美形皇帝陛下が溺愛してきますが、邪魔です!

いずみ

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過去のはなし

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 リーアは覚えていない。王子や姫君を攫っている盗賊団に捕まっている時の事を。
 俺はその時から貴方に恋をしているというのに。
 そんな事、俺の愛しの君はすっかり忘れている様だった。
 あんなに、俺に優しくしてくれて親身になってくれたのを。そして、約束した事を!
 そんな忘れるぐらいの事だったのだろうか?

 今は目の前に彼女、リーアがいて結婚指輪の宝石を見ている所だった。
「こちらの宝石は赤、オレンジ、青、水色、緑っと……形も違っている」
「リーア様ならどんな宝石もお似合いになります」
「ありがとう、店主」
 リーアはじっと宝石を見ている。その瞳も宝石の様に美しく、ブルーサファイアの様に見える。あの時も、盗賊団に捕まった時もその瞳の美しさは健在だった。決して、最後まで諦めていない瞳に俺は恋をした。そして、その美しい姿だけでなく志も強く高く、優しい貴族の女の子なのにただただ俺よりも強い信念を持っていて惹かれない方がどうかしている。
 俺はあの時は母と兄との間に確執があった。それをどう埋めようかと必死にもがいていたのだ。けれどリーアと出会って衝撃を受けた。
「貴方の母上とお兄様は貴方の事を心配しているわよ」
「そんな事あるわけないだろう!」
「だって、貴方の腕輪。それは位置を確認できる魔法の腕輪だわ。新商品でなかなか手に入らない品物よ。それは貴方の事がどうでもいいと思っていたら、つけたりしないわ。皆で一度だけでも話しあいをしてみたらどうかしら?」
「この腕輪が……」
「貴方は産まれてからずっと不幸だった? 違うでしょ? すれ違いがあったのでしょう。話しあって完結出来たらいいよね」
 リーアともっと話したかった。だが、盗賊たちに邪魔をされてそれは出来なかった。
 

「ルイス皇帝陛下、どうされましたか?」
 リーアが心配そうにこちらを覗きこんでいた。
「いや、ちょっと昔の事を思い出していた」
「昔の事ですか?」
「そうだ、貴方と初めて会った場所の事だ。盗賊に捕まってしまった時の事を」
「すみません、その盗賊に捕まっていた時に私は熱があって、騎士団員達に助けられた時には高熱を出していて、その時の記憶がないのです」
 リーアが「申し訳ありません」と悲しそうに謝罪するので俺は一言だけ「……そう、だったのか」と言うだけしか出来なかった。
 嫌な思い出を忘れているのかと思っていたが、熱があったなんて。
 そうか、そうか、そうか。良かった。
 俺の事が嫌いで忘れたくて忘れたわけではないのなら。
『ここから出られたら、俺と結婚してほしい』
『ここから出られたら、いいよ』
 この約束もやはり効果があってもいいのかもしれない。
 無理矢理結婚式をぶち壊したのは怒りを感じているかもしれないが。俺だって、リーアが欲しいのだ。

「リーア、愛している」
「はいはい、それはまた後で聞きます」

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