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王様と王妃様の本音は?
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「ジン様、王様と王妃様がジーナ様にお会いしたいと」
「シューイ、父上と母上には会わせたくない」
「ですが、もう一週間も城に滞在しているに顔を出さないのは……顔を一度出しておいた方が後々、良いかと」
「はぁー……、ジーナだけ行かせたくないなのだが」
「え、私が一人で王様と王妃様に会いに行くんですか?」
この国の王様と王妃様にお目通しなんて、緊張どころか心臓が止まりそうだ。
ジン王子に会ったのは突然で仕方なかったが、国の頂点にたつ方々に会おというのだ。
もし、失態などしたら首が飛んでもおかしくない。
私が蒼白な顔をしていると、ジン王子が「一緒に行こうか?」と聞いてくる。
ありがとう、王子様。
その優しさは嬉しいが、原因は貴方にあるんですよねー。私を好きになるから。
もっと、身分があった人間と恋愛してくれればいいのだが。
身分があっても、男では駄目ですね。
あー、逃げられる気がしない。
私は無理矢理笑顔を作ってジン王子を見た。
「もし、死んだら骨は家の方にお願いします!」
「ジーナ、大丈夫だ。父上も母上も君を僕の婚約者にと言ってくれている。酷い目に合う事はないと思う」
「そうでしたね……」
確かに、ジン王子の言う通り。王様も王妃様も乗り気だからこんな事になっているんだよね。あぁ、なんてこった。王命が怖い。
「ジーナ様、お時間があれば今からでも王様と王妃様と会って頂く事は可能ですか?」
「はい、遅かれ早かれ会いに行かなければと思っていました。行きます」
「ジーナ、これを君に」
「え?」
ジーナの首に赤い石の首飾りがキラリと光る。
「これは……?」
「僕の誕生日に父上に頂いた宝石の一つだ。きっと、その宝石が君を守ってくれる」
「あ、ありがとうございます。ですが、こんな高価なものを頂けません」
「君は僕の愛する人だ。これぐらい、させてくれ」
「…っ!」
美形は困る。顔がいいって、なんて得なんでしょうか。恥ずかしいはずの言葉も、美形が言えばばっちり心をわしづかみにされてしまう。くそ、美形め!
「それでは、ジーナ様。王の間に参りましょう」
「はい」
「ジーナ、愛しているよ」
「あ、ありがとう」
「うん、気を付けてね」
優しい笑みで私を送り出してくれたジン王子。
心臓がドキドキがとまらない。
王様も王妃様もきっと、どんな人間か品定めをしたいのだろう。
王位継承者、第一位のジン王子の婚約者なのだから、恥ずかしくない人間かどうか。
貧乏貴族の私が選ばれたのは本当にあり得ないが、仕方がない。
『ジーナ、愛しているよ』
人から愛されることに慣れていない私は、ジン王子の直球の愛の言葉に顔を赤くするしかない。しかも、美形なのだ。優しい上に、私を一番に考えてくれている。それで、心が揺れないかと言うと、揺れない方がどうかしている。
「ジーナ様がお入りになります」
大きな扉の前に兵隊が二人左右に立ち、大声でそう叫ぶ。すると、中に居た兵士が扉を開けて、王の間が目の前に広がる。
とても広く、自分の家より倍も広いと思われる広間の中央には少し階段があり、その上に王様と王妃様が豪華な椅子にお座りになっていた。
私は王の間に入ると、兵士に導かれて赤い絨毯を踏み、王様と王妃様の近くまで歩き両手で顔を隠した。
「面をあげておくれ、ジーナよ」
「はい、ありがとうございます」
王様に顔を見てもいいと言われて、顔を上げて王様と王妃様と視線があう。
「ジーナと言うのは君かな?」
「はい、王様。ジーナ・クレフェスと申します」
「我が王子の事で我がままを通してしまったが、何か不都合はないかな?」
「いえ、ございません。心配して頂き、ありがたき幸せ」
「ジーナさんは何処で狩りをしているのかしら?」
「はい、我が家の領域でおこなっていました」
「一つ、貴方は本当に女性なんですね?」
「は、はい。私は性別は女性です」
確かに、今も男装をしていて男に見えるだろう。
