僕と彼女と彼女の嫁と

市川 恵

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回想5 ~僕と高校と暗転~

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《こんにちは作者です》
 色々高校時代の残念エピソードなども書きたいのですが、まとまらないのでそのうち、ちまちま書くことにして、高校時代はダイジェスト版だと思って急激な時間のすっ飛ばし方にも広ーい心でお読み下さい。
 



 高校の頃の思い出を語ろうとすれば、決してクラスが嫌いだった訳ではないが、部活での思い出に偏りがちになる。

 いつもノリで行動を起こす三年生と、ツッコミながらもどこかズレてる二年生と、いつの間にやら中心にいる京子さんと、それを眺める僕ともう一人の一年生寺田さん。
 
 笑いのある日常が、適度に幸せだと感じていた。

 二年生に進級し、京子さんは文系へ、僕は理系へ、それぞれが進路に向かって進んでいった。
 しかし、まだ部室でお弁当は継続したままだった。
 部室で弁当食べながら過ごし、寝不足気味な日は仮眠をとって京子さんに起こしてもらう、そんな昼休みが好きだった。

「京子さん、進路どうします?」
 食後にまったりとしながら尋ねた。

「あー、看護系だよ。
 目指してるのは、看護師じゃなくて養護教諭だけど。」
 保健の先生か。きっとむいてるだろうな。

「理系じゃなくていいんですか?」
「私が行きたい所は、文系で行けるから。
啓太君はどうするんだ?」

 まだ決まりきってないものの、今の所の目標を口にする。
「僕はそうですね...デザイン系の大学行ってから、一般企業に就職したいですね。」
「お互い頑張らないとなー。」

 父さんが少しずつ働き始めてから、生活は安定してきたが、それでも進学するかどうかは、よく考えなければならない。

 母さんは、父さんが落ち着いてきたら、離婚したいと考えている。
 母さんの考えを尊重したい一方で、簡単に別れられるのだろうか、という懸念もあった。

 次の作品展の話を、京子さんが持ち出した。
「次の作品のサイズとか決めたか?」
「あ、はい。
今回は構想も早く決まったし、今日から制作取り掛かろうと思ってます。」

「そっか。楽しみだ。
啓太君の作品結構好きなんだ。」
 京子さんにそう言って貰えると嬉しくなる。

 その日の放課後から、制作に取り掛かった。


 それから一週間後の事だった。
 父さんの態度に嫌気がさした母さんが、僕が高校を卒業してから切り出すはずだった離婚話を、父さんにしてしまった。
 父さんは、母さんが離婚を考えていると察してからまた心身症の症状が出やすくなっていた。
 母さんからの突然の話に、怒った父さんは母さんのパート先に乗り込んで行った。
 職場の人の通報によって、騒動は大きくなり、近所の人にも知られた。

 僕はまた、学校に行かなくなった。
騒動を知っている人に気を使われるのも、精神的に動転している母を家に残して行くのも、不安だった。

 結局、キャンバスに下描きを描いたあの作品が着色されることは無かった。
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