11 / 33
底知れぬスキル
しおりを挟む
「あれ…ここどこだ」
廉が起きると、そこは知らない宿だった。
おそらくアッシュが取ってくれたのであろう宿であることが分かると、廉は急いでアッシュの家に向かう準備をする。
時計を見ると朝の8時。
しかし早いに越したことはないだろう、そう思い、廉は簡単に身支度を済ませ部屋を後にした。
宿を出ると、そこにはアッシュが立っていた。
「おはようございます、廉さん」
「アッシュさん、おはようございます。ずっと待っててくれたんですか?」
「先ほど着きました。昨夜はよく眠れましたか?」
「もちろん。宿の手配もありがとうございました」
「いえいえ」
そう言ってアッシュは微笑むと、手を差し出た。
「ん?」
「…!あぁ…間違えました」
アッシュはそう言うと慌てて差し出した手を引き、どこか狼狽えながら廉に言う。
「さ、私の家へ行きましょうか。今日は薬の調合をたくさんしなければなりませんからね」
なぜ手を差し出したのだろう?
廉は不思議に感じながらも、まぁいいか、とすぐにそのことはどうでもよくなってしまった。
アッシュの顔は、真っ赤に染まっていた。
思わず手を引き家まで案内しようとしてしまった・・・私はどうしてしまったんだ。
そんなことを考えながら、アッシュは廉とともに家に向かった。
家に着くと、どうやらすでにキルヴァンが訪れていたようだった。
「おう、おはよう」
「キルヴァンさん。もう逃げたかと」
アッシュが言うと、キルヴァンはバツが悪そうに答える。
「そんなことしねぇよ…。薬をもらった恩もある。その恩はしっかり返したい」
「こんなにも常識がある方なのに。ますます昨日の行動が信じられなくなりますね」
「悪かったって…」
薬が効いたのかセインの顔色は昨日よりもずっと良かった。
「今は朝食を食べ終わって寝ちゃってます。でも、こんなにも柔らかい表情で眠っているのは久しぶりに見ました」
「いつも苦しそうに眠っているので」そう言うと、アッシュは愛おしそうにセインの頭を撫でた。
「よかった。顔色も良いですし、とりあえずは一安心ですかね」
廉はセインの額に手をあてる。
熱はない。昨日まであった顔の火照りも少し収まっている。朝食も残さず食べたなら食欲もしっかりあるのだろう。
「俺の妹も、昨日薬を飲ませてからすごい元気になったみたいでさ。俺の作った朝飯、久しぶりに食べてくれたんだ」
「廉さんの薬の調合が上手いおかげですね」
アッシュとキルヴァンが喜ぶ隣で、廉は考えていた。
薬草の調合が上手いのは廉のスキルであるため、調合自体に間違いはない。
しかし今回の病気の場合、廉の作った薬はただの症状の緩和程度にしかならず、しかも数日かけて徐々に症状を和らげていくはずだったのだ。
それが薬を飲んでわずか半日ほどでこんなにも回復するはずがない。
廉はどこか腑に落ちなかった。
そんな廉に気づいてか、アッシュは声をかけた。
「廉さん?どうかしましたか」
「あ、いや…。セインくんの病状が良くなるのが、あまりにも急だったので」
「俺の妹もこんな感じだったぞ。廉の調合が上手かっただけじゃないのか」
「そんなはずはないんです。薬を飲んだ後のなんとなくの症状の収まり方みたいなのが僕にはわかるんですけど、こんなにも急激に症状が良くなるはずはなくて…」
廉はそこまで言ってハッとした。
まるでセインたちが回復するのが嫌だとでも言っているように聞こえてしまうだろうか?
そんな事を考えていると、アッシュは言った。
「薬について私は深く分かりません。ですが今の話を聞いて思ったことがあるんです」
廉が不思議そうにアッシュを見つめる。
その瞳を見るとアッシュの鼓動がどこか早くなるのを感じながら、アッシュは続けた。
「スキルの中には、自分や相手の能力をさらに高めることのできるものがあります。ブーストと呼ばれるスキルなのですが…キルヴァンさんは聞いたことありますか」
「あぁ、もちろん。だがブーストのスキルを持つやつ自体珍しいし、実際に見たことは俺はないな」
「私も、以前は騎士団の中にそのスキルを持つ者がいましたが、今はいません」
「そこで少し思ったのです。この薬も、ブーストの力で効果が増したのではないか、と」
アッシュは姿勢を正し、廉の肩をつかむ。
「もしかして廉さん、ブーストのスキルをお持ちなのではないですか?」
「いや…そんなはずは…」
すると突然、廉の頭の中に誰かの声が流れ込んできた。
『廉さん、ご無沙汰しております。神です』
「…!?」
『あの時言い忘れていたのですが、異世界慣れしていない貴方のために、特別に!全知全能!この世界のすべてのスキルを与えておきました!』
「………は!?」
廉が起きると、そこは知らない宿だった。
おそらくアッシュが取ってくれたのであろう宿であることが分かると、廉は急いでアッシュの家に向かう準備をする。
時計を見ると朝の8時。
しかし早いに越したことはないだろう、そう思い、廉は簡単に身支度を済ませ部屋を後にした。
宿を出ると、そこにはアッシュが立っていた。
「おはようございます、廉さん」
「アッシュさん、おはようございます。ずっと待っててくれたんですか?」
「先ほど着きました。昨夜はよく眠れましたか?」
「もちろん。宿の手配もありがとうございました」
「いえいえ」
そう言ってアッシュは微笑むと、手を差し出た。
「ん?」
「…!あぁ…間違えました」
アッシュはそう言うと慌てて差し出した手を引き、どこか狼狽えながら廉に言う。
「さ、私の家へ行きましょうか。今日は薬の調合をたくさんしなければなりませんからね」
なぜ手を差し出したのだろう?
