30 / 69
頭を使ってみました
しおりを挟む
「……ぁぁぁあの。」
「………むっ!」
「……むむむむっ!」
エアコンの効いた二年B組の教室内。本日も空は眩いほどに晴れ渡り、相変わらず気力を削がれてしまうほどの暑さが降り注いでいた。
そんな正に夏真っ盛りだと言うのにも関わらず…。この教室内の温度は妙に下がっている。何故か。いや、明白だけども。
…僕を中心に左腕絢斗くん。そして右腕に金田さんが張り付いていたのだった。
遡ること一時間前。
今日も金田さんの補講をしていた。昨日の絢斗くんとの一件があり、若干違う意味で会うのが怖いなとか思っていたが。
思ったよりも彼女の態度は普通であり、こちら側が気を負いすぎていたのか、場合によっては可愛い彼氏くんが過剰反応しすぎたのかなとかちょっと考えてしまったくらいだ。直接その買い出しの時の場面を見ていないので、僕としてはなんとも言えないから、そう判断してしまう。それくらいに、普通だったのだ。
だが……授業中盤。
「そーいえば、地味センって今付き合ってる人いるんですかぁ?」
「え……?い、いない、けど…。」
「ふぅん…?そーなんですねぇ♡」
なんか…なんか……様子が。
まさか彼女からそんなことを聞かれるとは思わなかったので心臓がドギマギとしてしまう。本日も艶の良い黒髪を指先でクルクルとしながら、大きい黒目を爛々とさせて僕を見上げていた。
その後の講義はなるだけ平常心を装って続けたが…どうしても絢斗くんとのやり取りを思い出してしまう。だが、業務なのでやるべき事はやらなければ…。諸々思う節はあれど、何とかその日の金田さんの補講は無事終了したのだった。
………のだが。
「え!?ちょ、なんで…お前…いるんだ…!?何かあったのか!?」
「?」
東先生の驚いた声が職員室の入口の所で聞こえた。
他の先生方もなんだとザワザワとしながら視線を向けている。
僕も何事かと向けてみたら…。
「え……。」
堂々と職員室内を闊歩し教員達の目線などまるで気にもしていない様子。あの子の今までの立場を考えれば確かに…何度とその様な視線を受けてきたのだし慣れているのだろう。
トコトコと足音が室内に響き渡る。
そして…それは自分の目の前にて止まったのだった。
「……………………なんで。」
「……ん、きた。」
まさかの絢斗くんが登場してきたのだった。
頬をポッと赤らめながらそんな事を言っている。夜に全くそんな事をするとは伝えてこなかったぞ、どうしてだ!?そんな考えが脳内でグルグルと巡る。照れた感じが可愛いけども、なんでだ!!
そんな唖然としていた所を…絢斗くんは知らん顔しながらポスンと脚の上に乗っかってきて、顔を覗いてきた。
「…んへっ、びっくりした?」
「しっ、したけども……何か用があってきたんじゃないの…?」
愛らしい彼の重みに思わずすりすりとしそうになるが、グッと我慢をする。ここでは数学準備室の時よりも周りに気にしなければならない。
そんな僕の問いかけにチラッと視線を向けつつ、彼は言った。
「……夏休みの宿題を、見てもらおーかなって。」
「……そういう、事ね。」
「ん。田所達みたいな部活やってる奴も顧問に見てもらう時があるって言ってたからさ。ねぇ…俺の事……見てくれる?」
なるほど。
昨日の夜に言っていた「頑張る」と言うのはこの事だったのだと理解した。また僕達が一緒にいても問題ないような理由を考えてきて行動してくれたのだろう。
他の人がいるというのに…胸元に額を猫のように擦り付けてきているし。
そこはかとなく、すぐそばに居る姫路先生の鼻息が荒い気がするのは…きっと気の所為では無い。
「…………はぁ…。」
「…………だめ?」
「…………………………わかったよ。見るよ。」
「んへへっ、やった。」
