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日常7 ~彼女と課題とお菓子とお酒~
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「なあ、啓太。
欲しいんだ...頑張るから、少しだけ...」
「ダメです。京子さん。頑張って下さい。」
事の始まりは、十分ほど前だった。
バイトから帰ると、京子さんがちゃぶ台の上にノートや資料を拡げ、その上に突っ伏していた。
「京子さん、そのまま寝ると風邪ひきますよ。」
「ん。おかえり、啓太。
寝てないぞ。少し夢見てただけで。」
うん、寝てますよね、それ。
よくよくちゃぶ台の周囲を見回せば、勉強道具だけでなく漫画も数冊置かれている。
今までにも何度かあったが、この状況はさしずめ、課題が思い通りに進まず、漫画に逃げて、眠い時間帯に入ってしまった、とかそんな事だろう。
「京子さん、あとどのくらい残ってるんですか?」
「いっぱい...。」
京子さんは、スイッチが入れば早いのだが、手を付けるまでがなかなか長い。
時計を見れば既に10時近い。
出来れば、日付が変わる前には寝かせてあげたい。
「今日、バイト先でお菓子もらったんです。
これ食べて、気分転換して頑張りましょう。ね?」
「ああ。たべる。」
カバンからバイト先で貰ったお菓子を取り出す。
ああ、まずい。
中身を確認してから、提案するべきだった。
貰ったお菓子は、中にお酒が入っているチョコレートボンボンだった。
コニャックとはいえ、入っている量は3%程度だから大したことはない。
問題なのは、京子さんのアルコール耐性だ。
以前、京子さんの20歳の誕生日に、家で飲酒デビューすることにした。
用意したのは、アルコール度数がかなり低めの缶チューハイだったが、一缶飲み切ること無く、京子さんは寝た。
それはもう、あっさり、ぐっすりと寝た。
本音を言えば、酔うと甘えたがりになるとか、キス魔になるとか、嬉しい絡み酒を期待していた。
実際には驚く程何も起こらず、僕が乾杯してから台所で簡単なおつまみを作っていた5分程のうちに、すこやかな寝息をたてていた。
その後一度、お酒入りのお菓子も試してみたが、結果は似たようなものだった。
京子さんのお母さんに確認してみたら、家系的に全く飲めないらしい。
京子さんがお酒に弱いのは、予想内だったからお菓子も食べさせたことが無かったようだ。
僕も、お菓子チャレンジ以降、京子さんにアルコールの類は与えてないし、外で飲まないよう言い聞かせている。
しかし一方、京子さんはあれ以来お気に召したらしく、度々お酒入りのお菓子を食べたがる。
食べ切る前に、寝てしまうのに...。
「京子さん、すみません。
お菓子置いて来ちゃったみたいです。」
そういう訳で、京子さんから、ボンボンを隠そうとするが、
「期待してしまったじゃないか、啓太。
ん?その手に持ってるのは違うのか?
くれ騙しは良くないぞ。」
ちっ、バレたか。
「これお酒入りだったんです。
だから、課題終わらないうちは、あげられません。」
「少しならきっと大丈夫だ。」
確実に大丈夫では無い。
今食べさせたら課題は終わらない。絶対に。
駄々をこね始める京子さん。
そうして、現在に至るのである。
諭し、引きずりながら、ちゃぶ台に向かわせる。
「京子さん、課題終わったらアニメ観て、チョコ食べましょうね。」
後ろから固定して逃げ場を無くす。
キリッとした京子さんの姿しか知らない人が見たら、きっとびっくりするだろう。
自分と彼女の身内しか知らないであろう姿を知っている優越感に、ほくそ笑む。
「終わったらちゃんとくれるんだな。
絶対だぞ。」
「ちゃんとあげますよ。」
欲しいんだ...頑張るから、少しだけ...」
「ダメです。京子さん。頑張って下さい。」
事の始まりは、十分ほど前だった。
バイトから帰ると、京子さんがちゃぶ台の上にノートや資料を拡げ、その上に突っ伏していた。
「京子さん、そのまま寝ると風邪ひきますよ。」
「ん。おかえり、啓太。
寝てないぞ。少し夢見てただけで。」
うん、寝てますよね、それ。
よくよくちゃぶ台の周囲を見回せば、勉強道具だけでなく漫画も数冊置かれている。
今までにも何度かあったが、この状況はさしずめ、課題が思い通りに進まず、漫画に逃げて、眠い時間帯に入ってしまった、とかそんな事だろう。
「京子さん、あとどのくらい残ってるんですか?」
「いっぱい...。」
京子さんは、スイッチが入れば早いのだが、手を付けるまでがなかなか長い。
時計を見れば既に10時近い。
出来れば、日付が変わる前には寝かせてあげたい。
「今日、バイト先でお菓子もらったんです。
これ食べて、気分転換して頑張りましょう。ね?」
「ああ。たべる。」
カバンからバイト先で貰ったお菓子を取り出す。
ああ、まずい。
中身を確認してから、提案するべきだった。
貰ったお菓子は、中にお酒が入っているチョコレートボンボンだった。
コニャックとはいえ、入っている量は3%程度だから大したことはない。
問題なのは、京子さんのアルコール耐性だ。
以前、京子さんの20歳の誕生日に、家で飲酒デビューすることにした。
用意したのは、アルコール度数がかなり低めの缶チューハイだったが、一缶飲み切ること無く、京子さんは寝た。
それはもう、あっさり、ぐっすりと寝た。
本音を言えば、酔うと甘えたがりになるとか、キス魔になるとか、嬉しい絡み酒を期待していた。
実際には驚く程何も起こらず、僕が乾杯してから台所で簡単なおつまみを作っていた5分程のうちに、すこやかな寝息をたてていた。
その後一度、お酒入りのお菓子も試してみたが、結果は似たようなものだった。
京子さんのお母さんに確認してみたら、家系的に全く飲めないらしい。
京子さんがお酒に弱いのは、予想内だったからお菓子も食べさせたことが無かったようだ。
僕も、お菓子チャレンジ以降、京子さんにアルコールの類は与えてないし、外で飲まないよう言い聞かせている。
しかし一方、京子さんはあれ以来お気に召したらしく、度々お酒入りのお菓子を食べたがる。
食べ切る前に、寝てしまうのに...。
「京子さん、すみません。
お菓子置いて来ちゃったみたいです。」
そういう訳で、京子さんから、ボンボンを隠そうとするが、
「期待してしまったじゃないか、啓太。
ん?その手に持ってるのは違うのか?
くれ騙しは良くないぞ。」
ちっ、バレたか。
「これお酒入りだったんです。
だから、課題終わらないうちは、あげられません。」
「少しならきっと大丈夫だ。」
確実に大丈夫では無い。
今食べさせたら課題は終わらない。絶対に。
駄々をこね始める京子さん。
そうして、現在に至るのである。
諭し、引きずりながら、ちゃぶ台に向かわせる。
「京子さん、課題終わったらアニメ観て、チョコ食べましょうね。」
後ろから固定して逃げ場を無くす。
キリッとした京子さんの姿しか知らない人が見たら、きっとびっくりするだろう。
自分と彼女の身内しか知らないであろう姿を知っている優越感に、ほくそ笑む。
「終わったらちゃんとくれるんだな。
絶対だぞ。」
「ちゃんとあげますよ。」
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