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水星銀月との出会い
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「宇さんが、無事帰還なさること心から祈っております。水星宙さんも、きっと参加するとおっしゃるでしょう。私は、水星宙様の世界へと参ります。では、これにて失礼致します。」シリテスは、俺にそう言うと空間移動呪文を唱え姿を消した。この世界で、一体何が俺を待ち受けているのだろう。そして、水星銀月とは一体何者なのか。正体を徹底的に突き止める必要性がある。ひとまず、クラスとこの学校の情報を知らないことには始まらない。そして、学校に馴染み水星銀月に接近することが俺の最初の訓練(ミッション)だ。
ドタドタドタドタッ
前方から、人の群れが俺の横を通り過ぎ一人の青年を囲んだ。睨み付けている者もいれば、嘲笑する者もいた。体格のよい金髪の男と、その仲間達は青年を蹴りながら言った。
「銀月、お前の父親の理事長が逮捕されたんだってな。学校の金に手を着け、裏組織の人間と同盟を結んだ。それに、もうお前はただの庶民(せいと)だ。今後は、リフィリット・マーザが生徒会長になる。お前の父親がしてきた傲慢な数々の態度を身をもって実感してもらおうか。」
「皆、こんな卑しい父親の 息子と関わるな。」
「リフィリット・マーザ様の言うとおりだ。」
リフィリット・マーザ、リフィリット・マーザと誰もがコールした。この青年が水星銀月…。
「そっか…。俺みたいな奴と関わりたくないよな…。分かった…学校二度と来ないし、近々引っ越すから…。安心して、もう二度と顔も見せないから。」
俺なら、散々に言われ蹴られたらやり返すだろう。でも、彼はやり返さずただ笑って言った。誰もが、彼を敵視し傍観していた。そう思っていたが、一人の青年だけは彼の唯一の味方だった。
「お前ら、銀月は何も悪くないだろ。お前らの両親が逮捕されて言われたらどうなんだよ。」
「篠山珀海(はくう)、俺を庇(かば)うな…。金輪際、俺に近付くな…。」
「銀月、俺はお前の友達だし味方だから近付く。お前に何と言われようとな。」
「もう、勝手にしろ。被害に遇っても知らねぇからな。」
水星銀月と篠山珀海…。宙と俺に似ているような…。でも、俺と宙は一人っ子で義兄(あに)はいない。ならば、若かりし日の父親なのだろうか。
「銀月、お前何か変わったな…。」
「変わった?珀海こそ、変だ…。俺達、互いの為に友達辞めた方がいい。辞めるべきだ。じゃあな、篠山珀海。」
ドンッ
「すみません。」
「篠山珀海、何処まで着いてくんだよ。しつこい…な…あれ、篠山珀海じゃない。誰だ、お前。見かけない顔だけど、転校生か。それにしても、篠山珀海に目と鼻がよく似ているな。あいつの弟か。」
「いえ、違います。俺は…その…。ただの転校生です…。俺も、名字が篠山って言いますが弟ではありません。」
彼がYシャツの袖とズボンの裾を捲り上げると、至るところにアザがあった。唇からは、血が盛り上がり滝のように溢れていた。
「低階級の奴等なんかにやられたと思うと、笑えてくる。今まで、俺の父親が学校のトップに君臨している間なら、当然意のままに操れることなど容易なことだ。権力を握る者なら、誰かを服従させようとするだろう。でも、俺はしなかった。父親だけだよ、道徳から外れた行為を犯すのは。金に目が眩んで、理事長を辞職なんて恥晒しもいいとこだ。俺はな、権力なんか要らない。ただ、平凡な人生が欲しかっただけなのに…。あいつは、本当の父親じゃない…。俺は、養子なんだ…。 」
彼は、重々しく語りはじめた。
「目を開けると…、閉鎖された工事の廃材置き場に捨てられていた…。周辺を見渡すと、大量のタイヤと古木材と粗大ゴミ等が山積みだった。0歳の俺を待ち受けていたのは、劣悪な環境と異臭。泣き声で、誰かしら反応してくれるのではないかと、最初はそう思った。だが、誰一人として見向きもしなかった。脳裏を過るのは、死。命の危機が迫っていた。このまま逝くのかと、思っていた。ある日、何者かが廃材置き場に放火をした。一時、街は大騒動になった。消防隊員が、俺を救助してくれたお陰で生き延びることが出来た。俺は、1歳まで乳児院へ1歳から12歳まで児童養護施設にいた。13歳の時に、里親を紹介された。それが、理事長だ。相性を見極める為、帰省に行くことにした。理事長は、家族の一員だと言ってくれた。初めて、誰かに存在を認められて嬉しかった。理事長の養子になりたいと職員に言った。理事長も、引き取りたいと言って一緒に住むことになった。ごめんな、重い話をしてしてしまって…。」
