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37.これからも、ずっと

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「ルリール、モンスターにやられたの?」
奏人は髪を乾かし帰ってくるや否やルリールへ聞いた。
ルリールは一瞬シュビルへ目をやったが、シュビルはこっちを気にしていなかった。
長い付き合いだからこそ分かる。
シュビルは、自分に判断をゆだねているのだ。

ルリールは一瞬悩んだが、事の経緯を奏人にも話すことにした。



「ってわけなんだ」
「・・・そうなんだ」

大きく取り乱すこともなければ、深く聞いてもこない。
おそらく奏人自身も混乱しているのだろう。
あー、とか、うーん、とか一通り呟き、やっと奏人はルリールへ聞いた。

「僕は、そいつらに捕まったら死ぬのかな」
「さぁ、わかんない。でも奏人のフェロモンも魔法の技術もレアだから、まぁ、その・・・」

ルリールは言葉を濁す。
その先の言葉は聞かなくてもわかる。飼い殺しにでもされるのだろう。
奏人はそう思い、一瞬ため息をつきそうになる。
が、ルリールの言葉を信じ、そのため息は飲み込んだ。
「ルリールとシュビルが守ってくれるんだよね」
「もちろん。絶対に奏人を守るよ」

「うーん、もし僕が女の子だったらその言葉で一瞬でルリールに恋に落ちてたよ」
「・・・女の子ってそんなに簡単に落とせるの?」
「童貞だからわかんない」



話が完全に脱線している。
それに気が付き、シュビルはすかさず会話に混じる。
「はいはい、じゃ、そういうことだからさ。明日から奏人は絶対一人で出歩かないこと」
「うん、分かった」
「ラオルの店にも僕たちついて行って、一緒に帰ってこよう」
「ありがとう。助かるよ」


「二人がいれば、僕は誰にでも立ち向かえちゃいそうだよ」
奏人は言う。
が、すぐはっとして顔を赤く染めた。

「なに僕恥ずかしいこと言ってるんだろ~っ!」
あせあせと恥ずかしがる奏人に二人は少しだけ心が和らぐ。
「その通りだよ。僕だって、奏人とシュビルがいるならなんでも出来そう」
「俺も。お前ら二人がいれば、どんな奴でも倒せそう。てか、実際倒せるしな」


三人はお互いに目を合わせ、クスッと笑った。
まるで生まれたときから一緒にいるかのように、
まるでずっと一緒に生きてきたかのように、
三人は固い絆で結ばれていた。

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