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幕間 その頃のあの人達は2(セス視点2)

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「えー、わからないの? 僕の名・フーザーは世界中で知られているよ。フーザーで最初に思い浮かぶ人物はなに?」
 頭に浮かぶのはただ一人のみ。


「まさか精霊王の守護師の一人……!」
 僕は目を大きく見開き彼を見詰めた。

「正解。もしかして、知らなかったー? ティアもリストも僕の子孫なんだよ。ティアもさ、婚約破棄された時に僕を頼ってくれれば、一瞬であの二人を破滅させてあげたのに。ティアが望むならば、国ごと潰すよ?」
 空気が震える冷たい声音は、感情が一切入っておらず。
 瞬きせず真顔で吐き出した台詞は、肉体の無い僕でも震え恐怖を覚える。


「精霊王から君は子孫に執着して子孫の邪魔をするやつは全員叩き潰すぶっ飛んだ奴だから、子孫から頼まれない限り手を出すなって」
 精霊王様に僕は完全に同意すると同時に、精霊界でもそう認識されているんだなぁと思った。


「まぁ、自分の手で復讐した方がすっきりするって気持ちはわかるよ。じわじわと真綿で締め上げるように時間をかけて相手を追い込みたいよねっ!」
 八割の女性が魂を奪われてしまいそうになるくらいに見惚れてしまう笑顔で告げているが、彼が話している内容が物騒すぎる。
 精霊を始めて見たが、精霊というのは感情がヤバイ方なのだろうか。


「フーザー様。もしかして、僕が霊感の無い町の人やティア様に姿を認識されるようになったのは、フーザー様の力ですか?」
「どうして僕が君に力を貸すの? 僕じゃないよ」
 どうやら、子孫以外には冷たいらしい。


「ティアが引いている僕の血が影響したんだろうね。彼女が生まれた時に加護を与えたから、彼女が強く願えば精霊ぼくの力を使えるしコンタクトが取れる」
 確かにティア様と出会ってから一気に人生が大きく変化。



 ティア様は最初から僕の姿を捉えていた上に、会話も可能だった。
 しかも、触れることも出来たし。



「今日、君の前に現れたのは、お願いがあるからなんだ。実はさ、ティアは今二人の王に思いを伝えられて悩んでいるの。ファルマの王とエタセルの王に。しかも、厄介な事に周囲の人間関係が絡んで六角関係。そのせいで、ティアとリストは悩み過ぎて睡眠を取ると悪夢を見ちゃう」
「六角関係ですか?」
「そう。ライナスとレイガルドはティアを好きで、メディがレイガルドを好き。コルタがメディを好きで、コルタをルナが好き。みんな矢印がどこに向いているかわかっちゃっている」
 確かに二人ともここ数日様子が変だとは思っている。

 時々、ぼーっとしたり、ため息を吐いたり。


「ティアとリストの相談に乗ってあげて。代わりに君が知りたいことを教えてあげる」
「僕が知りたい事ですか?」
 少し気味が悪かった。
 失礼な言い方かもしれないけど、身内以外はどうでも良いと思っているヤバイ精霊としか思えなかったから。
 僕のことは興味もないし、僕が困っても助けてなんてくれないだろう。


「そう。君の愛するグローリィのこと。彼女は神殿内を彷徨っている。結界を解けば会えるんじゃないかな。まぁ、最も二千年以上も維持している結界を解ける人間なんて限られているけどね――」







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