異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息

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古き魔力の悪戯

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それから数日が経ち、ノアもすっかり普段の落ち着きを取り戻したが、同期たちの睡眠不足は一向に改善されなかった。
アッシュは廉の睡眠薬のおかげで眠れてはいるものの、同期たちは疲れが溜まる一方で、些細なミスも目立つようになった。
そんな時、たまたまノアが「話したいことがある」とアッシュの部屋を訪ねてきた。

「…謹慎中なのに外に出ても良いのですか」
「騎士団の中ではあるんだし、これくらい許してよ。アッシュ、今日は非番でしょ?ちょっと一緒に付いてきて欲しいんだ」
ノアはそう言うと、アッシュを部屋の外へ連れ出す。
「どこへ行くのですか?」
アッシュの問いかけに、ノアは指を差す。その先に見えるのは、一つの部屋。
「あの角部屋だよ」
「角部屋…?」

ノアの向かった先は、アッシュたちの部屋と同じ階にある、誰も住んでいない部屋だった。
「ここ、誰も住んでいない部屋ですよね…」
「昨日ね、少し気分転換にこの階層を歩いてたんだ。そしたら、この部屋から微かに魔力を感じたの」
ノアはそう言うと、ためらいもなくドアノブに手をかける。
「ちょっ…!勝手に開けていいのですか?」
「分かんない。もしダメだったら、その時は僕と一緒に怒られようね」
「はぁ……」


扉を開けると、そこはごちゃごちゃとガラクタが置かれただけの物置部屋だった。
アッシュにはホコリの匂いがする程度で、魔力は少しも感じられない。
「けほっ…けほ…。魔力なんて感じないのですが…本当にここですか?」
「埃っぽい~…。でも、やっぱりここが魔力の発生源だ」
ノアはずんずんと進み、そして立ち止まった。
「これだ」
ノアが指さした先には、埃を被った古い香炉。
「…香炉、ですか?」
「ここから魔力が少しだけ出てる。おそらくだけど、淫魔が関係する魔力…フェロモンに似たような魔力かなぁ」
ノアは香炉を手に取ると、それをじっと観察した。
「僕、サキュバスだから…同族やサキュバスと似た魔力を持つ魔族や魔力には敏感なんだ」


二人はそれを持ち出すと、アッシュの部屋で香炉について調べることにした。
調べるとどうやら香炉はその昔、サキュバスが自らの魔力をその香炉に閉じ込め、香りとともに魔力を散らばし人間の性欲を刺激する際に使われていたものだった。
その名残でこの香炉にもまだ微かに魔力が残っており、時を経て騎士団員たちに影響を及ぼしていたようだ。
「そのサキュバスは、これで一気に人間の精をかき集めてたってことかな…」
「そうかもしれませんね…」
「誰がこんなのを買ったんだろう」
「ノアではないのですよね?」
「僕は買わないよ。僕の好みじゃないもん」
「そうですか。まぁ、誰かが骨董屋か何かで買ってきたものを放置したのでしょう」
厄介なものを…。そう思い、アッシュはため息をついた。


「……なんだか、頭がクラクラしてボーッとしてきました…」
アッシュはそう言うと、頭に手を当てた。香炉からは微かに甘い匂いが漂っている。
「そうなの?僕には分かんないや…抗体があるからかな…。あんまりここに置いておくのも良くないよね」
ノアはそう言うと、自分の服で香炉を覆い、香りが漏れないようにした。
「これで大丈夫そう?」
「…あんまり変わらないです…。ひとまず、団長のもとに持って行きましょうか」

その後、香炉は騎士団長に報告され、魔力を遮断する布で包んで厳重に保管されることとなった。
それ以降、同期たちの睡眠不足は嘘のように治まり、騎士団を襲った奇妙な不眠騒動はあっけなく幕を閉じたのだった。
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