もう起きてしまった事にあーだこーだ言うつもりは無い。起きてしまったのだから。
諦め半分な気持ちで彼の腰部分に腕を周したのだった。
今日やるべき事はまだ残っていたが、ここでこれ以上のやりとりをする訳にも行かないし、二年B組へ行く事に。余り長くこの状態でいたらボロが出そうである。
彼の手を引き自分のやるべき仕事の資料を持ち、そのまま教室へ。誰もいない廊下を速足で通り抜けた。
到着した教室に当然人はいない。終業式以降誰もここには入っていないから空気はその時のままだ。室内はむわっと、しており些か重苦しく感じた。一旦空気の入れ替えをするべきだと判断し窓を幾つか開けた。
「……ぅわっ、あっつい…。」
「だなぁ…夏って感じだな。」
額に汗を滲ませ、絢斗くんは微笑みながら言ってきていた。思わず、喉が鳴る。
だが、家にいる時みたいに襲う訳にも当然いかず。一つ息を吐き精神を整えた。
各教室にもエアコンは着いてるので、折角だし学校指定よりも低めに設定して宿題を見ることにした。こういう時の特権かなって。
隣同士にすわり、肩をピッタリとくっ付け、腕を絡めてきた絢斗くん。本当にちゃっかりしているなと思う。くふくふとしていて可愛い。僕がどれだけ我慢しているのか知らないのだろうな。一瞬でも彼に関して気を抜けば、そのプルプルと見せつけている唇に噛み付いていただろう。
誰かに見られたらアウトなそんな状況。少しの間誰も来なければ良い、二人だけの空間がちょっとでも続けばいいなと考えていたら…。
「高城先生とすんごい仲いーんだね、浅見くん。」
「……。」
「!?」
聞き覚えのある鈴のような声色が教室内に響いたのだった。
二人して声の先に振り返る。僕は例に漏れず慌てふためいていたが…隣の絢斗くんはじっと黙っていた。彼のチャームポイントである猫目がギラッとしている。絡まる腕も僅かに力が入った。
その声の主……………金田さんが教室の出入口のところに立っていた。ニコニコと微笑みを盛大に披露しており、何を考えているのまるでわからない。
何食わぬ顔でそのまま入室し、僕の右側に机を持ってきては、彼氏くんと同じように…………ピッタリとくっついてきたのだった。
「ぁ!!高城に触んな!!」
「やぁだよ♡せんせー、今何してるんですかぁ?」
「ちょ、ちょっと…かかか金田さん…近い!!」
ぎゅっ!と腕までも絡められてしまい…。その、あんまり意識してはいけないのだが。ふ、膨らみが腕に当たってしまっている。絢斗くん以外僕は当たり前に興味はないのだが…。こればっかりは、どうしょうもない。
それを彼女も理解しているのか、にこりと僕に可憐に微笑みかけてきた。
「んふふっ、浅見くんもぴったりですよぉ?るみも同じ事してるだけですって。」
「いや、ほら…この子は男だし…。」
「そーいうの良くないと思いますっ♡それで、今何してるんですかぁ?」
話をガラッと変えさせられた。
確かに、有難いといえば有難いが。できるならばもう少し互いの距離を離して欲しいと思う。以前の僕ならばきっと…彼女のように可愛らしい子がこんな事をしてくれたならばコロッと気持ちが寄ってしまうのだろうけども。今は僕は絢斗くん一筋だ。多分、間違いなくずっと。だからこそ、隣でむむっ!となっている彼の為に離れて欲しいなって…思うのだ。
学校内ではツンツンしているのだろうけども、この様子であれば家に帰ってからの反動が凄いだろうな。またえぐえぐしちゃう。
「……夏休みの宿題を見てあげてるんだよ。金田さんは…補講は?」
「終わりましたぁ♡るみも宿題やります♡高城先生見てくださいね?」
「だ、駄目だ!高城は俺だけ見るんだよ!金田は姫ちゃんの所にでも行けよ。」
