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王女達の結婚式1
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「ティアナ様。すごくお似合いですわ!」
「ティアナ様の髪色にドレスの青々とした鮮やかさが映えております。ライナス様の瞳の色と同じですね。お美しいですわ。誰もが見惚れてしまいます」
「ありがとうございます」
姿見に映し出されているのはドレスを纏っている私の姿だった。
私の傍には着替えを手伝ってくれた侍女達の姿がある。
私が纏っているのは透き通るような青色の生地で作り上げられたドレス。
エタセルで流行しているベアトップタイプのため、デコルテ部分が大きく開き強調されていた。上半身がすっきりとしたデザインだけれども、下半身はウエストラインが細めで裾が大きく広がっているベルラインデザインとなっている。
「生きている間に世界でも指折りの珍しい生地が見られるなんて思ってもいませんでしたわ。その上、着付けを手伝えるなんて!」
「ティアナ様が妖精の子孫なので『妖精の羽』を注文していたなんて、陛下は粋な事をなさいましたよね」
「驚きましたよね。まさか、ライナス様が押さえていたなんて。生地の存在を知った針子達もテンション高かったです」
「装飾品も素敵なものをオーダーされていますし」
侍女達が目を輝かせながら私を見ているが、彼女達が釘付けになっているのは私ではなく私が纏っているモノだ。
ライの瞳と同じ色を持つドレス生地は、『妖精の羽』と呼ばれる布。
色を出すために何度も生地を染め上げて色を出すので、とっても手間暇がかかっている上に希少価値がある宝石を砕き染料の一部とするため高価。
職人たちが納得する生地を作るのに一年は軽くかかるらしく、市場には出回っていない。そのため、伝手をたどり生地を予約する以外入手方法はないのだ。
ドレスも装飾品も今回の王女達の結婚式に着る衣装や宝飾品は全てライが手配してくれた。
一度完成したドレスや装飾品をエタセルで試着する機会があったんだけれども、
私とお兄様は「国家予算」と同じ台詞が口から出てしまうことに。
それくらいにライが用意してくれたものが色々な意味で凄かった。
ドレスは希少価値が高い生地で作られていたし、ネックレスも装飾品じゃなくて芸術品というカテゴリにチェンジ出来るような代物だったから。
大粒のダイヤという表現ではなく掌で握れそうなくらいのダイヤを中心に真珠やレッドダイヤなどを使用して作られたネックレスは、首にかければずしっとした重さを感じてしまうと同時に一粒でも無くせないというプレッシャーがかかる。
「……でも、勿体ないですよね。ティアナ様の髪をアップに出来ないなんて。ドレスのデザインを考えたら髪を降ろしたままよりもアップにした方が断然素敵なのに」
侍女が頬に手を当ててため息交じりで呟く。
私もてっきり髪をアップにすると思っていたけれども、今日は降ろしたままにするらしい。侍女達がライよりそういう指示を受けていると聞いている。
「何故でしょうか? 私、ダンスの時に踊りやすいので纏めたいんですよね。普段も商会の仕事中はバレッタで止めているので纏めた方が楽なんですけど」
「ティアナ様のドレスがベアトップタイプなため露出が多いからですわ。陛下は髪で露出箇所を隠そうと思っているのかと……」
「お気持ちは理解できるけれども、侍女としては髪はアップにしたいです」
「私も。デコルテも綺麗ですし、それに砕いたパールが入ったお粉で艶々ですし」
じっと侍女達に鎖骨付近を見つめられ、私は気恥ずかしくなり俯いてしまう。
その時だった。
「ティア、準備どう?」という、控えめな声と共に扉をノックする音が届いたのは。
――ライだ!
