王族の花嫁

いずみ

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婚約者との出会い

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 呼んでいる、俺を誰かが呼んでいる。前までは悲しい声だったのに、それが、再会を喜ぶような声に変っている事に俺は安堵した。俺も、貴方に会いたい。会って、会えなかった分を泣いていた分を抱きしめてあげたいな。

 ふっと、意識が覚めていくのを感じる。ガラガラと何か音がする。俺は部屋で寝ていたのではないのか? 目を開けると、見知らぬ天井が見えた。ガラガラと音はずっと鳴っている。起き上がると、俺に声をかけてくる二人の声が聞こえてきた。
「蒼様、お加減はいかがですか? 睡眠作用のある薬品は副作用などはないのでご安心ください。まだ、眠いようでしたら寝ていて大丈夫ですよ」
 そう言って、イビョン様は爽やかな笑顔を向けてきた。どうやら、馬車の中で俺は寝ていたようだ。
「蒼様、おはようございます。水明と申します」
 櫻の民の一人が俺に挨拶してきた。馬車がゆっくりと何処かに向かっている。
「俺は何処に連れていかれるんでしょうか? 村に帰してください!」
 俺が二人に睨みながらそう言い放つと、二人とも目を合わせた後にまた笑顔を俺に向けてきた。
「王族は王族の傍で過ごすのが良いかと。王宮には素晴らしい楽器に、美味しいご飯、優しい王族様たちが待っています。特に、蒼様の婚約者の紅玉様は、それはそれは、素晴らしい方なんですよ」
「俺は興味ないから、知らない」
「これは、手厳しい」
 誰だよ、紅玉様って。王族の一人だって言う事は分かったし、いつの間にか俺に婚約者が勝手に出来るし、困ったな。畑は大丈夫だろうか? 今日の分の野菜を余分に渡してあるから数日は持つだろうが。音に敏感な俺じゃないと獣に畑を食い荒らされてしまう。だが、それを説明したところで俺を帰してくれるとは思わない。だけど……。
「俺は勘違いだと思っている」
「蒼様、私の鼻は間違えたりしませんよ」
 イビョン様は威圧的な笑顔でこたえてくる。
「俺は、あの村が好きだ。それに、俺には想う人がいる。その人の傍に居たい」
 俺はアキナが好きだ。家族みたいな存在だと思っていたが、引き離されて会いたいと思う強い想いは恋だったのだろう。会って、告白したい。アキナを好きだと。
「駄目ですよ、蒼様」
「そうですよ、貴方は産まれた時から紅玉様のものでしたから」
 俺の言葉をイビョン様と水明様に拒絶されてしまった。もっと、早くアキナへの気持ちが分かっていたら、結婚していたら、こんな事にならなかったのに。なんて、タイミングなんだ。王族は男同士でしか恋人を作らないが、聞いた話では「受け入れる側」を「受け」といい「精液を与える側」を「攻め」といい、その攻めと受けに別れてセックスを行っていくと、攻めの精液を受け取り続けていた受けの箇所に子宮が出来てそこにまた精液を注ぐと赤ん坊が出来るとかと聞いている。本当だろうか? 本当だったら、怖すぎる。
「いきなり王族と言われても驚いてそれどころではないと思いますが、貴方は王族の一員なんですよ。外の世界で過ごされた知恵を使って、どうか王族たちを助けてください」
「……その言い方だと、何か王室でおこっているのか?」
 イビョン様はビクッと肩を強張らせて、水明様は哀しそうな顔をした。
 俺の村まで情報が届かない様に、いや国民にバレない様に情報を秘密にしている?
「王室で何が?」
 俺が聞くとイビョン様が俺の座っている前に来て、土下座した。
「突然の拉致の様な行為をお許しください! ですが、もう王族を助けられるのは薬に詳しかった蒼様のみなのです!」
 イビョン様は泣きながら俺に何度も頭を下げてきた。
「話は聞くから、頭をあげてください」
 大きな馬車だし誰にも見られていないが、居心地が悪い。
「イビョン様はお座りください。説明は私が致します」
 水明様が俺の前に片足をつきひざまずいて、俺を強い眼差しで見てくる。それは、とても鋭いものだった。俺はその迫力におされ、緊張でゴクリと喉をならす。
「王宮にはある病気が蔓延しています。その病気にかかると五感が麻痺するか感じにくくなるのです。そして、熱が出て寝込み、酷い時には亡くなってしまう、国外の病気です。この病気を持ち込んだ国は特定済みです。隣の国の従者が王族の一人に謁見したとき、その従者から王族に感染しました。この病気は王族の方々には毒の様な病気なのです。鼻がきかないのは、私たちでいう目が見えないのと同等ですから。飛沫感染でどんどんうつっているので、王宮ではこの白い布を鼻から下に巻いて下さい。ウイルスの確保は出来ています。後は薬と魔法の力で薬を作りあげてしまうだけです。ただ、私共が作ろうとしましたが、王族の方々の強い魔力には私たちの魔力が弱く薬は効きませんでした。だから、王族であり薬に詳しい蒼様が作って下されば、王族の皆さまが元気になると思うのです」
「俺はそんなに薬に詳しくないけど? 魔法なんて使えないし」
「薬を作る手順は医師が知っています。まずは国王様に挨拶をしてからですが」
「え、国王様に会うんですか?」
「はい」
 水明は当たり前と言った様子で俺にこたえた。
 俺は一般人なのに、なんでこんな事に巻き込まれているのか? まぁ、薬を作って王族の方々が治らなかったら、俺は王族ではないという事で村に帰れるから、それまでの辛抱かな。だが、国王様に会うのはヤバい。今の国王はとても穏やかだと聞いている。だが、一度怒りだすと刑罰が酷いとか。嫌だ、会いたくない! 誰か代わってくれ! まだ、生きてしたい事が沢山、山ほどあるんだから!
「国王様には早馬を出しています。きっと、今頃は王宮中が喜びの声をあげていると思います。蒼様と国王様のみが元気な状態の王族なのです。どうか、どうか、他の王族の方々をお救いください」
 俺は頭をかいて、はぁーっと長いため息をついた。
「知りませんよ、効く薬が出来るかなんて……」
「ありがとうございます! 国王様にお会いしましたら、すぐに薬作りを始めましょう!」
 嬉しそうに水明さんが涙をうかべて俺を見上げてくる。
 俺は人の泣き顔に弱い。なんでか、俺にも分からないけれど弱いので昔から。過去の記憶となにか関係あるのだろうか?