ぐいーーっと絢斗くんが金田さんの事を僕から剥がすように腕を伸ばしていた。少し前の彼ならばこんなことはしなかったのだが、今は関係ないらしい。されている側はきゃっきゃと笑っている。全くまるで効いていない。
「あははっ♡るみ、他の先生あんまりすきじゃないもん。高城先生は優しくてー分かりやすいから宿題もするする進められると思う♡」
「あー…その。二人とも。一先ず…一先ずやろう。僕もやらなきゃいけない事あるから。ね?」
「……うぅ…わかった。」
「はぁい♡」
結局僕を真ん中にして左右二人に張り付かれながら作業をする事になってしまった。こんな事に…なってしまうとは。人生分からないものだ。
わーきゃーとキャットファイトを開催しつつも課題はこなしてくれているようだ。
そんな彼等に時折教えつつも、最低限現状できる作業も勧められたのは不幸中の幸いだろうか。
その後金田さんは満足したのか笑顔で下校をして行ったのだった。また次も課題見てくださいね♡という置き文句をして。勿論、絢斗くんは額に青筋を浮かび上がらせていた。
そんな彼女に対し、すっかりとゲッソリしてしまった僕達二人は気晴らしとして自販機でジュースを買いに行ったのだった。
だが、それでは終わらず。
絢斗くんに腕を引かれながらトイレの個室に行く事に。
「……絢斗くん?」
「…………ムカつく。俺これでも頭使ってやってみたのに。」
ほっぺをぷくぅっ!と膨らませてそんな事を言ってきた。可愛い。とっても可愛い。ツンツンとその頬に指で突っついてしまった。僕に触れられる事は何も嫌だとは思わないみたいでされるがままであるし、指先をちゅっ♡♡ちゅっ♡♡としゃぶってくれる始末だ。何度でも思うが、誰だ彼をこんなにもえっちくさせたのは。僕だよ。
「びっくりしたけど、夏休み中なのに学校で絢斗くんに会えたのは嬉しかったよ。」
「……ほんと?」
「うん。次来る時は事前に言ってくれると…嬉しいけど、出来る?」
「ん。任せろ。…………ちゅぅ、したいな?」
「はいはい。」
ここのトイレはほぼ使われない。使っているところを今までほぼ見た事がないのだ。人気も少なく、掃除も余りされていないみたいだ。隅に埃が溜まっていた。
絢斗くんは僕の首元に腕を周し、甘えてきていた。瞳にも艶が表出しており、愛されを強請る。数十分前の彼とはまるで違う。見えないが、僕を求めるフェロモンを纏っている様だ。
それに対抗する手段も無く、先程の我慢した燻りをぶつけるかのように口付けをしたのだった。自分たち以外誰もいない空間にぢゅぅっ♡♡ぢゅるるるっ♡♡♡♡と音が響く。
「はぅっ!……んっ♡♡ふぁっ……んんっ♡ゆぅ、しぃ…♡んーーーっ♡♡んぅーーー………はふっ♡しゅきぃ……♡♡♡♡」
「……ん…♡僕もだよ♡」
舌を絡める事によりぴくっ♡♡ぴくっ♡♡と身体が揺れている。口元も離れてしまうので、それを阻止するために手を彼の腰に添えて自分自身方へと寄せた。それすらも甘く痺れるのかより瞳に潤みが増していく。胸を愛撫して欲しいのか、すりすりと胸元を擦り付けてきているし…愛おしすぎる。
「んにゅぅ…♡♡はやく…帰ってきてね?おにゃか………さみしくなっちゃった……♡」
「もー…そーいうこと、言わないでよ……。したくなっちゃうでしょ。」
「えへっ♡」
彼の気が済むまで息と唾液を交換し、落ち着いてから、二人で職員室に戻ったのだった。
「あ、帰ってきましたね。……むむっ!」
「ひ、ひひ姫路先生……こわ、怖いです…。」
席に戻ってみれば、すぐ様に彼女にそっと耳元に寄られコソッと言われてしまった。
何らかのセンサーが働いたらしい。
「………浅見くんの唇赤くないです…????ちゅーしましたよね???」
「?!?!?」
「ナイスです。ご馳走様です。」
「は、はぁ…うおわっ!?」
ハスハスと荒い息が頬に当たっていたが、それも束の間でグイッ!!とシャツが引っ張られてしまった。