だが、これはこの城のメイドの技量で出来ている。男性にはなりきっていますとも。
「貴方にはどんな手を使っても、ジンの目を覚まさせて頂きたいの」
「目を覚めさせるとは?」
「男同士の恋愛なんて諦めて、女性との恋愛に目を向けさせてほしいのよ。貴方は今は婚約者となっていますが、ジンには他の国や我が国の貴族から結婚相手を選んでほしいと思っています。貴方にはジンが他の男に目移りしない様に引き付けてほしいの。そして、女性がどれほど男性よりも素晴らしい存在か、教えてほしいのよ」
「……そうなんですね」
ジン王子に女性という事がバレても私を好きになっている様にさせるのは、他の本命の貴族やお姫様との結婚に結び付けるのが役目という事か。なるほど。
「ジン王子が女性を嫌いな理由が分かった気がします」
「まぁ、そうなの?」
「はい、ですが此処でお話をすると扉の向こうで待っていて下さっているジン王子に悪いので言えません」
「……何故、そんな事が分かるの?」
「兵隊たちがソワソワとしているので、偉い立場の方が待っているのだと感じ取りました」
「ほぅ、それはそれは。其方には期待している。頑張ってくれたまえ」
「はっ、有難きお言葉、ありがとうございます!」
王様と王妃様に頭を下げて、王の間から出ていき、扉が閉められる。
廊下で待っていたのは、美しい人だった。顔の表情は苦しそうにしていた。
「ジーナ、大丈夫だったかい?」
「はい、ジン」
「ジーナ酷い事は言われていないか?」
「大丈夫ですよ。王子様」
言われましたね。お前は所詮、お飾りの婚約者だと。
女性にジン王子が興味を持てば、用無しだと言われた。
「無理に笑わないでくれ」
「ジン?」
温かい手が両頬を包み込んできた。青い瞳が悲しそうにゆれる。
「僕が君を好きなってごめん。だけど、君が欲しかったんだ!」
ジン王子が強く抱きしめて、背中に強く手を回された。
「ジンが何故、女性が苦手か分かりました。王妃様が原因なんですね」
「……やはり、ジーナの観察眼は凄いな」
「これでも狩猟をしてましたから。貴族ですが、貧乏なもので。狩りをして自分で食べるものを捕まえないといけなかったので、動物の観察はよくしていました。王妃様はジンを人形としか見ていませんね。これは、人間扱いではないと思いました。自分の意に反する事があると、無理矢理にでも己の意思を通される方みたいですね。それが実の母親だとは、ジンには辛かったでしょうに」
「ジーナにはバレバレか……そう、母上が女性不信のもとだ。皆が皆がそうだとは思わないが、皆は僕を王子として見てくる。僕は自分自身を見てもらいたい、ありのままの僕を」
「見てくれる人ならきっといますよ」
「ジーナは違うと」
「私は仮の婚約者ですから」
「やはり、いい話ではなかったのだな!」
「ジン、王様も王妃様も貴方の事を思っての行動なんだ。だから」
「僕はそんな事は頼んでない。ただ、好きな人と結婚したいだけなんだ!」
「ジン……」
ジン王子は悔しそうに歯を食いしばっていた。
あぁ、この王子様は美しいなと思った。
外見も銀髪で瞳は青くて肌は白く、美しかった。
けれど、王子なのに傲慢でなく下々にも優しいのだ。
何時までも一緒に居られない、ちょっとしたタイムリミット付きの王子様の婚約者。
だけど、この王子様になら私の時間を少し分けてあげてもいいと思った。
「ジン、心配かけてすまない。ありがとう」
「っ……、ジーナは卑怯だ」
「突然、どうしたんですか?」
「ジーナに会えば会う程、惚れていく。僕をどうしたいんだ! もう、襲ってもいいのかい! 抱きしめて、ずっと君の瞳に映っていたい。いや、それ以上も!」
前言撤回。
やっぱり、さっき思った事は無しだな。
「あの娘。ワシがジンに贈った首飾りをしていたな。好きな女性にあげるために、渡したのだが」
「王様、あの娘で本当に大丈夫なんでしょうか? 本気になってジンに悪影響だったらと思うと心配で」
「あの娘には悪いが、あまりにも出しゃばってくるなら……消えてもらおう。あの娘の代わりなどいくらでもいるのだからな」
王の間ではそう話しているのを柱の陰で聞いている男が一人いた。
