捕食者と逃げる者

ハーマ

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出会い

颯斗との出会い

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仁視点

仲間「リーダー  どうしますか?今日やけに捕食者が外を徘徊しているんですが……」

仁「どうするも何も……ここのヤツらの飯を調達しねぇと……」

仲間「このタイミングで言ったら自殺行為ですよ」

仁「分かってる」

仁  だがそろそろこちらの食糧庫も底をつく……今調達しないと皆飢えてしまう……

外の様子を確認しながら食料調達を試みる「捕食される側」のリーダー  走坂  仁

仁「……一定の場所をずっと探していないか?まるで「誰か」を探している様な動きをしている」

仲間「よく見ればそうですね……捕食者が俺達以外で探すって早々なくないですか?」

仁「今人影があったな……武器を持っていたと思うんだが……」

監視カメラに人影が映り仁がその人影を拡大

仲間「武器を持っていますね……ですが捕食者から逃げているような……」

仁「接触してみるか  武器を持って帷子(かたびら)と防弾チョッキを着てここに集合だ」

仲間「了解」

仁  彼……どこかで見たことあるんだよな……しかも他の捕食者とは違う目をしていたし……

仁は先程監視カメラに写った青年に見覚えがあった……どこで見たのかは本人と接触すればわかると考え食料調達がてら接触を試みる

仁「やはり居ないか……」

仲間「ですが消えた時間はそこまで経っていませんね……飲み物の缶がまだ暖かい」

捕食者「なんかいい匂いがすると思ったら……」

仁「しまった……戦闘準備!!」

仁  ここは場所が狭い……下手をしなくても戦闘ができる場所じゃない……

不運にも仁達が居たのは路地裏の狭い通路

捕食者「なんだ捜索のつもりが餌が見つかったのか?」

捕食者「しかもまだ生きてんじゃん」

捕食者「生け捕りにするには惜しいな」

仁  囲まれた……

完全に包囲された仁達に逃げ道はない

仁「!?伏せろ!!!!!」

不意に頭上から発砲音が聞こえ仁が仲間を伏せさせ自分も伏せる

???「餌を見つけたからと俺を見失うのは頂けねぇな」

捕食者「……っ……颯斗様……!!」

仁「さっき監視カメラに写ってた……」

???「……食料調達の場所を確保してやるからさっさと立て」

仁  ……いつの間に……

先程の発砲だけで捕食者を倒したのか捕食者は倒れており目の前に立つ青年に「立て」と言われ、仁達は助けて貰ったのもあり即座に立って歩いている彼の後ろを歩く

仁「……名前を聞いてないんだけど」

???「煌翔  颯斗  お前等は「捕食される側」の幹部で今俺に質問したやつはリーダーだろ?俺に対しての説明は要らない  全員知ってる」

仲間「何で俺たちを知っている」

颯斗「今はどうでもいい  さっさと食料調達してこい」

苛ついているのか颯斗の言い方は荒く「さっさとしろ」と言う

仁「何でそんなに苛ついている?」

食料調達を終え大荷物を持って仁は颯斗と合流

颯斗「……逃げ道をもうすぐ飢えが来る  人との接点を断たなければ襲ってしまう」

仲間「お前捕食者なのか!?」

颯斗「大声出すんじゃねぇよバレんだろうが  捕食者だけどこうして捕食者から護ってんだ……少しは察しろ」

仁「味方って事だろ  現に俺らは護られてる」

仁の言葉に颯斗は「理解が早くて助かる」と返答

颯斗「っ……ここまで来れば大丈夫だろ?……じゃぁな」

仁「えっ……おい!!」

仲間「走るの早いですね……」

仁が叫んだ時には既に颯斗はおらず仲間は関心

仁「あいつ……あの事件の生き残りだ」

仲間「え?」

仁「当時14だったから……今は29の筈……右手だけに手袋をしていたから多分そう」

仲間「あの惨劇の唯一の生き残り……」

仁  捕食者になりかけていたから目が少し違ったが……確かにあの時助けられた人……

仁「………取り敢えず中に入ろう」

そう言って仁達は分かりずらい入口から室内へ

仁「……まさか襲われたか?」

仁  人が減ってる……俺等以外で外に出たのか?それともここが襲われたのか?

