神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

文字の大きさ
135 / 163
第9章 派生流派と天乱四柱

平安想フ

しおりを挟む
「感覚を狂わせるだけでなく感知出来る奴と出来ない奴がいるって事か…いや、本体が全てを操作している可能性もある」

気配がない個体が居るという事は本体も感知出来ないという事だ。事実感知に邪神魔蛇は引っかかっていない。

今すぐにでも本体の居場所を探したい所だが、目の前の大蛇がそれを許してくれるはずもない。

「本当に面倒な敵だ」

悪態をつきながらも咲良は大蛇へと駆けていく。しかし…

ドンッドンッドンッドンッ

地中から新たに4頭の大蛇が咲良とクロを囲むようにして姿を現した。その4頭はやはりと言うべきか気配を感じなかった。

「まじか…この大蛇も無限に生み出せるとでもいうのかよ…」

アルカナに迫る蛇の大群の様にこの大蛇を無数に生み出す事が出来るとすればたとえ咲良でも勝ち目はかなり薄い。確かに咲良は強いが消耗戦となると咲良の方が圧倒的に分は悪い。

「クロ!俺から離れるなよ!」
「キュイ!」

クロがパタパタと飛んできたのを確認すると咲良は村正を鞘に納めた。

「ここは一気に片を付ける。黒竜化!」

黒竜の外套が強大な翼に、装束が強固な鱗へと変わっていく。暁流剣術でも構わないが黒竜化は全ステータスが3倍になるので、気配のない大蛇の攻撃も耐える事が出来る。

「地中に潜られると厄介だ……なら…竜格!」

咲良は黒竜の覇気を大蛇に当て動きを止める。力が近ければ効果はあまりないが上手くいったようだ。

「今だクロ!」

咲良はクロと一緒に竜格で動けないでいる大蛇に迫り、炎弾や爪を使って瞬時に息の根を止める。

「気配のない個体は耐久力があまり無いようだな」

最初の大蛇はクロの炎弾に耐えていた。しかし気配のない第2波の大蛇は動けないとはいえクロでも倒すことが出来た。その事から察するに気配を消すには何らかの代償が伴うのかもしれない。

「ふぅ…流石に何回も黒竜化をするのは堪えるな」

黒竜化を解きながら咲良はポツリと呟く。
黒竜化はその姿を維持するだけでも膨大な魔力を必要とする。既にアルカナで氷壁を作った為、少し休息を取った程度では回復しない量の魔力を消費している咲良は今までにない程消耗していた。

一息つきたい所だが、ドゴォーンと大地が爆発するかの様に砂埃を巻き上げて1頭の大蛇が姿を現す。

「クロ!数秒時間を稼げ」

咲良の指示でクロが大蛇に向かって飛んでいく。

「頼むぞ相棒…神器開放」

神器開放によって村正の刀身は漆黒となり、咲良自身も黒いオーラを纏う。
何故ここで神器開放なのかというと、神器はその殆どが魔力発現体で、魔力を生み出し保有しているので咲良自身の魔力が無くても村正の魔力を使って戦うことが出来るからだ。

「弐ノ型 飛翔!」

飛翔と村正の力が合わさって黒い斬撃となり大蛇を襲う。

ドガァーン!

黒い飛翔は命中した様だが、その衝撃で再度砂埃が空高く舞い上がる。
すると砂埃の中から毒々しい紫色の液体が塊となって咲良に襲い掛かる。

「ちっ!」

あまり良い予感はしないので避けようとした時、クロが間に割り込んで炎弾を放ち相殺した。

「クロ!助かった!」
「キュイィィー」

クロは役に立てた事が嬉しかったのかブンブンと尻尾を振って喜びを表す。

しかし気を抜くことは出来ない。砂埃が晴れるとそこには傷が殆どない大蛇の姿があったからだ。

「神器開放した一撃だぞ…この蛇は耐久力と再生力を備えているのか」

今まで現れた大蛇は出てくるたびに違う能力を有していた事から、本体は生み出す個体の能力を自在に変える事が出来るのかもしれない。

「鱗が硬いのか…だが時間を掛ける訳にはいかない」

咲良は拡張袋に手を突っ込み、2mはある巨大な鉄槌を取り出した。この鉄槌はまだ名前はなく、神器でも魔武器でもないが普通の鉄槌という訳でもない。この鉄槌は咲良でも腕がプルプルと振るえるほど重いのだ。

「鱗が硬いなら叩き潰してやる」

村正の能力で大蛇を消し飛ばす事は出来るが今後の事を考えるとあまり魔力は消費したくなかった。だからこそ鉄槌で叩き潰すという案が浮かんだ。

鉄槌を右に、村正を左に持った咲良は大蛇へと突っ込んでいく。しかし大蛇も易々と攻撃を喰らうまいと長く巨大な尻尾で薙ぎ払ってくる。

ガリガリと地面を抉る音を立てながら尻尾が迫って来るが、当たる直前でクロがその小さな身体で受け止めた。

「よくやった!」

咲良が望む動きをしっかりと熟してくれたクロに感謝しながらも、チャンスとばかりにその場から大きく跳躍し大蛇の頭に鉄槌を振り下ろす。

ドゴォーン!

見事命中し大地が揺れるほどの衝撃が広がったがまだ攻撃は終わらない。咲良は鉄槌を手放すと再び跳躍し、空中から飛翔を雨の様に放った!

ドドドドドドドドッ!

怒涛の攻撃によって再度舞う砂埃が晴れた時、そこにいたのは絶命した大蛇だった。
鉄槌で頭を潰され、脆くなった所に飛翔を浴びたのだから絶命するのは当然なのだが死してなお気配を感じないので目視でしか生死の確認が取れなかった。

「ふぅ…終わったか」

一息つく咲良の頭にクロが降り立った。

「クロ、よくやった。しかし…こんな奴をまだ相手し続けるってのは中々骨だな」
「キュイィ」

クロも同意の様で溜息のように鳴く。

「全く…刺激が多すぎるってのも悩みだな…あの頃が懐かしく感じる」

咲良は戦闘中ではあるが地球での平和な生活をふと思い出した。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

さようなら竜生、こんにちは人生

永島ひろあき
ファンタジー
 最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。  竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。  竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。  辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。  かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。 ※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。  このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。 ※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。 ※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...