脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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ソリシエール②

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「……ようこそ。人間の皆さん。」


私とグリニエル様が転移してすぐ、ルキア、隊長クローヴィスも転移した。


目の前は少し薄暗いが、城の謁見の間のようになっており、その玉座には女性が座っていた。


その容姿は、グレーの髪色に黒い瞳。
ドレスではなく、騎士のような隊服を着ている彼女は、眼鏡をかけており、どこか知的にも見える。


「初めまして。ネズレットと申します。」


「どうして私たちをここに呼んだんだ。
戦う気はあるのか?」


彼女が私たちを呼んでいる。
その理由は何かとグリニエル様が問うと、彼女はフフフと笑った。




「あなたたちは魔族である彼を受け入れている。だから取引ができると思った。
ただそれだけです。」


「…取引…だと?」



「あなた方はヴォーグが連れてきた方々を連れ戻しに来たのでしょう?
私たちも、彼女達に用はないのです。
連れて帰って頂いて結構。
むしろそうしてもらえると助かります。」



「…どういうことだ。」




ネズレットは、淡々と話していくが、こちらは状況がわからずに顔をしかめる者が多い。



「…私たち魔族が探しているのは、彼女たちではありません。
もっと別の…特別な1人の女性。
その方が欲しいのです。
しかし、早とちりした彼によって連れてこられた人間は、私たちを恐れ、国へ帰そうにも話がまともにできずにここに居続けております。
だから、連れて帰ってもらって構いませんが、その代わり、その女性を探すのを手伝って頂きたいと思います。」



「私たちがそれに従うとでも思うのか?」


「…。別に殺そうと思っているわけではありません。
その女性の手を借りたいだけ。
それを信じられないのでしたら、その方がいらした時にずっと側にいるとかなさればよろしいのでは?」


「魔族が人の手を借りるというのはどういう理由があってのことだ。
それを聞かなければ信じることはできない。」








「……会わせてあげたいだけよ。」


「誰にだ。」




「私達の父…彼はもうすぐ息絶えてしまうから…。
その前に父の娘である人間を探しているのよ。」



「どういうことだ。ルキア。
ますます分からなくなったぞ。
魔族の父とは誰だ。娘が人間で、その父は魔族なのか?」




隊長が混乱し、ルキアに説明を求めても、ルキアもその事実に驚いているらしく、握った拳が震えていた。



「な、ぜ…あの方が息絶えなければならないのだ…。まだ人間の寿命は先だろう…。」




「…あなたのせいよ……。
あなたがここを離れたからっ…!」


ルキアの問いにネズレットが熱くなると、短剣が飛び、ネズレットの頬をかすめた。



「…分かりやすく説明しろ。
お前は頭がいいんだろう?
時間をやるから1から説明しなおせ。」



低く、断りを許さない隊長のその空気に、ネズレットは息を飲んだ。



「…っ。あ、あれは20年前の話よ。
その年、ここの土地は随分と暮らすことのできないほどに荒れたの…。
…それを助けてくれたのが、父…と呼んでいる私たちの主。」


「主は、私達の暮らしのためにジョルジュワーンの北側を襲おうと思っていた魔族を一対一ではあったけれど、1人で制圧し、…。
私達を従わせたわ。」





そこまで聞いて、その人は只者ではないことが分かった。

余程腕が立つ人だったのだろう。



「人間は襲うものではない。学ぶものだ。
共に干渉せずとも、いつか共存できる日が来るだろう。そう教えられたわ。
だけど、いつまでも魔族と人間が共に暮らすことはなく、魔族たちの夢だけは膨らみを見せた…。」


「ここで暮らすよりも、外の世界に出たいと願う者が増え、その者たちの力と引き換えにそれを許すことになったわ。
…魔族のトップだったルキアが、責任を持って魔族を動物に変えて人間の国へと放つ頃…事件は起きたの。」



「事件…?」










「…最悪の双子が、この地を訪れた、」



「「「「っ!」」」」


「最悪の双子は、この城を見てこう言ったわ。「この城を頂戴。」と。
それを父が拒み、私達を守ってくれたの…。
でも、…。そううまくは行かなかった。」




「最悪の双子は主人に呪いをかけた。
…寿命が早まる呪いだと言っていたわ。
でも、この世に呪いを解呪する術はない。」




間違いはない。
聖女であっても、直せるのは怪我や傷のみ。
呪いは解呪することができないのだ。



「…だからせめて、彼の唯一の肉親である女性と会わせてあげたいの。
お願い…。主を助けて欲しいとは言わない。
でもせめて、その女性の手を貸して欲しい!」


涙が溢れ、懇願するネズレットの姿からは、嘘をついているようには思えなかった。





「…。どうする。グリニエル。」


「…どうするといっても、世界は広い。
探すにも、かなり時間がいるだろう。
安易に約束できるようなものではない。」




「…そんな…。」



「その主という人はどこの国の人なのです?
行方不明者から辿れば、すぐかもしれません。
そんなに強かった人が国を出ていれば、きっと何か手がかりがあるのではないでしょうか。」


クローヴィスがもっと詳しく素性を知りたいと言うと、ネズレットは被せ気味に応えた。


「主の名は教えられなかったわ。
父と呼べと言われていたから…。
年は40過ぎ…。国は分からないわ。
いろいろな国の話を聞かされたの…。
でも最後にいたらしい国はよ。」



「…。んー…。」

「20年前の失踪者。
そして行方不明者を辿るか?」


「そうだな。
それ以外、辿る道は無さそうだ。」




「…お願い…。私達はそれが成せればどうなっても構わないわ。
…みな、父が大切なのよ…っ。」





「手は貸してやる。しかし、誘拐の罪は償って貰わなければならない。構わないか?」


「…ええ。
でも、ヴォーグではなく、私にして頂戴…。
彼を止められなかったのは私の力不足…。
ルキアであれば止められたことを、私は止められなかった。だから、罪は私が背負う。」


「…まあ、いいだろう。」





「っおい!俺がやったことだ!
俺がやる。お前は引っ込んでろ!」


「っうるさいわね!
せっかく纏った話がなくなったらどうするのよ!
あなたはまずちゃんと人の話を聞かないから、ではない他の人間を連れてくることになったんでしょう!
名前の一つ、覚えてからにしなさいよ!
突っ走るのも大概にして!」



「ングっ…!」



ネズレットの魔法がヴォーグに命中し、煙が上がる。その衝撃を私たちも受けたように場が鎮まった。




「20年前の行方不明者…。
強く、各国を渡り歩いた…。
ジョルジュワーンで暮らしていた男…。」



「まさか、アルフレッド殿が…」


「っ。」



「な、なに?何か手掛かりでもあるの?
それなら早くその女性と話がしたいわ!」



急に顔色が変わった私達に、ネズレットは急いで要求を立てた。



「…その必要はない。」




「……え?…っ
ど、どうして?
私たちは本当のことを話しているわ。
危害なんて加えたりしない。誓うわ!」




「そう言うことじゃない。」



「それじゃ、どうしてっ!」




自分の要求が通らないことに、彼女は前のめりになり、声を荒げる。





すると隊長が口を開いた。













「お前が言うエミリーは、
今目の前にいるエミレィナのことだからだ。」
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