BLゲームを攻略するのが私にチェンジってあり!

いずみ

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教室に到着

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先生が教室に入っていくと、教室からは椅子や机が動くガタガタとたてる音が聞こえてきた。そして、男子たちの話声が聞こえてきた。というか、聞こえた。

「せんせーい、今日も可愛いですね! 俺と付き合ってください!」

「さぁ、皆。今日は皆に紹介したい生徒がいます」

「せんせーい、俺は無視ですか?」

 私は思い出したのだ。確か、担任の先生が生徒にも先生にも人気があるという事を。

 先生を頼ったりしたら、その男子高生にボコボコにされそうだ。女の子がか弱い生き物だとはこの世界では習っていないだろう。全力で殴られて打ちどころが悪くて、私は死ぬんだ。うん、そうなる位なら私。先生とも距離をとる! 

これが私が生き残るための道だ!

「どうぞ、中に入ってください」

 私が一人で廊下で考え事をしている間に、男子学生からのアプローチが聴こえなくなっていた。慌てて、ドアを開けて教室の中に入った。教室に入ったら本当に心臓が止まりそうだった。だって、美形やら美少年しかいない。

顔面偏差値が高すぎるのだ。

 そういうゲームだったと忘れていた。

私の馬鹿。

 私は黒板の前に立って、お辞儀をした。後ろでは黒板に先生が私の名前を書く音がしていた。

「風間梓です。どうぞ、宜しくお願いします」

 顔を上げると、教室中から大きな拍手を貰った。

「転入生の中で、一番まともな人間が来たー!」

「外見は普通だけど、性格が良いのが好ましい!」

「人間、外見じゃなくて中身だね!」

 クラスの男子がそういって、一斉に話し出したのだ。

 正直、こんな感じになるとは想定外だった。「帰れコール」がくると心の準備をしていたが、受け入れられていた。女子はあと二人いると聞いているが。一体、どんな挨拶をしたんだろうか。想像が出来ない。

「風間さんは、一式いっしき君の隣の席に座ってください」

「あ、はい」

 私は先生に指さされた席に小走りで走った。

 そうすると、途中に女の子を二人みつけた。一人は窓から外を見ている金髪の緑色の瞳をし、校則違反の緑色のピアスをしていた。もう一人は本を読んでいる黒髪は腰まで長く、二重の目は大きくて顔は小さい人だった。二人とも美少女だったが、プライドが高そうだと思った。

 私は鞄を机の上に置いて、先生が何か話ているのか疲れて聞いているところではなかった。鞄に頭を支えて貰って、視線は横向きで窓の外を見た。グランドの周りは鬱蒼と茂っている森が見えた。何処までも続く、広い森だった。閉鎖的な学園だという設定も活かされていた。絶望的だ。逃げようにも、学園から出たら遭難して終わってしまいそうだ。

 この世界はBLのはずなのに、神様のシュラの所為でなにもかもが終わっている。主人公が「女」だというじてんで、BLではない。シュラがいう「面白い世界」というものは一体どんな展開の事を言っているのか、もう、嫌だ。考えたくない。脳が考えるのを拒否している。

「おい、聞いているのか?」

「は…い?」

「聞いていなかったのか。次の一限目は移動教室の理科だ。俺は一式悟いっしきさとるこのクラスのクラス委員長をしている。ほら、一緒に行くぞ」

 この人は変だ。

 いや、優しくしてくれているのは有難いけど、何がそんなに世話をしているんだ。置いていく事も出来たのに、この人はしなかった。「女」に嫌悪感があるはずなのに。

「何か、企んでいるんですか?」

 私が疑ってみると、一式は「先生からの命令は絶対だからな」と言ってきた。「先生って、この学園でそんなに偉いの?」と疑問を持った。一式がその私の疑問にこたえてくれた。

「安藤先生の御父上はこの国の大臣の一人、安藤銀次郎あんどうぎんじろう様だ。この日本に絶大な影響力を持っている方で、先生に好意を持っているだけならいいが、敵意を向けた相手は知らない間に消えているという噂だ」

「なんだ、噂なんじゃん。安藤先生は優しい先生だから、私はす」

 言葉を続けて言うとしていたら、一式に口を押さえられた。

「教えておいてやる。安藤先生を好きだと言っている男がこの学園に一人いる。その男は嫉妬深くて暴力的な奴だ。名前は御堂しゅう(みどう)という、俺たちのクラスメイトになる。そいつの前で安藤先生を好きだなんて言うな。俺を巻き込まないでくれ」

 私は顔から血の気が引いている一式を見て、口の上にある手を掴んで離して「なんか、ごめんね」と言ったら「本当だ。気を付けてくれ」と言われた。一式君は眼鏡をかけて黒髪は短髪で陸上部に所属しているという。走り高跳びの選手で前の大会では準優勝をしている。凄い人だった。一式君と並んで廊下を歩くと、教室のドアが開き、廊下を見てくる男子学生がたくさんいてビビった。なんとか、一式君を盾にしているが、何故か恥ずかしい。

「女って、あの二人以外にいたんだな。今日来た娘は、俺は好きかも」

「はぁ? 見た目だけだって」

「僕の方が美しい!」

「女なんて学園から早く出て行ってほしいな~」

 意見はバラバラだった。言いたい放題だった。私は見世物ではないのだ!

「風間さん、大丈夫?」

「ごめん、そのまま私の盾になっていて」

 心配してくれる一式君の腕を両手で握り絞めていると「悟から離れろ!」と、他の教室の生徒が廊下に出てきて私を睨んできた。

「優大ゆうだい、授業が始まるぞ」

 一式君が困った顔をして優大を見ていた。優大は私を180センチ以上はあるだろうという高さから威圧的に睨んできて、怖かった。

「悟は俺の婚約者だ。汚い手でさわるんじゃねーぞ!」

 赤い髪の野性的な美形だった。だが、怖い。私は一式君から手を離すと、何故か涙が出てきた。その涙は恐怖からではなく悲しみだからだった。

「いいよね、家族がいて。私、死んじゃったから会えないの。会えない…もう一生、お母さんの温かいご飯も、馬鹿な話も一緒に笑ってできない。アンタが羨ましくて、どうにかなりそう」

 私は涙を拭きながら、優大を睨んだ。

「アンタは人の痛みなんて一生分からないでしょうね。知り合いもいない私の寂しさも、孤独も劣等感も。わかるわけないよね!」

「風間さん、ごめんね。婚約者として、あとで優大は躾とく」

「ちょ、悟。俺は!」

「優大は黙って。彼女がなんでこんな目にあっているのかは、彼女の所為ではない。それくらい、馬鹿な頭でもわかるな?」

「俺は…。風間さん、俺が悪かった」

「…一式君、すみません。私、先に理科室に行っています」

 私が廊下を曲がって姿を見えなくなると、一式は優大を頭をげんこつで殴っていた。

「いってぇえーーーーーーーーーー!」

「彼女が許しくれるまで、謝りな。俺は人の痛みが分からない馬鹿は嫌いだ。きっと、病気かなにかで亡くなったんだろう。この神様からのお達しの計画男女交換は、家族が居る者をこの学園に放りこむ行為は出来づらい。けど、両親がいない女なら、それも簡単なはずだ。俺はこの世界の神様に反吐がでる」

「風間は家族いないか?」

「その確率の方が高い」

「俺…なんてことを」

「だから、謝れ。冷たく侮蔑されても、彼女は俺たちと同じく傷つけば泣くし、嬉しければ笑うし、病気だってする。血の通っている人間なんだから」

「うん、わかった」

 一式はその言葉に納得して、速足で廊下を歩いて理科室に向かった。
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