神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

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第10章 異世界人と隠された秘密

魔臓損傷

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「咲良!もう起きて大丈夫なの!?」

ソフィが目を覚ました咲良に声を掛ける。
その声は少し震えているので相当心配していたのだろう。

「あぁ…まだ魔力は半分程しか回復していないけどな」

ソフィにこれ以上心配させまいと咲良は笑って見せる。

「一体何があったの?」
「それは俺も聞きたいな」
「咲良さんの身に何が起きたのです?」

他の面々も咲良を心配して集まって来た。
皆咲良が寝ている間に休息を取った様で顔色が良い。

「それに…さっきクロちゃんがいきなり光るし、もう何が何だか」
「クロが光った?」

(知識を受け継ぐと光るのか…それは目立つな)

「それは俺も知らん」

咲良は適当にはぐらかした。
この場でクロの正体を知っているのはソフィだけだ。マリアは薄々気付いている様だし、フィリス達から報告を受けているかもしれないので知っていても不思議ではない。ただ説明するとなれば話す事が多くなるので面倒だ。

「知らんって……なら何で魔力欠乏症になったの?」
「そりゃ魔力を使ったからだ」
「もっと分かりやすく説明してよ…」

ソフィは少し呆れた様に咲良を見た。

「この空間では魔力操作は阻害され、体外に出すと霧散する。そこで俺は色々試した結果ある結論に至った」
「どんな結論が出たのです?」

マリアが興味深そうに聞いて来る。

「外に出た魔力は霧散するのに僅かな時間が掛かるという事だ。なら膨大な魔力を放出し続ければどうなると思う?」
「なるほど…その僅かな時間だけでも魔力を体外で操作出来るという事ですね。そして放出し続ける事でその時間を延ばす事も可能である…しかしそれでは…」

マリアは咲良の説明を理解出来たがその表情は深刻だ。咲良の取った行動がどれだけ危険か分かったからだろう。

「そういう事だ。魔力操作が阻害されている中で魔力を放出し続けた結果俺は全魔力を消費して意識を失った」
「何故そんな無茶な事を…」
「そうしなければ…誰かが死んでいた……違うか?」
「それは…」

マリアが苦虫を噛み潰した様な表情で唇を噛み、血が滴り落ちる。それ程までにマリアは悔しかった。ギルドマスターとして、天乱四柱として第一線で活躍して来た彼女だがここでは何の役にも立っていない。

「まぁこんな状況だ。今は全員生きている事を喜ぼう
「そう…ですね。では最後に1つだけ…なぜこんなに早く回復したのですか?」
「俺は魔力回復速度を補正する称号を持っているし、前にも一度魔力欠乏症になった事がある。だから耐性が付いたのかもな」

異常状態耐性の技能がどこまで有効かは定かではないが無関係とも思えない。

「咲良のお陰で私達は助かったけど…お願いだからもう無茶しないで!」
「ソフィ…」
「魔物に囲まれた時は怖かったけど…咲良が倒れた時はもっと怖かった…」

ソフィの瞳から小さな光る物が頬を伝う。
その涙には恐怖や悲しみ等様々な感情が含まれており、ポタリと重々しく地面に落ちた。

「もうしないさ。心配かけて悪かったな」

(本当はもう出来ないんだが、態々言う必要はないか…)

咲良の身体はもう先程の様な無茶が出来る状態ではない。魔力が回復すれば動けるようにはなるだろうが、魔臓を酷使した為に操作しようとすれば全身に激痛が走る。

「ただ、先に進むのは少し待ってくれ。戦闘をするのはまだ無理だ」
「どっちにしろ此処に留まるしかねぇさ。坊主がいなきゃ俺達は前に進めねぇんだからよ」
「そうですね。ここまで来た以上引き返す訳にも行きませんから」

ハロルドとサイモンは咲良をフォローする。

「済まんな。ならもう少し横にならせてもらう」

(上手く話を逸らす事が出来た。クロの事をしつこく聞かれると面倒だからな)

咲良はクロに起こった事について知らないフリをしていたが、光ったり大きくなったりとツッコミ所は満載だ。だからなるべく話をクロに向かない様にした。




「もう万全なのか?」
「あぁ、もう十分休んだ。先に進もう」

出発準備をしている時、ハロルドが咲良の体を気遣って声を掛けた。
咲良は問題ないとしたが本音はそうでは無かった。

(やはり氣では魔臓のダメージが回復しない。どうしたもんかな…)

先程から氣の治療を試みるが効果は殆ど無い。

(臓器として存在している訳じゃない魔臓は氣でも治療出来ないのか…)

魔臓はその存在が一部の者に認知されているだけで殆ど解明されていない。咲良も魔臓は魔力を生み出す場所で、その位置を把握すれば魔力操作がしやすくなる程度の事しか知らない。

(今後の事を考えると魔臓を回復したかったんだが…仕方ないか)

「改めて待たせて済まない」

咲良の言葉に一同はフッと笑う。

「坊主、俺達はずっとお前に命を救われてきたんだ。少し位我儘になっても良いんだぜ」
「そうですよ咲良くん。もうあなたは私達のリーダーですよ」
「不本意ですが…ここはあなたの指示に従う事が最も有効であると私は思います」
「お前ら…」

(俺をここまで信用するとは…変な奴らだ。けど…悪くない)

咲良の顔には自然と笑みが零れた。
地球では仲間と言える者は多くなかった咲良にとって、常に誰かと共にいる事は嘗ての自分ならあり得ない事だった。

「でも無茶はしないでね?」
「キュイ!」

ソフィはまた咲良が無茶をするのではないかと思わずにはいられない様だ。
クロに関しては咲良の状態を知っているからこその心配あり、ソフィとは感情が少し違う。

「もちろんだ。行こう」

咲良の一言でキッと表情を引き締めた一同は少し重い足取りで先へと進みだした。

(全員動きが硬い…やっぱりさっきの第二波が相当堪えた様だな。いくら休息を取ったとはいえそう簡単に気持ちを切り替えるのは難しいか…)

咲良自身もまた同様で、第二波の様な戦闘がこの先起これば無事に切り抜けられる自信は無かった。
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