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連載
不意なキスの波紋1(ティア視点)
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「レイ……?」
声がした方に立っていたのはレイガルド様だった。
私と同様に正装から軽装に着替えているようで、装飾もあまりないシンプルで上質な衣服に身を包んでいる。
彼は私を見ると辺りを見回す。
「ティア。まさか一人じゃないだろうな」
「一人ですよ」
「危ないだろ。女の子がこんなところに一人で。しかも、夜だぞ」
「照明も一応ありますし、ファルマ城中ですから大丈夫かなぁと」
私はあちらこちらに浮かんでいる光へと視線を向ければ、ふよふよと浮いている球体が蝋燭の灯火のような明るさで照らしてくれている。
ここは大国のファルマ。
しかも、今日はパーティーだから他国から様々な要人が訪れるため、騎士達がいつも以上に警備もしっかりとしているから安心。
「ちょっと星を見に来ただけなのですぐに戻ります。それよりもレイ。明日の早朝に出立しなければならないのでは? お兄様もレイと一緒に戻るので、明日は早く起きなければならないとおっしゃっていましたが」
普段眠るにはまだ早いけど、早朝出国ならば寝ていた方が良い時間だ。
全く眠らないで馬車に乗れば三半規管が弱くなり酔いが回るのが早いだろうし、今日はパーティーがあったから疲労感もあるはず。
「重々承知なんだが、なかなか眠れなくて……」
レイが苦笑いを浮かべながら噴水の縁に座った後、私にも座るように促したため隣へと腰を落とす。
「ファルマは大国だからなのか、何もかもが豪華で落ち着かなくてさ」
「あー、わかります。壊してしまったり、傷つけたらどうしようって思いますよね。家具一つとっても高級品ですから」
「傭兵やっていたから、野営やっていたし基本的にどこでも眠れると思っていたから予想外だったよ。だから、少し自然に触れて落ち着いてから寝ようと思って星を見に来たんだ」
レイガルド様はゆっくりと顔を空へと向け、表情と纏っている雰囲気を和らげる。
エタセルは自然豊かな所だから、きっと似たような自然的な環境を求めたのだろう。
暫く二人でなにも話さず星を眺めていれば、ぽつりとレイガルド様が呟く。
「ティア。前に元婚約者の件を忘れて欲しいと言った事があると思うが、ティアの心にはまだ元婚約者の存在があるのか?」
「あまりにも斬新な招待状の渡し方をされましたし、婚約破棄が衝撃的すぎたので忘れることはできないですね。復讐するために色々地道にやって来ましたし。結婚式までには幸せになって見返してやります」
「たとえ復讐だとしても君の心に誰かがいるのが耐えられない。君を誰にも取られたくない。元婚約者だけではないよ。ライナス様にもだ」
突然飛び出してきたライの名を聞き、彼の部屋がある棟へと顔を向けたが、窓には分厚いカーテンで覆われている。
ライは今なにをしているのだろうか。
――エスカ様達の前で頬にキスされたんだよね。
騒動でうやむやになってしまったし、お兄様とメディの反応が大きくてリアクション出来なかったけど人前で。
思い出して頬が熱くなっているので両手で押さえて冷やしていると、レイに手首を掴まれてしまう。
「もしかして、ライナス様から頬に口づけを落とされたのを思い出したの?」
苦しげな表情を浮かべているレイに尋ねられ、私はあの時レイにも見られていたのかと思った。
レイが端正な顔を私へとゆっくり近づけていけば、私の頬に柔らかいものが掠めてしまう。
「え」
最初何が起きたのかわからず頭が真っ白になりかけたが、なんとか状況を察しレイの方へと顔を向ける。
鏡を見てないけど、きっと私の目は限界まで見開かれているだろう。
レイは真剣な眼差しで私を見つめていた。
「ティア、君に伝えたいことがある。俺は君のことが好きなんだ」
状況を理解出来ていたとはいえ、実際言葉として伝えられると現実だと実感する。
告白されたことに対して、感情の前に頭に浮かんだのはメディの顔だった。
彼女はレイのことが好きで、レイのために強くなりたいからとパーティーにも参加している。
そして、私は彼女のことを友人として好きだ。
レイのことも今まで政務に携わったことがないのに、様々な人達の手を借りてエタセルや民のために毎日執務を行なっているから尊敬している。。