「金田だけじゃなく…姫ちゃんも近い…。」
「え、えぇー…。」
「近い。」
「ごめんね、気を付けるね浅見くん♡ご馳走様です♡」
まさかの…まさかの絢斗くんの胸元に僕の頭が抱え込まれてしまったのだった。抱えた本人は眉間に皺を寄せており、担任を睨んでいる。こんな姿…少女漫画的展開すぎやしないか!?トキメキが…止まらない!!普段可愛いこの子がこんな事をするだなんて。学校一のイケメンは伊達ではないな。
「……それで、何かありましたか。」
「これです。高城先生の校外の教員研修の日程表が送られてきました」
「教員研修…?」
「あー…。そっか、来週辺りに来るとは思ってましたけど。予想通りでしたね。」
「それ、なに?」
「んー?出張ってやつだよ。一日だけね。」
「!?!?!?」
そういえば夏休みの教員についての諸々を伝える事をしていなかったな、と改めて反省してしまった。背中に冷や汗が伝う。マズったな…と一瞬思考が過ぎる。
生徒みたいにひと月休みという訳では無い、という事項以外にも夏休みを利用した出張の有無。僕もまた…報連相がまだ満足にできていないのだと再度思えてしまったのだった。
その日の夜。またもや絢斗くんはギャン泣きしてしまい、自分の背骨が悲鳴をあげたのである。
「………むっ!」
「……むむむむっ!」
エアコンの効いた二年B組の教室内。本日も空は眩いほどに晴れ渡り、相変わらず気力を削がれてしまうほどの暑さが降り注いでいた。
そんな正に夏真っ盛りだと言うのにも関わらず…。この教室内の温度は妙に下がっている。何故か。いや、明白だけども。
…僕を中心に左腕絢斗くん。そして右腕に金田さんが張り付いていたのだった。
遡ること一時間前。
今日も金田さんの補講をしていた。昨日の絢斗くんとの一件があり、若干違う意味で会うのが怖いなとか思っていたが。
思ったよりも彼女の態度は普通であり、こちら側が気を負いすぎていたのか、場合によっては可愛い彼氏くんが過剰反応しすぎたのかなとかちょっと考えてしまったくらいだ。直接その買い出しの時の場面を見ていないので、僕としてはなんとも言えないから、そう判断してしまう。それくらいに、普通だったのだ。
だが……授業中盤。
「そーいえば、地味センって今付き合ってる人いるんですかぁ?」
「え……?い、いない、けど…。」
「ふぅん…?そーなんですねぇ♡」
なんか…なんか……様子が。
まさか彼女からそんなことを聞かれるとは思わなかったので心臓がドギマギとしてしまう。本日も艶の良い黒髪を指先でクルクルとしながら、大きい黒目を爛々とさせて僕を見上げていた。
その後の講義はなるだけ平常心を装って続けたが…どうしても絢斗くんとのやり取りを思い出してしまう。だが、業務なのでやるべき事はやらなければ…。諸々思う節はあれど、何とかその日の金田さんの補講は無事終了したのだった。
………のだが。
「え!?ちょ、なんで…お前…いるんだ…!?何かあったのか!?」
「?」
東先生の驚いた声が職員室の入口の所で聞こえた。
他の先生方もなんだとザワザワとしながら視線を向けている。
僕も何事かと向けてみたら…。
「え……。」
堂々と職員室内を闊歩し教員達の目線などまるで気にもしていない様子。あの子の今までの立場を考えれば確かに…何度とその様な視線を受けてきたのだし慣れているのだろう。
トコトコと足音が室内に響き渡る。
そして…それは自分の目の前にて止まったのだった。
「……………………なんで。」
「……ん、きた。」
まさかの絢斗くんが登場してきたのだった。
頬をポッと赤らめながらそんな事を言っている。夜に全くそんな事をするとは伝えてこなかったぞ、どうしてだ!?そんな考えが脳内でグルグルと巡る。照れた感じが可愛いけども、なんでだ!!
