地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

文字の大きさ
57 / 68

絢斗くんの将来の夢

しおりを挟む
やってきた進路相談。
二年生の他の教室でも行っているらしいのか、普段ならばもう少し静まり返っている廊下から会話の声が微かに聞こえてきていた。
一日五人程度を予定している。教室の外には椅子を五脚用意し、そこに本日面談する生徒が腰掛けて待機をしてくれている。

苗字の出席番号順であるから、トップバッターは絢斗くんである。
数日前の一件を思い起こすと少々気が重いが…。そんな僕とは反対に、数分前から隣に腰掛けている姫路先生は全力でワクワクしているのだった。

「えーっと、浅見くんの用紙を見せてもらったけども…。」 

事前に姫路先生に提出をしていたらしい。進路相談表を四脚くっつけた机の上に置かれた。
数日前にこの内容を巡り若干揉めた。問答の末に絢斗くんが不満そうに書き直してくれたという記憶が蘇る。ひとまずは問題ないような内容にしたが…用紙を今一度確認してみたのだった。

「…な、なんで…浅見くん…!?」
「高城に色々言われたけど、やっぱり本当になりたいものを書いてみたんだ。」

ど、どういうことだ。
【高城優志のお嫁さんになりたい】
そうでかでかと書いてあったのである。
なんで、どうしてだ!?あれ程までにもう少し違う内容にした方が良いと伝えたのに。あの後再度書き直したということか。
顔中に熱が集まる。
う、嬉しいけれども。あくまでもちゃんとした進路相談だ。いや、これがちゃんとしていないかといったらそうではないけれども。卒業後の就職か進学についてもっと考えた方が良いのでは…と思っていたのだ。
それに…下手したらお戯れしてんのか…と絢斗くんが思われてしまう可能性だってある。それだけは、絶対に嫌だ。
どうしよう、こればかりは姫路先生もブチギレるのでは…。

「わぁぁぁ…!素敵な夢だね、浅見くん!絶対に叶えようね!その為に私頑張るから!」
「姫ちゃん…!うん、俺頑張る。」

あ、全然そんな事無かった。
めっちゃ二人揃ってキラキラと輝いていらっしゃる。何なんだ、僕がおかしいのか。

「そうなると、浅見くんの中の理想のお嫁さんってどういうイメージなのかな。」
「ぁ、ちょっ…それは…。」
「んー…。おうちの中を綺麗にしたり、ご飯作ったり、お洗濯したり。あと、ゆぅしのことを元気にさせたり?」
「最後のところを非常に詳しく聞きたいけども…プライバシーな部分だからそれはあえて聞かないでおくね。妄想はさせてもらうけども。そっか、そうだよね。お家のこと全般ってことだよね。浅見くん的にはもっと何か上手くなりたいとか、そういうのはあるのかな。」
「んー…一応今の所全部できるけど。お料理とかはレパートリー増やしたいなぁって思ってる。」
「なるほどなるほど。お仕事とかしてみたいとか、そういうのはある?」

そう言うと絢斗くんは僕の方をチラッと見てきたのだった。いきなり視線を向けられたので、少しだけ肩が跳ねる。

「俺、お仕事した方がいーい?」
「……け、絢斗くんが凄くしたいことがあるなら僕は応援するけど。お家で僕の事待ってくれるのも、全然嬉しいよ。」
「!!俺主夫になるー!」
「っぐぅぅ!!かわえええ……!!!」

隣でカエルが潰れたような声がした。
分かります。非常に分かりますけれども。今だけは勘弁してくださいよ。
もうなんなんだこの進路相談。
もはや僕も受けているような気分である。一向に羞恥による顔の熱が引かない。

「ひ、姫路先生落ち着いてください…。」
「これが、これが落ち着いていられますか…!?推しカプの将来を私が握ってんですよ!…ふぅー…。」
「ひぇぇ…。」
「…となると、そうだなぁ。このまま主夫ルートもありだけども、調理のお勉強を短大とか専門学校でするっていうのもありだと思うんだよね。どうかな?」

そう言い事前に机の上に置いてあった分厚すぎるファイルを一冊を中央に寄せた。そして彼女の指先が繰り、とあるページを開いたのだった。
中には数多くの大学、短大、専門学校…等のパンフレットが収納されている。今差し出されているのは…調理系の専門学校であったのだった。
絢斗くんの瞳が…先ほどとはまた違った輝きを放っている。ゆっくりとパンフレットを受け取り、ペラペラとめくっている。

