良の名も先代から受け継いだ名だ」
「そうかよ。ならその強さも納得だ」
「暁流は古流剣術。扱う者は俺しかいないだろう。なぜ知っているんだ?」
「お前はもう分かっているだろうが…暁月流は暁流を習得出来なかった者が生み出した流派だ」
「な!そうだったんですか!?」
琴音の言葉に椿は驚愕を隠せないでいる。確かに自分の流派が真似事だと聞かされれば誰だって驚くだろう。
「俺は40代目の暁月流継承者でな。代々継承者にはとある刀が受け継がれているんだが、それと同時にいつか暁流を越えろという言葉も受け継がれているんだよ。それが初代の願望だったんじゃねぇかと俺は思う……まぁ越えられなかったわけだが」
「そんな過去があったなんて…」
「椿が知らねぇのは当然だ。今の話は継承者となった者にだけ伝える決まりだからな」
「え?でら聞いてはいけなかったのでは?」
「かまわねぇよ、ただの仕来りだからな。それに…お前が継げば問題ないだろう」
「み…認めてくださるのですか!!」
「今はまだ駄目だ。少なくとも俺より強くならないとな」
「頑張ります!」
椿がグッと拳を握りしめて気合を入れる。
「良いこと思いついた!咲良、お前椿を鍛えてやれ」
「…俺が?」
突然の琴音の提案に咲良は面倒臭そうに答える。
「良いですね!暁月流の元祖である暁流の咲良さんに鍛えられれば私はもっと強くなれます!」
「それに流派同士の交流はメリットもあるだろ?」
「だがな…」
咲良はソフィをちらりと見る。急ぎの旅で無いとはいえ咲良はソフィを足止めし過ぎている。
「大丈夫です!私もここで修行して強くなりたいから!」
「キュイキュイ!」
クロもソフィに同調するように鳴く。クロ自身も強くなりたいのだろう。
「そうか。なら構わないが…」
「よし決まりだ!咲良、ソフィ、今日からお前らは俺の弟子だ!」
「バカか。椿を鍛えるだけだろうが。それに…自分より弱い師匠はいらん」
「なんだと!ぶっ飛ばされたいのか!」
「さっきぶっ飛ばされたばかりの奴が偉そうに」
「また始まった…」
椿とソフィはもう勝手にしてくれとその場を静かに離れていった。
クロはもっとやれと煽る様に2人の周りをパタパタと羽ばたく。
こうして咲良は椿を一時的に鍛える事になった。初めは面倒だと思っていた咲良だったが、他流派の技術を盗める良い機会である事に変わりはないのでメリットは多かった。
それに、同じ刀を使う者と巡り合えたのは咲良にとっても喜ばしい事だ。アスガルドに来てから刀を見る機会は少なからずあったが流派を目にするのは始めてだ。それも暁流の模擬流派なのだから運が良いとしか言いようがない。
その日から咲良は椿と一対一で鍛えだした。
ソフィは見えざる者を更に昇華させようと奮闘しているようだ。
クロはどう鍛えたらいいのか分からないようだが、何かを掴んだのかジーっと咲良の動きを目で追うようになった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
さようなら竜生、こんにちは人生
永島ひろあき
ファンタジー
最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。
竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。
竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。
辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。
かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。
※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。
このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。
※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。
※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる