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第7章 弟子と神器回収
店名思案
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「で?どうすんだ?」
今咲良と陸はギルド〈イマジナリー〉を出てコーチンにある飲食店で、これからの行動について思案していた。
「そうだな、依頼を受ける前に行きたい場所がある」
「行きたい場所?」
「ルーグのとこだ。さっき秀樹が店を確保出来たと言っていただろ?」
「なら早く行こうぜ。どんな店か気になるしな」
2人は秀樹に教えられた場所へと足を運ぶ。
さきほどフィリスとの話が終わり、ギルドを出ると入口に秀樹が立っており、咲良にルーグの店の場所が決まったと知らせを受けた。秀樹も盗賊捕縛の依頼を受けていた事から誰かに店を探すように委託していたのだろう。
「あぁ、ここだ」
秀樹の示した場所には木造三階建ての少し大きめの建物があった。
「お、咲良じゃねーか」
その建物の入り口からルーグがひょっこりと顔を出す。
「良かったな。これで住む場所にも困らないな」
建物の構造から居住スペースもあるようで、生き残った村人5人全員が住んでもまだ余裕がありそうだ。
「どうもルーグさん。陸です」
陸がほとんど接点のなかったルーグに改めて自己紹介をする。
「おう!ルーグだ、よろしくな!」
「ちなみにルーグも俺のことはある程度知ってるぞ」
「…あぁ、なるほど分かった」
今の一言で陸は察してくれたようだ。
「中はかなり広くてよ、奥には工房に使える場所もあるぜ」
中に入ってこいとルーグは手で促す。
「陸!咲良!」
「2人とも来てくれたんだね!」
中に入ると秀樹と穂花が待っていた。2人は色々と責任を感じているのか、これからも手厚く支援をしていくようだ。
「あぁ、工房はどこだ?」
「こっちだ」
案内された場所は元々工房として使われていた場所だった。
「どうだ?良い物件見つけたろ?溶鉱炉だっけ?それもあるしな」
秀樹は柄もなくエッヘンと胸を張るが、咲良はそれを無視してじっくりと溶鉱炉を見る。
「……ダメだな、作り直しだ」
「えぇー、立派だと思うんだけどなー」
穂花は気に入ってもらえると思っていたのか少し落胆する。そもそもルーグの店なのだから咲良の意見など関係はないはずだが…
「この溶鉱炉では一定以上の高温に耐えられない。まぁ俺専用というわけではないんだが作り直させてもらうぞ?」
咲良はルーグをちらりと見ると、ルーグはしっかりと頷いて見せた。
ガシャーン!
ドゴッ!
ゴロゴロ…
咲良は溶鉱炉を壊し、新たな溶鉱炉を作成するために拡張袋から火炎石や粘着石等の素材を次々と出していく。
「これから作り直す。陸、悪いが依頼に行くのはもう少し先になる。まぁ期限は無いから遅れても問題はないだろ」
咲良はそう言うと、取り出した素材を使って黙々と作業に取り掛かった。
「なぁ陸、依頼ってなんだ?」
作業をしている咲良の背中を見ながら秀樹が尋ねる。
「あぁ、近々咲良と一緒に依頼を受けることになったんだ…成り行きで」
陸はその依頼が難易度SSS級だと言うことは伏せて答えた。
「え、私も行きたい!」
「俺もだ!」
穂花と秀樹が目を輝かせる。
2人には咲良の価値観をどうにかしたいと密かに思っていた。確かに咲良と依頼を受けれるならそれは滅多にないチャンスではあるが…
「ダメだ、今回は陸だけ連れて行く」
咲良は作業の手を休めず、冷たく言い放った。
「なんでだよ!」
「そうだよ!陸くんだけずるい!」
2人はこぞって咲良を非難する。その反応から咲良の価値観についてよりも単に一緒に旅をしたいだけなのかもしれない。
「今回の依頼は俺への指名依頼だ。本来なら陸も連れては行けないがフィリスから特別に許可を貰った」
「フィリスさんから?なら俺たちも!」
「そうだね!許可もらいに行こうよ!」
どうやら2人は何が何でも付いて来るつもりらしい。
「俺が頼んだから許可が下りたんだ。お前らが行ったところで許可は下りないぞ」
咲良は2人を連れて行く気は更々ない。咲良の全てを知っている陸と純粋に旅を楽しみたかったのだ。以前、秀樹達と旅をした時は、すぐに突っかかってくるし、甘い考えにイライラしたりとあまり居心地は良くなかった。
「悪いな2人とも。でも多分咲良自身がフィリスさんに掛け合わないと許可は出ないと思う。その肝心の咲良は連れて行く気ないみたいだし」
陸も今回は諦めてくれと説得に回ると、さすがの2人も渋々諦めた。
依頼について一悶着あったが、その間も作業をしていたので溶鉱炉はその日の内に完成した。
今この場にいるのは咲良、陸、ルーグの3人だ。
「まずはこれを売って商売をすると良い」
咲良は拡張袋から薬と魔道具が大量に入った袋を取り出しルーグに手渡す。
「これ全部?」
「その袋には回復促進、解毒、増血、酔い止めの薬が入っている。酔い止めは冒険者にはある意味必需品だろうからな。魔道具は火を起こしたり、水を出したりと旅先で必要な物を揃えてある」
