捕食者と逃げる者

ハーマ

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人として

颯斗の想い

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颯斗視点

颯斗「大丈夫か?  仁」

仁「まだ「動くな」と言われた」

颯斗「食料調達に行ってくる」

仁「気をつけてな」

颯斗  今日はどこに行こう……

仁の仲間「颯斗さん  我々も一緒に行きます」

颯斗「……仁の介護と城にいる人の健康管理とかであんたら忙しいだろ……?今体力を消耗すると後が辛いぞ」

仁の仲間「そこまでご存知でしたか……颯斗さんと鳳凰さんはリーダーの大切な人でもあります  我々が護る義務もある」

颯斗「………俺の後ろを歩け  捕食者の中でもレベルの高い奴らが俺を搜索しているからお前らじゃ太刀打ち出来ない」

颯斗  他の奴らがいると反応するからな……気をつけないと

などと思いながら今日は少し遠出

颯斗「鳳凰  お前は仁の仲間と中の食糧を調達してくれ……俺は外で待機している」

鳳凰「了解した」

颯斗  どの位行けるかな……

実は外には複数の敵がおり下っ端ではあるが全員強い

捕食者「…………」

颯斗「俺を倒すか生け捕りにするかはお前達次第だが……俺も俺で今はこちら側なんでね……死ぬ可能性の方が高いが……来い!!」

颯斗は強いレベルの捕食者達と鉢合わせないように段取りをしており、中ではそこまで強くない捕食者がいて外はそれなりに強いので1人で全員を相手する

~2時間後~

鳳凰「外にも居たのか」

颯斗「外の方が弱いけどな  出来たか?」

仁の仲間「お陰様で完了しました」

颯斗「戻るぞ」

颯斗  腹に出血してるな……バレないようにしないと……

鳳凰「後で腹の出血の手当してやるから仁がくれた部屋行くぞ」

なんとかバレないようにしていた颯斗だったが鳳凰にはバレバレ

鳳凰「お前本当は外の敵の方が強かったのを隠したな?いくら下っ端とは言え外を担当する捕食者は精鋭部隊のメンバーだって事知ってんだろ……気を使ってくれたのは有難いがお前は少し人に頼るという事を知れ  後怪我を隠すな」

城に着き腹に包帯を巻いて貰っている颯斗は鳳凰に説教をされていた

鳳凰「軍人の時は怪我をしても位がそれなりに高かったから頼らずとも良かったんだろうが、今のお前は大佐じゃないしれっきとした人間なんだから衣食住くらいまともにやれ」

颯斗「鳳凰に説教されんの何年ぶりだ?10年くらい?」

鳳凰「そうそう10年前……っておい  話脱線させるんじゃねぇ!!」

颯斗「くくく……」

颯斗  ナイスノリツッコミwww

鳳凰「…………」

颯斗「いだだだだ  悪かった!!俺が悪かったですすいませんでした!!!!!!」

本当に怒った鳳凰は巻いていた包帯をきつく巻き出して颯斗が謝罪

仁の仲間「(何やってるんだろう……)」

鳳凰に「部屋に葡萄を持ってきてくれ」と頼まれていた仁の仲間は部屋の外で困惑

颯斗「はー……」

包帯を巻き終えベッドに横になる颯斗

「コンコン」

颯斗「ん?どーぞー」

※ロックは解除済み

仁の仲間「失礼します  鳳凰さんに頼まれた物を持ってきたんですが……」

颯斗「!葡萄!!!???」

鳳凰「食らいついた食らいついた……持って来てくれて有難うな  皿は後で持っていく」

仁の仲間「分かりました  失礼します」

鳳凰  昔から葡萄が大好きなのは変わらずか

葡萄の乗った皿を受け取り嬉しそうに食べている颯斗

鳳凰「ほんと昔から葡萄が大好きなのは変わらないんだな  梨とかも好きだろ?」

颯斗「好きだな  桃とかゴールデンキウイも好き」

鳳凰「の割には野菜嫌いだよな」

颯斗「好きになれない」

颯斗  野菜はホント無理

颯斗「……鳳凰」

鳳凰「?」

颯斗「俺と一緒に散る気はあるか」

鳳凰「……え……?」

颯斗は唐突に言い出した……「一緒に散る気はあるか」と

颯斗「俺と一緒に散る気はあるか  と聞いた」

鳳凰「………言っている意味がわからないんだが」

颯斗「主を亡くして「1人で泣くのなら一緒に散って笑おう」と言う事だ」

鳳凰「知ってたのか……?」

鳳凰は何世紀にも渡って主を変えてきた……今迄の主は全員鳳凰を置いていき泣いてきたのを颯斗は知っていたのだ

颯斗「昔鳳凰を貰う前……「ヴァルファード」と名乗る人と出会ったんだ……その人は「鳳凰の最後の主になってくれ」と俺に言った……「鳳凰は全ての任務を終えた……故に最後は己の意志で残るか散るかを選ばせてやって欲しい」と……」

鳳凰「……前主が転生して俺の今の主である颯斗にそう言ったのか……」

颯斗「ああ  ……それで?返事は?」

鳳凰「…………」

颯斗  かなり迷ってるな……

鳳凰「……一緒に……散っても良いのか……?」

颯斗「お前が良いのならば一緒に散ろう」

悩んだ末に鳳凰は颯斗と止めに散ることを選んだ

颯斗「俺の命は後11日……恐らくだが明日明後日にはファーストレディ達と衝突すると思う」

鳳凰「その時は一緒に行く」

颯斗と鳳凰は「主従」とは言い難い絆で結ばれていた……故に簡単には2人は離れない

~その日の夜~

颯斗「よっ  やっと復帰したか仁」

仁「体が訛った……」

鳳凰「自業自得だ」

颯斗「……少し出てくる」

颯斗  何の気配だ?