 ガラガラと馬車が二日かけて道を走っていたが、盗賊などには遭遇せずに無事に王都についた。門の前で兵隊の「お疲れ様です」という大声が聞こえてきて、門をくぐるための橋がギギギッと音をたてながら降りてくる。王都の周りには大きな堀が出来ている。深く広く、落ちれば怪我をしそうだと思う。これは敵側は落としにくい王都になっているだろう。ガシャンと大きな音がすると、橋が降りきったようだった。ガラガラと車は橋を渡っていくと門が開かれており王都に入っていった。賑やかで人がとても多く、俺はその活気に驚いた。村でもそれなりに賑わっていたと思っていたが、その100倍は賑わっているように感じた。
「どうですか、王都は?」
 水明様が優しい声で聞いてくる。
「こんなに人が、物が溢れている場所は、初めて来ました。しかも、綺麗な場所です」
 俺がほーっと見とれていると、イビョン様からお茶が渡された。俺はそれを頂いて、一口飲んだ。
「この王都はこの世で一番天国に近い国と言われています。王族の昔話は知っていますか?」
「はい、王族は神からの使いで天から差し込んできた光の階段から降りてきて、不思議な力と知恵を人間に与えたとか。神の使いだから男同士でも民は許しているとか」
「はい、そうです。まぁ、一部の人間は毛嫌いしている様ですが、会う事はないでしょう」
「そうですか?」
「王族が統治している限り、どんな災厄も王族が取り除くのが王族の使命なのです」
 イビョン様は強い眼差しで城を見ていた。
 ガラガラと一般市民が住む場所を通りすぎると、城の門の前まで来た。城に入るため、入り口で馬車から降りると、様々な人から頭を下げられた。
「こちらで、国王様がお待ちです」
「あ、ありがとうございます」
 なんか、緊張して来たな。どんな人なんだろう。噂通りなのかな?
 緊張しながら、イビョン様と水明様が後ろについて王の間に足を踏み入れた。
 数段の階段の上から冠を被ったプラチナブロンドの髪の男がこちらを優しく見てくる。