俺は、彼と似た境遇をした知り合いのことを思い出した。
ドタドタドタドタッ
前方から、人の群れが俺の横を通り過ぎ一人の青年を囲んだ。睨み付けている者もいれば、嘲笑する者もいた。体格のよい金髪の男と、その仲間達は青年を蹴りながら言った。
「銀月、お前の父親の理事長が逮捕されたんだってな。学校の金に手を着け、裏組織の人間と同盟を結んだ。それに、もうお前はただの庶民(せいと)だ。今後は、リフィリット・マーザが生徒会長になる。お前の父親がしてきた傲慢な数々の態度を身をもって実感してもらおうか。」
「皆、こんな卑しい父親の 息子と関わるな。」
「リフィリット・マーザ様の言うとおりだ。」
リフィリット・マーザ、リフィリット・マーザと誰もがコールした。この青年が水星銀月…。
「そっか…。俺みたいな奴と関わりたくないよな…。分かった…学校二度と来ないし、近々引っ越すから…。安心して、もう二度と顔も見せないから。」
俺なら、散々に言われ蹴られたらやり返すだろう。でも、彼はやり返さずただ笑って言った。誰もが、彼を敵視し傍観していた。そう思っていたが、一人の青年だけは彼の唯一の味方だった。
「お前ら、銀月は何も悪くないだろ。お前らの両親が逮捕されて言われたらどうなんだよ。」
「篠山珀海(はくう)、俺を庇(かば)うな…。金輪際、俺に近付くな…。」
「銀月、俺はお前の友達だし味方だから近付く。お前に何と言われようとな。」
「もう、勝手にしろ。被害に遇っても知らねぇからな。」
水星銀月と篠山珀海…。宙と俺に似ているような…。でも、俺と宙は一人っ子で義兄(あに)はいない。ならば、若かりし日の父親なのだろうか。
「銀月、お前何か変わったな…。」
「変わった?珀海こそ、変だ…。俺達、互いの為に友達辞めた方がいい。辞めるべきだ。じゃあな、篠山珀海。」
ドンッ
「すみません。」
「篠山珀海、何処まで着いてくんだよ。しつこい…な…あれ、篠山珀海じゃない。誰だ、お前。見かけない顔だけど、転校生か。それにしても、篠山珀海に目と鼻がよく似ているな。あいつの弟か。」
「いえ、違います。俺は…その…。ただの転校生です…。俺も、名字が篠山って言いますが弟ではありません。」
彼がYシャツの袖とズボンの裾を捲り上げると、至るところにアザがあった。唇からは、血が盛り上がり滝のように溢れていた。
「低階級の奴等なんかにやられたと思うと、笑えてくる。今まで、俺の父親が学校のトップに君臨している間なら、当然意のままに操れることなど容易なことだ。権力を握る者なら、誰かを服従させようとするだろう。でも、俺はしなかった。父親だけだよ、道徳から外れた行為を犯すのは。金に目が眩んで、理事長を辞職なんて恥晒しもいいとこだ。俺はな、権力なんか要らない。ただ、平凡な人生が欲しかっただけなのに…。あいつは、本当の父親じゃない…。俺は、養子なんだ…。 」
彼は、重々しく語りはじめた。
「目を開けると…、閉鎖された工事の廃材置き場に捨てられていた…。周辺を見渡すと、大量のタイヤと古木材と粗大ゴミ等が山積みだった。0歳の俺を待ち受けていたのは、劣悪な環境と異臭。泣き声で、誰かしら反応してくれるのではないかと、最初はそう思った。だが、誰一人として見向きもしなかった。脳裏を過るのは、死。命の危機が迫っていた。このまま逝くのかと、思っていた。ある日、何者かが廃材置き場に放火をした。一時、街は大騒動になった。消防隊員が、俺を救助してくれたお陰で生き延びることが出来た。俺は、1歳まで乳児院へ1歳から12歳まで児童養護施設にいた。13歳の時に、里親を紹介された。それが、理事長だ。相性を見極める為、帰省に行くことにした。理事長は、家族の一員だと言ってくれた。初めて、誰かに存在を認められて嬉しかった。理事長の養子になりたいと職員に言った。理事長も、引き取りたいと言って一緒に住むことになった。ごめんな、重い話をしてしてしまって…。」
俺は、彼と似た境遇をした知り合いのことを思い出した。
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