百合夫婦のドキドキ憲兵日記

ぬるかん1010

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第7話「市ヶ谷攻防戦 中編:緊急!怪異襲撃!」

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(前回のあらすじ)
僕と琴子は海軍から怪異が持ち出した機密データのパスワードを何とか解析した。
しかしその動きは怪異に完全に読まれていた。
みおと琴子のいる地下300mの陸軍情報センターに怪異の魔の手が容赦なく伸びる。

僕は全身が総毛立つのを感じた。
今の電話相手は明らかに海軍の担当者ではなかった。
海軍本部に最初状況を問い合わせた時の担当者と違う時点で、明らかに対応すべきではなかった。

完全に僕のミスだ。

しかし何故だ?何故そこまで相手は執拗にパスワードを聞き出そうとする?
理由は一つ。
相手は「手元にファイルがあって、パスワードの桁数が7桁であることを知っているが解除できない」からだ。
そしてその相手は一人しかいない。
あの怪異……「銀髪の少女」!
まさか!擬態能力まであるのか!?

その時だった。室内に警報音が響き渡る。

「本センターに高速で何かが接近中!時速150ノット、距離2000!」

スピーカーからの警告にフロア内が騒然となる。
僕と琴子は素早く端末の前に座り、防御システムを立ち上げる。
どこだ?どこから接近している!?

僕はこの世界に唯一現存しているかもしれない監視カメラで周辺の映像をチェックする。
不審な物は見つからない。一体どこから・・・。
その途端、モニターに目標の位置情報を示す白い点が現れた。
このセンターのすぐ近くだ!
100mも離れていない。しかしおかしい。
今の報告だと距離2000mと言っていなかったか?

答えは・・・。

「上よ!一直線に落下してくる!」
琴子が叫ぶ。

「屋上の警護班!上空の移動目標に向け対空戦闘開始!CIWS起動!急げ!急げ!」
僕は無線機に向かって怒鳴りつけた。

僕はモニターにCIWSの射撃カメラを表示した。
そこには信じられないものが映っていた。
画像識別の白い四角の中に、明らかに人が映っている。

画像は不鮮明だが僕にはそれが誰だか一瞬で分かった。

羽は折りたたまれているのか見えない。
真下に向かって頭から一直線に落下してくる。

どこだ?どこに着地するつもりなんだ?

屋上に着陸しようが地面に着陸しようが地下へのエレベーターはロックしてある。
他に地下300mに到達する方法は・・。

その時僕は白い位置情報の点がある場所に気が付いた。
近くの公園。そこには・・。

「中央排気塔だ!警護班、中に侵入させるな!」

中央排気塔。
この地下300mのスペースを維持する為に近くの公園に偽装されている排気塔だ。
しかし何故だ?何故怪異がこの地下スペースの内部構造を知っている!?

CIWSの射撃カメラにおびただしい白い光が表示される。
1秒間で50発以上の20mm口径の6連装ガトリング弾がすさまじい勢いで発射される。
しかし・・。

「警護班!当てろ!」
琴子が無線機で絶叫する。

馬鹿な!当たらない!?
このCIWSは大厄災直前に旧防衛省への弾道弾攻撃を、終末段階で迎撃する為に設置された、当時の最新鋭の装備だ。
それがなぜ自由落下する生身の体に当たらない!?

「怪異!中央排気塔に接近!距離500!」
「射撃やめ!射撃やめ!」
僕は無線機に向かって叫ぶ。
これ以上低空の目標への攻撃は、付近の高層建築に被害が及ぶ危険性がある。

「突入するわよ!」
琴子が排気塔を映す監視カメラの映像に向かって叫ぶ。

その瞬間、僕と琴子は怪異が突然背中から黒い羽根を伸ばして、まるでホバリングするように羽ばたくのを見た。
ここからでもハッキリわかる。カチューシャをつけたロングヘアにロングスカート。