「金はどうする?」
「俺の手取りはいらない。その代わり製作者として流桜の名を広めてくれ。それと前にも言ったが必要な品があればいつでも連絡してくれ。すぐに納品するから」
「なるほど、大方理解した。ところでよ、この店の名前どうする?」
「……知らん」
普段抜け目ない咲良だが、店の名前についてはすっかり忘れていた。
「咲良って流桜って名乗ってるんだよな?」
陸が確認で聞いてくる。
「それがどうかしたか?」
「なんかヒントにならねぇかなーと思ってな」
「…ル、ルーグ工房……」
ルーグがボソッと呟く。
「え?自分の名前?」
「そりゃねぇわ」
「センスが絶望的」
「う、うるせぇ!なら何にするってんだよ!」
全員から否定されてルーグは恥ずかしいのか顔を赤く染めながら怒鳴った。そもそも工房ではないのでそれ以前の問題だ。
この時、咲良は王都アムルにあるカゼルの店もカゼル商会だったなと思い出し、フッと笑う。
「わ、笑うなっ!」
「すまんすまん、で、どうする?」
「咲良、植物の桜を英語だとなんて言うんだ?」
陸はさくらを別の言い方に変えようとする。
「チェリーブロッサムだな」
「可愛すぎるな…」
「俺にも分かるように言ってくれ」
ルーグが困惑した表情で尋ねる。
チェリーブロッサムは英語だが、地球の言葉なので発音も違い、ルーグには理解できなかった。
「あぁ、俺たちのいた世界は国ごとに言葉が違うんだ。だから同じ単語でも色んな言葉があるんだよ」
「へぇー、それで咲良がチェリーブロッサム?」
「そういうことだ」
「でも無しだよなぁ、他の国ではなんていうんだ?」
陸はチェリーブロッサムではお気に召さなかったようで、地球での他国の言葉を咲良に聞く。咲良も覚えている限りの言葉を口に出していくがどれもしっくりこない。
「どれも発音しにくいな」
「同感だ。俺たちアスガルドの者にとっては特に難しい」
地球人でも発音しにくい言葉をアスガルドの住人が発音出来るわけはなかった。
「イタリア語ではなんて言うんだ?」
「イタリア語か、確か…フィオーレ・ディ・チリエージュ…だったかな」
「長いなぁ…」
「フィオーレ…ここから分からん」
ルーグにはフィオーレまでしか発音できないようだ。
「フィオーレは発音出来るんだな」
「意味はしらねぇけど発音は簡単だな」
「それいいじゃん!こっちの世界の人も発音しやすいしさ!」
「ならフィオーレで決まりだな」
「フィオーレか、呼び易いし覚え易い。良い名前が出来たな」
次々と賛同の声が上がったことで、この店の名はフィオーレ商店に決まった。ルーグはこれから忙しくなりそうだとワクワクしていた。
今咲良と陸はギルド〈イマジナリー〉を出てコーチンにある飲食店で、これからの行動について思案していた。
「そうだな、依頼を受ける前に行きたい場所がある」
「行きたい場所?」
「ルーグのとこだ。さっき秀樹が店を確保出来たと言っていただろ?」
「なら早く行こうぜ。どんな店か気になるしな」
2人は秀樹に教えられた場所へと足を運ぶ。
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「あぁ、ここだ」
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「お、咲良じゃねーか」
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「良かったな。これで住む場所にも困らないな」
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「どうもルーグさん。陸です」
陸がほとんど接点のなかったルーグに改めて自己紹介をする。
「おう!ルーグだ、よろしくな!」
「ちなみにルーグも俺のことはある程度知ってるぞ」
「…あぁ、なるほど分かった」
今の一言で陸は察してくれたようだ。
「中はかなり広くてよ、奥には工房に使える場所もあるぜ」
中に入ってこいとルーグは手で促す。
「陸!咲良!」
「2人とも来てくれたんだね!」
中に入ると秀樹と穂花が待っていた。2人は色々と責任を感じているのか、これからも手厚く支援をしていくようだ。
「あぁ、工房はどこだ?」
「こっちだ」
案内された場所は元々工房として使われていた場所だった。
「どうだ?良い物件見つけたろ?溶鉱炉だっけ?それもあるしな」
秀樹は柄もなくエッヘンと胸を張るが、咲良はそれを無視してじっくりと溶鉱炉を見る。
「……ダメだな、作り直しだ」
「えぇー、立派だと思うんだけどなー」
穂花は気に入ってもらえると思っていたのか少し落胆する。そもそもルーグの店なのだから咲良の意見など関係はないはずだが…
「この溶鉱炉では一定以上の高温に耐えられない。まぁ俺専用というわけではないんだが作り直させてもらうぞ?」
咲良はルーグをちらりと見ると、ルーグはしっかりと頷いて見せた。
ガシャーン!
ドゴッ!
