神の盤上〜異世界漫遊〜

バン

文字の大きさ
2 / 163
第1章 終わりと始まり

現実逃避

しおりを挟む
(つまんねぇなぁ)

そう思いながらトボトボと路地を歩く男が1人。

この男はいつも退屈だった。
最近よく思うことは「何のために生きてるんだろう」である。
そう思う理由はいくつかある。

今日まで生きてきて早20年、何の苦もなく生きてきた。
いや、それこそが男にとっての苦なのかもしれない。

毎日仕事のために朝早く起き、満員電車に揺られるサラリーマン。
欲のまま今を楽しみ、将来など考えていない若者たち。

いずれ自分もその中の1人になるのは嫌でしょうがなかった。


その運命を受け入れるのか、はたまた運命を変えようと足掻くのか…

普通は受け入れるだろう。
しかし男には運命を変えられるかもしれない力があった。
変えるといっても、人外のような力というわけではない。記憶力と身体能力が高いだけだ。

一見それだけで運命を変える事は出来ないと思うだろうが、この男の場合は少し勝手が違う。
記憶力と身体能力が高いだけと言うのは間違いではないが、その高さに問題があるのだ。

見たものを瞬時に覚え、一度見たものは忘れない超記憶。
また、その身体能力は、どんなスポーツもプロ選手のレベルで体現できる。

自分の才能に気づいた頃は、ありとあらゆる事をした。

中でも、武道には心底ハマった。
理由は簡単。
男なら強くなりたいと思うものだからだ。

今までの人生で唯一本気で取り組んだのも武道だった。

しかし武道も結局やめてしまった。

ある時、練習していると誰も相手をしてくれなくなった。
「なぜ?」と問い掛けると「どうせ勝てねぇし」と返されてしまった。

それだけならまだしも先生達が影で「あいつは教え甲斐がない。それどころか俺たち大人ですら歯が立たん…化け物だなありゃ…恐怖すら覚えるよ」と言っているのを聞いてしまった。

その日から練習中も居心地が悪くなった。
日が経てば経つほど周りから向けられる視線は妬みや畏怖へと変わっていったので練習も出なくなった。

この経験から男は自分の才能を発揮する事をしなくなった。
周りの人の記憶力や身体能力に合わせる事は窮屈ではあったが慣れれば簡単なものだ。
おかげで嫉妬や畏怖の視線はなくなったが代わりに失ったものがある。

毎日の充実感だ。

考えて見てほしい。
どんな事も全力でする事が出来ず、楽しむ事すら出来ない。
退屈で仕方がないのだ。

人との関わりを避けたために、男の才能を知る者はごく僅かだ。

親はもちろん知っているが…他人に畏怖される程とは知らないはずだ。
そもそも自分の才能を隠してからは親に怠けていると思われているのか、高校入学と同時に一人暮らしを始めてからもう数年会っていない。

自分の息子が今何をしているかもおそらく知らないだろう。まぁ記憶力の応用でお金は稼ぐ事ができるので何も問題はない。
親以外で知っているのは昔からの親友のみだ。とは言っても元々友人の数が少ないのだが…

その親友にはある程度打ち明けている。

彼は今何をしているのだろうか…

同じ大学に入学したがこの半年間連絡は取っていない。それどころか大学にも通っていない。
別に喧嘩をしているわけではない。
連絡を取らなくても理解してくれているのだろう。

少し親友に会いたくなった男は半年ぶりに大学に行くことにした。

大学で親友を通して知り合った人達ともこれからはもっと交流するべきなのだろうか…

様々な思案を巡らしながら男は重い足を運んで大学へと向かう。





遅くなったがこの男について紹介しておこう。

名前は佐伯亮太。
歳は20歳で大学2回生。
家族構成は父、母、妹の4人家族。
父と母は息子の才能を喜び、初めは愛情をこめて育てていたが、ある時期から息子の才能が失われてしまったと勘違いし、さらにだらけきった生活をしているせいか、すでに見限っている。
しかし、妹の沙耶は未だに兄亮太の才能を信じて疑わず尊敬しており、いわゆるブラコンである。
最近会えていないのがとても寂しいと感じているが亮太にはわかるはずのない事だ。

亮太の容姿は少し切れ目と整った鼻、シュッとした顎のライン、真っ黒でくせ毛のない少し長めの髪で、世間ではイケメンの部類に入るだろう。

その見た目の良さゆえ、恋愛経験はあるが長く続いた試しがない。それは彼女の方に問題があるのか、亮太自身に問題があるのかは分からないが…

最近は大学には行かず全国各地を放浪している。

理由は自身の才能の所為で楽しむ気持ちを感じれずにいるが、いつか本気で取り組めるものが見つかると信じ、未だに手加減しつつも全国様々な所で多くの人と触れ合い、スポーツをしたりしているのだ。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

さようなら竜生、こんにちは人生

永島ひろあき
ファンタジー
 最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。  竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。  竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。  辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。  かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。 ※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。  このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。 ※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。 ※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...