異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息

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信じたい相手

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『元の世界で過労死し、またこの世界でも薬草を作りすぎて過労死でもされたら神も少し寂しいです。それに便利なものはいくらあってもいい』
神の言葉は止まらない。
『とはいえせっかくの異世界。簡単に能力を使えるのはつまらないでしょう。なので、能力の使用にちょっとした条件を付けました。それはぜひ、廉さん自身で見つけてみてくださいね』
『あ、ちなみにセインさんとキルヴァンさんの妹さんの病気は治ってますので。廉さんのブーストスキルで薬の効果が倍増してますから』



クラクラする。
廉の頭は混乱した。
「廉さん…?どうかされたのですか?」
「…うぅ…」




僕には人を見る目がない。
アッシュさんも人を見る目がないなんて言っていたが、それ以上なのが僕だ。

高校を卒業し、すぐに現場仕事を経験した。
そして数年経ち、新しい世界へ挑戦したいと転職。
ワクワクした気持ちで面接に挑み、見事受かった先はブラック企業。
入社後しばらくは、そこがブラック企業だなんて気が付かなかった。
上司が厳しいのは自分のため。仕事量の多さは自分への期待。残業が多いのは自分の要領が悪いせい。
そんな風に考えて、働いて、気が付いたら身体を壊して死んでいた。
頭が悪くて、人の本質も全く見抜けない。
それが僕なんだ。




チート能力というものを、廉はなんとなく知っていた。
当時流行っていたアニメの中にチート能力で戦う男の物語があり、弟がそれを楽しそうに見ていたからだ。

そんな能力を自分は授けられた。

そのアニメの中の主人公は、能力を使い人々を救い、自らを犠牲に世界に平和を取り戻した。
それが能力を授けられた奴の生き方だと言わんばかりの物語の締め方だった。
弟は、そんな主人公が大好きだった。



「…僕、頭があまり良くなくて難しい事を考えるのは下手で、人を見る目もないんです」
廉は俯きながらぽつりと言った。
そんな廉を、アッシュとキルヴァンは心配そうな顔で見る。
「でも僕にとってアッシュさんとキルヴァンさんは、この世界で出来た初めての友達なんです」
「友達…」
アッシュとキルヴァンは、少し驚いたような表情で廉を見る。

「アッシュさんもキルヴァンさんも、僕がどんな人間かも知らないのに、ずっと優しく接してくれた。僕が本当に良い調合師かもわからないのに、必死に薬草を探してくれたり、いろんな手伝いをしてくれた。知り合いの少ない僕にとって、それがどれほど心強かったか…」
「出会い方は、ちょっと特殊でしたけどね」
アッシュはそう言ってくすっと笑う。するとつられて廉とキルヴァンも小さく笑った。
「知り合って間もない相手を友達だなんて、もしかしたら引かれちゃうかもしれないけど…。でも、だから、僕はお二人を友達って呼びたいです」

もしかしたら打算的に近づかれたのかもしれない。
最後には裏切られるのかもしれない。
でも、信じたい。

そうして廉は、少しずつ自分の気持ちを話し始めた。
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