「………俺でも、進学できるのか?」
「今から頑張れば全然できるよ。高城先生が入ってからクラス全体が点数上がってきてるし、浅見くんも大分グングン上がってる。」
「……………考えてもみなかった。俺、出来るんだ。」

その彼の言葉に、以前野田くん達や彼本人から教えて貰った事を思い出した。
そうだ、彼は去年はこの学校を辞めるつもりで過ごしていたんだっけか。そんな次の日も登校しようかどうか考えていながら学校生活をしていたのだもんね。もっと先の未来の事…進路についてなんか考えてる余裕、なかっただろう。
なりたいこととか、やりたい事諦めていた部分があったのかもしれない。
僕のお嫁さんになるというのも、きっとようやく見つけた夢なのかも。それを僕は…彼のそんな気持ちを汲み取りもせずに頭から否定してしまったのだ。
申し訳なさに土下座をして謝罪をしたい気分である。
胸の奥がギュッと締め付けられるような感覚がこみ上げてきたのだった。絢斗くんの手を取り、視線を合わせる。

「ごめん。ごめんね、絢斗くん。素敵な夢を否定しちゃって。けれどね、まだまだ時間はある。僕のお嫁さんになりたいって言うのは心から嬉しいけども、それ以外にもやりたい事があるならば僕はそっちを優先して欲しいと思うよ。結婚なんて、いつでも出来るんだからさ。」
「ううん、俺も説明をちゃんと出来なかったからおあいこ?だ。だけど、結婚もするし、ゆーしのお嫁さんにはなる。絶対に。ただ、選択肢というのが喧嘩ばっかりしてた俺にもあったんだなぁって。驚いたんだ。」
「あるよ、そりゃぁね。」
「んふふっ、うん、ちょっと一回考えてみる。調理のお勉強とか興味があるかも。」
「そっかぁ。絢斗くんの色んなご飯食べれるなら僕嬉しいなぁ。」
「ほんと?ゆぅしはこれからずーっと俺の作ったご飯食べてくれる?」
「勿論!」
「ふふっ、うれしぃ♡」

指の間にするっと指を絡められにぎにぎとしてきてくれた。目の前の絢斗くんも、くふくふと微笑んでおり嬉しそうだ。あぁ…抱き締めて頭を全力で撫で回してあげたいし、ちゅーしてあげたい。

そんな事を考えていたら…。
真横からじーーーーーっと視線が送られていたのであった。
そう、姫路先生である。
そ、そうだ!!!
ここは学校なんだ!!
そう思い出し、ぱっと手を離そう…と思ったらまさかの絢斗くんの怪力で離せないし。より一層冷や汗が額を滲ませたのだった。

「あ、ひめ、姫路先生…す、すすみません!!二人だけで話してて!!!け、絢斗くん離さないと!!っえ゛…うひゃぁぁぁぁめめめっちゃ泣いとる!?!」
「やぁだ!繋ぐの!」
「かわいっ!!って、違う違う姫路先生!?」

もう、ボタボタ…という擬音が似合うほどに彼女は号泣していたのだった。
な、なんでだ!?

「うぐっ…と、尊くて…!!!私、めっちゃ頑張り゛ま゛ず…!!っ!!」
「は、はひぃ…。」
「姫ちゃん俺ティッシュ持ってるから、使って。」
「ありがとうーーっ!優しい子だね浅見くん…!」

そんなこんなで絢斗くんの進路相談は終わったのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ブラコンネガティブ弟とポジティブ(?)兄

むすめっすめ
BL
「だーかーらっ!皆お前に魅力があるから周りにいるんだろーがっ!」 兄、四宮陽太はブサイク 「でも!それって本当の僕じゃないし!やっぱみんなこんな僕みたら引いちゃうよねぇ〜 !?」 で弟、四宮日向はイケメン 「やっぱり受け入れてくれるのは兄さんしかいないよぉー!!」 弟は涙目になりながら俺に抱きついてくる。 「いや、泣きたいの俺だから!!」 弟はドのつくブラコンネガティブ野郎だ。 ーーーーーーーーーー 兄弟のコンプレックスの話。 今後どうなるか分からないので一応Rつけてます。 1話そんな生々しく無いですが流血表現ありです(※)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お腹を空かせた双子の怪獣との春夏秋冬

ユーリ
BL
「腹へった」「さっさと食わせろ」 風華はとある事情から幼馴染の双子のお世話をすることになったが、この双子は常に腹を空かせている上にいつも風華を狙ってくる!ーー「だから僕は食べものじゃありません!」 お腹を空かせた双子の怪獣との春夏秋冬はいつだって大変!

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

処理中です...