人間「……捕食者は来てないけど……「こんな生活もう嫌だ」と言って兄が……」

仁「出て行ったのか…………今から行くには危険すぎる」

人間「ごめんなさい……兄を止めることが出来なくて……」

仁「君のせいじゃない」

泣いている少女を慰める仁には人間らしさが溢れ外では何が起きているのかを知らない……

~外~

人間「…………」

外には出ていった少女の兄は黒装束の青年に食されていた……

颯斗「…………」

ファーストレディ「捕食者としての欲が勝りましたか」

颯斗「食事中に話しかけないでもらえるか」

ファーストレディ「ふふふ  分かりました」

「ミヂミヂミヂ」と颯斗が肉を引きちぎり余り噛まずに飲み込むと「ゴクンッ」と言う良い音が

ファーストレディ「好き嫌いをしない辺り流石ですね」

食事を終えた颯斗にファーストレディはそう言う

颯斗「苦手な部分は先に食べる主義ですので  ……我が主ファーストレディ」

颯斗は洗脳を解いても特定の時間になると再び洗脳が始まり、その間に飢えが来てしまうとほぼ確実に逆らうことが出来ない

ファーストレディ「行きましょう颯斗  私達の家であるあの城へ」

颯斗「ファーストレディの赴くままに」

そう言って颯斗達は捕食者達の城へ……

~翌朝~

仁「食われてるな……物の見事に」

仲間「ご丁寧に服を畳んでその上に骨を置いてありますね」

仁「だが珍しいな  捕食者は基本「家」である城に生きた人間を捕獲してその城の牢の中で食す……外でしかもこんなに綺麗には食べない」

仲間「……これなんですかね?」

ふと仲間の1人が何かに気が付きそれを拾う

仁「なんだこれ……」

仲間の1人が拾ったのは透明な細長い糸だが切れていない

仁「結構長いな……伝ってみるか」

仁  どこに続いてるんだ?

細長い糸を伝っていくと其処にはかなり使い古しているであろうバイクと民家

仁「普通の民家じゃないな……中が見えないし凄く鉄臭い」

???「それ以上近付くな」

全員「!?」

仁が家に近づいた瞬間  若いがドスの聞く声が聞こえて全員が身構える

???「主じゃないな?誰だ」

仁「まずそちらから名乗るのが礼儀だと思うが?」

仲間「リーダー……!!逆撫でする様な事を言わないで下さい……!!」

と仲間は言うが仁は無意識

???「俺の名は鳳凰  主が帰宅するまで俺が番をしている」

仁「ここは誰の家なんだ?」

鳳凰「あんたは知ってる筈だ  右手だけ手袋をしている」

仁「……14年前に助けたあの人か?」

仁の言葉に鳳凰は「そう」と言う

鳳凰「俺の主は颯斗であり  俺は人でも捕食者でも無い」

仁「言っている意味が分からないんだが」

颯斗「鳳凰」

仁が鳳凰の言っていることが理解出来ずに質問するとタイミング良く颯斗(捕食者)が登場

颯斗「…………」

鳳凰「颯斗  俺の知人だから呼ばなくていい」

颯斗が何をしようとしたのかを察知した鳳凰がそれを阻止

颯斗「お前の知人なら良いが何故ここに「餌」が居る?」

仁「え?」

鳳凰「偶々外を徘徊してたら此処に辿り着いたらしい  武器を取りに来たんだろう?早く行ってこい」

颯斗「もう少し番をしていてくれ」

鳳凰は颯斗の言葉に「おう」と返答

鳳凰「颯斗は捕食者の時は人間側の時の記憶がないんだ  人間側になった時に捕食者の時の記憶はあるんだが……所謂「二重人格」の様なものだから今の颯斗に何を言ってもろくな返事は帰ってこないぞ」

仁「通りで俺等を「餌」って言った訳だ……」

鳳凰「……ここから離れた方がいいぞ  もう直ぐ颯斗が率いる第10部隊が到着する」

仁「分かった  色々教えてくれた事に感謝する」

と鳳凰に言って仁達は拠点へ

仁  アレが彼の捕食者になった時の目か……

仁達が出会った「人間側」の颯斗と「捕食者側」の颯斗……二重人格の様に目の違う颯斗には2つの心があるのだと仁は初めて知った……
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