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第9章 派生流派と天乱四柱
破門下生
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修行をしていたある日、暫く留守にしていた琴音が帰ってくるなり咲良と椿を呼び出した。
「お疲れ様です師匠。何かあったのですか?」
「まぁまずは座れ。おい!茶を出してくれ!」
琴音が声を張ると、「はい!」と門下生の1人が直ぐに茶を持ってきてくれた。
その茶は苦みの中にほんのりと甘さが感じられる大人な味で咲良好みだった。茶はアスガルドではあまり普及しておらず、クロノスが世界樹の葉を燻して作った物しか飲んだ事がないので少しほっとした気分になった。
「さて、お前らを呼んだ訳だが…少しやってもらいたい事があってな」
「やってもらいたい事ですか?」
「あぁ。実は最近暁月流を名乗る連中がいるらしくてな。そいつらは盗賊行為をしているんだとよ」
「暁月流を名乗るなど…許せない!」
椿は暁月流を誇りに思っているので、絶対に許せないと怒りをあらわにする。
「そこで暁月流である俺にギルドから話が回ってきたわけだ」
「討伐依頼ですか?」
「そうだ。ギルドも何度か討伐隊を送り込んだが返り討ちだってよ」
「ただの盗賊が討伐隊を返り討ち?それは妙だな」
琴音から齎された情報に咲良は違和感を覚える。
通常盗賊は冒険者からするとそこまで驚異ではなく、難易度は精々C級という所だろう。冒険者が盗賊になり下がった場合は例外だが、態々討伐隊を組んだにも関わらず返り討ちという事はただの盗賊ではないのかもしれない。
「ギルドからの情報によると…奴らは暁月流に似た流派の使い手らしい」
「そんなバカな!」
「だがギルドからの情報だ。間違いないだろう」
「なら…まさか…」
椿が突然深刻そうな表情を浮かべるので何か思い当たる節があるらしい。
「恐らくな」
「何の話だ?」
琴音と椿は何が起こっているのか分かった様だが咲良には何のことやらさっぱりだ。
「数年前に俺が破門にした門下生がいてな」
「なるほど。そいつが盗賊となって暁月流を名乗っている訳か」
「ジャンがこんな事をするなんて!」
どうやら破門にした門下生の名はジャンというらしい。椿の様子からして親しい関係だった様に思える。
「なぜ破門にしたんだ?」
「ジャンは親に捨てられた過去があってな。少し性格に問題があったんだ」
「それだけじゃないだろう?」
「あぁ…その過去の所為なのかは分からないが奴は心の奥底で人を殺したがっていた。実際修行中に門下生の1人を真剣で切ってな。何とか一命は取り留めたが俺は奴を破門した」
「その結果がこれか」
「ちょ!ちょっと咲良さん!」
咲良の言葉に椿は慌てて反論しようとするが…
「いいんだ。咲良は正しい。これは俺が招いた不手際だ」
「それで?椿は分かるが何故俺もなんだ?」
「俺が出張ってもいいんだが…」
「私に行かせてください!」
「ほらな、言うと思ったぜ。まぁ俺も椿が適任だと思うからな」
やはり椿とジャンには何かしらの縁があるのだろう。そうでなければ琴音が態々話したりしないだろう。
「ジャンは当時椿よりも強かった。奴は戦いにおいては天才で潜在能力も相当なものだった。今は椿も特級冒険者になるほど強くなったが厳しい戦いになるだろう。そこで咲良には護衛を頼みたい」
「私1人でも勝てます!」
「図に乗るな。この数年で奴がどこまで力を付けたのか俺ですら分からねぇんだ。そんな奴の所へ弟子を一人で行かせる師匠がどこにいる」
ふと見せた琴音の姿を咲良はクロノスと重ね合わせた。師匠はどこまでいっても師匠なのだと改めて実感できた。
「…わかり、ました」
椿は少し不満そうだが、咲良が同行する事を受け入れた。
「なら準備しろ。一応依頼扱いになっているからな。報酬も出るぞ」
「難易度は?」
「それはまだ分からん。ギルドもまだ把握出来ていない事が多くて難易度を定められないみたいだからな。まぁジャンの実力を考えるとSS級は確定だと思うがな」
「なら手続きは任せるぞ」
「あぁ、それくらいはやってやる。頼んだぞ2人とも」
その後、琴音とギルドが集めた情報から現在の居場所を割り出した。その場所とは咲良達の目的地であるトーレリアスの町近くだ。
2人は準備を終えて屋敷を後にしようとした時、パタパタとクロが近づいてきた。
「どうしたクロ。一緒に来るか?」
「キュー…キュイ!」
「そうか。お前も修行頑張ってるもんな」
「キュイ!」
「分かった。なら俺が留守の間ソフィの事は任せたぞ」
「キュイキュイ!」
クロはどうやらソフィと一緒に修行をするそうだ。直接話さなくても何となくお互いの考えが分かる2人だが、やはり直接話した方が意思は伝わりやすい。
