僕と彼女と彼女の嫁と

市川 恵

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日常8 ~僕と先輩と飲み会~

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 「おはようございます。
ケイちy、啓太さん。
 英語の課題のやり方教えて頂けないでしょうか。」
 昨日のカミングアウトが堪えているのか、陽介の様子がおかしい、いや訂正、面白い。

「陽介、今更無理に年上扱いされても困る。
今まで通りでいいよ。
 あと、課題の提出明日だぞ。」
「うー、分かった。
 え?明日?無理ゲーじゃん...。」
 無理ゲーもなにも出されたの2週間前だけどな。

 まあ確かに、今まで同い歳だと思っていた奴が、2つも年上だって急に分かったら、言葉遣いとか迷うよな。

「ああ、そうだケイちゃん---」
  切り替え早いな。同情して損した。

「今日サークルの先輩と飲みいくから、一緒に行かない?
 俺ウーロンしか飲めないから、飲みづらいって言われて、誰か飲める人連れてきたいんだよね。」
「今日か。課題は?」
「写させてくれたら奢る。」

 しばらく飲みにも行ってないし、京子さんが飲むといけないからアパートにも置いてない。
 確かに魅力的な提案だ。
さらに今夜は、京子さんも女子会(飲み会)があると言っていた。
 行くことにしよう。

「じゃあ、行く。」

 京子さんに、僕も今夜遅くなるという旨をメールしてから、陽介と大学の門を出る。

 店に着くと、陽介の先輩、とやらが既に席で飲んでいた。
「こちら3年生の神谷さん。
高校のときからお世話になってる先輩。
こっちがメールで言った、啓太です。」
 陽介が紹介してくれた。

 僕があいさつしようとすると、神谷さんが、先に口を開いた。
「来てくれてありがとねー。
1人だけ飲むのも飲みづらくて。」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。」
 挨拶をした所で早速注文し始める。

 少ししてビールとつまみと烏龍茶が、テーブルに並べられる。
「カンパーイ。」
 久しぶりだからか、なかなか旨く感じる。
 人の金で飲む、というのもまた美味しさの一因だろう。
 酒自体は、飲み放題だから遠慮する必要もない。
 つまみにも、手を伸ばす。
これはなかなか旨い。
今度家で作ってみよう。

 つまみの作り方を思案していると、神谷さんが話しかけてきた。
「啓太君は、今21?」
「そうですよ。
事情が、あって二年出遅れてますが。」
「じゃあ、同い歳だねー。
 啓太君の話は、陽介からよく聞くよ。
彼女自慢は煩いがいい奴、だって。」

 陽介の方をチラ見する。
目を逸らしやがった。

「確かに同棲は羨ましいなー。
 下世話な話だけど、夜もお盛んなんだろー。」
 ほんとに下世話だな。
 先に飲んでた分が既に回っているのか、楽しそうに冷やかしてくる。

「いえ、お互い忙しいので。」
「えー、うっそだー。
お互い若さ有り余ってるだろーに。」

 確かに嘘だ。
 だが、神谷さんが思っているようなことはない。
むしろその逆だ。
 未だ、京子さんとはそこまで踏み込めていない。
同棲しているのに。

 僕らの同棲は、少し他の同棲カップルとは事情が違うからつい、「同居」と言ってしまいがちになる。
それに夜のあれこれについても、僕のわがままで待たせている部分が大きい。

 過去のトラウマによるフラッシュバックは、減ってきたもののまだ時折思い出してイライラとしてしまう。
 当てつけや苛立ちで京子さんに接したくないのだ。

「そういえば、1年生の今頃って---」
 僕が静かになり、この話題はタブーだったのかと焦った神谷さんが話題を変えた。

 その後2時間程飲み食いして、神谷さんが飲み潰れたところで解散となった。
 神谷と、それを介抱する陽介とは、店の前で別れ、1人最寄り駅へと歩き出した。
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