 この人が王様。
 凄い、威圧感と神々しさ。

 俺の心臓はドキドキと煩いくらいに高鳴った。

「よく来てくれた、蒼。生きていてくれて嬉しいぞ」
「はっ! 有難きお言葉!」
「楽にしなさい。言葉ももっと気軽にしてくれ」
「は、はい。ありがとう」
「うん」
 国王は満足に頷き、豪華な椅子から立ち上がると俺の傍まで来て、片膝をついて俺を強い視線で見据えてくる。
「どうか、他の家族の病気を治してくれ」
 そう言われると、何故だろうか。絶対にこの言葉に背いてはいけないと思わされ、やる気が出てくる。さっきまで、俺は町に帰りたかったのに、今は王族を助けようと思っている。国王様の言葉、俺にはどんな事よりも大事な言葉に聞こえた。
「任せてください。出来る限りの事はします」
「あぁ、なんと頼もしいだろう。……水明」
「はっ!」
 呼ばれた水明様は強く返事をする。
「後の事は頼んだぞ」
「かしこまりました!」
 国王は俺に「ありがとう」と小さく言うと椅子に戻っていった。
 俺は王の間から出ると、水明様の案内で薬を作る手伝いをするために俺は医者が待つ部屋に急いで向かった。それからは、忙しかった。寝る間を惜しんで薬を作った。一度の薬の接種では治らなかったが効いている様で、俺は薬作りに没頭した。仮眠をとったりして薬作りをしていた。それを一週間は続けていた。短い睡眠時間で起きて薬を作ろうと寝ていたシングルサイズのベッドは櫻の民が俺用に用意してくれたものだ。一度欠伸をして背伸びをする。この頃、根を詰めすぎていたので庭を散策しようと思って外に出た。誰もいない暗闇に満月がのぼっていて辺りは明るかった。一応、手元に提灯を持って庭を歩いていた。そしたら、何処からだろうか。笛の音が聴こえてきた。とても癒しになる音楽で聴いていて元気になれる。俺は音のする方に向かって歩いて行った。どんどん、庭の中央に向かって行っているようだった。小道を抜けると、大きな噴水がありそこの淵に座っている人間が笛を吹いていた。艶のある黒髪は風になびき、赤い瞳が宝石の様に美しく、着ている服は高級感があり、足はすらりと長い。美形が笛を吹いて噴水の淵に座っている様はまるで絵画の様に美しかった。まるで、神からの使いの様だ。俺はもっと近くで笛を聴きたいと思って、小道から噴水のある広場に足を踏み入れた。すると、男はこちらを見て俺の存在に気づくと演奏をやめてしまった。そして、その口から発せられた言葉は「蒼」だった。美形の男は俺を見て、嬉しそうに笑って近付いてきた。笛を腰の布に差し込んで、一歩一歩近付いてきて、俺の目の前に来たら、泣きそうな嬉しそうな顔で俺を抱きしめてきた。俺よりも少し背が高い人だった。
「嬉しい、また蒼と会えるなんて」
「あの……?」
 優しい声に俺は包まれて、何故か不思議と懐かしいと思ったのだ。

 静かな空間に風が、ざぁーと流れる。
 少しすると、王宮の廊下が騒がしくなった。
「何処におられるのですか! ベッドで寝てください!」
「まだ、安静にしていてください!」
 従者の人間が誰かを探しているようだった。
「誰か、探しているのかな?」
「蒼と二人っきりだったのに、勿体ないな」
「あの、貴方は一体?」
「そうか、蒼と会うのはこれが初めてになるのか」
 美形の男は苦笑して俺を見つめられた。俺はその赤い目に惹き込まれて目がそらせない。
「俺は紅玉。お前の婚約者だよ。蒼、愛している」
 そう言うと、紅玉様は俺の唇に柔らかなものを押し当てて、それから従者たちの呼んでいる方に向かって走って行ってしまった。

 え……?
 これって、もしかして。キスされた?




 これが、俺の伴侶との出会いだった。
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