感じたことのない気配を感じ鳳凰と共に外に出る

鳳凰「……ヴァルファード?」

ヴァルファード「………久し振りだな  鳳凰」

外には鳳凰の前主ヴァルファード・ガーグの姿

ヴァルファード「レオンさんの後継者って事でこの世界に転生したんだけど……どうしても鳳凰が心配で颯斗君に助言したんだ……決意できたようだからこれを渡しに来た」

そう言ってヴァルファードは手のひらサイズの物を投げ渡す

鳳凰「これは?」

ヴァルファード「御守りだよ  次の生の時は颯斗君と幸せに暮らせるようにと願いを込めてある」

鳳凰「…………」

ヴァルファード「……次の世でまた会おう 鳳凰、颯斗君」

本当に御守りを渡しに来ただけなのかそのままヴァルファードは何処かへ

颯斗「お前の前主って凄いインパクトあるな」

鳳凰「親父の後継者だからな……しかも恋人を待たせてたのか遠くでアヴェンタドールのエンジン音が聞こえた」

颯斗「あの感じじゃ俺と同じ同性愛者か」

鳳凰「……同性愛者だったのか?」

颯斗  今更かよ……

颯斗「今更か……取り敢えず中に入ろう  つか「親父」居たのか?」

鳳凰「本当に一番最初の主が俺を作った父親だったんだ  だから「親父」」

颯斗「へー」

などと話をしながら2人は中へ

~2日後~

颯斗「おいおいおいおい……マジかよ……人間側と捕食者が鉢合わせになってんじゃねぇか……仁達もそこに居るし……」

鳳凰「向かうしかないな……急ぐぞ」

颯斗「おう」

2日後  不運にも捕食者側の精鋭部隊と仁達の部隊が鉢合わせになり、颯斗と鳳凰はかなり急いでその場所へ向かうがその途中で捕食者の迎撃に遭いバイクが破損

颯斗「そこを退け  彰」

彰「足止めを言い渡されているのでそれはできません」

颯斗「……お前とは戦いたくなかったよ」

足止めをしろと言い渡されている彰と颯斗は刀になった鳳凰と応戦  だが明らかに颯斗よりも彰の方が力が強い

颯斗「っ……!!」

戦闘が始まって早10分  既に颯斗はボロボロ

颯斗「っ……そこを……」

彰「…………」

颯斗「そこを……退けぇ!!!!!彰!!!!!!!!!!」

片膝をついていた颯斗が繰り出した最後の一撃は彰の急所に当たり彰は即死

颯斗「行かねぇと……仁達の所に……」

ボロボロになり血を流しながら颯斗は鳳凰を後ろに必死に走る

ファーストレディ「…………」

仁「…………」

颯斗「仁!!!!!」

仁「!!颯斗!!!???」

走り出して時間にして20分  一触即発の雰囲気の中で颯斗がむせ返りながらその場に到着

ファーストレディ「彼を出しなさい」

捕食者「はっ」

颯斗「ゲホゲホゲホゲホゲホ……ゲホゲホ」

仁「おい大丈夫か?」

長時間走れないのに20分も走った颯斗は膝から崩れ落ち喘息を起こした上で酸欠

ファーストレディ「颯斗  こちらに来るか彼を死なせるかどちらかを選びなさい」

颯斗「?……!!!???」

真「颯斗……」

呼吸困難を起こしながらも颯斗はファーストレディの方を向いた……するとそこには手錠をされ後頭部に銃口を向けられた真の姿

颯斗「真……」

余りの驚きで喘息が治ってしまった颯斗

ファーストレディ「もう1度言います  こちらに来るか彼を死なせるか選びなさい」

颯斗  成程……

颯斗「俺がそちらに行けば……真は撃たないのか」

ファーストレディ「撃ちません」

颯斗「……仁  退いてくれ」

仁「!!駄目だ!!行くな」

颯斗  仁……ごめんな

心の中でそう思いながら颯斗は立ち上がって人の形になった鳳凰とゆっくり歩き行く

颯斗  身体中ボロボロで……人を食らう俺でも護れるモノがあるのなら……

颯斗「真  お前は生きろ」

真「……ごめん……何時までも護ってもらってばかりで」

颯斗「泣くな」

真は泣いていた……真は颯斗が自分の為に生命を捨てに行ったのだと思っているのだろう……

颯斗「生きてくれ」

最後にそう言って颯斗は真を逃がした……変わりに自分はファーストレディの前で跪く

颯斗「ファーストレディに永久の忠誠を誓おう  我が命が朽ち果てるその時まで貴方を守り続ける」

ファーストレディ「……その誓い  決して忘れる事なかれ」

颯斗にとって……その時が「人として」人を護った最後だった……

颯斗死亡まで後9日……
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