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第一章
04 . 血塗れた惨状
しおりを挟む雨脚はさらに激しさを増し、ワイパーが叩き出す一定のリズムだけが車内に響いていた。
横浜の埋立地、等間隔に並ぶ倉庫街は、街灯の光も届かぬ深い闇に沈んでいる。
指定された第4倉庫の前に車が滑り込む。
「真壁、若頭の言った通り他の連中で周りを固めるように。指示は任せた」
「承知しました」
久我はドアを開け、濡れたアスファルトに降り立った。潮の香りに混じって、微かに焦げた火薬の匂いが鼻腔を突く。
目視で確認できるだけでも外に数人…
だが襲ってくる様子がないのを見ると、相手は会話を望むかそれとも主犯自らこちらの命を狙っているか
今ここでの戦闘は不要だと判断し、嵯峨に告げる
「……若頭、奥です」
久我が短機関銃を上着の内に忍ばせ、先導を切ろうとした。
だが、その後ろ襟を嵯峨の手が乱暴に掴んだせいで引き戻されてしまう。
「迂闊に前に出るな、怜」
「しかし、中がどうなっているか……」
「俺の言葉が聞けんのか」
嵯峨の瞳は、暗闇の中で獣のように鈍く光っていた。久我は一瞬だけ唇を噛み、静かに一歩下がった。
この男にとって、自分や部下を守ることは慈悲ではない。己の領土を侵されることへの憤怒であり、ただの所有物に対する傲慢なまでの執着だと、勝手に認識していた。
それが久我の目に映る嵯峨蓮次であり、自分自身の主君だった。
私はこの方の道具なのだ。余計な事は返って足を引っ張ってしまう
……それだけは避けなければいけない
嵯峨が重い鉄扉を蹴り開けると、倉庫内には数台の作業灯が転がり、不気味な影を壁に投げ出していた。
中央には、無惨に荒らされた木箱の山。そして、その影からゆっくりと、数人の男たちが姿を現した。
懐の拳銃に手をかけ、いつでも攻撃可能な体制をとる。
相手はまだ武器を取っていない、やるならこちらが早い
「……お出ましだな、神代組の若頭。と…その面、「氷の執行人」か。大層な異名を付けられたもんだなぁ」
久我の顔を見てフッと鼻で笑うその様に、澄ました顔で聞き流す。
「まぁわざわざ二人きりで来るとは、随分と舐められたもんだ」
大滝組の若頭補佐、ねっとりと蛇のように絡みつく視線、そしてシュッとした顔立ちが狩りをする大蛇を彷彿とさせるような見た目をしている久瀬が、下卑た笑みを浮かべて銃口を向ける。
その背後には、武装した手下たちが5人。
人数の少なさを考えると、明らかにここへと最初から嵯峨と久我を誘い出すための罠だった。
他の連中は周りを囲うために使ったのか
右の物陰に1、2…最低でも3人
後ろからも囲うようにじりじりと陣形を組んでいる
つもりだろうが若い奴らが多いせいで抜け穴だらけだ
久瀬が先陣を切り仕切っているのを見るに、恐らくここには久瀬以上の階級の人はいないのだろう。
「久瀬か。相変わらず、鼠のような真似を」
嵯峨は動じない。懐からゆっくりと煙草を取り出し、火をつける。
そのあまりの不遜さに、久瀬の顔が怒りで歪んだ。
「死ねッ!」
刹那、銃声が静寂を切り裂いた ────。
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