「兄さんの逆鱗にふれる気なのかな。父上も母上も、怖い者知らずだ」
「シューイ、父上と母上には会わせたくない」
「ですが、もう一週間も城に滞在しているに顔を出さないのは……顔を一度出しておいた方が後々、良いかと」
「はぁー……、ジーナだけ行かせたくないなのだが」
「え、私が一人で王様と王妃様に会いに行くんですか?」
この国の王様と王妃様にお目通しなんて、緊張どころか心臓が止まりそうだ。
ジン王子に会ったのは突然で仕方なかったが、国の頂点にたつ方々に会おというのだ。
もし、失態などしたら首が飛んでもおかしくない。
私が蒼白な顔をしていると、ジン王子が「一緒に行こうか?」と聞いてくる。
ありがとう、王子様。
その優しさは嬉しいが、原因は貴方にあるんですよねー。私を好きになるから。
もっと、身分があった人間と恋愛してくれればいいのだが。
身分があっても、男では駄目ですね。
あー、逃げられる気がしない。
私は無理矢理笑顔を作ってジン王子を見た。
「もし、死んだら骨は家の方にお願いします!」
「ジーナ、大丈夫だ。父上も母上も君を僕の婚約者にと言ってくれている。酷い目に合う事はないと思う」
「そうでしたね……」
確かに、ジン王子の言う通り。王様も王妃様も乗り気だからこんな事になっているんだよね。あぁ、なんてこった。王命が怖い。
「ジーナ様、お時間があれば今からでも王様と王妃様と会って頂く事は可能ですか?」
「はい、遅かれ早かれ会いに行かなければと思っていました。行きます」
「ジーナ、これを君に」
「え?」
ジーナの首に赤い石の首飾りがキラリと光る。
「これは……?」
「僕の誕生日に父上に頂いた宝石の一つだ。きっと、その宝石が君を守ってくれる」
「あ、ありがとうございます。ですが、こんな高価なものを頂けません」
「君は僕の愛する人だ。これぐらい、させてくれ」
「…っ!」
美形は困る。顔がいいって、なんて得なんでしょうか。恥ずかしいはずの言葉も、美形が言えばばっちり心をわしづかみにされてしまう。くそ、美形め!
「それでは、ジーナ様。王の間に参りましょう」
「はい」
「ジーナ、愛しているよ」
「あ、ありがとう」
「うん、気を付けてね」
優しい笑みで私を送り出してくれたジン王子。
心臓がドキドキがとまらない。
王様も王妃様もきっと、どんな人間か品定めをしたいのだろう。
王位継承者、第一位のジン王子の婚約者なのだから、恥ずかしくない人間かどうか。
貧乏貴族の私が選ばれたのは本当にあり得ないが、仕方がない。
『ジーナ、愛しているよ』
人から愛されることに慣れていない私は、ジン王子の直球の愛の言葉に顔を赤くするしかない。しかも、美形なのだ。優しい上に、私を一番に考えてくれている。それで、心が揺れないかと言うと、揺れない方がどうかしている。
「ジーナ様がお入りになります」
大きな扉の前に兵隊が二人左右に立ち、大声でそう叫ぶ。すると、中に居た兵士が扉を開けて、王の間が目の前に広がる。
とても広く、自分の家より倍も広いと思われる広間の中央には少し階段があり、その上に王様と王妃様が豪華な椅子にお座りになっていた。
私は王の間に入ると、兵士に導かれて赤い絨毯を踏み、王様と王妃様の近くまで歩き両手で顔を隠した。
「面をあげておくれ、ジーナよ」
「はい、ありがとうございます」
王様に顔を見てもいいと言われて、顔を上げて王様と王妃様と視線があう。
「ジーナと言うのは君かな?」
「はい、王様。ジーナ・クレフェスと申します」
「我が王子の事で我がままを通してしまったが、何か不都合はないかな?」
「いえ、ございません。心配して頂き、ありがたき幸せ」
「ジーナさんは何処で狩りをしているのかしら?」
「はい、我が家の領域でおこなっていました」
「一つ、貴方は本当に女性なんですね?」
「は、はい。私は性別は女性です」
確かに、今も男装をしていて男に見えるだろう。
だが、これはこの城のメイドの技量で出来ている。男性にはなりきっていますとも。
「貴方にはどんな手を使っても、ジンの目を覚まさせて頂きたいの」
「目を覚めさせるとは?」