私はすぐに入室を促す声をかければ、扉が開きライの姿が現れる。
彼も私と同様に正装をしていて、カッコいい。
きっと会場にいる女性達は魅力的なライに釘付けになるだろう。今からそんな想像が出来てしまい、ちょっと焼きもちを焼いてしまっていた。
ライは私を視界に入れると、目じりを下げて微笑んだ。
「試着で一度見たけれども、何度見てもよく似合っている。妖精の羽はティアのために存在するのかもしれないな」
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないよ」
ライは私の元まで来ると肩に手を添え、髪に口づけを落とす。すると、侍女達の黄色い悲鳴が上がった。
「準備は終わったのか?」
「えぇ、終了しております」
「そうか、ありがとう。悪いが暫くティアと二人きりにさせてくれ」
ライは侍女達に労いの言葉と退出の言葉をかければ、彼女達は深々と頭を下げて扉へと向かっていく。
扉から外へと彼女達が出て行ったのを見届けるとライは私の正面に立った。
真っ直ぐ私を見据え、さっきと違ってほんのりと緊張した面持ちをしている。
「ティアナ様の髪色にドレスの青々とした鮮やかさが映えております。ライナス様の瞳の色と同じですね。お美しいですわ。誰もが見惚れてしまいます」
「ありがとうございます」
姿見に映し出されているのはドレスを纏っている私の姿だった。
私の傍には着替えを手伝ってくれた侍女達の姿がある。
私が纏っているのは透き通るような青色の生地で作り上げられたドレス。
エタセルで流行しているベアトップタイプのため、デコルテ部分が大きく開き強調されていた。上半身がすっきりとしたデザインだけれども、下半身はウエストラインが細めで裾が大きく広がっているベルラインデザインとなっている。
「生きている間に世界でも指折りの珍しい生地が見られるなんて思ってもいませんでしたわ。その上、着付けを手伝えるなんて!」
「ティアナ様が妖精の子孫なので『妖精の羽』を注文していたなんて、陛下は粋な事をなさいましたよね」
「驚きましたよね。まさか、ライナス様が押さえていたなんて。生地の存在を知った針子達もテンション高かったです」
「装飾品も素敵なものをオーダーされていますし」
侍女達が目を輝かせながら私を見ているが、彼女達が釘付けになっているのは私ではなく私が纏っているモノだ。
ライの瞳と同じ色を持つドレス生地は、『妖精の羽』と呼ばれる布。
色を出すために何度も生地を染め上げて色を出すので、とっても手間暇がかかっている上に希少価値がある宝石を砕き染料の一部とするため高価。
職人たちが納得する生地を作るのに一年は軽くかかるらしく、市場には出回っていない。そのため、伝手をたどり生地を予約する以外入手方法はないのだ。
ドレスも装飾品も今回の王女達の結婚式に着る衣装や宝飾品は全てライが手配してくれた。
一度完成したドレスや装飾品をエタセルで試着する機会があったんだけれども、
私とお兄様は「国家予算」と同じ台詞が口から出てしまうことに。
それくらいにライが用意してくれたものが色々な意味で凄かった。
ドレスは希少価値が高い生地で作られていたし、ネックレスも装飾品じゃなくて芸術品というカテゴリにチェンジ出来るような代物だったから。
大粒のダイヤという表現ではなく掌で握れそうなくらいのダイヤを中心に真珠やレッドダイヤなどを使用して作られたネックレスは、首にかければずしっとした重さを感じてしまうと同時に一粒でも無くせないというプレッシャーがかかる。
「……でも、勿体ないですよね。ティアナ様の髪をアップに出来ないなんて。ドレスのデザインを考えたら髪を降ろしたままよりもアップにした方が断然素敵なのに」
侍女が頬に手を当ててため息交じりで呟く。
私もてっきり髪をアップにすると思っていたけれども、今日は降ろしたままにするらしい。侍女達がライよりそういう指示を受けていると聞いている。
「何故でしょうか? 私、ダンスの時に踊りやすいので纏めたいんですよね。普段も商会の仕事中はバレッタで止めているので纏めた方が楽なんですけど」
「ティアナ様のドレスがベアトップタイプなため露出が多いからですわ。陛下は髪で露出箇所を隠そうと思っているのかと……」
「お気持ちは理解できるけれども、侍女としては髪はアップにしたいです」
「私も。デコルテも綺麗ですし、それに砕いたパールが入ったお粉で艶々ですし」
じっと侍女達に鎖骨付近を見つめられ、私は気恥ずかしくなり俯いてしまう。
その時だった。
「ティア、準備どう?」という、控えめな声と共に扉をノックする音が届いたのは。
――ライだ!
私はすぐに入室を促す声をかければ、扉が開きライの姿が現れる。
彼も私と同様に正装をしていて、カッコいい。
きっと会場にいる女性達は魅力的なライに釘付けになるだろう。今からそんな想像が出来てしまい、ちょっと焼きもちを焼いてしまっていた。
ライは私を視界に入れると、目じりを下げて微笑んだ。
「試着で一度見たけれども、何度見てもよく似合っている。妖精の羽はティアのために存在するのかもしれないな」
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないよ」
ライは私の元まで来ると肩に手を添え、髪に口づけを落とす。すると、侍女達の黄色い悲鳴が上がった。
「準備は終わったのか?」
「えぇ、終了しております」
「そうか、ありがとう。悪いが暫くティアと二人きりにさせてくれ」
ライは侍女達に労いの言葉と退出の言葉をかければ、彼女達は深々と頭を下げて扉へと向かっていく。
扉から外へと彼女達が出て行ったのを見届けるとライは私の正面に立った。
真っ直ぐ私を見据え、さっきと違ってほんのりと緊張した面持ちをしている。
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2024年12月追記
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