脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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ソリシエール①

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シュンっと音が聞こえたあと、目の前に広がったのは深い森だった。



「国境から少し離れていますが、ここが1番ソリシエールに近い転移場所です。」


「ありがとう、クローヴィス。
少しでも近いほうがいいからな。助かった。」


クローヴィスは自分が足を運んだことのある場所であれば移転することができる。
ここが今の彼の最北端。
しかしそれはすぐに塗り替えられるだろう。

移転してすぐ、ルキアはスンスンと匂いを嗅ぐ。






「エミリー。近くには誰もおりません。」


「そう。それじゃ、このまま進みましょうか。…ルキア、案内よろしくね。」


「承知いたしました。」



ルキアを先頭に、私、グリニエル様、隊長、そしてクローヴィスの並びでその森の中を歩く。

整備されているわけでは無いが、草が生い茂っているわけでも無い。

比較的歩きやすい森を進むと、急にルキアが左手を上げた。


「…1人…来ます。構えてください。」






その言葉を聞いて各々が構えると、姿を見せたのはトラだった。




ガルルルと威嚇するそのトラに、私達は拍子抜けした。




「ルキア…ここには動物もいるのか?」


「これは動物ではなく魔族です。」


。その名前に反応したように、その虎はルキアに向かって走ってくる。

それを感じ取ったかのように、ルキアはすぐさま私たちから離れ、木の上へと移動した。







「…いつまでその姿でいるんだ。ヴォーグ。」



木の上からそう告げるルキアは、そのトラを見下ろして言う。


「…ガルル。ルキア…ロード。
今まで何をしていた…
っお前が…お前のせいで…!」



そのトラはヴォーグという名のようで、ルキアを恨んでいるらしい。

こちらには目もくれず、ヴォーグはルキアに飛び掛かった。


「グガッ。」


「隙だらけだ。」




飛びかかったそのトラの首に剣を這わせ、その動きを止めたのは隊長だ。

トラに時間を割いている暇はない。そういうように視線を上げると、ルキアが降りてきた。



「やはり、隊長様は随分とお強い…。
4では歯が立たないようですね。」


「4番?」


「魔族には順列があるのです。
13人いる中で、彼は4番目の力を持っています。」



「っ…3番だ!
お前が居なくなって位が上がったんだ。
間違えるんじゃねえ!」



先程とは打って変わり、トラの姿から人の姿に変わった彼は、ルピエパールで見たあの大男だった。





「っ!お前……‼︎」

すぐにでもその剣を刺しそうな隊長を止めたのはグリニエル様だった。
隊長の腕を押さえ、落ち着くようにと促していた。


「落ち着けケイン。
切るのは話を聞いてからだ。
まだ連れ攫われた者たちがどこにいるか分からないんだぞ。」


「っくそ。分かっている…!」


いつもの隊長はここにはいない。
シェリーが連れて行かれたことに、どうしても焦りが生じてしまっているのだ。




「お前が連れ去った者たちはどこにいる。」


「あ?…人間のメスのことか?
ハハッっ…あれはもう用済みだ。」


「っ!」


用済み。その言葉で剣を振り上げた隊長は、そのまま振り下ろした。


「…お待ちください。」


か細く透き通った声が響く。
それは木の陰から聞こえており、その声が隊長に届くと、剣の矛先は地面に変えられた。



「…誰だ。」


「…No.8……メイシャン…。」



姿を見せたのは、真っ白の髪に真っ黒の目をした可愛らしい女の子だった。


その子は木の影に隠れながら、言葉をゆっくりと紡いでいく。


「…その…。
ネズレットがみんなを呼んでる…。」







「ルキア。」


急に現れたその子の説明を隊長が求めると、ルキアはすぐさまそれに応えた。

「はい。…彼女はメイシャン…。彼女は魔族順列8。そこまで強くはありませんが、その手にしている鏡は人を転移させることができ、敵を転移させた先で殺す能力を持っています。
しかし、真実しか口にできませんから、言っていることに間違いはありません。」


「…ほう。そうか。それじゃ、答えろ。
こいつに連れて行かれた者たちはどこにいる。」










「……………ネズレットのところ…。」



「…。誰だ。そのネズレットとは。」







「…No.1。…1番えらい…。頭が…いい?」




「…そいつのところに行けばその者たちを返すというのか?」








「…分からない。
…ただ、呼んでこいとしか…言われてない。」


「……。」




メイシャンとの会話に痺れを切らした隊長は、剣をしまって腕を組んだ。


「それでは移動しよう。
呼んでいるというのなら遠慮なくそうしよう。メイシャンとやらが、連れて行ってくれるのか?」


グリニエル様が代わって話をすると、メイシャンはコクンと頷いた。


「メイシャンに名を教えれば、転移できます。
名を呼ばれ、それに返事をすると、彼女が決めた場所に飛ぶのですが…。
まずヴォーグでも飛ばしてもらいましょう。
手本があった方がやりやすいでしょう。
…メイシャン。」





「…分かりました。ルキア。」




「はぁぁ…ったく。しゃーねーな。」



隊長の手によって地面に転がっていたヴォーグが立ち上がると、メイシャンが声を掛けた。


「……ヴォーグ。」

「…ああ。」






ピュォッ


「「「っ!」」」


ただ返事をしただけ。
それなのに、ヴォーグは光に包まれたと思ったらそのまま姿を消した。


「飛んだのか?」

「ええ。それでは名前を彼女に教えてください。そうしなければ転移は正立しないのです。」


「…面倒な能力だな。」

「っ。」


転移の仕組みがあることを知った隊長がそれを口にすると、メイシャンは雷にでも打たれたかのように固まってしまった。


「ちょっと!隊長!
デリカシーないんですか?
あんな小さな子がショック受けちゃったじゃないですか!」


「あ?本当のことだろう。」


「女心に疎いから、いつまでもシェリーに相手にされないんです!」


「っ…。」



ダメージを受けた隊長を退け、私はメイシャンに声を掛けた。



「私はエミレィナ。
転移…お願いしてもいいかしら。」


「…。」


私がそういうと、メイシャンは少し恥ずかしそうにしながらも、コクンと頷いてくれた。



「待て。私も一緒に行く。
1人で行かせるわけには行かないだろう。」


「…グリニエル様…。
ありがとうございます。」




「…エミレィナ。グリニエル…。」




「ええ。」「ああ。」





ピュォッ




またもやその音が鳴ると、その光が落ち着く頃には、目の前の情景が変わっていた。










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