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07.都合がいい君の話
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「じゃ、そこ右行けば大通りだから」
「あざす。じゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」
家に帰ろうと歩き出すと、急に成田が古橋を呼び止める。
「先輩」
振り返ると、成田はどこか憐れむような表情で古橋を見ていた。
暗くてはっきりは見えないのだが、古橋は直観的に、そう感じたのだ。
「先輩、すみません。利用してるみたいに、先輩のこと使って・・・」
「成田?」
「俺、知ってたんすよ。先輩が俺の事好きだって」
「・・・え?」
やっぱり知っていたのか。
古橋の中で、何かが崩れる音がする。
「まじ・・・か・・・」
「俺、そういうの分かっちゃうタイプなんすよ」
暗くて表情は見えないが、成田の声は震えていた。
「知ってて、ずっと僕とセックスしてたの?」
動揺する自分から辛うじて出たセリフは、なんとも間抜けな質問だった。
答えはイエスしかないのに。
今更そんなことを聞いても意味がないのに。
「そうっす・・・」
成田は震える声で続ける。
「最初は、からかってました。ゲイなんて初めて出会ったしその時ちょうど彼女と喧嘩してたから、なんかストレスも性欲も溜まってて」
古橋は、話す成田を黙って見つめた。
成田は古橋の方を見ようとはせず、そのまま続けた。
「でも、先輩といるの楽しくて。普通に、すごい楽しかったから・・・。でも先輩が俺のこと好きって気が付いちゃって」
成田は一呼吸おくと、ようやく顔を上げて古橋を見る。
目には少し涙が浮かんでいた。
「俺は、先輩のことを先輩としてしか見れないから、これ以上先輩を傷つけるのはもうやめようって、思った・・・んです・・」
「彼女にバレたの?」
古橋が質問すると、成田は違います、と言った。
「じゃあ、本当に僕を傷つけたくないから、やめようと思ってくれたんだ」
「・・・そうっす」
都合の良いやつだ。
ヤりたい時はさんざん使っておいて、適当な理由を並べて捨てる。
セフレとはなんと使い勝手が良いことか。
古橋はだんだんと惨めになり、成田に言った。
「もういいよ・・・会わないんだね、うん。それでオッケー。わかった・・・」
先輩、と伸ばした成田の腕を振り払い、古橋は続ける。
「今まで通り、バイトは普通に接しろよ。じゃないと変だろ。どうせ大学とかは違うんだから、バイトの時だけ我慢して」
想像以上に冷たく振り払ったのが効いたのか、成田はそれ以上何も言わなかった。
「じゃ、ほんとに帰る」
古橋はその一言だけを残して家へ向かった。
一度も振り返ることはなかった。
「あざす。じゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」
家に帰ろうと歩き出すと、急に成田が古橋を呼び止める。
「先輩」
振り返ると、成田はどこか憐れむような表情で古橋を見ていた。
暗くてはっきりは見えないのだが、古橋は直観的に、そう感じたのだ。
「先輩、すみません。利用してるみたいに、先輩のこと使って・・・」
「成田?」
「俺、知ってたんすよ。先輩が俺の事好きだって」
「・・・え?」
やっぱり知っていたのか。
古橋の中で、何かが崩れる音がする。
「まじ・・・か・・・」
「俺、そういうの分かっちゃうタイプなんすよ」
暗くて表情は見えないが、成田の声は震えていた。
「知ってて、ずっと僕とセックスしてたの?」
動揺する自分から辛うじて出たセリフは、なんとも間抜けな質問だった。
答えはイエスしかないのに。
今更そんなことを聞いても意味がないのに。
「そうっす・・・」
成田は震える声で続ける。
「最初は、からかってました。ゲイなんて初めて出会ったしその時ちょうど彼女と喧嘩してたから、なんかストレスも性欲も溜まってて」
古橋は、話す成田を黙って見つめた。
成田は古橋の方を見ようとはせず、そのまま続けた。
「でも、先輩といるの楽しくて。普通に、すごい楽しかったから・・・。でも先輩が俺のこと好きって気が付いちゃって」
成田は一呼吸おくと、ようやく顔を上げて古橋を見る。
目には少し涙が浮かんでいた。
「俺は、先輩のことを先輩としてしか見れないから、これ以上先輩を傷つけるのはもうやめようって、思った・・・んです・・」
「彼女にバレたの?」
古橋が質問すると、成田は違います、と言った。
「じゃあ、本当に僕を傷つけたくないから、やめようと思ってくれたんだ」
「・・・そうっす」
都合の良いやつだ。
ヤりたい時はさんざん使っておいて、適当な理由を並べて捨てる。
セフレとはなんと使い勝手が良いことか。
古橋はだんだんと惨めになり、成田に言った。
「もういいよ・・・会わないんだね、うん。それでオッケー。わかった・・・」
先輩、と伸ばした成田の腕を振り払い、古橋は続ける。
「今まで通り、バイトは普通に接しろよ。じゃないと変だろ。どうせ大学とかは違うんだから、バイトの時だけ我慢して」
想像以上に冷たく振り払ったのが効いたのか、成田はそれ以上何も言わなかった。
「じゃ、ほんとに帰る」
古橋はその一言だけを残して家へ向かった。
一度も振り返ることはなかった。
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