脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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エミレィナ・ヴィサレンス①

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次の日。
私は濃いピンクのドレスに身を包む。

これは母であるレティシアーナが、ヴィサレンスにいたときに着ていた物に少し手を加えた物らしく、私の瞳と同じ色をしているからか、違和感なく着ることができた。


ただ、儀式ということだけあって、とても重く、動きにくい物だ。

今は付けていないが、ティアラや装飾品も付けなければならないという。


しかし、午前中はミレンネと共に魔力石を作る予定の為、あとで付けて欲しいと頼んだのだ。




コンコン。


「どうぞ。」

ミレンネの部屋の扉を叩くと、軽やかな返事が聞こえ、部屋に入る。

特に変わったものが用意されている訳ではなく、ただ、腕まくりをしたミレンネがいるだけだった。


「こんな姿でごめんね。
私も聖女になって初めての魔力石を作らなければならないの。
一緒にやりましょう。」


その言葉を聞いて、私は少し安心する。

「あ、良かった。
一緒にってことはどうやって作るか一から見せてもらえるということよね。」


「ええ。その方が分かり易いかとも思って。
それじゃ、時間もないし、始めちゃいましょう。」


それからミレンネに、ピアスの原型となる針と、魔力石をはめるための型を手渡された。


「その型に魔力を流し込むイメージでやるの。そうすると薄らと魔力が重なっていって、何層にもその膜が重なっていくことで魔力石になるわ。」



魔力石はツルツルとした宝石に似ているが、そうではない。何層もの魔力を薄く重ねていくことで形を作っていくのだという。
そしてこの型は魔力を留める為の施しがされている為、1度流し込めば随分もつらしい。


ただ、私には1つ問題がある。

私は極端に魔力が少なく、魔力の集め方などピンとくるようなものではなかったのだ。




「そうねぇ…。エミリーの容姿魔法は髪に魔力を集中させて変えていたでしょう?
それと同じことなの。ただこれは自身の体の一部ではないから、そう思ってやらなくちゃできないかもしれないわ。」


「それに、お兄様の魔力コントロールでも、両耳分2つ作るのに半日かかるわ。

私なら1日半…程かしら。根気がいるのよ。」


ミレンネでも1日半かかるものを、私は一体何日かかるのだろうか。

そう思ったが、根気だけはある為、まずやってみようと、その型に集中した。










「…そういえば、正式に聖女になったのに、お披露目とかはしないの?」


1時間の集中後、私とミレンネは儀式の準備もあるからと、一旦ピアス作りを止め、雑談を始める。


「ええ。お披露目は2週間後なの。
隣国に書状を出したり、神殿の作り替えだったり、聖女の服の用意や、何より就任式の準備に結構時間が掛かるみたい。」



それを聞いて私はああそうか。と納得する。

今までの聖女であれば、前聖女からの受け継ぎが行われていた為、即位後すぐにお披露目と呼ばれる就任式をすることができていたが、今回は違う。

聖女の力の受け継ぎが急に執行された為、お披露目の準備の方が進められていなかったのだろう。


「まあ、おかげでお披露目と婚約発表を同時にできることになったから、私としては嬉しいの。
聖女として就任式をしたあとは、縁談が多くなる。確かに、優れた人と結ばれればそれなりに力のある子が生まれるわ。

でもね、王家の力は好き人と共になることで強化され、受け継がれるの。だからトロアと一緒になることが、私の力を最大限活かす道になるのよ。

変な縁談をこぎつけられる心配がなくなって本当に良かったと思ってるわ。

それに、一度諦めていた夢に見たことをみんなに発表できるんだもの。幸せだわ。」



彼女はとてもキラキラしていて、私には眩しいものだった。


誰かをこんなに愛せる日が来るだろうか。
そうすれば、私も力を得て、今以上にグリニエル様に貢献できるんじゃないだろうか。そう思った。



「だからね、私はレティシアーナ様の選択は間違ってはいなかったと思ってるの。
許されていない恋だったけど、愛する人と一緒になることは王家にとって伝統でもある。

みんなその気持ちが分かっているの。
ただ、国で看取りたかったのだと思うわ。
レティシアーナ様の訃報を聞いた時、父も伯母も崩れるように悲しんだらしいから…。


…ずっとエミリーを探していたわ。
勇者様がエミリーを連れ去って隠れ暮らしているのだと思っていたから、今まで気付かなかったけどね。」




「でも、彼女は先を見据えてその選択をしたんだわ。
だからこうやってジョルジュワーンと同盟を組んで、エミリーと仲良くなれた。

私は命をかけたレティシアーナ様を誇りに思ってる。」






ずっと不思議だった。



聖女レティシアーナは母国を捨て、勇者と共になり、子を宿し亡くなった。

きっとそれはヴィサレンスにとって大打撃となったことだろうに、どうして穏やかに私を引き入れようとするのか。

どうして子の責任として私を咎めないのか。


それはきっと、王家の人間が、少なからずもレティシアーナの考えに共感したからなのだろう。


その柔軟な対応に、私は救われているのだ。
そう思った。



そうしている間にミレンネと私の準備が整い、共に謁見の間へと向かう。


もちろん私は装飾品もプラスされ、歩くたびに宝石が光っている。
そんな慣れない格好の中、私達はそこに足を踏み入れた。


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