悪役令息と悪役令嬢の兄と姉を守りたいので第四王子との恋愛フラグをへし折りまくります!

いずみ

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夜会

 僕を選んだ理由が分かってスッキリした。シフォン王子の本性を分かっても、付き合っていける根性があるか、ないかを見られていたみたいだ。まぁ、憧れの王子様が実は性格が最悪すぎるなんて、知りたくない秘密だよな。
 だけど、それにしてはシフォン王子は好かれていると思う。
 騎士のグレイドはシフォンの性格を知っているが、心酔している。
 これだけ性格が最悪だと王様も念を押すほどなのに。 
 僕にはまだ知らないシフォン王子の姿があるのかもしれないと思った。
 ゴーン! ゴーン! ゴーン!
 城の最上階にある黄金の鐘が三回鳴らされる。パーティが始まる合図でもあり、神様を呼びだす儀式だ。王族は神様の前で婚約者を発表するのが決まり事になっている。僕、本当に王子様も婚約しちゃうんだな。全然、現実味がないけど。
 鐘の音が静まると、大広間の夜会が始まっている場所にシフォン王子が優雅にエスコートされて僕は中に入った。
 皆、こちらをこっそりと見ている。
 頬を赤くする貴婦人、面白そうに見ている男爵、好奇心に打ち震えているお嬢様など、皆さまざまな対応だった。
「あの方がシフォン王子の婚約者? 地味じゃなくて?」
「シフォン王子様、こっち向いてほしい!」
 皆さん、丸聞こえですからね!
 王様には認められたけど、なかなか貴族に気に入られるのは難しいかな。
 僕はため息を小さく吐いた。
「どうした? 喉でも渇いたか?」
「いえ、ちょっと」
 注目されすぎて、疲れているだけです。こんな地味な僕が話題の中心になるなんて、考えた事も経験もなくて、どっと精神的に疲れてしまう。
「挨拶周りは父上がこちらの大広間に来てから始まる。今は楽にしていろ」
 なんか、シフォン王子がモテるのが分かる気がした。
 シフォン王子が給仕からさりげなく水入りのグラスを貰い、僕に渡してくれた。それも、動きには品があり、僕は腹黒で性格悪いと知っていても、美しい笑顔で渡されると毒が入っていても飲みそうだ。騙されそうに、ほだされそうなるから、美形の笑顔とかって恐ろしいと思った。
 シフォン王子から水の入ったグラスを受け取って、飲んだら少し喉が潤った。
「後で、兄上達に紹介するから、笑顔でいてね」
「分かっています」
「うん、宜しい」
 大広間に居れば居るほど、嫌な予感がするのだ。
 シフォン王子を見てくる視線の中に、複数の悪意がこもっているモノがあると気づいたからだ。
 今はまだ、人ごみに紛れているが。
 いつ行動をおこすのか、心臓がバクバクと煩い。
 このまま、何もおこらないで夜会がただ普通に終わってくれればいいのだが。
 どうやら、無理だったらしい。

―――バーンッ!

 銃声の音が大広間に響き渡る。
「俺達は闇の狼! お前等、王族と貴族にいつも踏みつけられている庶民だ! その代表が俺だ! この大広間を占拠した! 大人しくしているなら、少しだけ長生き出来かもしれないぞ? 抵抗したら、殺すからな!」
 男は顔に黒いフェイスマスクをして大声で叫んだ。周りから悲鳴や鳴き声が聞こえる。
 これは、貴族が税金を高くしすぎ、王族は無視していた報いだ。
 国民に優しい王様に誰かなってくれないだろうか。いないから、こんな事になっているんだよな。
 あぁ、幸いだったのは王様がまだいなかった事だ。
 さて、どうしたものか。

 大広間の西の扉の付近で、男性の怒鳴り声と女性の悲鳴が聞こえてきた。
「お前! 逃げようとして、そんな嘘を!」
「お願いです! 私、その……血が出ていて、トイレに行かないと!」
「煩い、此処から出すわけにはいかない!」
 僕は声のする方に向かって、足を向けた。
「行かせてあげたら、いいじゃないか?」
「あぁ~? 誰だ、お前は?」
「シフォン王子の婚約者のアルフォン・ガゼンです。その人にトイレに行かせてあげてください」
「この女は自分だけ逃げたいから、嘘をついている」
「僕は本当だと思いますよ」
「ふーん」
 男は僕をじっと見てから、僕のこめかみに銃口を向けてきた。
「お前が命をかけるなら、トイレに行かせてやる。この女が帰って来なかったら殺す」
「はい、分かりました。お嬢さん、トイレ行ってらっしゃい!」
 お嬢さんは涙目になりながら、僕を見てきた。
「あ、ありがとう……、お腹が痛いし、血が出ているし、けど夜会には出なさいと親に言われて来たけど、こんな事になるなんて。なんで私を信じてくれたの?」
「貴方が嘘をついている様に見えなかったからです。気を付けて」
「ありがとう。アルフォン君」
 お嬢さんが扉からでて、武器を持った女が一人だけお嬢さんについて行った。
さてさて、どうしたものか。
 シフォン王子の方を見るとなんか機嫌悪いし、銃を持った男はニヤニヤと嬉しそうにしている。
「あの、女が逃げるぜ」
 男がそう言うと、僕は「なら見る目が僕になかっただけです」と言うと、また笑う。
「お前、面白いな!」
「いえ、全然、普通ですよ」
 僕がそう言うと、リーダー格の男が大声で叫んでいた。
「さぁ、王様と交渉するための駒達でちょっとしたゲームをしようか」

 嫌な予感しかしなかった。


「ここから出たかったら、誰か殺してみろ。そしたら、殺した奴は逃がしてやる。一人、一人でも一人で家族分でも恋人の分でもいいぞ! アハハハッ!」

 うわー、最悪な提案きたー! 笑いながら言えるなんて、怨恨が凄く伝わる。
 さて、最悪のこの状態をどう切り抜ければいい?
 姉様と兄様の場所が分からないのが、不安だ。
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