神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

平安想フ

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「感覚を狂わせるだけでなく感知出来る奴と出来ない奴がいるって事か…いや、本体が全てを操作している可能性もある」

気配がない個体が居るという事は本体も感知出来ないという事だ。事実感知に邪神魔蛇は引っかかっていない。

今すぐにでも本体の居場所を探したい所だが、目の前の大蛇がそれを許してくれるはずもない。

「本当に面倒な敵だ」

悪態をつきながらも咲良は大蛇へと駆けていく。しかし…

ドンッドンッドンッドンッ

地中から新たに4頭の大蛇が咲良とクロを囲むようにして姿を現した。その4頭はやはりと言うべきか気配を感じなかった。

「まじか…この大蛇も無限に生み出せるとでもいうのかよ…」

アルカナに迫る蛇の大群の様にこの大蛇を無数に生み出す事が出来るとすればたとえ咲良でも勝ち目はかなり薄い。確かに咲良は強いが消耗戦となると咲良の方が圧倒的に分は悪い。

「クロ!俺から離れるなよ!」
「キュイ!」

クロがパタパタと飛んできたのを確認すると咲良は村正を鞘に納めた。

「ここは一気に片を付ける。黒竜化!」

黒竜の外套が強大な翼に、装束が強固な鱗へと変わっていく。暁流剣術でも構わないが黒竜化は全ステータスが3倍になるので、気配のない大蛇の攻撃も耐える事が出来る。

「地中に潜られると厄介だ……なら…竜格!」

咲良は黒竜の覇気を大蛇に当て動きを止める。力が近ければ効果はあまりないが上手くいったようだ。

「今だクロ!」

咲良はクロと一緒に竜格で動けないでいる大蛇に迫り、炎弾や爪を使って瞬時に息の根を止める。

「気配のない個体は耐久力があまり無いようだな」

最初の大蛇はクロの炎弾に耐えていた。しかし気配のない第2波の大蛇は動けないとはいえクロでも倒すことが出来た。その事から察するに気配を消すには何らかの代償が伴うのかもしれない。

「ふぅ…流石に何回も黒竜化をするのは堪えるな」

黒竜化を解きながら咲良はポツリと呟く。
黒竜化はその姿を維持するだけでも膨大な魔力を必要とする。既にアルカナで氷壁を作った為、少し休息を取った程度では回復しない量の魔力を消費している咲良は今までにない程消耗していた。

一息つきたい所だが、ドゴォーンと大地が爆発するかの様に砂埃を巻き上げて1頭の大蛇が姿を現す。

「クロ!数秒時間を稼げ」

咲良の指示でクロが大蛇に向かって飛んでいく。

「頼むぞ相棒…神器開放」

神器開放によって村正の刀身は漆黒となり、咲良自身も黒いオーラを纏う。
何故ここで神器開放なのかというと、神器はその殆どが魔力発現体で、魔力を生み出し保有しているので咲良自身の魔力が無くても村正の魔力を使って戦うことが出来るからだ。

「弐ノ型 飛翔!」

飛翔と村正の力が合わさって黒い斬撃となり大蛇を襲う。

ドガァーン!

黒い飛翔は命中した様だが、その衝撃で再度砂埃が空高く舞い上がる。
すると砂埃の中から毒々しい紫色の液体が塊となって咲良に襲い掛かる。

「ちっ!」

あまり良い予感はしないので避けようとした時、クロが間に割り込んで炎弾を放ち相殺した。

「クロ!助かった!」
「キュイィィー」

クロは役に立てた事が嬉しかったのかブンブンと尻尾を振って喜びを表す。

しかし気を抜くことは出来ない。砂埃が晴れるとそこには傷が殆どない大蛇の姿があったからだ。

「神器開放した一撃だぞ…この蛇は耐久力と再生力を備えているのか」

今まで現れた大蛇は出てくるたびに違う能力を有していた事から、本体は生み出す個体の能力を自在に変える事が出来るのかもしれない。

「鱗が硬いのか…だが時間を掛ける訳にはいかない」

咲良は拡張袋に手を突っ込み、2mはある巨大な鉄槌を取り出した。この鉄槌はまだ名前はなく、神器でも魔武器でもないが普通の鉄槌という訳でもない。この鉄槌は咲良でも腕がプルプルと振るえるほど重いのだ。

「鱗が硬いなら叩き潰してやる」

村正の能力で大蛇を消し飛ばす事は出来るが今後の事を考えるとあまり魔力は消費したくなかった。だからこそ鉄槌で叩き潰すという案が浮かんだ。

鉄槌を右に、村正を左に持った咲良は大蛇へと突っ込んでいく。しかし大蛇も易々と攻撃を喰らうまいと長く巨大な尻尾で薙ぎ払ってくる。

ガリガリと地面を抉る音を立てながら尻尾が迫って来るが、当たる直前でクロがその小さな身体で受け止めた。

「よくやった!」

咲良が望む動きをしっかりと熟してくれたクロに感謝しながらも、チャンスとばかりにその場から大きく跳躍し大蛇の頭に鉄槌を振り下ろす。

ドゴォーン!

見事命中し大地が揺れるほどの衝撃が広がったがまだ攻撃は終わらない。咲良は鉄槌を手放すと再び跳躍し、空中から飛翔を雨の様に放った!

ドドドドドドドドッ!

怒涛の攻撃によって再度舞う砂埃が晴れた時、そこにいたのは絶命した大蛇だった。
鉄槌で頭を潰され、脆くなった所に飛翔を浴びたのだから絶命するのは当然なのだが死してなお気配を感じないので目視でしか生死の確認が取れなかった。

「ふぅ…終わったか」

一息つく咲良の頭にクロが降り立った。

「クロ、よくやった。しかし…こんな奴をまだ相手し続けるってのは中々骨だな」
「キュイィ」

クロも同意の様で溜息のように鳴く。

「全く…刺激が多すぎるってのも悩みだな…あの頃が懐かしく感じる」

咲良は戦闘中ではあるが地球での平和な生活をふと思い出した。
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