ゴロゴロ…
咲良は溶鉱炉を壊し、新たな溶鉱炉を作成するために拡張袋から火炎石や粘着石等の素材を次々と出していく。
「これから作り直す。陸、悪いが依頼に行くのはもう少し先になる。まぁ期限は無いから遅れても問題はないだろ」
咲良はそう言うと、取り出した素材を使って黙々と作業に取り掛かった。
「なぁ陸、依頼ってなんだ?」
作業をしている咲良の背中を見ながら秀樹が尋ねる。
「あぁ、近々咲良と一緒に依頼を受けることになったんだ…成り行きで」
陸はその依頼が難易度SSS級だと言うことは伏せて答えた。
「え、私も行きたい!」
「俺もだ!」
穂花と秀樹が目を輝かせる。
2人には咲良の価値観をどうにかしたいと密かに思っていた。確かに咲良と依頼を受けれるならそれは滅多にないチャンスではあるが…
「ダメだ、今回は陸だけ連れて行く」
咲良は作業の手を休めず、冷たく言い放った。
「なんでだよ!」
「そうだよ!陸くんだけずるい!」
2人はこぞって咲良を非難する。その反応から咲良の価値観についてよりも単に一緒に旅をしたいだけなのかもしれない。
「今回の依頼は俺への指名依頼だ。本来なら陸も連れては行けないがフィリスから特別に許可を貰った」
「フィリスさんから?なら俺たちも!」
「そうだね!許可もらいに行こうよ!」
どうやら2人は何が何でも付いて来るつもりらしい。
「俺が頼んだから許可が下りたんだ。お前らが行ったところで許可は下りないぞ」
咲良は2人を連れて行く気は更々ない。咲良の全てを知っている陸と純粋に旅を楽しみたかったのだ。以前、秀樹達と旅をした時は、すぐに突っかかってくるし、甘い考えにイライラしたりとあまり居心地は良くなかった。
「悪いな2人とも。でも多分咲良自身がフィリスさんに掛け合わないと許可は出ないと思う。その肝心の咲良は連れて行く気ないみたいだし」
陸も今回は諦めてくれと説得に回ると、さすがの2人も渋々諦めた。
依頼について一悶着あったが、その間も作業をしていたので溶鉱炉はその日の内に完成した。
今この場にいるのは咲良、陸、ルーグの3人だ。
「まずはこれを売って商売をすると良い」
咲良は拡張袋から薬と魔道具が大量に入った袋を取り出しルーグに手渡す。
「これ全部?」
「その袋には回復促進、解毒、増血、酔い止めの薬が入っている。酔い止めは冒険者にはある意味必需品だろうからな。魔道具は火を起こしたり、水を出したりと旅先で必要な物を揃えてある」
「金はどうする?」
「俺の手取りはいらない。その代わり製作者として流桜の名を広めてくれ。それと前にも言ったが必要な品があればいつでも連絡してくれ。すぐに納品するから」
「なるほど、大方理解した。ところでよ、この店の名前どうする?」
「……知らん」
普段抜け目ない咲良だが、店の名前についてはすっかり忘れていた。
「咲良って流桜って名乗ってるんだよな?」
陸が確認で聞いてくる。
「それがどうかしたか?」
「なんかヒントにならねぇかなーと思ってな」
「…ル、ルーグ工房……」
ルーグがボソッと呟く。
「え?自分の名前?」
「そりゃねぇわ」
「センスが絶望的」
「う、うるせぇ!なら何にするってんだよ!」
全員から否定されてルーグは恥ずかしいのか顔を赤く染めながら怒鳴った。そもそも工房ではないのでそれ以前の問題だ。
この時、咲良は王都アムルにあるカゼルの店もカゼル商会だったなと思い出し、フッと笑う。
「わ、笑うなっ!」
「すまんすまん、で、どうする?」
「咲良、植物の桜を英語だとなんて言うんだ?」
陸はさくらを別の言い方に変えようとする。
「チェリーブロッサムだな」
「可愛すぎるな…」
「俺にも分かるように言ってくれ」
ルーグが困惑した表情で尋ねる。
チェリーブロッサムは英語だが、地球の言葉なので発音も違い、ルーグには理解できなかった。
「あぁ、俺たちのいた世界は国ごとに言葉が違うんだ。だから同じ単語でも色んな言葉があるんだよ」
「へぇー、それで咲良がチェリーブロッサム?」
「そういうことだ」
「でも無しだよなぁ、他の国ではなんていうんだ?」
陸はチェリーブロッサムではお気に召さなかったようで、地球での他国の言葉を咲良に聞く。咲良も覚えている限りの言葉を口に出していくがどれもしっくりこない。
「どれも発音しにくいな」
「同感だ。俺たちアスガルドの者にとっては特に難しい」
地球人でも発音しにくい言葉をアスガルドの住人が発音出来るわけはなかった。
「イタリア語ではなんて言うんだ?」
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「長いなぁ…」
「フィオーレ…ここから分からん」
ルーグにはフィオーレまでしか発音できないようだ。
「フィオーレは発音出来るんだな」
「意味はしらねぇけど発音は簡単だな」
「それいいじゃん!こっちの世界の人も発音しやすいしさ!」
「ならフィオーレで決まりだな」
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