そんな唖然としていた所を…絢斗くんは知らん顔しながらポスンと脚の上に乗っかってきて、顔を覗いてきた。
「…んへっ、びっくりした?」
「しっ、したけども……何か用があってきたんじゃないの…?」
愛らしい彼の重みに思わずすりすりとしそうになるが、グッと我慢をする。ここでは数学準備室の時よりも周りに気にしなければならない。
そんな僕の問いかけにチラッと視線を向けつつ、彼は言った。
「……夏休みの宿題を、見てもらおーかなって。」
「……そういう、事ね。」
「ん。田所達みたいな部活やってる奴も顧問に見てもらう時があるって言ってたからさ。ねぇ…俺の事……見てくれる?」
なるほど。
昨日の夜に言っていた「頑張る」と言うのはこの事だったのだと理解した。また僕達が一緒にいても問題ないような理由を考えてきて行動してくれたのだろう。
他の人がいるというのに…胸元に額を猫のように擦り付けてきているし。
そこはかとなく、すぐそばに居る姫路先生の鼻息が荒い気がするのは…きっと気の所為では無い。
「…………はぁ…。」
「…………だめ?」
「…………………………わかったよ。見るよ。」
「んへへっ、やった。」
もう起きてしまった事にあーだこーだ言うつもりは無い。起きてしまったのだから。
諦め半分な気持ちで彼の腰部分に腕を周したのだった。
今日やるべき事はまだ残っていたが、ここでこれ以上のやりとりをする訳にも行かないし、二年B組へ行く事に。余り長くこの状態でいたらボロが出そうである。
彼の手を引き自分のやるべき仕事の資料を持ち、そのまま教室へ。誰もいない廊下を速足で通り抜けた。
到着した教室に当然人はいない。終業式以降誰もここには入っていないから空気はその時のままだ。室内はむわっと、しており些か重苦しく感じた。一旦空気の入れ替えをするべきだと判断し窓を幾つか開けた。
「……ぅわっ、あっつい…。」
「だなぁ…夏って感じだな。」
額に汗を滲ませ、絢斗くんは微笑みながら言ってきていた。思わず、喉が鳴る。
だが、家にいる時みたいに襲う訳にも当然いかず。一つ息を吐き精神を整えた。
各教室にもエアコンは着いてるので、折角だし学校指定よりも低めに設定して宿題を見ることにした。こういう時の特権かなって。
隣同士にすわり、肩をピッタリとくっ付け、腕を絡めてきた絢斗くん。本当にちゃっかりしているなと思う。くふくふとしていて可愛い。僕がどれだけ我慢しているのか知らないのだろうな。一瞬でも彼に関して気を抜けば、そのプルプルと見せつけている唇に噛み付いていただろう。
誰かに見られたらアウトなそんな状況。少しの間誰も来なければ良い、二人だけの空間がちょっとでも続けばいいなと考えていたら…。
「高城先生とすんごい仲いーんだね、浅見くん。」
「……。」
「!?」
聞き覚えのある鈴のような声色が教室内に響いたのだった。
二人して声の先に振り返る。僕は例に漏れず慌てふためいていたが…隣の絢斗くんはじっと黙っていた。彼のチャームポイントである猫目がギラッとしている。絡まる腕も僅かに力が入った。
その声の主……………金田さんが教室の出入口のところに立っていた。ニコニコと微笑みを盛大に披露しており、何を考えているのまるでわからない。
何食わぬ顔でそのまま入室し、僕の右側に机を持ってきては、彼氏くんと同じように…………ピッタリとくっついてきたのだった。
「ぁ!!高城に触んな!!」
「やぁだよ♡せんせー、今何してるんですかぁ?」
「ちょ、ちょっと…かかか金田さん…近い!!」
