神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第9章 派生流派と天乱四柱

戦ノ糸口

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「がふっ…」

立ち上がった咲良は口から少量の血を吐いた。邪神魔蛇の一撃によって内臓が損傷したのかもしれない。

「咲良!」

その様子を見ていたソフィ達は慌てて駆け寄って来る。

「直ぐに治療しないと!」
「いや…心配ない。既に治療中だ」

咲良は氣を体内に巡らす事で治療を施す。

「咲良、もしかしてかなりヤバい状況か?」

フィリスが咲良を心配そうに見つめながら問いかける。

「あぁ…奴は想像以上の化物だ」
「それほどか…策は?」
「まだ試していない事がいくつかあるが…」
「効く可能性は低いって事か…」
「そうだな。あれほど厄介な能力を持っているとは…お前ら知らなかったのか?」

一度邪神魔蛇と遭遇した事のあるフィリスとガイモンなら知っていると思ったが2人の表情からして心当たりは無いようだ。

「儂らは一方的にやられたからな。蛇を生み出せること以外は知らん」
「どんな能力なんだ?」
「超順応変異といって、どんな状況にも瞬時に順応してしまう」
「ちょう…じゅんのう…へんい?」
「なんだと!」
「反則じゃねーか!」

ソフィはあまり理解出来ていない様だが、経験豊富な天乱四柱の2人は超順応変異の異常性が理解出来た。

「どういう事?」

未だ状況が把握出来ていないソフィが咲良に解説を求める。

「奴にはどんな攻撃も効かないって事だ」
「うそ…勝てる訳ないよ…」
「奴は狡猾だ。恐ろしい程戦闘慣れしてやがる。その証拠に奴は俺を追ってこない」

邪神魔蛇は自らが吹き飛ばした咲良に追撃をする様子は無い。超順応変異という技能の特性を考えれば敵に先手を譲った方が有利になる事を奴はしっかりと把握している。

「咲良でも勝てないとなると、援軍が来ても意味はなさそうだな」

フィリスは咲良が勝てないという事実を重く見ているようだ。

「だがやるしかないだろ。奴を野放しにはしておけんぞ」
「それはそうだが、奴の能力が咲良の言う通りなら…絶対に勝てん」
「倒せなくとも撃退ならどうだ?」

ガイモンが考えた末の提案を出すが咲良はすぐに否定する。

「ダメだ。奴は気配を消す事が出来るから逃がすと厄介だぞ」
「気配を消す?それって…」

ソフィが私と同じ魔法だと言う前に咲良が首を振って制止する。いくらフィリス達が信用出来るといっても簡単に自身の魔法を打ち明けてはいけない。
その咲良の意図が分かったのかソフィは小さく頷いた。

「気配も消せて順応も出来る……か…」
「ここまでの化物とは…これが災害級か」

フィリスとガイモンは今まで以上に深刻な表情を浮かべて黙り込んでしまった。

「とりあえずお前らは今まで通りここで待機していてくれ」

その言葉と同時にクロがパタパタと飛んできた。
咲良が邪神魔蛇に吹き飛ばされてしまった事でクロは1人で戦おうとしたが流石に無謀であると悟った様で、邪神魔蛇が動かない事を確認すると咲良を追ってきたのだ。

「クロちゃん!」

クロを見つけたソフィがガバッっとクロを抱きしめる。

「おいおい。なんだそりゃ?」

ソフィがクロを抱きしめた事によって銀匠の腕輪の効果が薄れ、フィリスとガイモンにもしっかりとクロが視認出来るようになった。

「黒い…竜か?」
「俺の相棒だ。フィリス…お前なら分かるはずだ」
「俺なら………ま、まさか…」

暫く考えたフィリスは一つの結論に至った。
フィリスは少し前に咲良と邪神についての情報交換をした時、咲良が大昔に邪神を滅ぼした古の竜がまだ生きていると言っていた事を思い出した。目の前の竜はまだ幼く、何千年も生きているとは到底思えないがそれ以外に思いつかなかった。

「この小さな竜が……古の竜なのか」
「なにっ!古の竜だと!」

ガイモンも天乱四柱として閲覧禁止書物を見ているので古の竜については知っている様だがクロが古の竜だとは到底思えなかった。

「まぁ詳しい話は後だ。ソフィ、クロを頼んだぞ」

咲良はそう言い残して再び邪神魔蛇の元へと駆けて行った。その背中を4人はキョトンとした顔で見つめていた。



「ちっ…全く、ムカつく野郎だ。悠々としやがって」

邪神魔蛇の元に戻ると奴は蜷局を巻いてゆったりとしていた。気配を消せるのだから身を隠せば良い筈なのだが奴はそうしなかった。それ程までに超順応変異に自信があるのか別の思惑があるかのどちらかだろう。

「いくぞ…竜人化!」

咲良は人の姿を保ったまま黒竜の能力を引き出す。

「炎弾!」

口を大きく広げて魔力を圧縮して放つ。やはり黒竜化の状態で放つ炎弾の方が圧倒的に威力は高く、竜人化では未だ半分の力も引き出せていない。

その炎弾に邪神魔蛇は避ける所か真正面から突っ込んで来た。

「そう来るだろうと思っていた。弐ノ型 飛翔!氷河!影突!」

咲良は竜人化のまま3種類の異なる攻撃を放つ。
炎弾を放つと邪神魔蛇が順応する為に態と受ける事は分かっていた。確かに超順応変異は脅威だが同時に放たれた異なる攻撃全てに順応出来るだろうか。仮の話だがもしかすると一度に順応出来る数に限度があるのではないかと咲良は考えた。だからこそ態々竜人化してまで炎弾を放ち、順応している間に異なる複数の攻撃を放った訳だ。

「さぁどうなる…」

ドンッ!
パキパキッ!
ドスッドスッ!

飛翔の魔力と氣、氷河の氷、影突の闇が同時に邪神魔蛇に衝突する。これで炎弾を含め5種類の異なる攻撃が一度に襲った事になる。

「む…ダメか…」

咲良の作戦は上手くいかず、どの攻撃も邪神魔蛇に効いている様には見えなかった。
もしかすると咲良が考える中で最悪の結果、一度順応すると永遠に順応する事が出来る可能性も出てきた。そうなれば誰も勝てる者はいなくなるだろう。
邪神魔像との戦闘で使用した神器能無を使えば勝つ事は出来るかもしれない。何故なら能無は神器開放すると刺した相手の能力を封じる事が出来るからだ。しかし邪神魔蛇は脱皮する事が出来るので能力をずっと封じる事は出来ないだろうし、村正の能力である闇にも順応したので能無も効かない可能性は高い。

「もっと多種の攻撃をするしかないか…だが…」

邪神魔蛇は5種の異なる攻撃に順応してみせた。ならば次にする事は6種の異なる攻撃を放つ事だ。一度順応すると永遠に順応出来るとすれば意味は無いがそれ以前に咲良は6種もの攻撃を放てない。何故なら炎、氷、闇、魔力、氣以外の攻撃を咲良は取得していないからだ。
神器を使えば可能だと思うだろうが、竜人化や魔法を扱いながら2つの神器を開放するなど咲良でも出来ない。

「万事休すか……いや、あと1つ可能性がある」

咲良はまだ制御出来ないがこの状況を打破しうる力がある事を思い出した。正確には覚えてはいたが使える自信が無かったという方が正しいだろう。だが、今はその力に頼る他なかった。
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