咲良はクロの頭を一撫ですると椿と共に出発した。
「お疲れ様です師匠。何かあったのですか?」
「まぁまずは座れ。おい!茶を出してくれ!」
琴音が声を張ると、「はい!」と門下生の1人が直ぐに茶を持ってきてくれた。
その茶は苦みの中にほんのりと甘さが感じられる大人な味で咲良好みだった。茶はアスガルドではあまり普及しておらず、クロノスが世界樹の葉を燻して作った物しか飲んだ事がないので少しほっとした気分になった。
「さて、お前らを呼んだ訳だが…少しやってもらいたい事があってな」
「やってもらいたい事ですか?」
「あぁ。実は最近暁月流を名乗る連中がいるらしくてな。そいつらは盗賊行為をしているんだとよ」
「暁月流を名乗るなど…許せない!」
椿は暁月流を誇りに思っているので、絶対に許せないと怒りをあらわにする。
「そこで暁月流である俺にギルドから話が回ってきたわけだ」
「討伐依頼ですか?」
「そうだ。ギルドも何度か討伐隊を送り込んだが返り討ちだってよ」
「ただの盗賊が討伐隊を返り討ち?それは妙だな」
琴音から齎された情報に咲良は違和感を覚える。
通常盗賊は冒険者からするとそこまで驚異ではなく、難易度は精々C級という所だろう。冒険者が盗賊になり下がった場合は例外だが、態々討伐隊を組んだにも関わらず返り討ちという事はただの盗賊ではないのかもしれない。
「ギルドからの情報によると…奴らは暁月流に似た流派の使い手らしい」
「そんなバカな!」
「だがギルドからの情報だ。間違いないだろう」
「なら…まさか…」
椿が突然深刻そうな表情を浮かべるので何か思い当たる節があるらしい。
「恐らくな」
「何の話だ?」
琴音と椿は何が起こっているのか分かった様だが咲良には何のことやらさっぱりだ。
「数年前に俺が破門にした門下生がいてな」
「なるほど。そいつが盗賊となって暁月流を名乗っている訳か」
「ジャンがこんな事をするなんて!」
どうやら破門にした門下生の名はジャンというらしい。椿の様子からして親しい関係だった様に思える。
「なぜ破門にしたんだ?」
「ジャンは親に捨てられた過去があってな。少し性格に問題があったんだ」
「それだけじゃないだろう?」
「あぁ…その過去の所為なのかは分からないが奴は心の奥底で人を殺したがっていた。実際修行中に門下生の1人を真剣で切ってな。何とか一命は取り留めたが俺は奴を破門した」
「その結果がこれか」
「ちょ!ちょっと咲良さん!」
咲良の言葉に椿は慌てて反論しようとするが…
「いいんだ。咲良は正しい。これは俺が招いた不手際だ」
「それで?椿は分かるが何故俺もなんだ?」
「俺が出張ってもいいんだが…」
「私に行かせてください!」
「ほらな、言うと思ったぜ。まぁ俺も椿が適任だと思うからな」
やはり椿とジャンには何かしらの縁があるのだろう。そうでなければ琴音が態々話したりしないだろう。
「ジャンは当時椿よりも強かった。奴は戦いにおいては天才で潜在能力も相当なものだった。今は椿も特級冒険者になるほど強くなったが厳しい戦いになるだろう。そこで咲良には護衛を頼みたい」
「私1人でも勝てます!」
「図に乗るな。この数年で奴がどこまで力を付けたのか俺ですら分からねぇんだ。そんな奴の所へ弟子を一人で行かせる師匠がどこにいる」
ふと見せた琴音の姿を咲良はクロノスと重ね合わせた。師匠はどこまでいっても師匠なのだと改めて実感できた。
「…わかり、ました」
椿は少し不満そうだが、咲良が同行する事を受け入れた。
「なら準備しろ。一応依頼扱いになっているからな。報酬も出るぞ」
「難易度は?」
「それはまだ分からん。ギルドもまだ把握出来ていない事が多くて難易度を定められないみたいだからな。まぁジャンの実力を考えるとSS級は確定だと思うがな」
「なら手続きは任せるぞ」
「あぁ、それくらいはやってやる。頼んだぞ2人とも」
その後、琴音とギルドが集めた情報から現在の居場所を割り出した。その場所とは咲良達の目的地であるトーレリアスの町近くだ。
2人は準備を終えて屋敷を後にしようとした時、パタパタとクロが近づいてきた。
「どうしたクロ。一緒に来るか?」
「キュー…キュイ!」
「そうか。お前も修行頑張ってるもんな」
「キュイ!」
「分かった。なら俺が留守の間ソフィの事は任せたぞ」
「キュイキュイ!」
クロはどうやらソフィと一緒に修行をするそうだ。直接話さなくても何となくお互いの考えが分かる2人だが、やはり直接話した方が意思は伝わりやすい。
咲良はクロの頭を一撫ですると椿と共に出発した。
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