脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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最悪の双子①

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『僕らはね。いつ生まれたかわからないけど、偽物の勇者の父と聖女史上最弱だった母の間に生まれたんだ。』


『禁忌を犯してまで、母は強さを求めて僕らを産んだんだよ。』






「…えっと。勇者と聖女が子を成すと強い子が生まれるの?…それに、偽物って何?」


私はとりあえず彼らの話を引き伸ばし、彼らについて何か手掛かりはないものかと会話のラリーを返す。






『うん、そうだよ。
まあ、母親はとても弱かったから、そこまでじゃないけど…。
…選べるなら、レティシアーナの子に生まれたかったなぁ…。』

「っ…。」


『偽物っていうのは、勇者になるのは本当は別の人間だったってことだよ。
…勇者になるはずだった男は勇者になる前の旅の途中で父に嵌められて命を落としたんだ。
だから、父は偽りの勇者さ。』


「…。」


勇者というのは本来決まっているものなのだろうか。
勇者とは聖女が選んだ強い者。
そうなのだと思っていたが、もしかしたら聖女になった時に、勇者の生まれつき持った才能を視ることができるのかもしれない。


まあ、ミレンネの代では、勇者はヴィサレンスから出すものだと教えられていた様だから本当のことは分からなそうだ。


『僕らは聖女と勇者の子。
だから特別な力を得た。』


『それが呪いの力だよ。』



「…。」




『この力は同じ者でしか消すことができない。』


『だから、ミカレルと僕は対になるんだ。僕らは互いを打ち消し合える唯一の存在さ。』


そこまで聞いて頭の中を整理する。
この子達は人間の中を超えているのだろう。

普通なら使うことのできない能力を、彼らは操り、それを消すのにも相手の存在が必要なのだという。

つまり、互いが同じ闇の力を使っている今、彼らを止める方法は聖女と勇者が力を合わせて封印する他にはないのだと悟った。



『僕らはね。
10歳の頃に父と母の命、そしてその時の皇帝の力を以って封印されたんだ。
いくら偽りだろうと最弱だろうと、ヴィサレンス1の力を持つ皇帝の命が加われば、随分と長い年月を彷徨うこととなったよ。』



「待って…。聖女は勇者と子を成すと命を落とすって聞いたわ。
あなた達を産んだ聖女はその後も生きていたの?」



『へー…。何年も経つと話が違くなるものなんだね。』


2人は、話に夢中になっているからなのか、それとも私との話をもっと続けたいからなのか、徐々に降りてきながら話を続けた。




『子を産んだくらいで聖女は死なない。
まあ、勇者との子を産む時は死の淵まで立つほどに疲弊するものだけど、半年もあれば回復するよ。
…君がいうのはあれだろう?
聖女と勇者が子を成すと自身の子を自分で殺めなければならないからだと思うよ。
それも封印するだけで命を落とすことが殆どなんだ。
だから禁忌なのさ。』



聞いていた話と少し違う。
一緒なのはそれが禁忌ということくらい。


聖女と勇者の子は特別な力を得る。



それを殺めるためには随分な命が必要で、封印するだけでもかなりの力がいる様だ。



『まあ、封印から目が覚めたとき、僕らは手始めに魔族を襲った。』


『完全に力が回復したわけじゃなかったから、地を腐らせるだけだったけど、邪魔が入った。』



「…。」



『当時の聖女だったレティシアーナが僕らの元にやって来たんだ。そして戦いの末、もう1度僕らは眠りについた。』




『彼女は凄かったな。
子どもを産んですぐだと言っていたのに、母と同じくらいの力があった。
…まあ、普通の子を産むのなら疲弊はするが、死の淵に立たせられることはない。
だからそうだっただけなのかもしれない。
だけどさ、残りの聖力の少しだけ使えば命を落とすことなんてなかったのに、全部使って、僕らを封印したんだ。』



「…そう。」





『レティシアーナの最後の言葉、聞くかい?
僕覚えているんだよ。偉いだろう。
”…ある人に未来を委ね、その人を信じている。”
そう言っていたよ。』


『…!』



ある人…それは勇者であったアルフレッドのことだろう。

彼に先のことを任せた結果、彼は魔族の元で過ごし、ずっと最悪の双子を警戒していたのだと思った。





『僕らは誰よりも凄いんだ。
なんて言ったってあのレティシアーナの最期を飾った相手なんだぞ。
君も羨ましいと思うだろう?』


『父母と過ごせなかった君なら分かってくれる。自分を認められるのは自分だけなんだ。
そうだろう?』



「…。そうね。」




父母と暮らしていたら…。
そんなことを夢見たこともあった。



手を取り、腕に埋まり、頭を撫でてもらい、頬を寄せる。
そんな温かな日常を思い描いた。



でもそれは叶わなかった。







親に褒められるとはどういう気持ちだろうか。
親に叱られるとはどういうものだろうか。


それも分からなかった。





『力に見合わない地位を得た両親は僕等に構うことはなかった。それは親がいないのと同じだったよ。』


『いつも忙しそうだった。
僕らがいくら勉学に励もうと、魔法を会得しようと、僕らを誉めることはなかった。』





「…。そうだったの。」





私は何度も彼らの話を頭の中で繰り返した。


するとあることに気付いてすぐ、アネモスの声が聞こえた。
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