ぎゅっ!と腕までも絡められてしまい…。その、あんまり意識してはいけないのだが。ふ、膨らみが腕に当たってしまっている。絢斗くん以外僕は当たり前に興味はないのだが…。こればっかりは、どうしょうもない。
それを彼女も理解しているのか、にこりと僕に可憐に微笑みかけてきた。
「んふふっ、浅見くんもぴったりですよぉ?るみも同じ事してるだけですって。」
「いや、ほら…この子は男だし…。」
「そーいうの良くないと思いますっ♡それで、今何してるんですかぁ?」
話をガラッと変えさせられた。
確かに、有難いといえば有難いが。できるならばもう少し互いの距離を離して欲しいと思う。以前の僕ならばきっと…彼女のように可愛らしい子がこんな事をしてくれたならばコロッと気持ちが寄ってしまうのだろうけども。今は僕は絢斗くん一筋だ。多分、間違いなくずっと。だからこそ、隣でむむっ!となっている彼の為に離れて欲しいなって…思うのだ。
学校内ではツンツンしているのだろうけども、この様子であれば家に帰ってからの反動が凄いだろうな。またえぐえぐしちゃう。
「……夏休みの宿題を見てあげてるんだよ。金田さんは…補講は?」
「終わりましたぁ♡るみも宿題やります♡高城先生見てくださいね?」
「だ、駄目だ!高城は俺だけ見るんだよ!金田は姫ちゃんの所にでも行けよ。」
ぐいーーっと絢斗くんが金田さんの事を僕から剥がすように腕を伸ばしていた。少し前の彼ならばこんなことはしなかったのだが、今は関係ないらしい。されている側はきゃっきゃと笑っている。全くまるで効いていない。
「あははっ♡るみ、他の先生あんまりすきじゃないもん。高城先生は優しくてー分かりやすいから宿題もするする進められると思う♡」
「あー…その。二人とも。一先ず…一先ずやろう。僕もやらなきゃいけない事あるから。ね?」
「……うぅ…わかった。」
「はぁい♡」
結局僕を真ん中にして左右二人に張り付かれながら作業をする事になってしまった。こんな事に…なってしまうとは。人生分からないものだ。
わーきゃーとキャットファイトを開催しつつも課題はこなしてくれているようだ。
そんな彼等に時折教えつつも、最低限現状できる作業も勧められたのは不幸中の幸いだろうか。
その後金田さんは満足したのか笑顔で下校をして行ったのだった。また次も課題見てくださいね♡という置き文句をして。勿論、絢斗くんは額に青筋を浮かび上がらせていた。
そんな彼女に対し、すっかりとゲッソリしてしまった僕達二人は気晴らしとして自販機でジュースを買いに行ったのだった。
だが、それでは終わらず。
絢斗くんに腕を引かれながらトイレの個室に行く事に。
「……絢斗くん?」
「…………ムカつく。俺これでも頭使ってやってみたのに。」
ほっぺをぷくぅっ!と膨らませてそんな事を言ってきた。可愛い。とっても可愛い。ツンツンとその頬に指で突っついてしまった。僕に触れられる事は何も嫌だとは思わないみたいでされるがままであるし、指先をちゅっ♡♡ちゅっ♡♡としゃぶってくれる始末だ。何度でも思うが、誰だ彼をこんなにもえっちくさせたのは。僕だよ。
「びっくりしたけど、夏休み中なのに学校で絢斗くんに会えたのは嬉しかったよ。」
「……ほんと?」
「うん。次来る時は事前に言ってくれると…嬉しいけど、出来る?」
「ん。任せろ。…………ちゅぅ、したいな?」
「はいはい。」
ここのトイレはほぼ使われない。使っているところを今までほぼ見た事がないのだ。人気も少なく、掃除も余りされていないみたいだ。隅に埃が溜まっていた。
絢斗くんは僕の首元に腕を周し、甘えてきていた。瞳にも艶が表出しており、愛されを強請る。数十分前の彼とはまるで違う。見えないが、僕を求めるフェロモンを纏っている様だ。
