【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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第二章

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「...そうでしたね?」

「ちょっと! 何で疑問系なのよ!?」

「結婚相談もしているけど、結婚するのは苦手みたいですから」

 クックックッと笑うフリードリヒ。

「また、私を笑い者にして! 根性叩き直してやる!」

 エミリアはソファのクッションを掴んで、フリードリヒをクッションで殴った。

「うわっ! 暴力は貴婦人のすることじゃありませんよ!?」

 ボフッボフッと、2発くらったが、フリードリヒはエミリアの腕を捕まえて、それ以上の攻撃を防いだ。

 バターン! と、扉が開き、衛兵達が駆け付ける。

「大丈夫ですか!?」

 腕を掴みあって密着しているフリードリヒとエミリアを、衛兵達は目撃した。

「だ、大丈夫です!」

「そ、そうそう、私達、仲良ししてただけなの!」

「仲良し...ですか?」

 衛兵達は赤面した。

「し、失礼致しました!」

 慌てて応接室を出ていく。

 フリードリヒとエミリアはしばらく無言で見つめ合った。

「これがエミリーの言う仲良しですか?」

「そうよ? これが仲良しなの!」

「こんな仲良しは初めてです」

「そりゃそうよ! これは特別な仲良しなんだから」

「そうですか...」

 フリードリヒとエミリアは腕を掴み合ったまま、またしばらく見つめ合った。

 無言でそっと離れる。

「私が貴婦人になったらさ...本当に結婚してくれるの?」

 フリードリヒは乱れた衣服を整え、落ちたクッションをソファへと戻した。

「さあ? ですが、そんな事を知らなくてもいいじゃないですか? 多大なる予算で貴婦人の教育を受けられれば、クリスチナ様の侍女にもなれるし、就職にも困らないはずです。もう、マナーで誰にも馬鹿にされなくてすみますよ?」

「結婚する気が有るか無いかは、そんな事じゃなくて重要事項だと思うけど? でも、授業料をタダにしてくれるの!?」

「さぁ? クリスチナ様の口ぶりでは、そんな感じでしたから、そうなんじゃないですか?」

「やったぁ~! 有難うフリッツ!」

 エミリアは喜んでフリードリヒに勢いよく抱きついた。

 エミリアの態度は不敬で無礼であったがフリードリヒは悪い気はしなかった。

 そっと、エミリア背中に手を回して抱き締めた。

 ガチャ

 扉の開く音がした。

 嫌な予感がする。

 振り向くと王太子妃が立っていた。

 フリードリヒはエミリアから慌てて離れた。

「は、母上!? 何故ここに?」

「忠実なる臣下が教えてくれたのです! 未婚の男女が仲良ししようとしていると!」

「ご、誤解です!」

「黙りなさい! ヴィルヘルムに続いてフリードリヒまで! あなたは大丈夫だと思っていたのに!」

 王太子妃の後ろから、王太子も顔を出す。

「まぁ、まぁ、落ち着きなさい。それより、結局、本当に婚約することになったのだな?」

「はい」

「明日から、また忙しくなる。今日は、もう寝なさい」

「はい」

 2人が部屋を出ようとすると、エミリアは王太子妃の侍女2人に捕まった。

「お待ちなさい! 貴女はこっち!」

 こうして、エミリアは王太子妃の侍女達に連行されて行った。
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