「誰にも負けたくない。特に君が一番頼っているライナス様には。ティア、エタセルの王妃になってくれないか?」
声がした方に立っていたのはレイガルド様だった。
私と同様に正装から軽装に着替えているようで、装飾もあまりないシンプルで上質な衣服に身を包んでいる。
彼は私を見ると辺りを見回す。
「ティア。まさか一人じゃないだろうな」
「一人ですよ」
「危ないだろ。女の子がこんなところに一人で。しかも、夜だぞ」
「照明も一応ありますし、ファルマ城中ですから大丈夫かなぁと」
私はあちらこちらに浮かんでいる光へと視線を向ければ、ふよふよと浮いている球体が蝋燭の灯火のような明るさで照らしてくれている。
ここは大国のファルマ。
しかも、今日はパーティーだから他国から様々な要人が訪れるため、騎士達がいつも以上に警備もしっかりとしているから安心。
「ちょっと星を見に来ただけなのですぐに戻ります。それよりもレイ。明日の早朝に出立しなければならないのでは? お兄様もレイと一緒に戻るので、明日は早く起きなければならないとおっしゃっていましたが」
普段眠るにはまだ早いけど、早朝出国ならば寝ていた方が良い時間だ。
全く眠らないで馬車に乗れば三半規管が弱くなり酔いが回るのが早いだろうし、今日はパーティーがあったから疲労感もあるはず。
「重々承知なんだが、なかなか眠れなくて……」
レイが苦笑いを浮かべながら噴水の縁に座った後、私にも座るように促したため隣へと腰を落とす。
「ファルマは大国だからなのか、何もかもが豪華で落ち着かなくてさ」
「あー、わかります。壊してしまったり、傷つけたらどうしようって思いますよね。家具一つとっても高級品ですから」
「傭兵やっていたから、野営やっていたし基本的にどこでも眠れると思っていたから予想外だったよ。だから、少し自然に触れて落ち着いてから寝ようと思って星を見に来たんだ」
レイガルド様はゆっくりと顔を空へと向け、表情と纏っている雰囲気を和らげる。
エタセルは自然豊かな所だから、きっと似たような自然的な環境を求めたのだろう。
暫く二人でなにも話さず星を眺めていれば、ぽつりとレイガルド様が呟く。
「ティア。前に元婚約者の件を忘れて欲しいと言った事があると思うが、ティアの心にはまだ元婚約者の存在があるのか?」
「あまりにも斬新な招待状の渡し方をされましたし、婚約破棄が衝撃的すぎたので忘れることはできないですね。復讐するために色々地道にやって来ましたし。結婚式までには幸せになって見返してやります」
「たとえ復讐だとしても君の心に誰かがいるのが耐えられない。君を誰にも取られたくない。元婚約者だけではないよ。ライナス様にもだ」
突然飛び出してきたライの名を聞き、彼の部屋がある棟へと顔を向けたが、窓には分厚いカーテンで覆われている。
ライは今なにをしているのだろうか。
――エスカ様達の前で頬にキスされたんだよね。
騒動でうやむやになってしまったし、お兄様とメディの反応が大きくてリアクション出来なかったけど人前で。
思い出して頬が熱くなっているので両手で押さえて冷やしていると、レイに手首を掴まれてしまう。
「もしかして、ライナス様から頬に口づけを落とされたのを思い出したの?」
苦しげな表情を浮かべているレイに尋ねられ、私はあの時レイにも見られていたのかと思った。
レイが端正な顔を私へとゆっくり近づけていけば、私の頬に柔らかいものが掠めてしまう。
「え」
最初何が起きたのかわからず頭が真っ白になりかけたが、なんとか状況を察しレイの方へと顔を向ける。
鏡を見てないけど、きっと私の目は限界まで見開かれているだろう。
レイは真剣な眼差しで私を見つめていた。
「ティア、君に伝えたいことがある。俺は君のことが好きなんだ」
状況を理解出来ていたとはいえ、実際言葉として伝えられると現実だと実感する。
告白されたことに対して、感情の前に頭に浮かんだのはメディの顔だった。
彼女はレイのことが好きで、レイのために強くなりたいからとパーティーにも参加している。
そして、私は彼女のことを友人として好きだ。
レイのことも今まで政務に携わったことがないのに、様々な人達の手を借りてエタセルや民のために毎日執務を行なっているから尊敬している。。
「誰にも負けたくない。特に君が一番頼っているライナス様には。ティア、エタセルの王妃になってくれないか?」
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