それに対抗する手段も無く、先程の我慢した燻りをぶつけるかのように口付けをしたのだった。自分たち以外誰もいない空間にぢゅぅっ♡♡ぢゅるるるっ♡♡♡♡と音が響く。
「はぅっ!……んっ♡♡ふぁっ……んんっ♡ゆぅ、しぃ…♡んーーーっ♡♡んぅーーー………はふっ♡しゅきぃ……♡♡♡♡」
「……ん…♡僕もだよ♡」
舌を絡める事によりぴくっ♡♡ぴくっ♡♡と身体が揺れている。口元も離れてしまうので、それを阻止するために手を彼の腰に添えて自分自身方へと寄せた。それすらも甘く痺れるのかより瞳に潤みが増していく。胸を愛撫して欲しいのか、すりすりと胸元を擦り付けてきているし…愛おしすぎる。
「んにゅぅ…♡♡はやく…帰ってきてね?おにゃか………さみしくなっちゃった……♡」
「もー…そーいうこと、言わないでよ……。したくなっちゃうでしょ。」
「えへっ♡」
彼の気が済むまで息と唾液を交換し、落ち着いてから、二人で職員室に戻ったのだった。
「あ、帰ってきましたね。……むむっ!」
「ひ、ひひ姫路先生……こわ、怖いです…。」
席に戻ってみれば、すぐ様に彼女にそっと耳元に寄られコソッと言われてしまった。
何らかのセンサーが働いたらしい。
「………浅見くんの唇赤くないです…????ちゅーしましたよね???」
「?!?!?」
「ナイスです。ご馳走様です。」
「は、はぁ…うおわっ!?」
ハスハスと荒い息が頬に当たっていたが、それも束の間でグイッ!!とシャツが引っ張られてしまった。
「金田だけじゃなく…姫ちゃんも近い…。」
「え、えぇー…。」
「近い。」
「ごめんね、気を付けるね浅見くん♡ご馳走様です♡」
まさかの…まさかの絢斗くんの胸元に僕の頭が抱え込まれてしまったのだった。抱えた本人は眉間に皺を寄せており、担任を睨んでいる。こんな姿…少女漫画的展開すぎやしないか!?トキメキが…止まらない!!普段可愛いこの子がこんな事をするだなんて。学校一のイケメンは伊達ではないな。
「……それで、何かありましたか。」
「これです。高城先生の校外の教員研修の日程表が送られてきました」
「教員研修…?」
「あー…。そっか、来週辺りに来るとは思ってましたけど。予想通りでしたね。」
「それ、なに?」
「んー?出張ってやつだよ。一日だけね。」
「!?!?!?」
そういえば夏休みの教員についての諸々を伝える事をしていなかったな、と改めて反省してしまった。背中に冷や汗が伝う。マズったな…と一瞬思考が過ぎる。
生徒みたいにひと月休みという訳では無い、という事項以外にも夏休みを利用した出張の有無。僕もまた…報連相がまだ満足にできていないのだと再度思えてしまったのだった。
その日の夜。またもや絢斗くんはギャン泣きしてしまい、自分の背骨が悲鳴をあげたのである。
10
あなたにおすすめの小説
ブラコンネガティブ弟とポジティブ(?)兄
むすめっすめ
BL
「だーかーらっ!皆お前に魅力があるから周りにいるんだろーがっ!」
兄、四宮陽太はブサイク
「でも!それって本当の僕じゃないし!やっぱみんなこんな僕みたら引いちゃうよねぇ〜
!?」
で弟、四宮日向はイケメン
「やっぱり受け入れてくれるのは兄さんしかいないよぉー!!」
弟は涙目になりながら俺に抱きついてくる。
「いや、泣きたいの俺だから!!」
弟はドのつくブラコンネガティブ野郎だ。
ーーーーーーーーーー
兄弟のコンプレックスの話。
今後どうなるか分からないので一応Rつけてます。
1話そんな生々しく無いですが流血表現ありです(※)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる