異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息

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底知れぬスキル

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「あれ…ここどこだ」

廉が起きると、そこは知らない宿だった。
おそらくアッシュが取ってくれたのであろう宿であることが分かると、廉は急いでアッシュの家に向かう準備をする。
時計を見ると朝の8時。
しかし早いに越したことはないだろう、そう思い、廉は簡単に身支度を済ませ部屋を後にした。


宿を出ると、そこにはアッシュが立っていた。

「おはようございます、廉さん」
「アッシュさん、おはようございます。ずっと待っててくれたんですか?」
「先ほど着きました。昨夜はよく眠れましたか?」
「もちろん。宿の手配もありがとうございました」
「いえいえ」
そう言ってアッシュは微笑むと、手を差し出た。
「ん?」
「…!あぁ…間違えました」
アッシュはそう言うと慌てて差し出した手を引き、どこか狼狽えながら廉に言う。
「さ、私の家へ行きましょうか。今日は薬の調合をたくさんしなければなりませんからね」
なぜ手を差し出したのだろう?
廉は不思議に感じながらも、まぁいいか、とすぐにそのことはどうでもよくなってしまった。

アッシュの顔は、真っ赤に染まっていた。
思わず手を引き家まで案内しようとしてしまった・・・私はどうしてしまったんだ。
そんなことを考えながら、アッシュは廉とともに家に向かった。


家に着くと、どうやらすでにキルヴァンが訪れていたようだった。
「おう、おはよう」
「キルヴァンさん。もう逃げたかと」
アッシュが言うと、キルヴァンはバツが悪そうに答える。
「そんなことしねぇよ…。薬をもらった恩もある。その恩はしっかり返したい」
「こんなにも常識がある方なのに。ますます昨日の行動が信じられなくなりますね」
「悪かったって…」


薬が効いたのかセインの顔色は昨日よりもずっと良かった。
「今は朝食を食べ終わって寝ちゃってます。でも、こんなにも柔らかい表情で眠っているのは久しぶりに見ました」
「いつも苦しそうに眠っているので」そう言うと、アッシュは愛おしそうにセインの頭を撫でた。
「よかった。顔色も良いですし、とりあえずは一安心ですかね」
廉はセインの額に手をあてる。
熱はない。昨日まであった顔の火照りも少し収まっている。朝食も残さず食べたなら食欲もしっかりあるのだろう。
「俺の妹も、昨日薬を飲ませてからすごい元気になったみたいでさ。俺の作った朝飯、久しぶりに食べてくれたんだ」
「廉さんの薬の調合が上手いおかげですね」
アッシュとキルヴァンが喜ぶ隣で、廉は考えていた。

薬草の調合が上手いのは廉のスキルであるため、調合自体に間違いはない。
しかし今回の病気の場合、廉の作った薬はただの症状の緩和程度にしかならず、しかも数日かけて徐々に症状を和らげていくはずだったのだ。
それが薬を飲んでわずか半日ほどでこんなにも回復するはずがない。
廉はどこか腑に落ちなかった。

そんな廉に気づいてか、アッシュは声をかけた。
「廉さん?どうかしましたか」
「あ、いや…。セインくんの病状が良くなるのが、あまりにも急だったので」
「俺の妹もこんな感じだったぞ。廉の調合が上手かっただけじゃないのか」
「そんなはずはないんです。薬を飲んだ後のなんとなくの症状の収まり方みたいなのが僕にはわかるんですけど、こんなにも急激に症状が良くなるはずはなくて…」

廉はそこまで言ってハッとした。
まるでセインたちが回復するのが嫌だとでも言っているように聞こえてしまうだろうか?
そんな事を考えていると、アッシュは言った。
「薬について私は深く分かりません。ですが今の話を聞いて思ったことがあるんです」
廉が不思議そうにアッシュを見つめる。
その瞳を見るとアッシュの鼓動がどこか早くなるのを感じながら、アッシュは続けた。

「スキルの中には、自分や相手の能力をさらに高めることのできるものがあります。ブーストと呼ばれるスキルなのですが…キルヴァンさんは聞いたことありますか」
「あぁ、もちろん。だがブーストのスキルを持つやつ自体珍しいし、実際に見たことは俺はないな」
「私も、以前は騎士団の中にそのスキルを持つ者がいましたが、今はいません」

「そこで少し思ったのです。この薬も、ブーストの力で効果が増したのではないか、と」
アッシュは姿勢を正し、廉の肩をつかむ。
「もしかして廉さん、ブーストのスキルをお持ちなのではないですか?」
「いや…そんなはずは…」


すると突然、廉の頭の中に誰かの声が流れ込んできた。


『廉さん、ご無沙汰しております。神です』
「…!?」
『あの時言い忘れていたのですが、異世界慣れしていない貴方のために、特別に!全知全能!この世界のすべてのスキルを与えておきました!』

「………は!?」
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