間違いなく、あの海軍本部に侵入した「銀髪の少女」だ。

「こちら警護班!中尉!屋上より狙撃銃の発砲許可を!」
「許可できない!公園の民間人に当たる!」

それにもう手遅れだった。
銀髪の少女は一瞬の内に排気塔の中に身を躍らせた。

「侵入されたわよ!」
「特殊作戦群、機密データ室前で隊列を編成!近接戦闘準備!来るぞ!」

機密データ室前に30人からなる特殊作戦群の一個小隊が、直ちに二列に隊列を組み、機密データ室の入口の左右に分かれ射撃体勢を取る。

警告音が響くだけの、重苦しい沈黙が広がる。

しかし・・・相手が現れない。

排気塔から侵入した以上、排気ダクトを通じて接近しているはずだ。

そしてどの換気口から侵入しようが、この機密データ室は空調関係が独立しており、入口より生体認証を通じて入る以外に方法は無い。

実際には短いのだろうか、気の遠くなる時間が流れる。

その時だった。
僕たちの耳に信じられないアナウンスが響いた。

「訓練。訓練。ただ今より火災訓練を行います。機密データ室入口で火災が発生しました。
ただ今、有毒ガスが発生しています。職員は手順に従い避難してください。これは訓練です。訓練です。」

馬鹿な!?火災訓練!?
しかし次の瞬間、排気口から真っ赤な煙が噴出する!

「うわあああっ!状況!ガス!」「装面!装面!」「ゴホッ、ゴホッ!」
データ室前はパニックになった。

センター長が「落ち着け!訓練用の着色ガスだ!訓練用!」と叫び声を上げるがパニックは収まらない。
すぐにデータ室の前はもうもうと立ち込める真っ赤な煙が充満し、視界はゼロになった。

「なっ・・・!」
琴子が絶句する。

僕は端末に飛びついて震える指で訓練用メニューを検索する。
おかしい。発煙量が異常だ。
そもそも何でこんなものが作動する!?
こんな操作ができる権限は僕と琴子だけのはずだ!

僕は訓練用メニューをモニターに表示した。
そこには火災訓練のメニューの横に「ただ今実行中」の赤い文字が表示されていた。
発煙量は「最大」。

畜生、誰だこんなものを実行した奴は!?
僕は「ただ今実行中」の下にある入力者の情報を見る。
僕はそれを見て驚愕した。

そこには「#0982-sysman」というIDが表示されていた。
0982はこの陸軍情報センターの場所コード、sysmanは・・システムマネージャー!?
馬鹿な!なぜこんなIDが表示されている!?どうやってログインを!?

いや、考えるのは後でもできる。
僕はすぐさま「中止」ボタンを押す。
センター内に「訓練を中止します。訓練を中止します」というアナウンスが流れる。

しかしそのアナウンスは聞き取れなかった。
入口の前から電撃の様なバチバチッという音と共に悲鳴が聞こえてきたからだ。
「ぎゃああっ」
「う、撃つな!同士討ちに・・ぐわあっ!」
立ち込める真っ赤な煙の中で、次々と悲鳴が上がる。

その姿は全く見えない。何だ!何が起こってる!?

「みお!下がって!」
琴子が腰の鞘から丙午千手院長吉を抜刀し、僕の前に立ちはだかる。

瞳の色が黒から真紅に染まっていく。

分かるのだ。目の前に全力で戦わなくてはいけない相手が現れるのを。

僕も腰のホルスターから9mm拳銃SFP9を抜いて銃口を入口に向ける。

その時だ。入口の向こうに何かの影が見えた。
しかしどうやって入る気だ?この中に入れるのは僕と琴子だけだ。
この入口のドアは見た目こそ普通のガラスドアだが、中身は超硬質だ。
戦車砲の直撃でも破壊は絶対に不可能だ。
しかし僕と琴子は信じられない声を聞くことになる。

「認証いたしました。ドアを開けます」

僕は目の前で一体何が行われているか分からなかった。
認証?
ICカードではなく生体認証なのに?
この数十年誰も入ってないのに?
僕は、僕と琴子の二人しか登録していないのに?

頭の中が真っ白になった僕の前で、入口のドアが静かに開き、濛々と立ち込める赤い煙と共に
「それ」は入ってきた。
(続く)
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