「男同士の恋愛なんて諦めて、女性との恋愛に目を向けさせてほしいのよ。貴方は今は婚約者となっていますが、ジンには他の国や我が国の貴族から結婚相手を選んでほしいと思っています。貴方にはジンが他の男に目移りしない様に引き付けてほしいの。そして、女性がどれほど男性よりも素晴らしい存在か、教えてほしいのよ」
「……そうなんですね」
ジン王子に女性という事がバレても私を好きになっている様にさせるのは、他の本命の貴族やお姫様との結婚に結び付けるのが役目という事か。なるほど。
「ジン王子が女性を嫌いな理由が分かった気がします」
「まぁ、そうなの?」
「はい、ですが此処でお話をすると扉の向こうで待っていて下さっているジン王子に悪いので言えません」
「……何故、そんな事が分かるの?」
「兵隊たちがソワソワとしているので、偉い立場の方が待っているのだと感じ取りました」
「ほぅ、それはそれは。其方には期待している。頑張ってくれたまえ」
「はっ、有難きお言葉、ありがとうございます!」
王様と王妃様に頭を下げて、王の間から出ていき、扉が閉められる。
廊下で待っていたのは、美しい人だった。顔の表情は苦しそうにしていた。
「ジーナ、大丈夫だったかい?」
「はい、ジン」
「ジーナ酷い事は言われていないか?」
「大丈夫ですよ。王子様」
言われましたね。お前は所詮、お飾りの婚約者だと。
女性にジン王子が興味を持てば、用無しだと言われた。
「無理に笑わないでくれ」
「ジン?」
温かい手が両頬を包み込んできた。青い瞳が悲しそうにゆれる。
「僕が君を好きなってごめん。だけど、君が欲しかったんだ!」
ジン王子が強く抱きしめて、背中に強く手を回された。
「ジンが何故、女性が苦手か分かりました。王妃様が原因なんですね」
「……やはり、ジーナの観察眼は凄いな」
「これでも狩猟をしてましたから。貴族ですが、貧乏なもので。狩りをして自分で食べるものを捕まえないといけなかったので、動物の観察はよくしていました。王妃様はジンを人形としか見ていませんね。これは、人間扱いではないと思いました。自分の意に反する事があると、無理矢理にでも己の意思を通される方みたいですね。それが実の母親だとは、ジンには辛かったでしょうに」
「ジーナにはバレバレか……そう、母上が女性不信のもとだ。皆が皆がそうだとは思わないが、皆は僕を王子として見てくる。僕は自分自身を見てもらいたい、ありのままの僕を」
「見てくれる人ならきっといますよ」
「ジーナは違うと」
「私は仮の婚約者ですから」
「やはり、いい話ではなかったのだな!」
「ジン、王様も王妃様も貴方の事を思っての行動なんだ。だから」
「僕はそんな事は頼んでない。ただ、好きな人と結婚したいだけなんだ!」
「ジン……」
ジン王子は悔しそうに歯を食いしばっていた。
あぁ、この王子様は美しいなと思った。
外見も銀髪で瞳は青くて肌は白く、美しかった。
けれど、王子なのに傲慢でなく下々にも優しいのだ。
何時までも一緒に居られない、ちょっとしたタイムリミット付きの王子様の婚約者。
だけど、この王子様になら私の時間を少し分けてあげてもいいと思った。
「ジン、心配かけてすまない。ありがとう」
「っ……、ジーナは卑怯だ」
「突然、どうしたんですか?」
「ジーナに会えば会う程、惚れていく。僕をどうしたいんだ! もう、襲ってもいいのかい! 抱きしめて、ずっと君の瞳に映っていたい。いや、それ以上も!」
前言撤回。
やっぱり、さっき思った事は無しだな。
「あの娘。ワシがジンに贈った首飾りをしていたな。好きな女性にあげるために、渡したのだが」
「王様、あの娘で本当に大丈夫なんでしょうか? 本気になってジンに悪影響だったらと思うと心配で」
「あの娘には悪いが、あまりにも出しゃばってくるなら……消えてもらおう。あの娘の代わりなどいくらでもいるのだからな」
王の間ではそう話しているのを柱の陰で聞いている男が一人いた。
「兄さんの逆鱗にふれる気なのかな。父上も母上も、怖い者知らずだ」
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