廉は不思議に感じながらも、まぁいいか、とすぐにそのことはどうでもよくなってしまった。
アッシュの顔は、真っ赤に染まっていた。
思わず手を引き家まで案内しようとしてしまった・・・私はどうしてしまったんだ。
そんなことを考えながら、アッシュは廉とともに家に向かった。
家に着くと、どうやらすでにキルヴァンが訪れていたようだった。
「おう、おはよう」
「キルヴァンさん。もう逃げたかと」
アッシュが言うと、キルヴァンはバツが悪そうに答える。
「そんなことしねぇよ…。薬をもらった恩もある。その恩はしっかり返したい」
「こんなにも常識がある方なのに。ますます昨日の行動が信じられなくなりますね」
「悪かったって…」
薬が効いたのかセインの顔色は昨日よりもずっと良かった。
「今は朝食を食べ終わって寝ちゃってます。でも、こんなにも柔らかい表情で眠っているのは久しぶりに見ました」
「いつも苦しそうに眠っているので」そう言うと、アッシュは愛おしそうにセインの頭を撫でた。
「よかった。顔色も良いですし、とりあえずは一安心ですかね」
廉はセインの額に手をあてる。
熱はない。昨日まであった顔の火照りも少し収まっている。朝食も残さず食べたなら食欲もしっかりあるのだろう。
「俺の妹も、昨日薬を飲ませてからすごい元気になったみたいでさ。俺の作った朝飯、久しぶりに食べてくれたんだ」
「廉さんの薬の調合が上手いおかげですね」
アッシュとキルヴァンが喜ぶ隣で、廉は考えていた。
薬草の調合が上手いのは廉のスキルであるため、調合自体に間違いはない。
しかし今回の病気の場合、廉の作った薬はただの症状の緩和程度にしかならず、しかも数日かけて徐々に症状を和らげていくはずだったのだ。
それが薬を飲んでわずか半日ほどでこんなにも回復するはずがない。
廉はどこか腑に落ちなかった。
そんな廉に気づいてか、アッシュは声をかけた。
「廉さん?どうかしましたか」
「あ、いや…。セインくんの病状が良くなるのが、あまりにも急だったので」
「俺の妹もこんな感じだったぞ。廉の調合が上手かっただけじゃないのか」
「そんなはずはないんです。薬を飲んだ後のなんとなくの症状の収まり方みたいなのが僕にはわかるんですけど、こんなにも急激に症状が良くなるはずはなくて…」
廉はそこまで言ってハッとした。
まるでセインたちが回復するのが嫌だとでも言っているように聞こえてしまうだろうか?
そんな事を考えていると、アッシュは言った。
「薬について私は深く分かりません。ですが今の話を聞いて思ったことがあるんです」
廉が不思議そうにアッシュを見つめる。
その瞳を見るとアッシュの鼓動がどこか早くなるのを感じながら、アッシュは続けた。
「スキルの中には、自分や相手の能力をさらに高めることのできるものがあります。ブーストと呼ばれるスキルなのですが…キルヴァンさんは聞いたことありますか」
「あぁ、もちろん。だがブーストのスキルを持つやつ自体珍しいし、実際に見たことは俺はないな」
「私も、以前は騎士団の中にそのスキルを持つ者がいましたが、今はいません」
「そこで少し思ったのです。この薬も、ブーストの力で効果が増したのではないか、と」
アッシュは姿勢を正し、廉の肩をつかむ。
「もしかして廉さん、ブーストのスキルをお持ちなのではないですか?」
「いや…そんなはずは…」
すると突然、廉の頭の中に誰かの声が流れ込んできた。
『廉さん、ご無沙汰しております。神です』
「…!?」
『あの時言い忘れていたのですが、異世界慣れしていない貴方のために、特別に!全知全能!この世界のすべてのスキルを与えておきました!』
「………は!?」
1,543
あなたにおすすめの小説
炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています
ぽんちゃん
BL
希望したのは、医療班だった。
それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。
「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。
誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。
……けれど、婚約者に裏切られていた。
軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。
そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――
“雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。
「君の料理が、兵の士気を支えていた」
「君を愛している」
まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?
さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる
レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。
ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。
死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったら引くほど執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる