33 / 104
黒のストッキング1
しおりを挟む「ただいま戻りました、国王陛下。」
「よくぞ戻った、ロレンザ。
ミレンネも大変だったな。無事で何よりだ。
そしてジョルジュワーンの王子、グリニエル殿。お初にお目にかかる。
ヴィサレンス帝国第13代国王、アレクサンダーだ。此度は我がヴィサレンスとの同盟を結んでもらえて感謝致す。
そしてミレンネを助けてもらったと聞いておる。…父としても礼をさせてもらいたい。
本当にありがとう。」
「いえ。その場でミレンネ皇女を助けたのは、エミレィナでございます。
むしろ光栄であることなのに、彼女のヴィサレンス行きを折ってしまい、申し訳ありません。」
「構わん。レティシアーナの娘がこちらで暮らす方が幸せなのではないかと思ったのだが、その様子を見ると違うと分かった。
無理やり連れ戻すようなことはしない。
ただ、こうやって会えて、とても嬉しく思うよ。」
私の伯父に当たるのがヴィサレンスの国王陛下だ。そんな彼が私を尊重してくれることが
うれしかった。
「エミレィナ。レの名を継ぐ者。
もう少し近づいてくれまいか。
最近歳を取ったのか目が悪くてな。
よく顔を見たいのだ。」
私はゆっくりと3歩進み、綺麗に淑女の礼を施した。
「お目にかかれて光栄でございます。
国王陛下。」
「…ふっ。
…其方はレティシアーナとよく似ている。
本当にレティの娘なのだな。」
そんなに似ているのだろうか。
そう思いながらもコクンと頷いた。
「こちらにいる間は好きに過ごすといい。
レティシアーナの子としてヴィサレンスの王家であることを証明する儀式は明日行う。
お前の伯母に当たるレロリア、そしてその姉弟も呼んである。明日の正午に集まってくれ。
私からは以上だ。」
「…国王陛下。
発言する許可を頂けますか。」
「構わん。エミレィナ、申せ。」
「…私は、ヴィサレンスの名を頂くにはあまりにも無知かと思います。王家特有の魔力もありません。
そんな私に王家である証など…。」
私は最近やっと母を知ったばかり。
そして力もない。
ヴィサレンスの王家の名を貰うには私ではあまりにも釣り合いが取れないのだ。
「いいや、エミレィナ。
お前がレティシアーナの元に生まれ、その色や名を受け継いだ時から、既にヴィサレンスとは切れないもので繋がっているのだ。
それに、ヴィサレンスのことはこれから知ればいいだけのこと。自分を卑下するでない。
私はお前の伯父だ。お前が自身を否定することは我を否定することと同義だ。いいね?
正式にヴィサレンスの名を背負い、ジョルジュワーンで暮らすといい。
その名はきっとお前を助けてくれるだろう。」
「…。」
私はこれ以上言うことはできない。
それ以上口を出せば、不敬罪に取られるかもしれないのだ。
「…ありがたき、幸せにございます。」
私はそうして腰を折り、謁見の間を出る。
なんだかどっと疲れた。
他国の王と会うなど、それも自分の伯父である人と初めて会ったのだ。緊張しないはずがなかった。
「ミレンネはエミレィナを案内してやってくれ。私はグリニエル殿とケインシュア、そしてトロアとイザベラと共に話すことがある。」
それはきっと隊長のつける稽古の話だろう。
その後に皇子達で国益の話でもするのかもしれない。そうなれば私とミレンネは居座るわけにはいかないため、そのまま別棟へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる